私は少し驚いたんですが、涼太くんはマジで結衣ちゃんを口説きませんでしたね。
ランチには誘いましたけど、あんなもの口説いたうちに入りませんよ。(入らない……よね?)
つまり涼太くんにとって『JK』とはガチで「恋愛対象外」なのです。
意外にもあのクソ下衆パコ野郎、「JKには手を出さないぞだって僕ちゃんロリコンじゃないもん」という信念を持っていたんですね。(だからどうしたって話ですけども)
ではでは、いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!(ㆁωㆁ*)
湘南の
高く昇った太陽が海辺ではしゃぐ海水浴客たちを照らしている。
小麦色の男女の群れ。
色とりどりの水着。
踊るように浮かび上がるビーチボール。
波間ではいくつもの
河瀬結衣
…………
そんな中、河瀬は砂浜で涼太の姿を眺めていた。
頭の上には涼太が用意したパラソル。
手には涼太が買ってくれたスポーツドリンク。
そして涼太が乾かしてくれた制服を着直している。
佐伯涼太
ふぅ……。
暑いなぁ……。
涼太はずっと砂浜を清掃していた。
スコップや
Tシャツは汗でびっしょり。
海水浴客の合間を
海で遊んだりはしないのだろうか。
河瀬が小首を傾げていると、
天野勇二
暑くないか?
『かき氷』を買ってきた。
食えよ。
天野がヘラヘラ笑いながら声をかけた。
どこかの海の家で購入した『みかん味のかき氷』を持っている。
河瀬結衣
……いらないです。
河瀬は「ぷいっ」と顔を背けた。
きっと天野に「なんてくだらねぇ女だ!」と笑い飛ばされたことが影響しているのだろう。
天野への『好感度』が地の底まで落ちていた。
天野勇二
おいおい……。
いい加減、機嫌を直せよ。
別に君を小馬鹿にしたワケじゃない。
悪気もなかったんだ。
ただ、君があまりに
許してくれよ。
河瀬は「ギロリ」と天野を睨んだ。
ちっとも謝っているようには聞こえない。
天野は諦めたように言った。
天野勇二
まったく強情な小娘だ。
ならば、お
河瀬結衣
いえ、結構です。
天野勇二
遠慮しなくていいんだぜ。
俺様はポルシェで来ているんだ。
きっと『元カレ』の車より立派だぞ。
河瀬結衣
……そういう問題じゃないです。
天野勇二
それなら家は近いのか?
君は近所に住んでいるのか?
河瀬結衣
そんなこと、あなたに教える必要ありません。
顔を背けながら告げる。
実のところ、河瀬の家は遠い。
送ってくれるのはありがたい。
しかし今の河瀬にとって「車中に男と2人きり」というのは、この世で最も嫌悪すべきシチュエーション。
どんなに親切な男でもお断りだ。
天野勇二
あっはっはっ。
言うじゃないか。
それだけ言えれば十分だ。
なぜか天野は嬉しそうに笑っている。
河瀬は困ったようにその顔を見上げた。
この『クソ野郎』は何を考えているのか。
いまいち感情が読めない。
友人を
とんでもなく口が悪い。
今は優しげに笑っているが、いきなり
そう考えると河瀬は落ち着かなかった。
天野勇二
しかし……。
アイツはまだ続けるのか……。
これだけ暑いのによ……。
額の汗を
もうすぐ昼時だ。
それでも涼太は砂浜の清掃をやめようとしない。
河瀬結衣
あのぉ……。
天野さんは、掃除をしないんですか?
河瀬が天野に尋ねた。
天野勇二
あれは涼太の『趣味』なんだ。
俺が関わることじゃない。
河瀬結衣
『趣味』ですか……。
お2人は東京の大学生なんですよね?
砂浜を掃除する『ボランティア活動』をしてるんですか?
天野は小さく首を横に振った。
天野勇二
そんな立派なものじゃない。
あれは『
河瀬結衣
……ざんげ?
天野勇二
そうだ。
きっと今のアイツは、心の中で
河瀬は困惑して涼太を見つめた。
『
佐伯涼太
……ふふっ……。
涼太は時折、独り言のように何かを呟いている。
少し顔がにやけている。
何かを『
河瀬結衣
それは……。
あれですか……?
河瀬は少々迷ったが、思い切って尋ねた。
河瀬結衣
涼太さんの『
ここで、亡くなったからですか……?
天野は驚いて河瀬を見た。
天野勇二
……ほう。
アイツから聞いたのか?
河瀬結衣
いや、詳しくは聞いてません。
だけど……。
さっき、それっぽいことを言ってたから……。
天野は空を見上げた。
雲ひとつない青空。
ひとつため息を吐く。
天野勇二
それは俺が話すことじゃない。
詳細を知りたいなら涼太に訊け。
だが、君が聞いて楽しめる話ではない。
涼太も君に話すとは思わんな。
河瀬結衣
そうですか……。
天野勇二
そんなことより家に電話しなくてもいいのか?
君は財布やスマホを持っていない。
家に連絡なんてしていないのだろう?
家族が心配しているんじゃないか?
河瀬の血の気が一気に引いた。
真っ青な顔で立ち上がる。
河瀬結衣
ああああっ!
そうだった……!
ど、どうしよう……!
あ、あの、スマホを貸していただけませんか!?
天野勇二
ああ、構わないぜ。
河瀬結衣
ありがとうございます!
天野からスマホを受け取り、すぐさま家に電話する。
受話器の向こうから響く母親の怒鳴り声。
やはりとんでもなく怒っている。
河瀬結衣
ご、ごめんね。
色々あって……。
話せば長くなるんだけど、ほんと色々あって……!
ああもうそんなに怒鳴らないでよぉ……!
涙目で
天野はその光景を楽しげに眺めた。
河瀬は10分ほど謝り続けると、大きなため息を吐きながら電話を切った。
河瀬結衣
……すみません。
ありがとうございました……。
お母さんが、迎えに来てくれるそうです……。
天野勇二
それは良かった。
君は母親に愛されているな。
河瀬結衣
愛されて……?
そんなことありませんよ。
すんごく怒ってました。
無断外泊なんてありえないって……。
帰ったら『ゲンコツ』だって……!
天野勇二
あっはっはっ。
だから愛されているのさ。
涙目でスマホを返す。
河瀬結衣
あの、お母さんが「スマホを貸してくれた人に謝りたい」って言うんです……。
事情も聞きたいって……。
きっと迷惑だと思うので、もう行きますね。
天野勇二
そうしてくれると助かるな。
妙な誤解は避けたい。
ぺこぺこと頭を下げる河瀬を見て、涼太がやって来た。
佐伯涼太
……あれ?
河瀬結衣
は、はい……。
佐伯涼太
寂しいなぁ。
ランチでも一緒に食べようよ。
ちょうど掃除も終わったしさ。
河瀬結衣
そ、それが、お母さんが来てくれるそうなので……。
たどたどしく説明する。
涼太は呆れたように頷いた。
佐伯涼太
そっかぁ。
別に僕はお母さんに挨拶してもいいけどなぁ。
河瀬結衣
いやいやいや……!
そこまで迷惑、かけられません……!
佐伯涼太
そう?
気にしなくていいのに。
でもまぁ仕方ないか。
またどこかで会えたらいいね。
涼太が爽やかに微笑む。
すらりと伸びた手を差し出した。
河瀬が頬を染めながらその手を握る。
そして「ぺこり」と頭を下げ、その場を後にした。
佐伯涼太
ふふっ……。
ウブい子だったねぇ。
あんなに慌てて帰らなくてもいいのに。
苦笑しながら河瀬の背中を見送る。
佐伯涼太
……あれ?
涼太が砂浜にしゃがみこんだ。
ひとつの『手帳』らしきものを拾い上げる。
佐伯涼太
これ見てよ。
『生徒手帳』だ。
結衣ちゃんのかな?
鎌倉にある女子校のものだ。
中を確かめる。
持ち主の名前は『河瀬結衣』。
佐伯涼太
ありゃりゃ。
結衣ちゃんの忘れ物だ。
学校名はわかるけど、住所や連絡先は書いてないね。
天野勇二
もう濡れちまってボロボロじゃないか。
どうせ捨てるだろ。
砂浜のゴミと一緒に処分しちまえよ。
佐伯涼太
いやいや。
それは可哀想でしょ。
だって顔写真もあるんだよ。
悪用されたら大変じゃん。
手帳にはあどけない河瀬の顔がある。
佐伯涼太
実家に電話してみたら?
勇二のスマホに履歴が残ってるでしょ。
天野は嫌そうに顔を歪めた。
天野勇二
実家に電話しろと言うのか?
面倒だな……。
厄介事になる予感しかしない。
交番に届けちまえ。
俺は警察が嫌いだから、お前がやってくれ。
佐伯涼太
あはは。
そうだね。
勇二は
涼太は生徒手帳をポケットにねじ込んだ。
天野の隣に座り、水平線を眺める。
しばらく黙ってその場に
周囲に響くのは海水浴客の歓声。
寄せては返す波の音。
髪を撫でる湿った潮風の音。
遠くのスピーカーから流れる、賑やかな定番のサマーソング。
しかし、涼太の耳にはどんな音も届いていないようだった。
黙って水平線を眺めている。
高く昇った陽が傾き、海の彼方へ沈んでいくまで、2人はそこに佇んでいた。
佐伯涼太
……今日は、来てくれてありがとう。
みかん色の夕陽を浴びながら、涼太が笑った。
佐伯涼太
忙しいだろうに悪かったね。
きっと綾瀬さんも喜んでると思うよ。
天野も軽やかに笑った。
天野勇二
いいのさ。
ヒマだったからな。
お前は、よくここに来ているのか?
佐伯涼太
僕も忙しいからね。
医学生の勇二とは違って、ほとんどが不真面目な理由だけど。
ヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべる。
天野はその横顔を睨みつけた。
天野勇二
(……涼太め。つまらん『嘘』を
天野は小さく息を吐いた。
周囲の砂浜を眺める。
天野勇二
(これは『
この砂浜一帯だけ異様に綺麗だ。
何度も汚れた砂を掘り返し、取り替えた形跡まで見受けられる。
普段から清掃していなければ、ここまで綺麗になることはない。
天野勇二
(ずっと『ナンパ』や『合コン』ばかりしていると思ったが……。まだ綾瀬のことを『過去』にはできていないんだな……)
涼太は沈みゆく夕陽を見つめている。
その瞳には、何が映っているのだろう。
佐伯涼太
涼太がぽつりと呟いた。
佐伯涼太
呟きが潮風に乗って飛ぶ。
水平線の彼方まで運ばれていく。
天野は聴こえなかったフリをした。
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私は少し驚いたんですが、涼太くんはマジで結衣ちゃんを口説きませんでしたね。
ランチには誘いましたけど、あんなもの口説いたうちに入りませんよ。(入らない……よね?)
つまり涼太くんにとって『JK』とはガチで「恋愛対象外」なのです。
意外にもあのクソ下衆パコ野郎、「JKには手を出さないぞだって僕ちゃんロリコンじゃないもん」という信念を持っていたんですね。(だからどうしたって話ですけども)
ではでは、いつも応援やコメント、本当にありがとうございます!(ㆁωㆁ*)
にゃんこ
忘れる必要など無いかと(๑•̀ㅁ•́ฅ✧
本当の死とは肉体の死ではなく、忘却だと…なんかのドラマで言ってたな〜(υŏᆺŏυ)涼太も乗り越えれたらいいんだけどね…
みかんの王子様はとことんみかんに目がないね!
佐倉真実
綾瀬さんがいるから口説かなかっただけかと思ってたら、なるほどそういうことか!
それにしてもヘラヘラ笑う天野くんなんてレア中のレアですね。みかんかき氷もレアですもんね。嬉しかったんだろうな、天野くん…!笑
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