夜のとばりが下りた頃。



 天野と涼太の姿は、大学付近にあるアパートの一室にあった。



 天野が一人暮らしをしている部屋だ。



 涼太は先程から『オンライン合コンメンバー』の様子を語っている。



佐伯涼太

……というワケなの。
菜々子ちゃんを無闇むやみに尋問しちゃってさ。
あんなに矛盾むじゅんを突く必要はなかったね。
菜々子ちゃんは言いたくないことを教えてくれたのに。
僕もまだまだ修行が足りないよ。



 天野が入れてくれたコーヒーを飲みながらため息を吐く。


 天野はタバコをくわえながら笑った。


天野勇二

気にすることはあるまい。
お前の『第六感』もなかなか優秀だよ。
菜々子という女は間違いなく事件に関わっている。
むしろ『犯人』を知っているのかもしれんな。
いや、正しくは共犯クロとしてカウントすべきかな?


 タバコに火をつけながら、ニタニタと悪い笑みを浮かべている。


 涼太はげんなりしながら言った。


佐伯涼太

それはありえないって。
菜々子ちゃんが『犯人』のワケがない。
前も言ったけど、彼女は『返り血』ひとつ浴びてなかったんだから。

天野勇二

それがどうした?
共犯クロではないことを証明する根拠にはならないぜ。

佐伯涼太

いや、だからさぁ……。
『オンライン合コンメンバー』『犯人』なのがありえないんだよ。
僕の友達を殺人犯にするのはやめて。
なんでそんなこと考えてんの?


 涼太は呆れたように天野を見つめた。


 この殺人事件は『オンライン合コン』の真っ最中に発生している。


 当然ながら全員に『アリバイ』があるのだ。


 天野は気障キザったらしく唇を歪めると、指を「パチリ」と鳴らした。


天野勇二

いくつかの『根拠』『新情報』がある。
まず気になっているのはLINEで送られた『写真』だ。
あれを送信する必然性が見当たらない。
逆に言えば、何らかの意図があったと見るべきだろう。

佐伯涼太

えぇ?
でもあれって……。
怜生クンが送ったんじゃないの?
最後の力を振り絞って、写真を送ったとか……。

天野勇二

それこそありえないのさ。
実は『検死』の詳細を聞くことができてな。
怜生はほぼ即死に近い状態で死んでいた。
スマホの操作なんて現実的じゃない。
死亡推定時刻は、お前が死体を発見する『1時間~1時間半前』で、まず間違いないんだよ。


 涼太は思わず眉をひそめた。


 頭の中であの夜の時系列を整理する。


 LINEで『写真』を受信したのは、死体を発見する『約40分前』のこと。


 発見の『1時間〜1時間半前』に怜生が息絶いきたえていたのであれば、『写真』の送信なんて不可能だ。


佐伯涼太

そうなると……。
『写真』は犯人が送った可能性が高い、ってことだね。
スマホは怜生クンの部屋に転がってたらしいから。

天野勇二

そうだ。
さらに『新情報』が2点ある。
ひとつは近隣住民の証言だ。

最近、怜生の家の周辺で『不審車』が目撃されているのさ。
小型の軽トラか、ミニバンらしい。
もしそれが『犯人』の車であるならば、「殺人のために下調べを行っていた」とも言えるだろう。

佐伯涼太

でもそれは『強盗犯』の車かもしれないでしょ?
あの地域には強盗事件が多発してた。
『犯人』と直結するかどうかはわからないよ。

天野勇二

まぁな。
だが、もうひとつの新情報がある。
警視庁の橋田はしだから無理やり聞き出したんだが……。


 「橋田」とは警視庁捜査一課に所属する警部補けいぶほのこと。


 とある事件をきっかけに出会い、何度か天野に情報提供を求められている。


 厄介やっかいな『天才クソ野郎』の存在に悩まされている人物の1人だ。


(詳しくは『彼と上手に決着をつける方法』を参照)


天野勇二

殺害現場のアパートと、隣の家の隙間から、『ホランド怜生の私物』が見つかったのさ。
みぞのようなところに押し込まれていたらしい。
財布や腕時計に貴金属……。
所謂いわゆる『金目の物』ってやつだ。

佐伯涼太

えぇっ?
それって、どういうこと?
怜生クンが隠してた……ってワケじゃないよね?

天野勇二

当たり前だ。
何者かが怜生の部屋から持ち出し、そこに隠したんだ。
タイミング的に実行したのは『犯人』である可能性が高い。
しかもな、不自然な点が見受けられるんだよ。

佐伯涼太

何が不自然なのよ?
もうそれだけで十分に不自然なんだけど。

天野勇二

全ての『金目の物』が隠されていたワケでもなかったのさ。
まず怜生が所持していた『ノートPC』は消えていた。
それなのに『スマホ』は無造作に部屋に転がっていた。
橋田が言うには、どらちもそれなりの高級品らしい。

佐伯涼太

ああ……。
それは間違いないよ。
怜生クンのPCはハイスペックだったし、今年発売のiPh○neも買ってた。
そっちの方が女の子ウケがいいからね。

天野勇二

ならば真っ先に盗んでも不思議じゃないよな?
実際に『ノートPC』は盗み出していることになる。
だからこそ整合性が取れないんだよ。


 涼太は神妙しんみょうな表情で頷いた。


 確かに何かが食い違っている。


 ノートPCは盗み出したのに、財布や貴金属はみぞに隠し、スマホに至っては部屋に置き去り。


 強盗犯の行動としては不自然過ぎる。


佐伯涼太

そうなると……。
これは『強盗殺人』ではない可能性が高まった、と言えるんだね……。

天野勇二

その通りだ。
あとは演繹法えんえきほうに基づいて推理を重ねるだけさ。


 タバコの煙を吐き出しながら言葉を続ける。


天野勇二

『犯人』は強盗犯ではない。
刃物で滅多刺めったざしにする、という殺害方法から強い『私怨しえん』の傾向が伺える。
しかも事件前から殺害の準備を進めていた。
そうなると、

「怜生の住居を知る『知人』による『計画的犯行』である」

そんな可能性が高まるのさ。


 涼太は慌てて口を挟んだ。


佐伯涼太

ちょい待って。
言いたいことはわかるよ。
だけど、『オンライン合コンメンバー』と直結するとは思えない。
怜生クンに恨みを持つ『第三者の犯行』とも言えるでしょ?
何も『オンライン合コン』の最中に殺さなくてもいいじゃない。

天野勇二

だからこそ逆に怪しいんだ。
そもそも完全犯罪を目論もくろむのであれば、通り魔の犯行に見せかけた『闇討やみうち』が最適だ。
しかし、『犯人』はその手段を選ばなかった。

つまり、あの場面、あの場所、あの時間で殺したこと。
さらに殺害現場の写真を送ったこと。
全てに何らかの意図があると推測すべきなんだよ。


 涼太はうなりながら天野を見つめた。


 相変わらずひねくれた思考のクソ野郎だ。


 しかもこれをどこか楽しそうに告げているからこそ、余計にタチが悪い。


佐伯涼太

勇二の言いたいことはわかるけど……。
さすがに難しいと思うよ。
みんなの自宅から怜生クンの家まで、それなりの距離があるんだ。
『オンライン合コン』を抜け出して、怜生クンの家まで走って、殺害して戻る。
そんな時間があった女の子はいないよ。

天野勇二

いや、どこかにほころびがあるさ。
1人では不可能だったとしても、数人が絡めば可能になることもある。
あの夜、離席りせきしたヤツはいなかったのか?

佐伯涼太

離席?
それはまぁ、いないことはないけど……。


 涼太はしぶしぶ語り始めた。


 あの夜の記憶を漁りながら言葉を吐き出す。


佐伯涼太

怜生クンがログアウトした後、愛海ちゃんと充希ちゃんが離席してる。
確か愛海ちゃんは15分ほど。
トイレに行って『カルパッチョ』を作ってた。

天野勇二

なるほど。
充希という女はどうだ?

佐伯涼太

「ポテチ食べる」とか言って10分ほど抜けてた。
でも2人とも回線はつないだままだったよ。
ログアウトはしてなかった。

天野勇二

菜々子という女は離席してないのか?

佐伯涼太

してなかったね。
僕たちがLINEで『写真』を受け取るまで、ずっとカメラの前にいた。

天野勇二

念のため、3人の女たちの居場所を教えてくれ。
怜生の家までどれくらいの距離があった?

佐伯涼太

愛海ちゃんは荻窪おぎくぼ
僕のご近所さんだよ。
一緒に車に乗って犯行現場へ向かったから、彼女が荻窪おぎくぼにいたのは間違いない。

菜々子ちゃんは白金しろかね
犯行現場には一番近いね。
タクシーを使えば15分ほどで到着するかな?

充希ちゃんに至っては埼玉さいたま浦和うらわだよ。
説明するまでもないけど、犯行現場までは1時間ほどの距離があるね。


 天野が納得したように頷く。


天野勇二

怜生がログアウトした後……。
何分後にLINEで『写真』が送られた?

佐伯涼太

たぶん30分……。
いや40分後ぐらいかな。

天野勇二

お前たちが家を出たのは、そこから何分後だ?

佐伯涼太

5分後ぐらいだね。
ちょっと様子を見に行こうと思って。

天野勇二

夏川愛海と合流したのは?

佐伯涼太

そこからほんの数分後。
荻窪おぎくぼ駅近くの交差点で拾ったよ。

天野勇二

保坂菜々子は、何分後に殺害現場に到着したんだ?


 天野は細かく質問を重ねている。


 涼太は仕方なくメモに時系列を記入することにした。


 LINEで『写真』を受信した時刻を確かめながら告げる。


佐伯涼太

えっとね……。
LINEで『写真』を受信したのが22時30分だから、これを逆算すると……。








21:50 怜生がログアウトし『オンライン合コン』から抜ける


21:55 夏川館林が離席


22:05 館林が戻る


22:10 夏川が戻る


22:30 LINEで『写真』を受信


22:35 涼太夏川保坂が殺害現場に向かうため離席


22:40 涼太夏川が合流


22:55 保坂が殺害現場に到着(仮)


23:10 涼太夏川が殺害現場に到着


23:15 涼太夏川保坂が合流し、怜生の死体を発見





佐伯涼太

……こんな感じだね。
菜々子ちゃんが殺害現場に到着した時間がわかんないけど、『22:35』が現実的なラインだと思う。
微妙にズレてる時間はあると思うけど、大体合ってると思うよ。


 天野はタバコの煙を吐き出しながら頷いた。


天野勇二

ふぅん……。
実に強引な『アリバイトリック』だな。
よくこんな力技ちからわざを実行に移せたものだ。
ほとんど穴がない。
もし穴があるとすれば、『夏川愛美』と『館林充希』だけか。

佐伯涼太

離席したことを言ってるんだね。
でも無理だよ。
愛海ちゃんは『22:40』荻窪おぎくぼで僕と合流してる。
充希ちゃんは浦和にいた。
5分や10分ほどで殺害現場から自宅まで戻って来れないでしょ?


 天野は呆れたように涼太を見つめた。


 鼻で笑いながら尋ねる。


天野勇二

おいおい涼太よ。
間の抜けたことを言うな。
お前はもっと頭の切れる男じゃないのか?
頭に載せているのはなんだ?
ただの飾りか?
たまには使ったらどうだ?


 涼太は「ムッ」としながら言った。


佐伯涼太

はぁ?
どういう意味よ?
なんでいきなりあおってきたの?

天野勇二

謎が解けたからさ。
確証には至ってないが、9割方間違いないだろう。
どんな恨みがあったのか知らんが、どうしても怜生というクズに天誅てんちゅうを下してやりたかったのだろうな。

佐伯涼太

…………えっ?



 涼太は思わず真顔で天野を見つめた。



 ヘラヘラと嫌な笑みを浮かべている相棒の顔を凝視ぎょうしする。



 自信たっぷりの偉そうで気障キザったらしい笑顔。



 またクソ野郎がとんでもないことを言い出した。



 涼太はわなわな震えながら尋ねた。



佐伯涼太

…………えっ?
えぇっ?
ちょ、ちょっと待って。
本当にちょっと待って。

謎が解けた?
それマジで言ってんの?
さすがに嘘でしょ?
お得意のブラフだよね?

天野勇二

なぜブラフを飛ばす必要がある?
まったくトリックなんてものは、解けてしまうと実につまらないものだ。
まぁ正直なことを言えば、『新情報』を掴んだ時に、この『方法』を使ったのではないかと想定したんだよ。

佐伯涼太

は、はぁ!?
何それ!?
なんで!?
なんでわかったの!?
どうやって殺したのよ!?

天野勇二

本当にわからないのか?
『犯人』は複数かと想定していたが、これは恐らく『単独犯』による犯行だぞ。


 涼太は仰天した。


 思わず立ち上がりながら叫ぶ。


佐伯涼太

た、単独犯ッ!?
それもマジなの!?
犯人は1人だけってこと!?

天野勇二

そうだ。
お前は気づいていると思ったんだがな。
何かが『おかしい』と感じていたのだろう?
その『違和感』の正体は掴めてないのか?

佐伯涼太

えぇっ……?
いや、それは、掴めたんだけどさ……。
でもそれが、事件に絡んでいるかどうかは、まだわからないんだけど……。

天野勇二

言ってみろよ。
きっと絡んでいるはずだぜ。


 涼太は震えながら口を開いた。


 あの夜に感じた『違和感』を告げる。


 天野は偉そうに頷いた。


天野勇二

やはり絡んでいたな。
その女が『犯人』だよ。
証拠も山ほど入手できるだろう。
もう逃げることは不可能だな。


 笑いながら2本目のタバコを取り出した時。


 天野のスマホがピロリと鳴った。


天野勇二

……ほう?
『姫』からの連絡だ。
お前の『ノートPC』の解析が終わったようだ。


 楽しそうにスマホを眺める。


 どうやらメールを受信したようだ。


 天野は文面を眺めると、自らの『ノートPC』を取り出した。


天野勇二

……やはりそうか。
これも俺様の読み通りだ。
まったくとんでもないゲス野郎だぜ。


 ノートPCでもメールボックスを開いている。


 『姫』という人物から何かのソフトが送信されたのだ。


 それをインストールして起動。


 涼太は画面に表示されたものを見ると、


佐伯涼太

……あれ?
こ、これって……。
『マーダーミステリー』だけど……。


 唖然あぜんとしながら言った。


 あの夜に遊んでいた『マーダーミステリー』のビデオ会議アプリだ。


 天野は唇を歪めながら言った。


天野勇二

このアプリには、とある『ウイルス』が仕込まれている。
お前の『ノートPC』も感染していたらしいぜ。
本体に内蔵しているカメラにアクセスし、使用者が知らない間に『盗撮』する。
そんな類のウイルスだ。


 涼太はまた仰天して言った。


佐伯涼太

はぁぁ!?
なんなのそれ!?
いつの間に感染してたの?

そんなの仕込まれたら、僕ちゃんの部屋が丸裸に…………。


 言葉はそこで途切れた。


 呆然としながらノートPCを指さす。


佐伯涼太

……えっ?
今、『盗撮』って言ったよね?
もしかして、そういうこと?
これだったの?
これが『怜生クンの盗撮手段』だったの?

天野勇二

その通りさ。
PCがスタンバイ状態にあっても、ウイルスは内蔵カメラから部屋の様子を撮影し続ける。
しかも勝手にアップロードする上に、その痕跡こんせきを全て消してしまう。
このアプリは怜生が用意したものだったな?

佐伯涼太

う、うん……。
そんなこと言ってた。
既存のアプリをいじったとか……。
怜生クンは意外にも、その手のことが得意だったから……。

天野勇二

初めから『盗撮』のために作り上げたのだろう。
浦和うらわのJKを『盗撮』したのもこれだな。
怜生は女のプライベートを暴くために、『オンライン合コン』『マーダーミステリー』を開催していたのさ。


 涼太は青ざめながらノートPCを見つめた。


 『マーダーミステリー』を行う際、参加者は怜生が用意した専用のビデオ会議アプリを使用していた。


 小説なんて読まないチャラ男だったのに、なぜ『マーダーミステリー』にハマっていたのか、確かに疑問ではあったのだ。


 全て『盗撮』のためだったなんて。


佐伯涼太

そうか……。
だから、古賀こがさんは部屋を盗撮されたんだ……。
これなら住所を知らなくても構わない。
部屋に忍び込む必要もない。
どれだけ部屋を探しても、カメラなんか見つかるはずもない……。


 青ざめながら言葉を続ける。


佐伯涼太

怜生クンは殺される前、「マーダーミステリーの後だとテンションが上がるものを見せたい」とか言ってたんだ。
あれはこのことだったのかな?
僕にマーダーミステリー経由の『盗撮』を教えるつもりだったとか?

天野勇二

恐らくそうだろう。
怜生はお前にシンパシーを感じたんだよ。
同じ『ゲス野郎』としてのシンパシーをな。
お前ほどのクズなら見せても問題ない。
そう考えたんだろうな。


 涼太はぐったりと肩を落とした。


 『オンライン合コン』で知り合った女性たちの盗撮写真。


 きっと人には見せられない写真がたくさんあったのだろう。


 涼太が完全に言葉を失っていると、


天野勇二

……フフッ。
姫のヤツめ。
気が利くじゃないか。


 天野がニタリと悪い笑みを浮かべた。


天野勇二

『オンライン合コン』の映像がサルベージできたらしい。
それが欲しかったんだ。
すぐに送らせよう。

佐伯涼太

うぇぇ?
マジで?
そんなものまで盗撮してたの?

天野勇二

そのようだ。
『マーダーミステリー』とは個別の『密談』を行うゲームらしいな?
その全てが録画されており、怜生は自由に閲覧することができたらしい。
つまりは『チート』だな。
自分がゲームに勝利するために仕込んだのだろう。



 天野は鼻で笑いながらノートPCを叩いた。


 『オンライン合コン』の映像が再生される。


 ちょうど『マーダーミステリー』のアプリを起動したところから録画されていた。


 富士山麓ふじさんろく洋館殺人事件』きょうじる涼太たちの姿が映し出される。


 楽しげにリズムを刻みながら喋っている夏川愛海。


 大きな胸を寄せながら下ネタを飛ばす館林充希。


 清楚せいそな微笑みを満面に浮かべている保坂菜々子。


 怜生は「富士山麓でもUber Eatsがあるなんて驚きだよな」と笑っている。


 これから凄惨せいさんな殺人事件が発生するなんて、誰も想定していないように見える。


 天野は早送りしながら映像を確かめた。



天野勇二

問題はここからだ。
俺様の読みが確かならば、ここに違和感があるはずなんだ。



 怜生がログアウトし、LINEで『写真』を受信するまでの映像を眺める。


 涼太も懸命に画面を睨みつけた。


 なぜあの娘が『犯人』なのか。


 いったいどんな『トリック』を仕掛けたのか。


 何ひとつ理解できないが、天野が注視するということは、ここに何らかの事実が隠されているのだろう。


 しかし、変わった様子は見受けられない。


 やがて天野は驚いたように言った。



天野勇二

……ふぅん。
これは見事だ。
まったく違和感がない。
お前が見落としたのも無理はないな。

佐伯涼太

そ、そうなの?
おかしな点はないの?

天野勇二

ああ、相当リハーサルしたのだろう。
これでは証拠にならん。
さて、どうするかな……。



 天野は渋い顔で黙り込んだ。


 『犯人』は見破った。


 『トリック』も暴いた。


 あとは何を考える必要があるのだろう。


 涼太が生唾なまつばを飲み込みながら見守る。


 やがて天野は嫌そうに吐き捨てた。



天野勇二

……仕方あるまい。
面倒だが実演しよう。
下手に説得するよりも、心をへし折ることができるだろう。
涼太よ、ひとつ頼みがある。

佐伯涼太

な、何かな?
何をすればいいの?
お願いだから、暴力沙汰ぼうりょくざたはやめてよ!
みんなを殴ったり、メスで切り刻んだりしちゃダメだよ!

天野勇二

俺様は野蛮人じゃない。
そんなことをする趣味もない。
簡単なことだよ。



 天野はニヤリと気障キザったらしい笑みを浮かべた。


 指先を偉そうに振り回し、青ざめる涼太の顔に突きつける。


 そして言った。



天野勇二

『オンライン合コン』というものに参加したい。
この魅力的な女性陣と顔を合わせ、酒をたしなみながら会話という花を咲かせたいんだ。
幹事をやってくれよ。







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つばこ

回を追うごとにどんどん出てくるホランド怜生の悪行!
好感度のストップ安が止まりませんね!
しかも『チーター』だった事実まで判明!
ゲーマーのつばことしては怒りがおさまりませんよ!
『密談』を全部閲覧できちゃうとかズルすぎだよ!ヽ(`Д´)ノプンプン
 
これは推測というか補足ですが、怜生クンは古賀さん(浦和のJK)に「ノートPCから撮影してるとは思えない角度の盗撮写真」を提示したのでしょう。
そのため涼太くんも『ウイルス』に気づくことができなかったのだと思います。
ノートPCを使わない時はちゃんとシャットダウンしなければいけませんね。
 
そんなこんなで『マーダーミステリー編』も大詰め!
いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!(๑•̀ㅂ•́)و✧

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コメント 24件

  • sere

    よく見たら346話で「血」って言ってるのみつきちゃんだけだ

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  • けーやん

    誰とかは分からないけど、バーチャルで他人の姿を創り出して、本来は家にいない人になりすましてアリバイを作ったとか…?

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  • ジントニック

    保坂は館林が現場から出てくるところに遭遇したしちゃったんじゃない?それだから動揺してるとか

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  • sere

    犯人を3人の女の子の誰かと仮定して、
    天野くんの「どんな恨みがあったかは知らんが」から犯人は動機が不明な子、つまり菜々子ちゃんはちがう。
    西荻窪に住んでて、荻窪で合流してる夏川ちゃんは死亡推定時刻から数分でチャットに戻ってきてるし、作ったおつまみ披露してるから違う。

    犯人充希ちゃんな気がする。浦和に住んでるのは実は嘘で、一人暮らししてる、みたいな。

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  • コロテール

    つばこ先生が長身の坊主だと言う事を、ふと思い出しビール噴いた.∵・(゚ε゚ )←ゴメンナサイ。

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