天野勇二

(何かがおかしい。何かが俺の認識と異なっていやがる。この『違和感』の正体はなんだ……?)



 天野は大きく息を吐いた。



 改めて祥子に向き直る。



 『エメラルドキャッツアイ』をハンカチに包みながら言った。



天野勇二

……わかりました。
今日のところは失礼させていただきます。
実はそろそろ大学に戻らなくてはならないんです。


 祥子は小さく頷いた。


 やや悲しげに天野を見上げる。


西園寺祥子

残念ね……。
もう少しお話したかったのに。
でも仕方ないわね。
医学生は忙しいと聞きますから。

天野勇二

ご迷惑でなければ、またご訪問させてください。
祥子さんのお話を聞きたいんです。

それに俺は諦めたワケではありません。
いつか祥子さんの心を揺り動かして、『宝石』をお返ししてみせますよ。


 天野が自信たっぷりに微笑む。


 祥子も笑みを浮かべて言った。


西園寺祥子

それは楽しみだわ。
でも、私はそう簡単には受け取りませんよ。

天野勇二

望むところです。
障害が多ければ多いほど、勝負とは燃えてくるものですから。

西園寺祥子

ふふっ……。
おかしな子ね。
天野くんってば頑固者がんこものなんだから。


 祥子は本当に楽しそうに笑っている。


 天野は「頑固者だなんて、アンタだけには言われたくないぜ」と思いながら言った。


天野勇二

ただ、ひとつお願いがあります。
先ほども伝えた通り、瑠璃ちゃんは『宝石』を飲み込んでいる可能性が高いんです。
つまり、お腹の中に『宝石』が残っているかもしれません。


 祥子は「はっ」としたように顔を上げた。


西園寺祥子

そうね……。
瑠璃ちゃんが『誤飲』しているかもしれない。
それは大変なことだわ。

天野勇二

その通りです。
早めに病院に連れて行くべきかと。

西園寺祥子

わかった。
すぐに手配させていただくわ。
もしかして、そのことも私に伝えるつもりだったの?

天野勇二

当然です。
柊さんはそのことばかり気にしていましたよ。


 柊が不安気に頷く。


 祥子は心底申し訳なさそうに言った。


西園寺祥子

色々と本当にごめんなさいね……。
瑠璃ちゃんがお2人に出会えて幸いだった。
また瑠璃ちゃんのお話をしましょう。
天野くんと柊さんだったら、いつでも歓迎するから。


 その言葉を受け、千紗が深々と頭を下げる。


柊千紗

こちらこそ申し訳ございませんでした。
また今度、ゆっくりお話させてください。

西園寺祥子

ええ、よろしくね。
瑠璃ちゃんの大好きな『おやつ』とか、色々と教えていただけるかしら。

柊千紗

はい。
もちろんです。


 天野と千紗はリビングへ向かった。


 祥子は庭に残ったままだ。


 しばらく庭で過ごすつもりなのだろう。


 天野が室内に入ると、弁護士の二階堂が声をかけてきた。


二階堂一成

おい……。
いったい祥子さんと何を話した?
そしてなぜ僕を遠ざけたんだ?
色々と教えてくれるかな。

天野勇二

…………


 天野は二階堂を一瞥いちべつすると、リビングに置かれた数々の調度品インテリアを眺めた。


 色とりどりの輝きを放つ裸石ルースたち。


 それらをじっくり眺める。


二階堂一成

……フン。
僕のことは無視か。
礼節に欠けた男め。
これだから最近の若者はなってないと言われるんだ。


 天野は気にせず室内を眺めた。


 ずっと猫をかぶり続けているが、この男は真性のクソ野郎だ。


 二階堂のわめき声なんて『そよ風』にしか感じていない。


天野勇二

(ふむ……。よく観察すると、この部屋は随分と物々ものものしいな)


 一見いっけんでは気づかなかったが、リビングには無数の防犯機器が設置されている。


 天井の隅には『監視カメラ』


 調度品の間には『赤外線センサー』が置かれている。


 他にも何かを仕掛けているだろう。


 天野が裸石ルース額縁ケースに手を伸ばすと、



二階堂一成

……お、おい!
何をするんだ!?
触るんじゃない!



 二階堂が血相けっそうを変えて怒鳴った。


 天野の手首を掴み上げ、無理やり裸石ルースから遠ざける。


 天野は嫌そうに二階堂を眺めた。


天野勇二

いきなりなんだ。
俺は『裸石ルース』を見ているだけだぞ。
室内に飾っているくせに鑑賞禁止なのか?

二階堂一成

そうじゃない!
額縁を動かそうとしただろ!?
なぜそんなことをする!?
盗むつもりだったのか!?

天野勇二

盗むだと?
こんなに大きなものをどうやって盗み出すんだ。
まずは落ち着けよ。


 両手を広げて二階堂をなだめる。


 二階堂は大きく息を吐きながら天野を睨みつけた。


二階堂一成

……とにかく触るんじゃない。
祥子さんが何を言ったとしても、僕は君のことを信用していないからな。

天野勇二

ただ鑑賞していただけなのに。
酷い言い草だな。

そもそもこれはアンタの『宝石』じゃないだろう?
なぜ偉そうに指図するんだ。
それともあれか?
いつか自分の宝石にでもするつもりなのか?
なかなか金に汚い弁護士じゃないか。


 天野も挑発的に二階堂を睨みつける。


 千紗に喧嘩腰けんかごしな物言いは良くない」とがめられたのに、このクソ野郎はまったく気にしていない。


 気の短い二階堂には『トラッシュトーク』で攻めるのが効果的と考えているのだ。


 二階堂は唸りながら言った。


二階堂一成

生意気な男め……。
祥子さんが言っただろう。
僕は彼女の資産を管理している顧問弁護士なんだ。
祥子さんは人が良すぎるからな。
君のような『ハゲタカ』から彼女を守らなければならないんだよ。

天野勇二

『ハゲタカ』だと?
それはどういう意味だ。

二階堂一成

とぼけるんじゃない。
猫を使って祥子さんに取り入っただろう。
彼女の資産を奪うつもりなんじゃないのか?


 二階堂は頬を引きつらせながら天野を見上げた。


 その顔には確固たる意思がある。


 例え天野が厄介やっかいな犯罪者であったとしても、一歩も退くつもりはない。


 そんな意思の強さを感じる。


二階堂一成

この際だから言わせてもらう。
僕は祥子さんの御主人にとても世話になった。
今でも数々の恩義おんぎを忘れたことはない。
だからこそ、御主人が祥子さんに残したものを守っているんだよ。
君のようなやからに盗まれないよう管理しているんだ。


 天野の顔に指を突きつける。


 鼻息を荒くしながら言葉を続けた。


二階堂一成

よこしまな企みを持っているなら諦めろ。
投資だの、援助だの、そんな話を祥子さんに持ちかけても無駄だ。
僕の目が黒いうちには、どんな『ハゲタカ』にも手を出させない。
それだけは覚えておくがいい。


 天野は半眼で二階堂を見つめた。


 言葉の裏に隠された心理を探るように、その全身を見つめ回す。


 二階堂はとにかく恐れている。


 祥子が誰かに騙されること。


 祥子の資産が誰かに盗み出されること。


 二階堂が浮かべていた『警戒心』の正体はそれなのだろう。


 天野は感心しながら言った。


天野勇二

ふぅん……。
なかなか立派な男だ。

だが、俺は『ハゲタカ』ではない。
こう見えても医者の息子ボンボンだ。
金に困っていることはないんだよ。

二階堂一成

そんな言葉が信じられるものか。
どんな誘いを祥子さんに持ちかけても無駄だぞ。
私を通さないと何も持ち出せないようにしているからな。
宝石を盗み出すことも諦めたまえ。

天野勇二

ああ、そのようだな。


 天野は天井の隅を指さした。


天野勇二

『監視カメラ』『赤外線センサー』まで。
見事な警戒網だ。
このリビングに泥棒が侵入できる隙はない。
これもあなたが設置したのか?


 二階堂は驚いて天野を見つめた。


二階堂一成

よく気づいたな……。
その通りだ。
この部屋には厳重な警備システムを設置している。

天野勇二

どれも真新しいな。
新品だらけだ。
最近設置したものだろう?

二階堂一成

ああ……。
そうだが……。

天野勇二

さっき「額縁に触るな」と怒鳴ったな?
あれは『振動検知センサー』を設置しているためか。
誰かが額縁を動かせば、警備会社に通報されちまうワケだな。


 二階堂は嫌そうに顔を歪めた。


 なぜ『ただの大学生』が警備システムに詳しいのか。


 そんな疑問でいっぱいなのだろう。


二階堂一成

……そうだ。
しかも大音量の警報が鳴り響くことになる。
だからこそ触らないでくれ。

天野勇二

それはすまなかったな。
だが、先に言ってくれればいいじゃないか。
そう言われれば俺だって触れようとはしないぜ。


 ヘラヘラと唇を歪めながら二階堂を眺める。


天野勇二

なぜここまで『盗難』を警戒している?
はっきり言うが異常だ。
個人宅のセキュリティにしては過剰すぎる。
もしかすると、宝石が誰かに狙われたことでもあるのか?


 二階堂は不服げに天野を見つめた。


二階堂一成

……仕方ないだろう。
祥子さんは『裸石ルース』を金庫に入れようとしないんだ。
この部屋にある石だけで数億の価値はある。
しかも実際に『泥棒』に入れられたこともあってな。

天野勇二

ほう?
この家にか?
どれだけの宝石が盗まれたんだ?

二階堂一成

そこまでの被害は出ていない。
ただ侵入されただけだ。
だからこそ防犯機器を設置したんだよ。


 そこで二階堂は大きく息を吐いた。


 もう天野との話を打ち切りたいのだろう。


 苛立ちながら言葉を紡いだ。


二階堂一成

もういいだろう?
しつこく個人宅の事情を詮索せんさくしないでくれ。

とにかく『宝石』は全て祥子さんのものだ。
盗んだり、騙し取ったりすることを考えるな。
そんなことになれば、君を死ぬまで刑務所にぶち込んでやるからな。


 天野は軽く息を吐いた。


 実に仕事熱心な弁護士だ。


 祥子の資産を守るために、命をかけているようにすら見える。



天野勇二

(……やはり『違和感』があるな。二階堂はここまで徹底して宝石を守っているのに、祥子はあっさり俺たちに宝石を渡そうとした……)



 テーブルに置かれていたカップを手に取り、冷めた紅茶で喉を潤す。



天野勇二

(単なる価値観の相違だろうか? 祥子はそこまで宝石に価値を感じていないのか? いや、これはもしかすると……)



 改めて額縁に入れられた裸石ルースを眺める。


 ダイアモンド、サファイア、トパーズ、アメジスト、ルビー、エメラルド。


 その他にも数え切れないほどの種類がある。


 どのような意図で並べているのかは、さすがの天野でも見当がつかない。


 基本的にはそれぞれの石ごとに区分けしているようだ。



天野勇二

(この件には『もうひとつの違和感』がある。あの発言と行動が矛盾むじゅんしているんだ。もしかすると、2つの『違和感』は相互関係にあるのか? それぞれの違和感が一本の線でつながるとすれば……)



 天野はカップを手に取りながら思案した。


 ブツブツと独り言を呟きながらリビングを歩き回る。


 二階堂が珍獣でも見るかのように天野を眺めているが、もうそんなことはどうでもいい。


 灰色の脳細胞をフル回転させながら裸石ルースを見つめる。


 やがて天野の足がピタリと止まった。



天野勇二

……これだ。
やはり一本の線でつながった。
だが『動機』はなんだ?
これは裏を取るべきだろうな……。



 天野はニヤリと唇を歪めた。


 悪い笑みを浮かべながら「クックックッ…」と呟く。


 そんな天野に千紗がおずおずと声をかけた。


柊千紗

天野くん……。
ちょっといいですか?

天野勇二

……うん?
どうした?


 千紗は少し怒っているような表情を浮かべている。


 天野を部屋の隅まで連れて行くと、


柊千紗

……どうして、あんなに喧嘩腰で喋るんですか?
やめましょうって言ったじゃないですか。
二階堂さんが気に入らないのはわかりますけど……。


 責めるように言葉を吐き出した。


 二階堂への物言いを咎めているのだ。


 天野は苦笑しながら言った。


天野勇二

そんなことか……。
俺にも色々と考えがあるんだ。
別に二階堂が好かないワケじゃない。

柊千紗

そうだったとしても……。
あんな物言いじゃ誤解されますよ。

天野くんはすごく優しい人なのに。
サチコや祥子さんのことを思いやる人なのに……。

私は天野くんが誤解されるのが悲しいんです。


 天野は驚いて千紗を眺めた。


 ここまで真正面からいさめてくるとは。


 やはり『天才クソ野郎』という本性を知らないから言えるのだろうか。


天野勇二

……フフッ。
そうだな。
俺が悪かったよ。
君はなかなか度胸のある女性だ。
嫌いじゃないな。

柊千紗

度胸って……。
そんなのありませんよ。
ただ私は……

天野勇二

ああ、わかったよ。
君の前では控える。
あまり子供のように叱らないでくれ。


 微笑みながら千紗から離れる。


 そこに今度は小暮がやって来た。


小暮達也

あ、あのぉ……。
大丈夫ですか?
良かったら、紅茶のお代わりをお持ちしましょうか……?


 天野は小暮を見つめた。


 その背後には不快感を全開にしている二階堂がある。


天野勇二

いや、もう十分だ。
片付けよう。
キッチンはどこだい?

小暮達也

えっ?
い、いいですよ。
お客様にそんなことさせられません。

天野勇二

気にしないでくれ。
俺はただの大学生だ。
君を顎で使う権利はないよ。


 テーブルの上の皿も手に取る。


 慌てて千紗もそれを手伝った。


柊千紗

すみません気が利かなくて……。
私も手伝います。

小暮達也

えぇっ?
いやでも、これは僕の仕事ですから……。

柊千紗

でも何かしないと申し訳なくて……。
お願いです。
お手伝いさせてください。

小暮達也

は、はぁ……。
じゃあ、お願いします……。


 小暮は頬を染めながらキッチンに天野たちを誘導した。


 手つかずのケーキを冷蔵庫にしまう。


 そして千紗の横顔を眺めながら尋ねた。


小暮達也

あ、あのぉ……。
こんなこと訊くのも、失礼だと思うんですけど……。

柊千紗

……?
なんでしょうか?

小暮達也

天野さんと柊さんは……。
お付き合いをされているんですか?
いやもしかして、ご夫婦だったりとか……?


 天野は呆れて小暮を眺めた。


 なぜこの家の人間たちは、見知らぬ男女をカップルにさせたがるのだろう。


天野勇二

いや、そんな関係ではない。
その予定もないな。


 あっさり吐き捨てる。


 隣では柊が肩を落としているが、天野はそんなものに興味がない。


 小暮はどこか嬉しそうに言った。


小暮達也

そ、そうですか……!
だったら、その、ますます失礼かもしれないんですけど……。
柊さんの『ご連絡先』を、教えていただけませんか?


 千紗は「ぎょっ」として小暮を見つめた。


柊千紗

……えっ?
私の?
なぜですか?

小暮達也

いやそのぉ……。
ダメですかね?
やっぱり、ダメですよね……?

柊千紗

いや、ダメというか……。
いきなりそんなこと言われても困ります……。

小暮達也

そ、そうですよね……。
ごめんなさい。
なんか、すごく懐かしい気がして……。
まるでどこかでお会いしたことがある気がするっていうか……。
僕にとって特別な気がするっていうか……。

いや、そんな回りくどい言い方あれですよね。
すっごくタイプなんです。
できれば、またお会いしたいなって……。


 顔を真っ赤にさせながら言葉を吐き出している。


 天野はため息を吐きながらカップを洗った。


 何を気に入ったのか知らないが、小暮にとって千紗はストライクゾーンど真ん中の女性だったのだろう。


 千紗は不安気に天野のシャツを引っ張った。


柊千紗

天野くん……。
どうしよう……。
どうしたらいいですかね……?

天野勇二

俺に訊かれてもな。
連絡先ぐらい渡してやればいいだろ。

柊千紗

で、でも……。
困りますよ……。

天野勇二

別に困ることもあるまい。
彼がタイプじゃなければ断ればいいさ。

柊千紗

いや、そういうことじゃなくて……。


 千紗は落ち込んだように肩を落としている。


 いったい何を困っているのか。


 天野にはさっぱり理解できない。


天野勇二

とにかく俺は帰るよ。
色々とすべきことがあるんだ。
柊さんは残るかい?

柊千紗

……えっ?
じゃ、じゃあ、私も帰ります。

天野勇二

ならば行こう。
小暮くん、ご馳走になったな。

小暮達也

あっ……。
は、はい……。


 しょんぼりと肩を落とす小暮を尻目に、天野たちは西園寺家を後にした。


 祥子はどこか名残惜しそうに家を眺めている。


 天野はからかうように言った。


天野勇二

どうした?
まだ家が気になるのか?
もしくは、小暮と連絡先を交換しなかったことでも悔やんでいるのか?


 千紗はむすっとしたように天野を見上げた。


 軽く頬を膨らませながら訴える。


柊千紗

いじわるなこと言わないでください。
いきなり連絡先の交換なんて困りますよ。
あの人のこともよく知りませんし……。
それに私の過去を知れば、離れていくに決まってますから……。

天野勇二

そうか?
別にそこまでの過去でもないと思うがな。

柊千紗

そこまでの過去ですよ。
普通の人はそう思うんです。
近寄りたくない、関わりたくないって。
普通の人は、そう思うんです……。


 千紗は切なげに肩を落とした。


 深いため息を吐く。


 天野は励ますように言った。


天野勇二

まぁ、とりあえず当初の目的は果たせた。
それを喜ぼう。
モリアーティ……いや、正確な名前は『瑠璃るり』だったか。
あの分ならすぐに病院へ運んでくれるだろう。


 千紗が思い出したように顔を上げた。


 嬉しそうに笑みを浮かべる。


柊千紗

そうですね……。
きっとサチコ……じゃなくて、瑠璃ちゃんの検査をしてくれますよね。

天野勇二

ああ、誤飲の件は解決だ。
恐れていた『警察への通報』も回避できただろう。
問題は『宝石』の返却だな。


 千紗は不安気に頷いた。


柊千紗

はい……。
本当にどうしたらいいんでしょう。
まさかプレゼントされるとは思いませんでした。

天野勇二

俺はまた後日、祥子さんと会ってみるつもりだ。
頑固者のばあさんだったが、何度も通えばいつか口説き落とせるだろう。

柊千紗

それなら私も同行させてください。
祥子さんともお話してみたいです。

天野勇二

いいだろう。
予定を合わせよう。
連絡先を交換してくれるか?


 スマホを取り出しながら尋ねる。


 千紗は自らのスマホを取り出し、頬を染めながら頷いた。


柊千紗

……はい。
大丈夫です。
天野くんだったら……。
大丈夫です。

天野勇二

暇な時間ができたら連絡する。
それまで待機してくれ。


 何度も頷く千紗に手を振り、天野は軽やかに歩き出した。


 振り返れば小さくなっていく千紗の姿が見える。


 どこか嬉しそうに手を振っている。


天野勇二

フフッ……。
変わった女だ。
やはり嫌いじゃないな。


 天野はしばらく無言で歩いた。


 背後に千紗の姿が見えないことを確かめ、1人の男に電話をかける。


 相手はすぐに出た。


天野勇二

……いよう。
涼太りょうただな。
今、ヒマか?
どうせヒマしてるよな。
仮にヒマじゃなくとも俺様の電話に付き合え。


 スマホの向こうから不満げな声が聴こえる。


 相棒である佐伯涼太さえきりょうたの声だ。


 天野は悪い笑みを浮かべて言った。


天野勇二

今から『とある人物』について調べてほしい。
どうもキナ臭い話になってきてな。
俺様のカンが先手を打つべきだと告げているのさ。

……なに?
今は忙しい?
『オンライン合コン』の真っ最中だと?
クックックッ……。
なんだそのくだらない遊びは。


 ヘラヘラと嫌な笑みを浮かべる。


 天野は極悪そのものといった表情で告げた。


天野勇二

そんなもの打ち切ってしまえ。
これは『金』になる話だぞ。
うまくやれば大量の『宝石』が手に入る。
お前だって『遊ぶ金』が欲しいだろう?




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つばこ

【さすがに「ちょっとゲスの極みすぎる」ということでボツにした涼太くんの台詞コーナー】
 
涼太くん「えぇ? 誰について調べろって言うのよ? 僕ちゃんだって忙しいんだよ。今は『六本木ヒルズ』の地下にある『多目的トイレ』で取り込み中なの。何をしてるのかは詳しくは言えないんだけど、とにかく忙しいワケ。これが終わったら美味しい料理をインスタにアップしなくちゃいけないしさぁ。」
 
ったくもう! どいつもこいつも!
グルメ好きのチャラ男とかサイテーですね!!
チンポもげちゃえ!ヽ(`Д´)ノプンプン
 
まぁそんな茶番は置いておいて、天野くんは何かに気づいたようです!
いったい何をするつもりなんだクソ野郎!
いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!ヽ(•̀ω•́ )ゝ✧

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コメント 24件

  • とうか。

    天野たちが家を出たとこの
    祥子は名残惜しそうにって
    千沙は名残惜しそうにの誤字?

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  • コハク

    いやいやいやいや、作者コメwwwwwww

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  • ユタ

    普通の大学生ってなんだっけ…

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  • 子熊

    額縁の裸石は、偽物…
    弁護士の二階堂さんが、すり替えた

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  • ayu

    もげちゃえ!笑 つばこさん目線が女ですよね。笑

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