スライムですが、なにか?   作:転生したい人A

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人化と衣食住

 神重鉛を使った修行を始めてから数日が経った。

 不死のスキルを持っているが、何度も死ぬかもしれないと思った。

 神重鉛に重魔法を掛けた状態で動くには魔神法と神龍力を発動させる必要がある。

 そんな状態では通路を普通に歩くだけでもMPとSPを大幅に削られる。

 動くだけでも大変な状態で竜クラスの奴が襲ってくることもある。

 万全の状態なら何の問題もない相手だが、MPもSPもギリギリの状態で襲われればかなり辛い。

 

 まあ、自分で自分を追い込んでるだけなんだけどねぇ。

 ダメージがほとんど入らない上に不死だから出来る鍛錬だ。

 それでもSPが切れて空腹になるのは辛い。

 

 そんな日々を送りながら合間にやっていた人化の練習が実った。

 数日で人化のスキルが手に入ったのは悟りのおかげだろうが、気にせずに発動させる。

 人化した姿を確認するために、神金生成で鏡のような金属板を作り出す。

 アストラル・スライムの体とは違う雪のように白い肌の手足。

 スライムの体と同じように青系統のグラデーションが薄っすらとかかった白銀の髪。

 そして明らかに人の物ではない瞳。

 白目の部分は普通だが、黒目の部分だけがスライムの体と同じで薄い黒に青系統のグラデーションがかかっている。

 さらに、口の中もスライムの体と同じようだ。

 唯一の違いは歯がついているくらいだ。

 

 ふむふむ、目と口を見られなければスライムだとバレそうにないね。

 顔も学校で一二を争う美少女と呼ばれてた前世と変わってないねぇ。

 体形も変わってないぽいね、胸も前世と同じでそこそこ大きい。

 変わったのは髪の色と長さだけね。

 前世だと背中の中間くらいだったのに、今は膝下辺りまである。

 

 体の確認が一通り終わると、背後に大きい蛙が出て来た。

 上層にもいる蛙の進化した種だろう。

 折角、人化して生えた足で地面を蹴り、一瞬で蛙に近づいて回し蹴りで吹き飛ばす。

 私の全力一撃を受けた蛙は粉々になりHPを全損させる。

 

 おお、やっぱりこっちの方が動きやすいねぇ。

 けど、全裸で迷宮内を暴れまわるのは女子として問題だよねぇ。

 そうだ、糸で服と作ればいいじゃない。

 

 取り合えず、粉々になった蛙の死体は空納にしまって巣に戻る。

 巣に戻ってすぐに糸で簡単な下着を作って着る。

 その後にゆっくりと服を作っていく。

 流石に白一色だと味気ないので、青系統の色を使いながら水色のワンピースを一着作り上げる。

 

「出来たぁ!?」

 

 ワンピースを着て先ほど作った鏡のような金属板の前でクルクルと回ってみる。

 

「初めてにしてはなかなかの出来ねぇ」

 

 少し時間をかけただけあっていい感じのワンピースが出来た。

 鏡を見る限りでは目と口の中を見られなければ普通の女の子だろう。

 

 んー、フードを目深にかぶれば大丈夫だよね?

 問題は街中に入れるかだけど、恐怖を齎す者があるからなぁ。

 まあ、威圧とかオフにして隠密とかで頑張るしかない

 そもそも言葉が分からないから人の話とか文字を見に行きたいだけだしねぇ。

 そうと決まれば適当にフード付きのローブを作って行ってみよう。

 

 ワンピースとは違い速攻で作ったローブを気てフードを目深にかぶる。

 その状態で隠密や無音などで気配を全力で消して人が住んでいる町に向かう。

 迷宮の外に転移で出て、町を探す。

 

 迷宮の出口に砦があったから、道を辿っていけば町に着くよねぇ。

 

 明らかに人が通るために整備された道を辿って町を目指す。

 予想通りにすぐに町は見つかり、探知を全開で使いながら町の中に入る。

 隠密を発動させながらも出来るだけ人の目に付かないように気を付けて進む。

 探知で入ってくる雑談をする人達や買い物をする人、家事をする人などの動きや会話を整理していく。

 並列意思と高速演算を利用して言語の理解を深めていく。

 

 もっと時間がかかるかと思ったけど、スキルを使えば案外簡単に言語を取得できそうねぇ。

 これなら今日中に言語を習得出来そう。

 

 一通り歩いて回り、言語を習得できた。

 言語と恐怖を齎す者の確認のため、フードを目深にかぶった状態で買い物をすることにした。

 果物を売っている適当な露店の前に行くと、果物を指さして店主に声を掛ける。

 

「これ、十個ください」

「はいよ」

 

 店主は私が頼んだものを袋に詰めながら値段を言ってくる。

 それに対して私は手をローブに一旦隠して神金生成により硬貨を生成する。

 神金生成は金属生成の最上位スキル。

 神金生成で作れない金属はないので、硬貨ならいくらでも作り出せる。

 形や材質は探知で何度も感じ取ったので余裕で再現できる。

 店主にお金を渡してお釣りを受け取り、私は人がいない路地裏に移動して転移で迷宮に戻る。

 

「恐怖を齎す者も言語も問題なさそうだねぇ」

 

 目的を問題なく達成できたことに喜びながら、成果である果物に視線を向ける。

 あれから迷宮に籠っていたために食べることのなかった果物。

 

「いっただきまーす」

 

 ん~、美味い!?

 いやぁ、こんなことしてるの蜘蛛子ちゃんにバレたら怒られそうだなぁ。

 今度、蜘蛛子ちゃんにも買って行ってあげよう。

 

 買って来た果物を全て食べ終わり、袋とローブを空納にしまう。

 

 さて、今日からは人型で訓練しよう。

 スライムの姿での戦い方には大分慣れたからねぇ。

 人型での戦闘にも慣れて置かないと。

 

 空納から神重鉛の腕輪を取り出し、鍛えているように見えない細い腕と足に付けていく。

 スライムの時違って付けれる数が少ないので神重鉛に魔力を流し込んでいく。

 だんだんと重くなり動くのが辛くなってくるところで魔力を流すのをやめて重魔法を掛ける。

 まともに立てない程に重魔法を重ね掛けして魔神法と神龍力を発動する。

 

「さて、今日も猿の群れを探しますかぁ」

 

 下層をあるいて回っていると、猿を見つけたので殴り殺す。

 すると、猿の群れがいつも通り襲い掛かってくる。

 近づいて来る猿を殴り蹴りと殺し続ける。

 

 あれ?いつもより数の減りが遅い。

 あー、手の数が少ないからかぁ。

 

 いつも十数本の腕を振り回して猿を蹴散らしているのに対し、今は両手と両足で目の前の猿くらいにしか攻撃が届かない。

 これでは猿の数が減るのが遅くても仕方がない。

 

 ん~、手数の多さはスライム形態の方が上かぁ。

 けど、この状態でも手足を伸ばしたりすることは出来そうだ。

 まあ、折角作った服が破れるからしないけどねぇ。

 

 いつもより時間がかかったせいで最後の方はそれなりに動き回れるようになった。

 そして猿との戦闘で暴れまわったこともあり服がボロボロになっている。

 

「そういえば、戦闘を考慮して作ってなかったわぁ。はあ、戦闘用の服作ろう」

 

 猿の死体を空納にしまい巣に戻る。

 お腹が空いているので、空納にしまった死体を出して食べながら作る服について考える。

 

 やっぱり、元日本人だし和服がいいかなぁ。

 アニメの和服キャラの戦闘シーンとかかっこいいし、和服綺麗だもんねぇ。

 ということで和服を作ろう!?

 

「問題は耐久力よねぇ」

 

 今の私の戦闘に耐えられるほどの服を作ろうと思えば作れる。

 ただし、それは今のであってとんでもない速度で成長している私のステータスでは耐えられなくなるのも時間の問題だ。

 仕方がないから、今作れる最高の物を作ってボロボロになったら作り直そう。

 何度か繰り返せば和服のクオリティも上がっていくでしょ。

 そうと決まれば急いで食べて作ろっと。

 

 和服のデザインをイメージしながら猿の死体に手を伸ばして口に運ぶ。

 そして手に持った猿の死体を見て思ってしまった。

 

「こんな蜘蛛の糸の塊みたいな場所で女の子が魔物の肉を貪るってどうなんだろう」

 

 流石にこんな場所に蜘蛛の糸で本格的な家を作る気にはなれない。

 食べ物も私が食べる量を全部買うとなると大変なことになる。

 空腹なら地龍一匹が丸々食べれるし、飽食のストックを考えると足りない。

 

「人としての衣食住でまともなのが衣だけとはねぇ」

 

 まあ、いいか。

 私、人じゃないし、それに人の目なんて気にしても仕方がない。

 ただ、食べ物だけは美味しいものが食べたいなぁ。


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