※今週(7/24)は3話更新となります。前話を見逃さないようにご注意ください。





天野勇二

望月や遠隔殺人者トリックメイカーと接点があり、俺に近い人物……。
1人だけ心当たりがあるぞ。

だが、なぜあいつが……?
そもそも遠隔殺人者トリックメイカーは、俺たちを狙っていたんじゃないのか……?



 天野は呆然と呟いた。



 遠隔殺人者トリックメイカー『天野』『天才クソ野郎チーム』を狙っている。



 それこそが遠隔殺人者トリックメイカー『目的』だ。



 今まではそう思い込んでいた。



 しかし、本当にそうだったのか。



 むしろ遠隔殺人者トリックメイカー『目的』は、別にあったのではないか。



 その『目的』を果たすために、天野たちを狙う必要があったのではないか。



天野勇二

遠隔殺人者トリックメイカー雨宮あまみやなどを操り、俺様をハメようとしていた。
殺人犯に仕立てあげたり、爆発物で殺そうとしたり……。

俺が死を迎えること。
もしくは警察に逮捕されること。
そんなことが『目的』だと思っていたのが……。



 生唾を「ごくり」と飲み込む。



天野勇二

もしかすると、それは『目的』ではなく『手段』に過ぎなかったのか……?

遠隔殺人者トリックメイカーには何らかの『目的』があった。
それを果たすために、俺様を排除はいじょしようとたくらんでいたのか……?



 天野はブツブツ独り言を呟きながらその場を歩き回った。


 天才クソ野郎が考え事をする際の癖だ。


 灰色の脳細胞が唸りを上げて回転している。


 仲間たちはそれに気づき、黙って天野の様子を伺った。



天野勇二

これまで何度か遠隔殺人者トリックメイカーの影を見かけた。
俺様に接触してきたこともあった。
それらに共通点はなかったか?
何か規則性はなかったのか……?



 遠隔殺人者トリックメイカーの存在を知ったのは、雨宮の事件がきっかけだった。


 雨宮がいだいていた「天野と決着をつけたい」という復讐心をあおり、スケープゴートに仕立て上げ、天野に危害を加えようとしていたのだ。


(詳しくは『彼と上手に決着をつける方法』を参照)



天野勇二

あれからしばらくの間……。
遠隔殺人者トリックメイカーは姿を現さなかった。
俺たちを常に監視していたという痕跡こんせきだけを残し、一切の消息をったんだ。
次に姿を見せたのは……。



 妹である胡桃くるみ『JK散歩』を始めてしまった時だ。


 なぜか遠隔殺人者トリックメイカーは天野に電話をかけてきた。


 涼太たちが『寺嶋組』と揉めていることを伝え、胡桃たちの居場所を教えた。


(詳しくは『彼女と上手に散歩する方法』を参照)


 あの時の胡桃は完全にグレていた。


 その原因は『義妹』であることを、家族ではない『第三者』から聞かされてしまったから。



天野勇二

……そうだ。
望月が『義妹』であることを胡桃に伝えたんだ。
遠隔殺人者トリックメイカーが望月であると仮定するならば、なぜか胡桃の動向を掴んでいたことになる……。



 天野は悔しげに顔を歪めた。


 なぜ望月が『義妹』であることを知ったのか。


 そしてなぜ胡桃に伝えたのか。


 気になってはいたが、究明することは後回しにしていた。


 当時の天野は、胡桃との関係を再構築することを優先していたからだ。


 そして関係が修復されたあと、兄妹にとって『義妹である事実を知ったこと』は、どうでもよいものになってしまった。


 『血のつながり』なんて大した問題ではない。


 互いがそう認識した以上、改めて話をする必要がなくなったのだ。



天野勇二

……いや、それだけじゃない。
俺は無意識に避けていたんだ。
望月の話題を出すことや、望月の本性を胡桃に伝えることを避けていた。
あいつが発した『兄への暴言』を、妹たちの耳に入れたくなかったんだ……。



 天野の顔が苦悩に染まっていく。


 それを見て、涼太が恐る恐る声をかけた。



佐伯涼太

ね、ねぇ……。
どったの?
めっちゃ顔色悪いけど……。
しかも胡桃ちゃんって言わなかった?
胡桃ちゃんがどうしたのよ?

天野勇二

ああ……。
改めて思い出したんだよ。
胡桃に『義妹』であることを伝えた人物……。
それが望月だったことをな。

佐伯涼太

そっか……。
そういえばそうだったね。
あれどこで耳にしたんだろう。

ていうか、望月と胡桃ちゃんは仲が良いの?
胡桃ちゃんが誘拐された時も、望月が助けに来たんでしょ?



 天野はそこでもうひとつの関連性を思い出した。


 胡桃を誘拐した犯人。


 あれもなぜか『K』と名乗っていた。


 『真由子』に接触したアカウント名と同じ。


 これはただの偶然なのだろうか。



前島悠子

い、いや……。
仲良しってワケじゃないと思いますよ。


 天野と涼太の会話を聞き、前島が声をあげた。


前島悠子

胡桃ちゃんも桃香ちゃんも、望月にはまるで興味ないって感じでした。
あまり話したこともないって。
『たまに家にきてお年玉をくれるオジサン』ぐらいの認識しかありませんでしたよ。


 天野は訝しげに前島を見つめた。


天野勇二

なんだと?
なぜお前がそんなことを知っている?

前島悠子

聞いてみたんです。
私なりに望月のことを調べようと思って……。

天野勇二

いつ聞いたんだ?

前島悠子

ほんの数日前です。
ほら、今日が胡桃ちゃんの『誕生日』じゃないですか。
お祝いしようと思って、桃香ちゃんも呼んで『女子会』を開催したんです。
その時に聞いてみたんですよ。


 前島はどこか気まずそうに言葉を続けた。


前島悠子

でもまぁ、そのあとに望月と接触しちゃったんですけどね……。
なんであの人、私のスケジュールを知ってたんでしょう。
いつから私のことを尾行………



 前島の言葉が途切れた。


 何かに気づいたように目を見開く。


 愕然とした表情で天野と涼太を見上げた。



前島悠子

……いや、ちょっと待ってください。

私を尾行していた……。
それ自体が勘違いだったんですかね?
望月が尾行していたのは、私じゃなくて……!



 震えながら口元を押さえる。


 涼太が額の脂汗を拭いながら言った。



佐伯涼太

『胡桃ちゃんを尾行していた』

そういうこと?
だから『女子会』を開催していた前島さんを見つけられた。
望月はその事実を隠蔽いんぺいするために、あえて前島さんに接触したのかな?

前島悠子

つまり……。
私に接触したことも、一種の『ブラフ』だった……?

佐伯涼太

もし望月が胡桃ちゃんを狙っていたならそうなるね。
勇二を殺そうとしたり、排除しようとしていたことも説明がつく。
胡桃ちゃんが目当てだとしたら、勇二っていう『シスコン番長』は最悪の邪魔者だもの。


 琴乃が呆然としたように言った。


白石琴乃

ちょっと待ってよ……。
胡桃ちゃんってあの可愛い妹さんよね?
望月はあの子を狙ってるの?
殺人医師ドクター・デスのサイコキラーなのに、JKを狙うようなロリコンの変態でもあるの?
そんなのありえる?

前島悠子

ありえるかもしれませんよ。
望月が『彼ら』と複数形にしたのも納得できます。
胡桃ちゃんに近づくために、『天野家』との関係を構築する必要があると考えたのかもしれません。

富樫和親

望月はサイコパスですからね。
共感性が欠如した利己的な結果至上主義者。
成果物を手に入れるためなら手段を選びません。
天野さんを殺すことだっていとわないはずですよ。


 前島と富樫が震えながら言葉を吐き出す。


 天野は鬼の形相を浮かべながら言った。



天野勇二

『望月』遠隔殺人者トリックメイカーが交わる点には、『俺たち』『胡桃』の存在があった。
あいつの『目的』は胡桃を手に入れること。
俺たちの抹殺や排除なんて『手段』に過ぎなかった。
そういうことだったのか……?



 拳を握りながら熱い息を吐き出す。


 天野の全身から湧き上がる殺気が、テラスを埋め尽くしていく。


 牧瀬は震えながら声をあげた。


牧瀬美織

あ、あのご主人様……。
実は私、ひとつ気になることがあるんです……。


 テーブルの上に置かれた紙を指さす。


 『K』と『真由子』によるDMの履歴だ。


牧瀬美織

なぜ『第三者』『K』のアカウントを削除しなかったのでしょうか?
わざわざDMの履歴を消すより、アカウントを消去したほうが最適のはずです。


 姫子もこくこくと頷く。


板垣姫子

私も、気になった……。
証拠隠滅しょうこいんめつ……不十分……。
まるで……『真由子』の家に……誘導されてるみたい……。
そう、感じる……。

牧瀬美織

そうですよね?
望月は『天才クソ野郎チーム』を調べ上げています。
姫子様のことを知っている可能性も高いはず。
本気で証拠隠滅するつもりなら、アカウントを削除すべきなんです。
それなら、もしかすると……。


 息を詰まらせながら言葉を続ける。


牧瀬美織

望月はこのDM自体を『ブラフ』として使っているのではありませんか?
真の目的はご主人様を『真由子』さんの元に向かわせること……。
ご主人様の行動を間接的に操っているんです。
もしこの考えが正しければ、望月は今ごろ……!



 仲間たちが青ざめながら天野を見上げる。


 天野はその視線に答えるように言った。



天野勇二

胡桃を狙っているんだな。
『K』と『真由子』のDMを陽動ブラフに使いやがったのか……!



 天野は顔を歪めながら走り出した。


 その背中を仲間たちが慌てて追いかける。


 天野はキャンパスを駆けながら叫んだ。

 


天野勇二

俺様は胡桃のもとへ向かう!
涼太は『真由子』の家に行ってくれ!

佐伯涼太

わ、わかった!
勇二は1人で大丈夫!?
冷静になってよね!
無茶しちゃダメだよ!



 涼太の声はもう届かなかった。


 天野の中にあるのは、望月への激しい怒りと殺意だけ。


 それ以外の感情が消えている。


 涼太は嫌な予感を覚えながら、遠ざかる天野の背中を見つめていた。









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つばこ

【現在判明している望月蒼真のプロフィール】
 
性別:男性
年齢:天野くんのお兄さんと同い年
属性:インテリメガネ系イケメンサイコパス
職業:神埼総合病院の外科医
肩書:若き天才外科医、殺人医師
腕力:子供時代の天野くんが太刀打ちできなかったほど強い
現時点の必殺技:黒崎さんを秒で絞め落とす魔性のスリーパー
口癖:「無意味だねぇ」
性癖:ロリコン疑惑あり
 
天野くんはもうちょっと「望月がなぜ義妹である事実を知ったのか」という点を追求しても良かったですね。
ただ、恐らく追求しても無意味だったはず。
口が達者な望月が本当のことを言うとは思えません。
胡桃ちゃんに改めて尋ねたとしても、新しい事実は出てこなかったでしょう。
 
しかしそれはそれとして、天野くんのお兄さんはどうなったのかな…?
気になること満載ですが次回をお楽しみに!
いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!(≧∇≦)/

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コメント 23件

  • コハク

    黒幕はパパだったりして。

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  • 敷宗

    望月に義妹であることを何故知っているのかと追及したら勇一に聞いたとか羽倉か寸土だろうな…

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  • あゆ

    どうなるの?!
    フラグが沢山で、混乱してます!!

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  • ひす

    毎週楽しみに読んでます!
    ピッコマに天クソ扱ってください!とお願いメールしました。掲載してもらえないかなぁ。読み返したい!

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  • konbu

    まじで展開が凄すぎてついていけない……!!
    はやく続きが気になってしまう(´;ω;`)

    これが見れなくなるなんて嫌すぎる……

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