もうすぐ8月も終わりますね。
ついにcomicoノベルも『天才クソ野郎の事件簿』も、これが最後の更新となります。
約6年という長い間、ご愛読いただき本当にありがとうございます。
ここまできたら最後まで見届けていただければ幸いです!
天野が兄との再会を果たしている頃。
涼太は望月の自宅前に立っていた。
それは都内の一等地にあるタワーマンション。
周辺には複数台のパトカーが停まっている。
佐伯涼太
うわぁ……。
なんか
思ったよりお巡りさんの姿が多いじゃん。
困惑しているマンションの住民をかき分け、たくさんの警察官が走り回っている。
ほとんどが制服警官だが、私服警官と思われるスーツ姿の人間も多い。
あまりに出入りが激しいためか、正面エントランスのオートロックが開放されていた。
佐伯涼太
(おっ、ラッキー。僕ちゃんも簡単に侵入できるじゃん)
口笛を吹きながらエントランスを突破。
素知らぬ顔でエレベーターに乗り込み、望月邸がある17階を目指す。
部屋番号を確かめながら廊下を歩いていると、
白石琴乃
……あっ!
涼太さん!
遅かったじゃない!
廊下に佇んでいた琴乃が声をかけた。
隣には牧瀬の姿もある。
佐伯涼太
ごめんねぇ。
道が混んでてさ。
もう警察は来てるみたいだね。
白石琴乃
そうなの。
今は望月の部屋を調べてるわ。
親指でひとつの扉を指さす。
表札は出ていないが、ここが望月の自宅なのだろう。
涼太は過去の調査で、望月がここに7年ほど前から住んでいることを知っている。
佐伯涼太
望月は帰ってきた?
白石琴乃
ううん。
姿を見かけてない。
まぁ、この様子を見たら、家に帰ろうとは思わないんじゃないかしら。
涼太は納得しながら眼下に広がる光景を眺めた。
マンションを取り囲んでいるパトカー。
マスコミのクルーと思われる集団も到着している。
どんな犯罪者であっても、この状況で帰宅しようとは考えないだろう。
牧瀬美織
あの涼太さん……。
なぜかわからないんですけど、ここに『捜査一課』の人も来ているんです。
牧瀬がおずおずと言った。
佐伯涼太
えっ?
捜査一課?
『窃盗事件』は管轄外でしょ?
牧瀬美織
そうですよね……。
だけど、私の知っている刑事さんがいるんです。
もしかすると、涼太さんもご存知の方かもしれません。
佐伯涼太
僕の知ってる刑事さん……?
どうしてそう思うの?
牧瀬美織
前にご主人様が、その刑事さんに『息子の友人』だと告げていたんです。
昔からの知り合いのようでした。
佐伯涼太
は、橋田さん!?
橋田さんがここに来てるの!?
涼太は驚いて言った。
警視庁の捜査一課は、主に『殺人』や『傷害』などの事件を担当している。
そこに所属する橋田は、天野と涼太の小学校の同級生の父親なのだ。
もちろん涼太とも面識がある。
涼太はしばし思案すると、
佐伯涼太
……あ、あのぉ。
お邪魔しまーす。
橋田さんはいらっしゃいますかぁ?
思い切って望月の部屋に踏み込んだ。
数人の刑事が迷惑そうに涼太を睨みつける。
さすがに追い出されるかなと思ったが、
橋田在昌
……あれ?
さ、佐伯くん?
こんなところで、何をしてるのかな?
運良く橋田が部屋の奥から現れた。
引きつった表情で涼太を眺めている。
佐伯涼太
どうも橋田さん。
お久しぶりです。
昨晩はお世話になりました。
橋田在昌
あ、ああ……。
すまなかったね。
長時間、事情聴取に付き合ってもらって……。
佐伯涼太
いいんですよ。
警察に協力するのが『善良な民間人』の務めですから。
橋田在昌
橋田は涼太の顔を気まずそうに見つめている。
涼太はヘラヘラ笑いながら尋ねた。
佐伯涼太
どうして橋田さんがこちらに?
通報は『窃盗』に関することのはずですよね?
もしかすると、望月は『殺人事件』に関わってるんですか?
そういえば勇二から聞いたんですけど…………
橋田在昌
ちょ、ちょっと待った!
佐伯くん!
こっちに来てくれるかな!?
橋田は慌てて手短な部屋に涼太を引きずり込んだ。
同僚の
佐伯涼太
(おっと……。ツイてるね。ここは噂の『書斎』じゃんか)
涼太が連れ込まれたのは望月の書斎。
大きなデスクと本棚。
そして壁には大量の『胡桃の写真』が貼られている。
橋田在昌
た、頼むよ佐伯くん……!
人前では不用意な発言を避けてくれ。
橋田は涙目で言った。
橋田在昌
実を言うとね、今、私の立場はあまり良くないんだ……。
自業自得ではあるんだけども、君たちと関係していることが、バレそうになってるんだよ……。
佐伯涼太
ありゃりゃ。
それは困りましたね。
うちの相棒が迷惑をかけてすみません。
涼太は苦笑しながら橋田を眺めた。
本当に困っているのだろう。
橋田の額には脂汗が浮かんでいる。
如何せん天野と涼太は警視庁がマークするほどの危険人物。
ある意味『反社』ともいえる存在だ。
現職の警察官としては、あまり関わるべき相手ではない。
橋田在昌
佐伯涼太
いや、勇二は来てないです。
橋田さんはご存知だと思いますけど……。
お兄さんを探してますよ。
橋田は神妙な表情で頷いた。
橋田在昌
やはりそうか……。
念のため尋ねるけど、君たちは『神埼勇一』を
佐伯涼太
さすがにそれはないですね。
見つけてたら通報してます。
お兄さんが『殺人犯』だとは思ってませんが、この状況じゃ通報するのがベストですもの。
涼太はきっぱりと言った。
橋田が安堵の息を吐く。
橋田在昌
そ、そうだよね……。
それなら良かった。
それじゃ、どうしてここに?
佐伯涼太
僕は望月と面識があるんです。
勇二のお兄さんの『親友』でしたからね。
それに牧瀬さんたちが、とんでもないものを見つけたって言うんで、僕も確かめておこうと思ったんですよ。
そう告げながら部屋を見回し、『胡桃の写真』が貼られた壁を見つめる。
スマホのビデオ通話でも気色悪いと感じたが、実物は想像以上だ。
部屋に倒錯した変態の怨念が渦巻いているように感じる。
佐伯涼太
(『窃盗物』は押収したんだね。望月が何を盗んだのか知りたかったけど……。まぁ、これは仕方ないか)
クローゼットの扉は開いているが、中身は空っぽだ。
恐らく証拠品として押収したのだろう。
橋田は頭をボリボリかきながら言った。
橋田在昌
ああ、そうだね……。
牧瀬さんは君たちと親しい。
君がここに来るのも、ある意味当然といえるのか……。
佐伯涼太
そういうことです。
逆に尋ねますけど、どうして橋田さんがここにいるんですか?
橋田は小さく息を吐きながら涼太を見つめた。
涼太は部外者であり、死体の第一発見者。
捜査情報なんて話すことはできない。
しかし、今は状況が変わっていた。
橋田在昌
望月と面識があるなら、君には話したほうがいいだろうね。
私も少し聞きたいことがある。
構わないかな?
佐伯涼太
もちろんです。
教えてください。
橋田在昌
この部屋の持ち主……。
望月創真という外科医が無断欠勤しているんだよ。
今は連絡がつかない。
しかも……。
橋田は瞳を細めながら言葉を紡いだ。
橋田在昌
佐伯くんが発見した、鈴本という看護師の死体……。
その殺人現場に、望月の『毛髪』が落ちていたんだよ。
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