西園寺さいおんじ邸に招かれた数分後。



 天野と千紗はリビングにて、小暮こぐれという青年が入れた紅茶を飲んでいた。



 香り豊かなアールグレイを味わいながら、室内の『調度品インテリア』を眺める。



天野勇二

(外からでも立派な家だと感じていたが……。室内は想像以上だな。ここまで部屋を飾り立てているとは……)



 室内をいろどっているのは額縁がくぶちに入れられた裸石ルースの数々。


 ダイアモンドはもちろんのこと、ルビーやサファイアなどの一級品も飾られている。


 立派な絵画や、ネックレスやリングなどの装身具アクセサリーも置かれているが、『宝石』に比べるとインパクトは劣る。


 あくまでもメインは裸石ルースのようだ。



小暮くん

すごい部屋ですよね。
僕も最初見た時は驚きました。


 室内を眺める天野を見て、小暮が声をかけた。


 人の良さそうな笑顔を浮かべた青年だ。


天野勇二

ああ……。
俺も驚いたよ。
まるで『宝石店』のようだな。

小暮くん

本当ですよね。
亡くなられた御主人様の趣味なんです。
何でも『宝石コレクター』だったみたいで。
たくさんの宝石を集めたらしいですよ。

天野勇二

それは大したものだ。
ここまで集めるには金もかかっただろうに。

小暮くん

それに関わるお仕事をしてましたからね。
そもそも御主人様が……


 室内に「ごほん」と、大きな咳払いが響いた。


 弁護士の二階堂にかいどうが発した声だ。


 険しい表情で小暮を睨みつけている。


二階堂一成

小暮くん……。
余計なことを喋るな。
それはどこの馬の骨とも知れぬ男だぞ。

小暮くん

あっ……。
す、すみません……。

二階堂一成

まったく……。
祥子さんはわかってない……。
なんでこんな怪しい男を招くかね……。


 心底迷惑そうに独り言を呟いている。


 小暮は小声で天野に言った。


小暮くん

……すみません。
なんだか機嫌が悪いみたいですね。
いつもはあんな人じゃないんですけど……。
気を悪くさせたらごめんなさい。

天野勇二

いや、いいのさ。
君が気にすることじゃない。

小暮達也

はい……。

……あ、あの。
お姉さんは、紅茶のおかわりとか……。
いかがですか……?


 頬を染めながら千紗に尋ねる。


 千紗は驚きながら小暮を見上げた。


柊千紗

いえ、大丈夫です……。
まだありますから。

小暮達也

そ、そうですか……。
好みの『お茶菓子』があれば言ってくださいね。
なんでも用意します。
ケーキとかもあるんですよ。

柊千紗

はぁ……。
じゃあ、お願いします……。

小暮達也

は、はい!
すぐに用意します!


 小暮が照れ臭そうに立ち去る。


 なかなかの好青年だが、あまり女性への免疫めんえきがないのだろうか。


 やけに千紗をチラチラ見つめている。


 天野が小首を傾げていると、






西園寺祥子

……ごめんなさいね。
お待たせしてしまって。



 リビングに西園寺家のあるじこと、祥子しょうこがやって来た。


 薄いメイクをほどこしている。


 久々の客人を迎えるため、身だしなみを整えてきたのだろう。


天野勇二

気にすることはありません。
突然お訪ねしたのは俺たちのほうです。
お時間をいただき感謝します。

西園寺祥子

そんなにかしこまらないで。
お茶はどうかしら?
お口にあった?

天野勇二

ええ、とても。
上質で香り豊かな茶葉ですね。
紅茶の入れ方も素晴らしい。

西園寺祥子

ありがとう。
小暮くんは紅茶を入れるのが上手なの。
彼にはいつもお世話になっているのよ。


 小暮が祥子の後ろで頭を下げる。


 やはり恥ずかしげに千紗を見つめている。


西園寺祥子

えっと……。
改めて、お名前を教えていただけるかしら?
あなたは確か天野くんだったわよね?

天野勇二

はい。
天野勇二と申します。
近くの大学に医学生として通っております。

西園寺祥子

あら、それは優秀ね。
将来はお医者様になるのかしら?

天野勇二

まぁ、その予定です。
こちらの女性は……。


 千紗をチラリと見つめる。


 千紗は慌てて頭を下げた。


柊千紗

私は柊千紗といいます……。
西園寺さんの近くに住んでいるものです……。

西園寺祥子

ご近所さんだったのね。
2人はどのようなご関係なの?
恋人同士かしら?

柊千紗

えっ!?
こ、恋人だなんて……!


ただの、その、えっと……。
お友達だと、思います……。


 頬を染めながら言葉を吐き出している。


 祥子は苦笑しながら言った。


西園寺祥子

ごめんなさいね。
余計なことを訊いたかしら。
デリカシーに欠けていたわね。

天野勇二

いいんですよ。
柊さんとは瑠璃るりちゃんの尾行中』に知り合ったんです。
実は瑠璃ちゃん、よく柊さんのご自宅にお邪魔していまして。


 祥子は驚いて千紗を見つめた。


西園寺祥子

あら、そうなの……!
瑠璃ちゃん、ご迷惑をおかけしてなかったかしら?

柊千紗

そんなことありません。
むしろ私が勝手に『おやつ』をあげていて……。
よく遊ばせてもらっているんです。

天野勇二

先ほど祥子さんにお見せした写真……。
あれも柊さんの部屋で撮影したものなんです。
どうやら柊さんの部屋を気に入っているようで。
よく昼寝しているらしいですよ。


 祥子は嬉しそうに頷いた。


 改めて天野と千紗を眺める。


 クソ野郎と、若い女性と、裕福な老婆。


 1匹の猫が結んだ奇妙なえんだ。


西園寺祥子

なんだか不思議な気分ね。
私の知らないところで、瑠璃ちゃんがたくさんの人に愛されているなんて……。

……そうだ。
私たちも自己紹介をしないといけないわね。


 居住いずまいを正しながら言葉を続ける。


西園寺祥子

もうご存知のようだけど、私は西園寺祥子と申します。
こちらは弁護士の二階堂さん。
私の資産やお家のことを見ていただいているの。


 二階堂はぶすっとした表情を浮かべている。


 祥子は後方の小暮を見つめた。


西園寺祥子

彼は小暮達也こぐれたつやくん。
個人的に『ヘルパー』をお願いしているのよ。


 小暮が丁寧に頭を下げる。


 天野は納得しながらその姿を眺めた。


 祥子は車椅子に乗っていた。


 足が不自由なのだろう。


 だからこそ小暮を『個人ヘルパー』として雇っているのだ。


天野勇二

そうですか……。

しかし祥子さん。
あなたは実に良い趣味をしていますね。
正直、驚きましたよ。
ここまでの裸石ルースは見たことがありません。


 天野はさりげなく切り込んだ。


 祥子を探し出したのは、モリアーティが運んできた『宝石』のことを告げるため。


 そして、『宝石』を返却するためだ。


西園寺祥子

うふふ……。
褒めてくださってありがとう。
でも、ちょっと派手すぎないかしら?
若い子の好みじゃないでしょう?

天野勇二

そんなことありません。
部屋を美しくいろどるのは素晴らしいことです。
祥子さんのご趣味なんですか?

西園寺祥子

違うのよ。
これは亡くなった夫の趣味だったの。
夫は御徒町おかちまちで宝石店を営んでいてね。
たくさんの裸石ルースを集めて飾るのが好きだったのよ。
私は成金趣味なりきんしゅみみたいであまり好きじゃなかったんだけど……。


 どこか寂しげに言葉をつむぐ。


西園寺祥子

不思議なものね。
夫がいなくなったら、この宝石たちが愛おしくなって。
一度外したこともあったんだけど、寂しくなってまた元に戻したの。
なんだか、夫と過ごした思い出まで、消えてしまうような気がして……。


 天野は頷きながら祥子の顔を見つめた。


 寂しげな老婆の孤独が浮かんでいる。


 祥子は軽く息を吐いて言った。


西園寺祥子

……ごめんなさい。
湿っぽい話をしてしまったわね。
こんな話をしても仕方ないのに。

天野勇二

いえ……。
どれも素晴らしい品々です。
きっと御主人は祥子さんと過ごす日々を、あらゆる輝きで満たしたかったのでしょうね。

西園寺祥子

素敵なことを言ってくれるわね。
若いのに口が達者なんだから。

……それで、今日はどんなお話をするためにいらっしゃったの?
瑠璃ちゃんのことよね?


 祥子が尋ねる。


 天野は周囲を眺めながら言った。


天野勇二

ええ、そうなんですが……。
できれば俺と柊さんと祥子さん。
3人だけでお話できませんか?
少しデリケートな話になります。
二階堂さんや小暮さんを信用していないワケではないのですが……。

二階堂一成

お、おい。
ちょっと待ってくれ。
なぜ僕を遠ざける。
別に僕がいても構わないだろう?


 二階堂が不満気に眉根まゆねを寄せる。


 祥子はしばし思案すると、迷いなく言った。


西園寺祥子

構わないわ。
それなら3人でお庭に行きましょう。
二階堂さんと小暮くんは、ここで待っていてくださる?

二階堂一成

祥子さん……!?
何を言ってるんですか!?
僕も付き添いますよ!

西園寺祥子

大丈夫よ。
そんなに心配なさらないで。
さぁ、行きましょう。


 祥子に先導されて天野たちは庭に向かった。


 リビングにある大きな窓。


 そこから庭に出れるようになっているのだ。


 鮮やかな緑といくつかの花が植えられた上品な庭。


 小さなテーブルと2脚の椅子も置かれている。


 天野はそれらを眺めながら言った。


天野勇二

よく手入れされていますね。
部屋も素晴らしかったですが、ここも美しいですね。

西園寺祥子

ありがとう。
私もこの庭が好きなの。

そういえば、瑠璃ちゃんともここで出会ったのよ。
もう数年前のことになるかしら。
私がお茶を飲んでいたら、瑠璃ちゃんがひょっこり現れたの。
きっとお茶菓子クッキー匂いに釣られたのね。


 懐かしむように言葉を続ける。


西園寺祥子

瑠璃ちゃんは今よりずっと痩せ細っていて……。
毛並みもボロボロだったわ。
できれば家で飼いたかったんだけど、夫に反対されてしまってね。
夫は『猫アレルギー』だったから仕方ないんだけど。

天野勇二

それで面倒をみることになったんですね。
今は室内でも飼っているんですか?

西園寺祥子

もちろん。
一緒にベッドで寝たりもするのよ。
お散歩が好きみたいだから、昼間はどこかに出かけてしまうんだけど。


 天野はひとつ息を吐いた。


 本題を切り出すなら今だろう。


 千紗の顔を確かめながら告げる。


天野勇二

その瑠璃ちゃんのことで相談があります。
どうやら、彼女はあなたの物と思われる『宝石』を、いくつか持ち出しているようなんです。


 祥子は小首を傾げた。


西園寺祥子

『宝石』を……?
それはどういう意味かしら?

天野勇二

くわえて運んでいるのか。
それとも飲み込んでいるのか。
どちらかはわかりません。
ですが、俺と柊さんのもとに、こんな裸石ルースを持ってきたんですよ。


 天野はポケットからハンカチの包みを取り出した。


 祥子の前に差し出す。


 モリアーティがテラスに持ってきた『エメラルドキャッツアイ』だ。


 弾けるような翠緑すいりょくの輝きが飛び散る。


 祥子は仰天して尋ねた。


西園寺祥子

まぁ……!
これを、瑠璃ちゃんが?

天野勇二

そうです。
俺のところにはこれを。
柊さんには、これだけの『宝石』を運んでいました。


 スマホを取り出し写真を見せる。


 千紗の部屋にあった『裸石ルース』の数々だ。


 祥子は目を丸くしてそれを見つめた。


西園寺祥子

あらまぁ……!
ちょっとよく見せてくださる?
これは、確かに……。


 写真を拡大して凝視ぎょうし


 祥子は心底驚いたように言った。


西園寺祥子

……間違いない。
うちにあった『裸石ルース』だわ……。
この形、見覚えがあるもの。
どこかに落としたと思っていたんだけど……。


 天野はじっと祥子の横顔を見つめた。


 くどいようだが、このクソ野郎は瞳を見てある程度の心理を読んでしまう。


 『嘘』を見破るのは得意中の得意。


 祥子に『嘘』を吐いている気配は見られなかった。


天野勇二

にわかには信じ難い話だと思います。
猫が『裸石ルース』を持ち出すなんて聞いたことがありません。
しかし、これは真実なんです。
どうか信じていただけませんか。


 天野は真剣に語りかけた。


 そもそも猫が『宝石』を持ち出す可能性は低い。


 祥子にとっては「天野たちが宝石を盗み出した」と考えるほうが自然なのだ。


 いかに祥子を納得させるか。


 それが天野にとって最大の難関だったのだが、


西園寺祥子

……ごめんなさい。
これは私のせいだわ。
天野くんたちに迷惑をかけてしまうなんて……。


 祥子は悲しげに言った。


西園寺祥子

実はね、瑠璃ちゃんは私のネックレスやブレスレットに興味を持っていたの。
キラキラ光る宝石を『おもちゃ』だと思っていたのかもしれないわ。
よくこうやって、爪で宝石を転がして、楽しげに遊んでいたの。


 しょんぼりとした表情で言葉を続ける。


西園寺祥子

その姿があまりに可愛いから……。
止めることもなく眺めていたの。
まさか咥えて持ち出すこともあったなんて……。
本当にごめんなさい。
迷惑をかけてしまったわね。


 天野は安堵あんどの息を吐いた。


 ここまで徹底して『礼儀正しい若者』を演じ切ったからだろう。


 祥子は疑うこともなく、天野の話を信じている。


天野勇二

(モリアーティは『宝石』で遊んでいたのか……。それであれば口に咥えることも、飲み込むこともあったかもしれんな……)


 手のひらの『エメラルドキャッツアイ』を見つめる。


 なぜこれを天野の前に持ってきたのか。


 その理由は未だにわからない。


 しかし、『宝石』は西園寺家から持ち出されたとみて間違いなかった。


柊千紗

ほ、本当に……!
申し訳ございません……!


 千紗が勢いよく頭を下げた。


 震えながら言葉を続ける。


柊千紗

やっぱりあの『宝石』は、祥子さんのものだったんですね……。
大切なものなのに、本当にすみませんでした……!


 祥子は慌てたように言った。


西園寺祥子

待って。
迷惑をかけたのは私のほう。
あなたが謝ることじゃないわ。

柊千紗

いえ、でも……。

西園寺祥子

きっと不安だったでしょう?
ここまでの数ですもの。
それに返すために、こうして私を訪ねてくださったのよね?

柊千紗

はい……。
もちろんです。
どうにかして、お返ししなきゃと思って……。


 祥子は微笑みを浮かべながら、青ざめる千紗の顔を見上げた。


西園寺祥子

『宝石』を持ち出したのは瑠璃ちゃん。
あなたのせいじゃないわ。
それに私としては、こうして訪ねてくれただけで十分なの。

だから『宝石』を返す必要はありません。
もしよろしければ、そのままお持ちになって。


 天野は驚いて祥子を見つめた。


天野勇二

祥子さん……。
それは困りますよ。
お返しさせてください。

西園寺祥子

いいのよ。
私の家をご覧になったでしょう?
同じものはたくさんあるの。

それにね、いつまでも『宝石』を飾っていても、仕方ないとは思っていたのよ。
着飾きかざる機会なんてもう訪れない。
お墓に『宝石』を持って行くこともできないでしょう?

天野勇二

冗談はやめてください。
あなたはまだ若い。
着飾る機会なんて腐るほどあるでしょう。
『墓』なんて言葉も似合いませんよ。


 天野は本心で言った。


 祥子は呆れたように笑った。


西園寺祥子

天野くんのような男の子が『若い』だなんて。
お世辞でも嬉しいわ。

でもね、最近よく考えるの。
このまま長生きしたところで、いったい何の意味があるのかって……。
きっと夫に先立たれたせいかもしれないわね。


 祥子は庭を眺めた。


 紅茶の置かれた小さなテーブル。


 そこに2脚の椅子がある。


 それを見つめながら言葉を紡いだ。


西園寺祥子

私は子供に恵まれなくてね。
夫も典型的な仕事人間で、家に帰ることも少なかった。

でも、定年を迎えて仕事から離れたら、ここで一緒に紅茶を飲もうと約束していたの。
それだけが楽しみだった……。
ここに夫がいて、膝の上に瑠璃ちゃんを乗せて、穏やかな午後の時間を過ごす。
ずっと、そんな時間が訪れることを楽しみにしていたの……。


 寂しげに頬をゆるめる。


 天野は腕を組みながらその横顔を見つめた。


 祥子の頬に浮かんでいる孤独。


 それは若い天野にとって、理解することが難しい感情だ。


 天野はため息を吐きながら言った。


天野勇二

祥子さんのお考えはわかりました。
しかし、やはり『宝石』はお返しさせてください。
亡くなった御主人と祥子さんの『思い出』が詰まった品です。
俺たちが受け取れるものではありません。


 祥子はゆっくり首を横に振った。


 微笑みをたたえながらも、どこか険しい表情で天野を見上げている。


西園寺祥子

だめよ。
私は受け取らないわ。
あなたたちに差し上げたいの。
わかってくれる?


 天野は呆れたように言った。


天野勇二

いや、だから受け取れませんって……。
祥子さん、意地を張るのはやめましょう。

西園寺祥子

意地だなんて。
そんなもの張ってないわよ。
私は差し上げたいの。

天野勇二

こんなことで押し問答もんどうしたくはないんです。
無理やり置いて帰りますよ。

西園寺祥子

そんなのいけないわ。
突き返されても、私は絶対に受け取りません。
もしそんなことしたら、二階堂さんに警察を呼んでいただきますからね。


 天野はげんなりと顔を歪めた。


 まさか祥子がここまでの頑固者がんこものだったとは。


 通報されるのは困る。


 警察沙汰ざたにしたくないからこそ、わざわざ家を探し出したのに。


 千紗も困り顔を浮かべてオロオロしている。


柊千紗

天野くん……。
どうしましょう?
まだサチコの『誤飲』のことも相談してないのに……。


 小声で天野に尋ねる。


 天野は小さく首を横に振った。


天野勇二

まったく頑固者のばあさんだ……。
こんな展開は想定していなかったな。

柊千紗

どうすればいいんでしょう?
いっそのこと、『宝石』を受け取ったほうが良いのでしょうか……?

天野勇二

いや、それはダメだ。
日を改めよう。
時間をかけて説得すれば、頑固なばあさんの態度も変わるはずさ。

柊千紗

そ、そうですね……。
私もそれがいいと思います……。


 千紗が何度も頷く。


 天野はじっと祥子を見つめた。


 おだやかな微笑みをたたえる老婆。


 余裕たっぷりの表情だ。


 天野と千紗が何を言ったとしても、自らの意思を曲げることはないだろう。


 天野は心の中で呟いた。



天野勇二

(……妙だな。何か『違和感』があるぞ)



 舌打ちしながら周囲を眺める。


 困惑して肩を落としている千紗。


 よく手入れのされた庭。


 裸石ルースの飾られた豪邸。


 リビングの窓を見れば、不機嫌そのものといった表情を浮かべる二階堂の姿がある。


 隣には『個人ヘルパー』の小暮。


 紅茶のポットを持ち、どこか不安気に祥子の様子を眺めている。


 天野は腕組みをしながら呟いた。



天野勇二

(何かがおかしい。何かが俺の認識と異なっていやがる。この『違和感』の正体はなんだ……?)




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つばこ

こっそり教えちゃいますが、今回のエピソードは『ミステリー』です。
『日常の謎』ってやつに近いのかな。
皆さまは『謎』や『違和感』にお気づきになりましたでしょうか。
 
さぁいったい天野くんはどんな違和感を覚えたのか!?
とっても可愛いモリアーティはどんな『事件』を運んできたのか!?
謎解きがメインの『パズラー』なエピソードではありませんが、色々想像していただけたら嬉しいです!
 
そんなこんなで『恩返し編』も後半戦に突入!
まだまだめちゃんこ可愛いモリアーティのイラストが登場しますよ!
猫スキーの皆さまご期待ください!
いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!(๑•̀ㅂ•́)و✧

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コメント 18件

  • 子熊

    軟禁されてる?監視されてる?
    みたいな祥子さんからのSOSかなぁ

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  • みょん

    弁護士とヘルパーにも宝石を運んでるのかな?

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  • mugi

    監視されてる?

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  • ホゲ

    小暮は千紗をしってるような?

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  • あの弁護士が宝石を狙ってて盗られたくないものは天野たちなら安心そうと思いそのまま預けるという名目であげますと言ってるのかな?

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