望月との最後の対決!!
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翌朝の6時半。
天野は『神埼記念総合病院』の前に立っていた。
隣には青ざめている胡桃と、相棒であるチャラ男の姿があった。
佐伯涼太
望月もやってくれるね……。
まさか『神埼』に僕たちを呼び出すなんて。
もっと遠くに逃げてると思ったよ。
舌打ちしながら病院の壁を見上げている。
望月が『取引』の場所として指定したのは、なんと「神埼記念総合病院」の屋上だったのだ。
病院の周辺には警備員やマスコミの姿がちらほら見受けられる。
佐伯涼太
どうやって『神埼』に侵入したんだろ?
誰も気づいてる様子がないよ。
天野がタバコを咥えながら吐き捨てる。
天野勇二
わからんな……。
単独で2人の女性をどうやって運んだのか。
恐らく搬入口から忍び込んだと思うのだが……。
佐伯涼太
まだ警察には通報しないの?
病院を取り囲めば簡単に逮捕できるよ。
涼太が言う通り、天野は『望月が前島を誘拐した』事実を、警察に一切伝えていない。
橋田はもちろんのこと、信用している椎名にも隠している。
涼太は「さすがに警察に助けを求めたほうがいい」と進言したのだが、天野は首を縦に振らなかったのだ。
天野勇二
そりゃ俺だって援助を頼みたいさ。
だが、今の望月は自暴自棄になっている。
胡桃との『取引』に失敗したり、警察や第三者の気配を感じたりすることがあれば、躊躇なく前島と川口を殺すだろう。
軽く息を吐き、隣に立つ胡桃を見つめる。
天野勇二
お前も病院には近づくな。
俺と胡桃だけで屋上へ行く。
そして全てのカタをつけてやる。
佐伯涼太
うん……。
わかったよ。
涼太は額の汗を拭いながら、『神埼』に向かっていく2人を見つめた。
青ざめる胡桃と、無表情で窓の外を眺めている天野。
それぞれの瞳には決死という名の炎が揺らめいている。
佐伯涼太
(これはまいったね……。胡桃ちゃんは覚悟を決めてるし、勇二が冷静すぎるよ……)
身体の震えが止まらない。
天野が放っている静かな殺気が怖いのだ。
相手は宿敵、望月創真。
知人である鈴本つぐみを殺害した男。
恋人である前島が誘拐され、愛する妹である胡桃を要求されている。
佐伯涼太
(これだけの要素が重なっているのに、勇二は冷静なんだ……。むしろ冷静すぎるぐらいだよ……。あからさまな殺気だって放ってない。ブチ切れて怒りを
それでもここまできたら天野を信じるしかない。
『天才クソ野郎』の作戦を信じるしかない。
例えその先に、誰かの『死』が待っていたとしても。
時刻は6時半。
神埼記念総合病院の屋上。
そこに望月の姿があった。
望月は双眼鏡を手に持ち、眼下に広がる光景を眺めている。
望月蒼真
……うん。
時間通りにやってきた。
通報した様子もない。
それでいいんだよ勇二くん。
望月の傍らには前島と川口の姿がある。
屋上の柵に『手錠』をかけられ、逃げることはできない。
前島悠子
まさか、私が監禁されていたのが、神埼の病院だったなんて……。
前島は悔しげに言った。
前島悠子
師匠が私と胡桃ちゃんを交換するはずありません。
こんなことしても、すぐに逮捕されますよ。
もう諦めたほうがいいと思いますけど。
望月蒼真
フフッ……。
君は勇二くんのことを何も知らないね。
彼はやって来るよ。
そして僕に胡桃ちゃんを差し出す。
僕にはそんな未来が見えている。
前島悠子
だったら、その後はどうなるんですか?
胡桃ちゃんを連れて、どこに逃げるつもりなんですか?
望月蒼真
彼女が望むところなら、どこへでも。
そこが僕たちの楽園になるんだ。
前島悠子
楽園って……。
じゃあ、胡桃ちゃんが『家に帰りたい』って言ったら、一緒に帰るんですか?
望月蒼真
アハハハッ……。
そんなこと言うはずがない。
僕と旅立つことを、彼女は望んでいるんだ。
もう僕の傍から離れることはない。
これは僕たちだけの『運命』なのだから。
前島は顔を歪めながら望月を見上げた。
なんてイカれた男なのだろう。
なぜここまで身勝手かつ独りよがりで狂い切ったことを言えるのだろう。
望月蒼真
さぁ、胡桃ちゃん。
僕は君を信じているよ。
思い出すんだ。
僕たちの運命を……。
その声に応えるかのように、「カン、カン…」という鈍い音が響いた。
屋上へ続く階段を誰かが上っているのだ。
やがてそこに現れた姿を見ると、
望月蒼真
マーベラス。
見事だ勇二くん。
君だったら要望に応えてくれると信じていたよ。
望月は大げさに両手を広げ、天野と胡桃を出迎えた。
胡桃は真っ白な顔で望月と、その傍らにいる前島たちを見つめている。
天野胡桃
ゆ、悠子ちゃん……。
ごめんなさい。
私のせいで……。
胡桃の呟きが、湿った風に乗って飛んでくる。
前島は悔しげに望月を見上げた。
このままではいけない。
こんな変態に胡桃を渡してはいけない。
天野勇二
やめろ前島。
余計なことを考えるな。
天野の鋭い声が、前島の動きを制した。
前島悠子
で、でも師匠……!
天野勇二
いいから黙ってろ。
おい望月。
胡桃を連れて来たぞ。
前島と川口を解放しろ。
望月蒼真
望月が懐から『メス』を取り出した。
素早く前島の首筋に突きつける。
望月蒼真
胡桃ちゃんをこちらに寄越すんだ。
2人を解放するのはその後だよ。
天野勇二
それはフェアじゃないな。
お前の人質は2人。
こちらは1人だ。
セオリーに乗っ取るならお前から解放すべきだろう?
望月蒼真
フェア?
そんなものに僕はこだわらない。
だけどまぁ、ここまできて揉めたくはないな。
手早く済ませようか。
望月は前島に『メス』を突きつけたまま、もう片方の手で『鍵』を取り出した。
それを川口の足元に放り投げる。
望月蒼真
まずは川口さんから開放しよう。
申し訳なかったですね。
行ってください。
川口は頷くと、涙をにじませながら前島を見つめた。
前島悠子
大丈夫です。
行ってください。
師匠を信じましょう。
川口由紀恵
ええ……。
ごめんね悠子ちゃん……。
川口が手錠を外し、天野のもとに駆ける。
天野はそれを確かめながら、隣に立つ胡桃にささやいた。
天野勇二
胡桃よ……。
頼んだぞ。
手はず通りやってくれ。
天野胡桃
うん……。
まかせてよ。
私だって『天才クソ野郎』の妹だから。
胡桃はひとつ頷き、ゆっくり一歩を踏み出した。
自らの足で望月のもとへ向かっていく。
望月は驚いて胡桃を見つめると、
望月蒼真
胡桃ちゃん……。
来てくれるんだね。
やっと僕との約束を思い出したんだね。
歓喜の笑みを浮かべた。
初めて『赤子の胡桃』を見つけた時に浮かべた、ぎこちない『人間』としての笑顔だ。
天野胡桃
…………
胡桃は真っ直ぐ望月を見つめている。
顔色は青ざめ、身体は小刻みに震えている。
ちょうど天野と望月の中間点に立つと、胡桃は唇を開いた。
天野胡桃
望月さん……。
今、私が何を考えているのか……。
わかりますか?
望月がニタリと唇を歪めた。
望月蒼真
もちろんわかっているさ。
僕たちの間に隠し事はない。
こんな手荒な真似をしてしまい申し訳なかった。
でもね、これは君にとって必要な儀式なんだよ。
胡桃が小さく頷き、柔らかな微笑を浮かべる。
天野胡桃
儀式……。
そうですね。
いつか偽りの人生と、決別しなければならない。
望月さんとひとつになるためには、その儀式が必要でした。
望月蒼真
そうだ。
僕たちの関係は特別で尊いものだ。
それを理解できない周りの声に縛られる必要はない。
天野胡桃
私だけが望月さんを理解できる。
望月さんだけが私を理解できる。
赤ん坊の時にあなたと出会えなければ、今の私はありませんでした。
望月は恍惚の笑みを浮かべながら頷いた。
望月蒼真
そうだ……!
そうなんだよ胡桃!
ようやく思い出してくれたんだね!
天野胡桃
はい……。
行きましょう。
私たちが救われる場所へ。
私は望月さんと一緒なら、どこへだって行きますから……。
胡桃が両手を差し出しながら、望月に歩み寄っていく。
望月は顔を歪めながらその光景を見つめた。
これは『愛』だ。
あの時、神埼家で感じた、たったひとつの感情。
望月は前島の首筋から『メス』を離すと、その足元に何かを放り投げた。
前島悠子
えっ……?
これは『手錠』の鍵……?
前島が驚いて望月を見上げるが、もう望月は前島なんて見ていなかった。
青空の下で、ただ1人だけを見つめている。
望月蒼真
ああ……。
僕は待っていた。
この日が訪れることを。
君とひとつになれる日を。
望月が『メス』を振りかぶる。
夏の日差しを浴びて輝く銀色の刃物。
胡桃がそれを見上げて僅かな
望月はニタリと悪魔の笑みを浮かべて叫んだ。
望月蒼真
……さぁ旅立とう!!
僕たちの『楽園』へ!
もう誰にも邪魔されることはない!
これで僕と君はひとつになるんだ!
胡桃に向かって『メス』が振り下ろされる。
前島は慌てて鍵を拾い、手錠を外そうと試みた。
しかしもう間に合わない。
胡桃が殺される。
前島が絶望を覚えた時、天野が『何か』を両手を構えるのが見えた。
前島悠子
あ、あれは……!
前島は思わず頭を抱えて伏せた。
その直後だった。
……パァン!
『神埼』の屋上に、乾いた発砲音が響き渡った。
望月の動きが止まり、驚いて天野を睨みつける。
望月蒼真
なっ……!?
拳銃だと……?
天野勇二
ああ、そうだよ。
死にやがれ望月。
ここがお前の墓場だ。
望月蒼真
クソッ……!
まだ持っていたのか!?
天野勇二
次は外さない。
覚悟しろ。
天野が拳銃を構えたまま駆ける。
望月は思わず胡桃を盾にして隠れた。
その瞬間だった。
望月蒼真
……ぐあああっ!?
望月の右腕から熱と激痛がほとばしった。
皮膚が焼けただれる感触。
見ると右腕から煙が上がっている。
何か『液体』をかけられたのだ。
右腕に力が入らず、握っていた『メス』が地面に落ちた。
望月蒼真
お、おい、それはまさか……。
望月は青ざめながら胡桃が持っているものを見つめた。
『小瓶』だ。
中身の一部が自らにもかかったのか、胡桃は苦悶の表情を浮かべている。
それでも勝ち誇ったかのように言った。
天野胡桃
そうです。
ちい兄ちゃんから貰ったの。
『薄い硫酸』ってやつですよ。
望月蒼真
そんなものを僕に飛ばしたのか!?
ふざけやがっ……
……パァン!
再び屋上に乾いた発砲音が轟いた。
天野が駆けながら発砲したのだ。
望月は思わず頭をかばったが、ここでようやく違和感に気づいた。
望月蒼真
クククッ……!
そういうことか……!
望月は唇を噛みしめると、天野に向かって駆けた。
二度も発砲しているのに、胡桃は銃撃から身をかばうような姿勢を取っていない。
あれは『
天野が持っているのは、本物の拳銃ではないのだ。
天野は『拳銃』を放り投げると、拳を振り上げて望月に飛びかかった。
ガツン、と鈍い音が響く。
それぞれの拳が互いの頬を弾き飛ばしたのだ。
望月は舌打ちながら拳を握り直すと、吐き捨てるように言った。
望月蒼真
やはりこうなるのか。
野蛮な凡人め。
僕は胡桃が手に入れば、君たちを見逃すつもりだったのに。
天野勇二
知ったことじゃないな。
俺様は初めから貴様を潰すつもりだ。
見逃す選択肢なんか存在しない。
それにな……。
天野がニタリと極悪の笑みを浮かべる。
全身から殺気を放ちながら言った。
天野勇二
もうお前は終わっているんだ。
最悪の犯罪者として歴史に名を刻む。
その前に、俺様の手でトドメを刺してやるよ。
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望月との最後の対決!!
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