ホランド怜生が殺害されてから数日後。



 涼太は学生食堂の2階テラス席にて、相棒である天野勇二あまのゆうじと、その弟子である前島悠子まえしまゆうこと顔を合わせていた。



佐伯涼太

もう本当にまいったよ……。
『死体』なんて何度も見たことあるけど、今回はマジでショックだったね……。

だって他人の死体じゃないんだよ?
そこそこ仲の良かった友達の死体なんだよ?
あれは一生忘れられないだろうねぇ……。



 涼太はさめざめと呟いていた。


 何度か『殺人事件』に巻き込まれているため、これまで複数の『死体』を目撃している。


 撲殺、首吊、刺殺、バラバラ死体なんてものもあった。


 しかし、どれも涼太にはあまり縁のなかった他人。


 友人の『惨殺死体』を目撃してしまうのは、さすがにショックが大きかったようだ。



前島悠子

その気持ちもわかる気がしますよ……。
お友達が殺されてしまうなんて、悲しすぎますよね……。


 前島が切なげに呟く。


 天野はどこか励ますように言った。


天野勇二

あまり思いつめるなよ。
もし何かを吐き出したいのであれば、『カウンセラー』を手配してやるぜ。

佐伯涼太

うん……。
ありがと。
限界が来たらお願いするよ。


 涼太はげんなりとため息を吐いた。


佐伯涼太

ていうかさぁ……。
なんで僕はこんなに『殺人事件』に巻き込まれちゃうの?
いくら何でも数が多くない?
自分が『名探偵コ○ン』の登場人物じゃないかって感じるよ。

ああ、コ○ンくんはどこにいるんだろう?
いつになったら現れてくれるの?
僕の前には『見た目は大人、頭脳はクソ野郎、その名も天才クソ野郎』しか存在しないんですけど。


 肩を落としながらも軽口かるくちを叩いている。


 きっと気分を向上させようと、涼太なりに気勢を張っているのだろう。


 涼太はため息を吐きながら言葉を続けた。


佐伯涼太

……まぁ、そんなこと言っても仕方ないね。
それに僕としてはコ○ンくんより『天才クソ野郎』のほうがありがたいよ。
実はさ、勇二に『依頼』したいことがあるんだ。


 天野はいぶかしげに眉をひそめた。


天野勇二

依頼だと?
お前が俺様に?
何を頼むつもりだ。

佐伯涼太

たぶん察しはついてるよね?
いや僕もさ、こんなことを『依頼』するのは迷惑だろうなって思うよ。
それでもお願いしたいんだ。


 天野の前に500円玉を差し出す。


 『学園の事件屋』に依頼する条件は「昼飯を奢る」こと。


 涼太は真剣な表情で言った。


佐伯涼太

一緒に『事件』を調べてくれないかな?
怜生クンを殺した『犯人』を見つけたいんだ。
天才クソ野郎の協力を仰ぎたいんだよ。


 天野はタバコを取り出しながら涼太を眺めた。


天野勇二

なるほどね。
久々に「テラスで会いたい」と言うから何を言い出すのかと思ったが……。
それが本題なのか。

佐伯涼太

そういうこと。
どうしてもお願いしたいんだ。


 涼太は軽いため息を吐いた。


 どこか寂しげに木漏れ日の落ちるテラスを眺める。


佐伯涼太

正直に言うけどさ、僕にとって怜生クンは、そこまで仲良しの友達ってワケじゃなかったよ。
『コンパ』や『ナンパ』の場面ならイケてる相方だったけど、それだけの関係に等しかった。
彼自身に興味はなかったし、向こうもそうだったと思う。
薄情はくじょうな話だけど、僕たちはその程度の仲だったんだ。


 ゆっくり首を横に振る。


佐伯涼太

でもね、何かが引っかかるんだ。
妙な『違和感』があるんだよ。
もしかしたら、怜生クンには「殺されるだけの理由」があったのかもしれない。
そう感じるんだよね。


 前島が小首を傾げながら尋ねた。


前島悠子

……えっ?
それどういう意味ですか?
今回の事件って『強盗殺人』じゃないんですか?


 前島が尋ねた通り、メディアは今回の事件を『強盗殺人事件』だと報道している。


 怜生が住んでいた自由が丘には最近『強盗事件』が多発しており、怜生の殺害もその延長線上にある事件だと捉えられているのだ。


 つまりは「部屋に侵入した泥棒が、鉢合わせになった怜生を殺害した」ということ。


 警察はその線を疑っているらしい。


佐伯涼太

そうなんだけどさ、僕は違うような気がするんだ。
『強盗殺人』だなんて思えないの。

天野勇二

ほう?
つまりは怨恨えんこんによる殺人だと考えているのか?

佐伯涼太

そんなカンジ。
警察にも訴えたんだよ。
だけど警察は冷たくてさ。
僕が気づいた『違和感』をまるで聞いてくれないの。
何を言っても「事件には関係ない」の一点張りなんだ。

天野勇二

違和感ねぇ……。
それはなんだ?


 涼太は苦い表情でうなった。


佐伯涼太

いやそれがさぁ……。
うまく言葉に出来ないのよ……。

僕はあの夜、何かが「おかしいな」って感じたんだ。
あの時はそこまで不思議に思わなかった。
でも改めて思い返すと、どうも『ちぐはぐな点』があるような気がしてくるんだよねぇ……。


 天野と前島は呆れたように顔を見合わせた。


 何とも曖昧あいまい『違和感』だ。


 警察もそんなことを言われても困るだろう。


前島悠子

むぅ……。
よくわからないですけど、涼太さんの感覚というか、第六感みたいのが「おかしい」と告げているんでしょうか?

佐伯涼太

うん、まさにそれだね。
僕ちゃんの第六感がビンビンしちゃってるワケよ。

天野勇二

それでは何もわからんな。
もっと言語化してくれ。


 涼太は腕組みをしながら頷いた。


佐伯涼太

えっとね……。
まず気になってるのは、怜生クンが『僕に見せようとしていたもの』だよ。
彼は密談中に言ったんだ。
僕のテンションが上がるものを見せたいって。
それが何かわからないんだ。

天野勇二

それが『殺人』と関係していると言うのか?

佐伯涼太

かもしれないよ。
今考えると、あれはまさに『死亡フラグ』の発言だもの。
あんなの聞いたら『殺人』の裏に何かあるかもって疑うでしょ。

おまけに怜生クンのスマホから『妙な写真』まで送られてるんだよ?
あの写真とか超絶意味わかんないし。
警察は怜生クンが死ぬ直前に送ったんじゃないかって言うんだけど、そうとは思えないんだよねぇ……。


 涼太は熱く語っているが、天野と前島は渋い表情のままだ。


 さすがに根拠こんきょが薄い。


 天野はタバコの煙を吐き出しながら言った。


天野勇二

その程度の『違和感』では動く気にならんな。
ただの偶然である可能性の方が高い。
警察に任せておけばいいんじゃないのか?


 涼太はしょんぼりと肩を落とした。


 天野はまったく興味を抱いていない。


 この『クソ野郎』は、無関係な殺人事件に首を突っ込むような性格の持ち主ではないのだ。


 涼太は仕方なく言った。


佐伯涼太

まぁ、そうなんだよね……。
じゃあ取っておきを出そうかな。

僕はね、もうひとつの可能性を恐れてるんだよ。
これはもしかしたら『第三者による犯行』なのかもしれない。

つまりは『強盗』でも『怨恨えんこん』でもないってこと。
その可能性もゼロじゃないって思わない?


 天野の眉がピクリと動いた。


 瞳に静かな殺気が宿る。


 どこか感心したように涼太を眺めた。


天野勇二

……なるほど。
そう来たか。
お前はこれが遠隔殺人者トリックメイカーによる犯行ではないか』と疑っているんだな。

前島悠子

えっ!?
師匠……!
そ、それって……!


 前島が「ぎょっ」として涼太を見つめる。


 涼太は真面目な表情で頷いた。


佐伯涼太

その通りだよ。
怜生クンを殺したのは、僕たちをつけ狙っている『謎の人物』かもしれないってこと。
この事件は僕たちに向けた何かの『メッセージ』かもしれないんだ。
だって、僕たちは『遠隔殺人者トリックメイカー』にマークされてるからね。
胡桃ちゃんの『JK散歩事変』が良い例だよ。



 胡桃の『JK散歩』をめぐる事件。


 あの時、『遠隔殺人者トリックメイカー』は確実に天野と涼太を尾行していた。


 いったい何が狙いだったのか。


 何のために天野と涼太に接近しているのか。


 今でもさだかになっていない。


(詳しくは『彼女が上手に散歩する方法』を参照)



佐伯涼太

しかも先日の『胡桃ちゃん誘拐事件』では、望月もちづきが姿を現したんでしょ?
おまけに『誘拐事件』に加担しているような口ぶりだったんだよね?

天野勇二

……ああ、そうだ。
偶然を装っていたが、無関係だったとは思えない。
アイツは何を考えているのか。
それも謎のままだ。

佐伯涼太

そんな状況で僕が『殺人事件』に巻き込まれた。
あまりに出来過ぎてる気がするよ。
確率は低いと思うけど、その辺が絡んでる可能性を警戒すべきだと思うんだ。
どうせ『遠隔殺人者トリックメイカー』の手がかりは掴めてないんだしさ。


 天野は納得したように頷いた。


 タバコの吸い殻を灰皿に投げ捨てる。


 そして唇を歪めながら涼太を見つめた。



天野勇二

(……フフッ。やるじゃないか涼太よ。悪くない『ブラフ』だ。俺様をその気にさせるために、あえて『遠隔殺人者トリックメイカー』と『望月』の名を出しやがったな)



 さすが天才クソ野郎の相棒。


 実に効果的な『交渉術』だ。


 涼太は本気で「これが遠隔殺人者による犯行である」とは考えていない。


 しかし天野を動かすのであれば、それを『エサ』として活用すべきだろう、と判断しているのだ。


 天野はその狡猾こうかつさを買った。


 指をパチリと鳴らし、気障キザったらしく突きつける。


 皮肉たっぷりの口調で言った。


天野勇二

いいだろう。
お前の依頼、この天才クソ野郎が受けた。

とはいっても、勤勉かつ有能で世界中の誰よりも信頼できる『国家権力』を超越ちょうえつできるとは思わないが……。
まぁ、軽く『たったひとつの真実』を捻り出してやろうじゃないか。





 まず涼太は事件当夜の出来事を説明することにした。


 『オンライン合コン』が始まり、マーダーミステリーにきょうじ、怜生がログアウトして写真が送信され、死体を発見するまでの一部始終だ。


 何となく居合わせてしまった前島がうらめしく呟いた。


前島悠子

はぁ……。
久々に師匠と会えたのに、まさか『殺人事件』の話を聞くことになるなんて……。
師匠の辞書には『平和』って言葉がないんですかね……。

……まぁ、これはこれで、興味がないワケじゃないんですけど。


 腕まくりをしながら天野と涼太の会話を覗き込む。


 涼太はメモ帳にタイムテーブルを記入しながら言った。


佐伯涼太

僕が『怜生クンの死体』を発見したのは23時過ぎ
なぜか菜々子ななこちゃんが先に部屋に入っててさ。
厳密げんみつに言えば、菜々子ちゃんが死体の『第一発見者』ってことになるのかな。

天野勇二

『オンライン合コン』の参加者だな。
その女は疑われていないのか?


 『第一発見者』は『容疑者』としてマークされるのが世の常。


 涼太はあっさり頷いた。


佐伯涼太

うん、まったく疑われてない。
だって怜生クンは『刺殺』されてたからね。
犯人は派手に『返り血』を浴びたはず。
でも、菜々子ちゃんの身体からは『血液反応』がまったく検出されなかったんだ。
衣服や肌はもちろんのこと、髪からも検出されなかったよ。

天野勇二

『レインコート』や『フェイスシールド』を装着したとしても、そこまで血液反応が出ないのはありえない。
警察はそれで『シロ』だと判断したのか。


 身体に付着した血液の痕跡こんせきを隠すのは難しい。


 もちろん衣服を着替えたり、身体を洗い流したりすれば、目に見える血痕けっこんは消滅する。


 しかし、その程度では超高感度試薬ちょうこうかんどしやくによる血痕検査から逃れることはできない。


 最新の試薬は『洗濯した衣服』からも血痕を見つけ出すのだ。


佐伯涼太

もうひとつ理由があるんだ。
怜生クンの『死亡推定時刻』だよ。
僕たちが怜生クンを発見した時、すでに『死後1時間ほど』経過していたんだって。


 前島が「ほう…」と呟く。


前島悠子

それなら犯人じゃありませんね。
菜々子さんには『アリバイ』があった、ということですね。

佐伯涼太

そうなの。
怜生クンが殺されたのは21時~22時の間になるみたい。
この時間帯は僕たちと一緒に『オンライン合コン』をしてたからね。

天野勇二

菜々子という女は、どこで『オンライン合コン』に参加していたんだ?
被害者の自宅で参加していた可能性もある。
そうなれば『アリバイ』なんて意味はないぜ。

佐伯涼太

その裏も取ってるみたい。
菜々子ちゃんが自宅にいた姿を、同居してる家族が目撃してるんだ。
家族の証言なんて『アリバイ』を証明する根拠としては弱いんだけど……。
警察はそれが正しいって判断したみたいだね。


 涼太はメモ帳を指さしながら言葉を続ける。


佐伯涼太

僕が最後に怜生クンと話したのは、『密談』が終わった21時半過ぎ。
その直後に怜生クンはログアウトした。
それから50分後ぐらいにLINEが届いたよ。
血塗れた部屋の写真だね。
何かあったのかと思って、自由が丘にある怜生クンの部屋まで行ったんだ。

天野勇二

お前の家は荻窪おぎくぼだったよな。
それなりの距離があるが、タクシーで向かったのか?

佐伯涼太

いや、車で行ったよ。
まだお酒を飲んでなかったからさ。
近所に愛海まなみちゃんが住んでることが判明したから、2人で待ち合わせて向かったんだ。

天野勇二

愛海という女も合コンの参加者か……。
なぜ菜々子という女を先に行かせたんだ?

佐伯涼太

いや、本当は駅で待ち合わせるつもりだったよ。
さすがに女の子を1人で行かせたりしないって。

天野勇二

じゃあ勝手に行ったと言うのか?
なぜだ?


 天野が当然の疑問を飛ばす。


 涼太は困ったように顔をしかめた。


佐伯涼太

うーん……。
それがよくわかんないんだよね……。
菜々子ちゃんとは事件の夜から連絡が取れないんだ。
ショックを受けて寝込んでるんだって。
LINEも既読スルーされてるよ。

天野勇二

ふぅん……。
まぁいいだろう。
部屋の間取りが知りたいな。
ちょっと描いてくれ。

佐伯涼太

オッケー。
えっとね、だいたい、こんな感じかな……。


 メモに部屋の間取りを描く。


 狭い1DKのアパートだ。


 涼太は玄関を指さしながら言った。


佐伯涼太

警察が言うには、犯人は玄関から侵入したみたい。
怜生クンが招き入れたのか、勝手に入って来たのかは不明。
アパートの住民は怜生クンの悲鳴を聴いてないらしいから、犯行はスムーズに行われたんだろうね。
怜生クンは部屋まで逃げたみたいだけど、そこで息絶えちゃったみたい。


 青白い顔で言葉を吐き出している。


 きっと怜生の亡骸なきがらを思い出しているのだろう。


 天野は新しいタバコを取り出しながら尋ねた。


天野勇二

犯人は『玄関』から逃亡したのか?

佐伯涼太

ううん。
窓から逃げたみたい。
足跡があったんだって。
その前に部屋にあった金目の物を持ち出してる。

天野勇二

怜生のスマホはどこにあった?

佐伯涼太

それはよくわかんないな。
部屋のどこかにあったらしいけど、見つける余裕はなかったよ。


 天野は小さく頷いた。


 紫煙しえんを吐き出しながら呟く。


天野勇二

確かに不自然な点が多いな。
あまりに手際てぎわが良すぎる。
犯人はプロだったのか、顔なじみの人物だったのか、よほど周到に計画を練っていたのか……。
『強盗殺人』と報じられているが、警察はそれ以外の可能性も念頭に置いていると考えるべきだろう。

佐伯涼太

そうなの?
僕にはそんなこと言わなかったけど。

天野勇二

恐らく『泳がされている』のさ。
お前も『容疑者』の1人としてマークしているのだろう。
実行犯ではなくとも、共犯である可能性は高い。
肝心の情報は漏らさないだろうな。


 涼太は深くため息を吐いた。


 悲しい現実だが、その可能性が高いと考えるべきだろう。


 それなら警察の態度が冷たいのも理解できる。


 涼太は天野の横顔を見つめながら思った。


佐伯涼太

(……たぶん、それだけじゃないんだろうね。警視庁は『天才クソ野郎』を危険人物としてマークしてるらしいもの。『相棒』である僕のことも、それなりのヤバい奴として認識しているんだろうねぇ……)


 首を横に振りながら肩を落とす。


 天野は腕組みをしながら言った。


天野勇二

警察は『LINEで送られた写真』をどう見てるんだ?
送信時刻が死亡推定時刻から外れている。
何か聞いてないのか?


 涼太は渋い表情で頷いた。


佐伯涼太

死亡推定時刻も若干ズレることがあるんだって。
怜生クンが亡くなる直前にLINEで写真を送ったとしても、ギリ間に合うタイミングらしいよ。
それに『写真』を送信したからって、それが犯行を示す物的証拠にはならない。
そんなことを言われたよ。

天野勇二

なるほどね……。
それも一理あるな。
その程度の謎を解いても、犯人をブタ箱に放り込むのは難しいからな……。


 眉根を寄せながらメモ帳を眺める。


 前島は小首を傾げながら尋ねた。


前島悠子

どうですか師匠?
もう犯人の目星はつきました?
天才的な頭脳でプロファイリングしてくださいよ。

天野勇二

できるワケねぇだろ。
あまりに情報が少なすぎる。
また『検死』の詳細を聞くしかなさそうだ。
それであれば犯人の背丈と利き腕、性別まで判明するかもしれない。

前島悠子

うわっ、なんですかそれ。
そんな機密情報を聞き出せるコネがあるんですか?
誰が教えてくれるんですか?

天野勇二

それは秘密だ。
あまり詮索せんさくするな。


 まとわりつく前島を払いながら、天野はブツブツと何かを呟き始めた。


 どのように捜査を進めるか、作戦を練っているのだろう。


佐伯涼太

……あっ、電話だ。


 涼太のスマホがひとつの番号を着信している。


 着信画面を見て口笛を吹く。


 意外な人物からの電話だ。


佐伯涼太

ちょっと抜けるね。
すぐ戻るから。


 慌てて立ち上がりテラスの端へ向かう。


 咳払いをしながら呼びかけた。


佐伯涼太

……もしもし?
涼太だけど。

館林充希

あっ、涼ちん?
充希みつきだけど。
今大丈夫?
ちょっと時間貰えない?


 『オンライン合コン』の参加者の1人。


 派手な金髪と、自己主張の激しい胸が特徴の館林充希たてばやしみつきだ。


佐伯涼太

うん、平気だよ。
充希ちゃんから電話なんて嬉しいな。
どうしたの?

館林充希

ごめんねいきなり。
涼ちんに相談したいことがあるの。
お願いしていいよね?

佐伯涼太

相談?
そりゃ別に構わないよ。

館林充希

良かった!
じゃあ今から浦和うらわまで来て。
すごく重要なことなんだ。

佐伯涼太

えっ?
い、今から?
まぁ、それも別に構わないけど……。
重要なことってなに?

館林充希

ひとつしかないでしょ。
怜生のことだよ。


 涼太は深く息を吐いた。


 館林の声は真剣だ。


 いつものおちゃらけた調子は伺えない。


 それが不思議と、涼太に嫌な予感を届けていた。


佐伯涼太

……怜生クンのこと?
それって、あれだよね。
この間の事件のことだよね。

館林充希

うん……。
そのことだよ。
ちょっと怜生に関する嫌な『噂』を聞いちゃってさ。
今から会って確かめようと思うの。
それに涼ちんも同行してほしいんだ。

佐伯涼太

えっ?
ど、どういうこと?
誰かと会うの?

館林充希

そうそう。
向こうも会って話したいって言うから。


 館林は疲れたような息を吐いた。


 そして声を潜めながら言葉をつむいだ。


館林充希

その人たち……。
もしかしたらなんだけど……。
『怜生を殺した犯人』かもしれないの。





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20,210

つばこ

ちょっと区切りのいいところまでお届けしようと思ったら、想定より長くなってしまいました。
普段の倍近くはあります。
本当に申し訳ございません。
あんまり長くすると普段の回を読んだ皆さまに、
 
「なんや今週は短いやないか!どないなっとんねん!もっと死ぬ気で書かんかい!あと巨乳の館林ちゃん殺したら承知せんからなボケェ!!!」
 
と怒られてしまうような気がするので、気をつけたいと思います!
まぁたまにはそんな回があってもいいよね、ってことで許してください!
 
そんなこんなで、いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!(ง •̀ω•́)ง

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コメント 14件

  • ユタ

    涼太『それなりのヤバいやつと認識されてるんだろうなぁ…』
    ワイ『前に、2発しっかり銃で打たれて平気と言ってた奴がマトモなわけないだろ…』

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  • ファビオ

    つばこさん フラグ立てたからって回収しなくて良いですからね
    館林さんの巨乳イラストで手を打つからね お願いします

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  • m

    その人たち???複数なの??

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  • しずく

    天野クン!なるほどねなんて可愛い言葉使うんですか!!
    もっと使っていきましょうか!

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  • 神楽

    涼太くんはブラフのつもりで言ってたけど、望月が関わっている可能性は決して皆無という訳ではないと思うんだよね。
    真意は分からないけど、望月は天野くんに執着しているようだから天野くんを巻き込む為に涼太くんや前島さんのような親しい人達の関係者を殺させるくらいならやりかねない。

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