天野勇二

つまり、これはお前の『復讐劇』だったんだ。

『検査システム』の先に『凶器』を届けること。
それによる『傷害事件』が発生すること。


この両方を実現させることが、お前の『目的』だったのさ。



 病室に気障キザったらしい声が轟く。


 それを合図にしたかのように、今永の身体から全ての力が抜け落ちた。


 握っていた『ナースコール』のスイッチがこぼれ落ち、乾いた音が鳴る。



天野勇二

もう理解しているとは思うが……。
お前と駒元の会話は録音させてもらった。
諦めて警察に自首しやがれ。
そして、石田に着せた『冤罪』を取り払ってやるんだな。



 今永は力なく石田の顔を見上げた。


 ボロボロ泣きじゃくる哀れな青年。


 ずっと駒元の顔だけを見つめている。



今永春馬

この部屋を『盗聴』していたんですか……。
そんなの、まったく気づきませんでしたよ……。


 今永がぼんやり尋ねる。


今永春馬

どこまで僕のことを、調べたんですか……?

当時の『同期』に話を聞いたなら、僕が会社に訴えたことも、全て把握しているんですよね?

なぜ僕が会社を追われたのか。
どんな『検査システムの不備』を追求したのか……。

それもご存知なんですか?


 天野は偉そうに頷いた。


天野勇二

もちろんさ。
今回の事件が発生し、会社はかなり慌てふためいていたぜ。
涼太に30万円の口止め料ボーナスを用意したほどだ。
この時期にトラブルが露呈するワケにはいかない。
そのように考えたのだろう。

今永春馬

そんな大金を……。
あの会社ならやりかねませんね。
『検査システムの不備』が知れ渡れば、東京オリンピックの取り引きが破綻しますから……。


 今永は大きく息を吐いた。


 すがるような目つきで天野を見上げる。


今永春馬

天野さん……。
どうかお願いします。
僕はあなたの言う通り、警察に自首します。
だからせめて、『検査システムの不備』を世間に訴えていただけませんか?

天野勇二

世間に訴えろだと?
それはどういう意味だ。

今永春馬

あの『検査システム』は危険なんです。
会社は精度99%とうたっていますが、それは真実じゃないんですよ。
システムの肝である『AI』が未完成なんです。
実際の精度は95%しかありません。

たった『5%』と思うかもしれませんが、これは致命的な低さです。
100万人の来場者があれば、5万人も見落としてしまうことになるんです。


 天野は感心したように今永を見つめた。


天野勇二

(ほう……。なかなか優秀な男だ。ここで『告発』するのか)



 『自作自演』の計画は暴かれた。


 その『動機』も掴まれている。


 おまけに『犯人役』である石田まで確保されている。


 現時点の会話も録音されており、警察に『証拠』として提出されてしまう。


 もう逃げ切ることは不可能。


 だからこそ、今永はこの場面で『検査システムの不備』を訴え始めたのだ。



天野勇二

そんな話は信じられんな。
お前は不当解雇された会社に恨みを持っていた。
ただそれだけのことだろう?
身勝手な『復讐劇』にありもしない『不備』を持ち出すなよ。


 挑発するようにあおる。


 今永は石田を指さしながら叫んだ。


今永春馬

『不備』はあるんですよ!
証拠だって持ってます!
会社はそれを公開せず、握り潰したんですよ!

事実、彼は『検査システム』を突破して、『凶器』を握手会ブースに持ち込んだじゃありませんか!?

天野勇二

それはどうかな?
お前は石田が『犯人役』として訪れることを知っていた。
石田が通る時だけ、『検査システム』が作動しないように細工する。
『現場責任者』なら簡単なことだぜ。

今永春馬

で、でも……!
僕は彼の顔を知らなかったんです!
握手会ブースで初めて会ったんですよ!?
そんな細工は不可能です!

天野勇二

それも嘘だな。
お前は駒元と石田の『密会』を見ていたじゃないか。

場所は御茶ノ水おちゃのみず喫茶店コメダ
お前は駒元たちのテーブルの近くにいた。
そのことも把握しているぞ。

今永春馬

なっ……!?
そ、そんなことは……!


 今永が震えながら駒元を見る。


 慌てて首を横に振る駒元。


 天野はヘラヘラ笑いながら天井を指さした。


天野勇二

残念だが、小娘とキモオタによる『密会』の証拠は存在するのさ。
喫茶店の『監視カメラ』だよ。

俺様は喫茶店と交渉し、当日の映像を見せてもらった。
そこにしっかり映っていたぜ。
哀れなファンの手を握りながら、甘い誘いをささやく性根の腐ったアイドル。
それを観察しているお前の姿もな。


 駒元が青ざめながら叫んだ。


駒元七珠

そ、それはデタラメです!
あの店に『監視カメラ』なんかありません!
それが設置されてない店を選んだんですから!

天野勇二

ほう?
ならば見落としたな?
監視カメラはあるんだよ。
俺様は店長に『週刊誌に売れば良い金になるぞ』と進言してやったよ。


 駒元の顔が絶望に染まった。


駒元七珠

う、嘘……!?
嘘ですよね!?
そんなこと言ってませんよね!?

天野勇二

全て真実さ。
何なら教えてやろうか?

当日のお前たちの服装。
何を注文したのか。
滞在時間はどれだけか。


全て細かく解説できるぜ。
この会話は警察に提出される。
きっと警察も喜ぶことだろう。


 極悪の笑みを浮かべながら告げる。


 駒元は顔を覆い、その場に「ぺたん」と崩れ落ちた。


石田清史郎

あ、あっ……。
ななみったん……。
だ、大丈夫……?


 石田が思わず手を伸ばす。


 天野はそれを制しながら言った。


天野勇二

今永よ。
同期は心配していたぜ。
お前がいつか凶行に走るのではないかと、ずっと危惧きぐしていたようだ。
何せ当時のお前は、会社の役員連中を脅していたからな。


 今永が苦しげに首を横に振る。


今永春馬

脅していたなんて……。
それは誤解です。
僕はあんな『欠陥システム』を東京オリンピックに導入すべきじゃないと、強く訴えたんです。

最低でも精度の低さを公開すべきだと。
それが前提のセキュリティ体制を構築すべきだと……!

天野勇二

だが、全て黙殺された。
それも当然だな。
恐ろしいほどの利権が絡んだビジネスだ。
政治家との癒着ゆちゃくも存在したはず。
今さら『欠陥品でした』と公言することはできない。

守るべきは来場者の安全ではなく企業の利益。
役員たちにはそう言われたのだろう?

今永春馬

………!



 今永は何かに気づいたように天野の顔を見上げた。


 もしかすると、天野は誘っているのではないか。


 今永が『告発』するように、会話を誘導しているのではないか。



今永春馬

そ、そうなんですよ……!
役員は不備を改善するのではなく、隠蔽いんぺいすることを選んだんです!

それが絶対に許せなかった……!
たった1人でも『凶器』を持った襲撃犯テロリストを見逃せば、大勢の人たちが傷つくことになるのに!


 語気を強めて叫ぶ。


今永春馬

僕は何度も訴えたんです!
社長にだって直談判しました!

その結果、アイツらがどうしたのかご存知ですか!?
『金』を渡してきたんですよ!
それで黙ってろと、余計なことを言うなと、僕の口を塞ごうとしたんです!

天野勇二

お前はそれを拒否したのか。
金ごときで不正の事実を黙殺することはできない。
それで会社に解雇されたんだな?


 今永が悔しげに頷く。


今永春馬

ええ、そうです……。
会社を追われた後も、何度も役員に訴えました。
でも、何ひとつ変えることは、できなかった……。

天野勇二

ところが、最後の『チャンス』が訪れてしまった。
幕張メッセでの握手会。
そして駒元との『自作自演』だ。

計画を持ちかけたのは……。
お前だな?
どうやって駒元を計画に乗せたんだ?


 今永はチラリと駒元を見つめた。


 軽く息を吐く。


 覚悟を決めたように呟いた。


今永春馬

……そうです。
僕が提案しました。
彼女を口車に乗せたんです。
彼女のことを騙したんですよ。


 駒元が驚愕の表情で今永を見つめた。


 何か告げようと口を開く。


 今永はそれを制するように言った。


今永春馬

彼女には『動機』のことを伝えていません。
怒るのも当然のことです。

僕が言ったのは、ファンをそそのかして事件性のない『襲撃事件』を演出しよう。
間違いなく『ドラマ出演』のいい宣伝になる……。
それだけなんですよ。

駒元七珠

えっ、えぇ……?
そ、それは……!


 駒元が戸惑いの声を漏らす。


 困惑の表情だ。


 天野はその横顔を眺めながら言った。


天野勇二

それは見事に騙しきったものだ。
お前は初めから『傷害事件』を引き起こすつもりだったのによ。

握手会での襲撃を『傷害事件』にするためには、明確な『被害者』が存在しなければならない。
お前はそれを演じきろうとした。
初めから石田の襲撃を受け、血を流すことまで考えていたんだ。


 石田を指さしながら言葉を続ける。


天野勇二

だが、こんなキモオタが『鉈』でお前を傷つけることは困難。
間違いなく躊躇ちゅうちょしただろう。
だから『ナイフ』を用意していたんだよな?

石田と揉み合いになり、自らの身体を『ナイフ』で軽く傷つける。
それを『鉈による傷』だと偽装する計画だった。


 今永は深く息を吐いた。


 そこまで見破ってしまうのか。


 頭の中はそんな感情でいっぱいだ。


天野勇二

ところが、涼太という優秀な『剥がし』が素早く動き、『鉈』を蹴り飛ばしてしまった。

最悪ともいえる邪魔者の登場。
これでは『傷害罪』も『暴行罪』も発生しない。
不起訴になる可能性が高く、事件そのものが揉み消されてしまう。
お前は焦ったことだろう。


 偉そうに言葉を叩きつける。


天野勇二

だからこそ、お前は『ナイフ』を自らの胸に突き刺した。

リスクの高い行動を選んだものだ。
『刺し傷』の角度や深さを調べれば、簡単に『自作自演』の犯行であることは発覚する。
それでも襲撃を『傷害事件』に発展させるためには、その行動を選ぶしかなかった……。

お前はそれを認めるな?
警察に自首すると言うならば、この場であれが『自作自演』だったと、お前の言葉で告げてくれよ。


 鋭い瞳で睨みつける。


 全てを見透かすような瞳。


 今永は震えながらそれを見つめた。


 この男に逆らうことはできない。


 今永はそう感じ、青ざめながら言葉を吐いた。


今永春馬

……そうです。
僕は自分で『ナイフ』を刺したんです……。

どうしても、最後の『チャンス』を逃したくなかった……。
『自作自演』を利用して、『検査システムの不備』を世間に露呈させたかったんです……。


 天野は軽く息を吐いた。


 遠くでパトカーのサイレンが鳴っている。


 もうすぐ警察がやって来る。


 『自白』の言質げんちは手に入れた。


 あとは今永を突き出すだけだ。


天野勇二

これで十分だ。
涼太よ、今永を見張っていろ。

佐伯涼太

うん……。
わかったよ。


 涼太が廊下からひょっこり顔を出した。


 サポート役としてスタンバイしていたのだ。


 天野は最後に今永に告げた。


天野勇二

いいか今永。
お前がなぜ、そこまでの強い『動機』を抱いたのか。
一種の『正義感』ともいえる感情に従ったのか。
その背景に興味はない。


 殺気を込めながら言葉を吐き出す。


天野勇二

だが、これだけは言わせてもらう。
世間はお前の『告発』なんかに耳を貸さねぇよ。
お前の仕出かした行為は『テロ』そのものだ。
無関係な人間を巻き込み、無実の人間に罪を着せる。

お前は『凶器』を持ち込んで暴れ回るクズと同じ生物なのさ。

どんな大義名分があってもその事実は変わらない。
刑務所で愚かだった己の行為を悔やみやがれ。


 今永の顔から色が消えた。


 瞳を押さえ、震える唇を噛み締める


 天野はそれを眺めながら駒元に声をかけた。


天野勇二

駒元、そろそろ立て。
いつまでそんな安い演技をしているんだ?
お前と話したいヤツが待っているぞ。


 駒元はしゃがみこんだままだ。


 現実から逃避するように顔を覆っている。


 天野は仕方なく髪の毛を掴み、乱暴に廊下へ引きずり出した。


駒元七珠

ひ、ひぃぃ……!
痛いです……!
離してぇ……!


 暴れる駒元を軽く無視。


 1人の女性の前に放り投げる。


 駒元は怯えながら顔を上げた。


駒元七珠

……あ、あ、あぁ……!
か、川口さん……!


 廊下には川口の姿があった。


 当然ながら、ここまでの会話を全て聞いている。


 川口は冷たく駒元を見下ろした。


川口由紀恵

駒元さん……。
残念です。
あなたがこんな事件に加担していたなんて。
今でも信じられません。

駒元七珠

ち、違うんです……!
違うんですよ……!
わ、私は、今永さんに、騙されて……!

川口由紀恵

言い訳は聞きたくありません。
あなたは1人の『ファン』を破滅に追い込もうとしたんです。
それがどれだけ許されない行為なのか……。
何ひとつ理解していませんね。
そのことが本当に残念です。



 駒元は涙目で石田を見上げた。


 石田は泣きながら駒元を見下ろしている。


 涙と鼻水が止まらない。


 駒元はその脚にすがりついた。



駒元七珠

お、お願い!
許してせいちゃん……!

私は『チャンス』を逃したくなかった!
ドラマ出演は、やっと掴んだ、初めてで、最後の『チャンス』になるかもしれなかった……!
どうしても、世間の注目を集めたかったの!

せいちゃんなら、わかってくれるよね……!?



 神にでもすがるような声だ。


 石田は大きく頷いた。


 涙を拭い。


 鼻水をすすり。


 震える声を吐き出す。



石田清史郎

……そんなの……!
言われなくても……!
ぜんぶわかってるよぉ……!



 また瞳から涙が決壊する。



石田清史郎

ごめんよぉ……!
本当にごめんよ……!
僕のせいで、ななみったんのドラマ出演が、台無しになったなんてぇ……!



 駒元は驚いて石田を見つめた。


 思わず真顔になる。


 石田は嗚咽おえつをあげながら膝をついた。


 額を床に擦りつける。


 土下座してび始めた。



石田清史郎

ななみったんは、ずっと、女優になるために、頑張ってたよねぇ……!
それなのに、僕がドジったから……!
こんなことになって……!
本当に、本当にごめんよぉ……!



 駒元は呆然と石田の泣き土下座を見つめた。


 泣きじゃくる古参のキモオタ。


 まるで見当違いのことを詫びている。


 駒元は思わず呟いた。



駒元七珠

……えっ?
なに言ってるの?
今はその話、してないんだけど……。



 石田が勢いよく顔を上げた。


 マネージャーである川口を見上げる。



石田清史郎

マネージャーさん……!
どうか、ななみったんのことを、許してあげてください……!
ずっと、チャンスの順番が回って来なかったから、ほんのちょっとだけ、魔が差しちゃったんですよぉ……!

僕は逮捕されても構いません……!
だから、ななみったんのことを、クビにしないであげてくださいぃ……!

川口由紀恵

え、えぇ……?
そ、そのぉ……。
いやでも……。



 川口が困り顔で天野を見る。


 天野は冷めた表情で言った。


天野勇二

なんだ川口よ。
そんな顔で俺様を見るな。
これ以上『妄想ゲス野郎』の面倒を見るつもりはない。
何も言うことはないぞ。

川口由紀恵

はぁ……。
まぁ、そうですよねぇ……。



 困ったように川口が石田を見下ろす。


 石田は涙を拭い、また叫んだ。



石田清史郎

どうかお願いします……!
本当のななみったんは、こんな悪い女の子じゃないんですよぉ!

僕は本当のななみったんを知ってます!
ななみったんは優しくて、誰よりも素晴らしくて、性格の良い女の子なんです!
だから、どうかぁ……!



 嗚咽おえつをあげながら懇願。


 駒元はそれを見てゆっくり立ち上がった。


 静かに石田を見下ろす。


 そして言った。



駒元七珠

本当にさっきから、何を言ってるの……?
『本当の私を知ってる』って、どうしてそんなこと言えるの?
私の上辺だけしか見てなかったくせに……。
せいちゃんが、本当の私を知ってる訳ないでしょ……。

石田清史郎

……え?
ど、どうしたの?


 石田は不安げに駒元を見上げた。


 駒元の言葉にトゲがある。


 こんな冷たい言葉、『ななみったん』から聞いたことはない。


石田清史郎

ぼ、僕は知ってるよ……。
本当のななみったんを知ってる。
だって、何年も、ななみったんだけをしてたんだよ……。



 駒元は大きく首を横に振った。


 何度も何度も振った。


 吐き捨てるように告げる。



駒元七珠

じゃあ教えてあげる。
私はね、ずっとアイドルとしての『ななみったん』を演じてたの。
本当はね、せいちゃんなんか大嫌いだった。

……ううん。
せいちゃんだけじゃない。
ファンの人がみんな嫌いだった。
みんなキモいと思ってた。

石田清史郎

えっ?
そ、そんな……。
う、嘘でしょ?

駒元七珠

嘘じゃないよ。
ファンと触れ合うイベントなんか大嫌いだった。
特に『握手会』が一番嫌いだったの。

せいちゃんだって、SNSぐらい見たことあるでしょ?
私の握手会の評判、最悪じゃん。
そりゃそうだよ。
私はやる気なんかなかった。
キモオタと握手するのが、気持ち悪くてたまらなかったもの。


 石田の顔から色が消えていく。


 それを見て駒元は満面の笑みを浮かべた。


 アイドルの『ななみったん』としての笑顔だ。


駒元七珠

だから今永さんに『自作自演』の計画を提案したんだ。

簡単に騙せるバカなキモオタがいる。
うまく操れば『ドラマ出演』の宣伝になるし、大嫌いな『握手会』を休んでも許されるようになる。
協力してほしいってお願いしたの。

まさに一石二鳥。
七珠って頭いいでしょ?
せいちゃんは、まんまと騙されたんだよ。
それなのに私をかばったりして……。
本当にバカなんだね。


 石田は首を横に振りながら駒元を見上げた。


 大粒の透明な涙がぽろぽろ落ちる。


石田清史郎

う、嘘だぁ……。
ど、どうして、そんな嘘を……!

駒元七珠

だから嘘じゃないんだってば。
首謀者しゅぼうしゃは私だったの。
今永さんがあんなことを考えてなければ、うまくいったはずなのにさ。

……いや、それも違うかな。


 苦笑しながら石田を眺める。


駒元七珠

あの時、せいちゃんが握手会ブースから逃げなければ……。
ちゃんと警察に捕まっていれば……。
ここまで大きな事件には、ならなかったかもしれないね。

ねぇ、どうして逃げたの?
なんで自首しなかったの?
ちゃんと逮捕されろって言ったじゃん。

石田清史郎

そ、それは……。
『ナイフ』が出てきて……。
ぼ、僕も、怖くなっちゃって……。

駒元七珠

言い訳なんか聞きたくないな。
本当に使えないね。
がっかりだよ。
キモいのは顔だけにしてほしかったなぁ。


 呆れたように肩をすくめる。


 どこか吹っ切れた表情で川口を見る。


駒元七珠

……そういうことです。
もういいですよ。
これで私のキャリアは終わりですから。
とっととクビにでもしてください。

川口由紀恵

駒元さん……!
あなたって人は……!


 川口が憤怒ふんぬの表情を浮かべた。


 思わず手が伸びる。


 平手が駒元の頬に飛んでいく。


 駒元は瞬きひとつせず、その平手を睨みつけている。


 頬に直撃する直前、



天野勇二

……やめておけ。
お前が手を上げると、あとで面倒なことになるぜ。



 天野が川口の手首を掴み、その動きを静止させた。


 駒元が落胆して呟く。


駒元七珠

ふぅん……。
『伝説のSP』って、顔に似合わず紳士なんですね。
あなたがいなければ、もう少し傷は浅かったかもしれないのに。
本当に残念です。

天野勇二

ああ、俺様も残念だよ。
その見事な『演技』をテレビで拝めなくなることがな。


 駒元は嫌そうに顔を歪めた。


 天野たちに背を背け、廊下に置かれた椅子に腰掛ける。


 それから警察が到着するまで。


 彼女は一切口を開こうとしなかった。



石田清史郎

……ひっぐ……。
そんな……。
どうして……。
酷いよななみったん……。



 廊下には石田の哀れな泣き声だけが響いていた。




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つばこ

ななみったん「もう握手会に参加したくないンゴ…。ドラマの宣伝もしたいンゴ…。…そうや! バカなファンを使って『自作自演』をすればええんや! 今永さん協力してクレメンス~」
今永さん「そんなのいかんでしょ。……いや、待てよ。これを利用すれば企業に復讐できるやんか! ナイフを自分にブスリやで~」
ななみったん「ファッ!? なんでそこまでするんや!?」
スポンサー「ドラマ出演はナシでオナシャス」
ななみったん「おかしい…こんなことは許されない…(´;ω;`)ウッ…」
 
 
……とまぁ、こんな感じの裏があったワケですね。
汚い。ななみったん汚い。
まぁ、ななみったんの言ってることが真実であれば……の話ですけどね( ´艸`)ムププ
 
そんなこんなで『握手会編』も次回の後日談でラストです!
いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!!!( *゚ェ゚)*_ _))ペコリン

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コメント 14件

  • GOERIN

    つばこさんのおかげで監視カメラのブラフに即気付ける賢い男になりました

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  • カボルイス世ハピ天クソ契約

    きちんと最後は登場人物一人ひとりの気持ちに沿って進める辺り、やはり天クソ面白い。
    今永…天野君の誘導にも気が付いたり、涼太の登場によるアクシデントにもそつなく対応して計画を遂行したり、ある程度高いスペックはあったのに…いや残念だ。
    たしかに同期に「いつか凶行に走るのではないか?」と思わせる危うさというか、そういったものを感じさせるな…

    天野君…クソ野郎なのにそこをビシッと指摘出来るのやっぱすごいわ。

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  • まこと

    作者が本編の空気感を塗り替えていく暴挙www

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  • べっちん

    気持ちいいくらいに悪女を演じてみせた、ななみったん。たぶんやけど、そういうことなんだよね?
    最初からアイドルではなく、女優さんを目指して頑張ってたら良かったのにね。

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  • 今永さん協力してクレメンス〜wwwwww

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