それから1週間。


 天野は研究生たちに同行し、『未来のセンター』を探し続けた。


 涼太は自主的に『俺様流オーディション』に参加し、何度も研究生たちからプロレス技をかけられた。



天野勇二

悪いな。
毎日協力してもらって。

佐伯涼太

気にしないでよ。
僕は天才クソ野郎の相棒マブダチなんだから。
それに僕がいなかったら誰が研究生ちゃんのプロレス技を受けるのさ?
こんな過酷で厳しい苦行くぎょう、勇二にさせられないよ。

天野勇二

今更だが、柏田の件は悪いことをしたな。

佐伯涼太

僕はもう勇二を許したよ。
過去のことなんかどうでもいいよね。
僕たちは今を生きてるんだからさ。



 天野は全員が合格するまで『俺様流オーディション』を続けた。


 研究生の娘たちも「これはマジにならないとダメなやつだ」と感じたようだ。


 天野が満足するような技を探し、中には合体技ツープラトンを繰り出す研究生も出てきた。



佐伯涼太

いやぁ。
まさか垂直落下で投げ落とされるとはなぁ。
今日もキツかったねぇ。



 そんなことを言いつつも、涼太の頬は緩みっぱなし。


 どこまでもデレデレしている。


 め技を仕掛ける娘も出てきたので、研究生との接触も多い。


 ヘッドロックをかけられた時などは至福の様子だった。


天野勇二

涼太よ、お前はどの娘がいいと思う?

佐伯涼太

そうだねぇ。
28番なんかおっぱいちゃんでいいと思うな。
おっぱいがパイナポーしてるよね。

天野勇二

あの骨格は痩せにくい。
将来性はないな。

佐伯涼太

それなら5番の娘は?
ラリアットも良かったし。

天野勇二

あれも悪くないんだが非処女なんだよなぁ。
すぐ男の誘いに乗りそうだ。


 涼太の意見も参考にしつつ、女の子たちを見定める。


 そしてまた、次の『オーディション』が始まった。



天野勇二

また今から『俺様流オーディション』を始めるぞ!
全員、一列に並べ!
仰向けに寝ろ!



 怒号に近い号令。


 研究生たちは急いで仰向けになった。



天野勇二

膝を上げろ。
腕を胸の前で組め。
そして、体力の続く限り腹筋しろ!



 研究生たちは愕然がくぜんとなった。


 さすがに1人の娘が立ち上がり猛抗議した。


研究生⑭番

こんなの無茶苦茶です!
アイドルと何も関係ありませんよ!


 天野はニヤリと口唇を歪めた。


天野勇二

関係あるのかどうか、それは俺様が決めることだ。
俺様はお前らの『体力』と『根性』が見たいんだよ。
それに腹筋だけで終わると思うな。
腕立て伏せ、スクワット、背筋……。
他にもやってもらうぞ。


 研究生たちの顔面は蒼白になった。


研究生⑭番

プロレスの次は筋トレ……!
こんなオーディション聞いたことありませんよ!

天野勇二

だからどうした?
俺様に他のヤツらと同じことをやれと言いたいのか?


 天野は「クックックッ」と悪い笑みを浮かべた。


天野勇二

俺様をナメるなよ。
これはただの筋トレじゃない。
お前らの身体能力を見極め、最適な『トレーニング方法』を探すためのテストだ。
例えばお前……。


 14番の娘の脇腹を指さす。


天野勇二

骨盤が歪みすぎている。
今のままではどれだけ運動してもプロポーションは良くならない。
だが、俺様の言う通りに運動すれば、ウエストがcmは縮むだろう。
それも簡単にな。


 14番の娘は思わず真顔になった。


研究生⑭番

えっ……。
本当ですか?
私のウエスト、60cmですけど……。

天野勇二

それが55cmになるんだ。
活躍の場が増え、お前の世界は劇的に変わる。

研究生⑭番

へ、へぇ……。

天野勇二

それだけじゃない。
俺様の親父は美容整形外科を手広く経営していてな。
もし顔にメスを入れるならどこなのか。
どのようにイジれば美しくなるのか。
それも見ればわかる。
女を輝かせることだって、俺様にかかれば全てうまくいくのさ。

研究生⑭番

そ、そうなんですか……。

天野勇二

お前は素材がいい。
身体を絞り、小顔矯正こがおきょうせいに注力すべきだ。
グラビアの仕事が増えるぞ。

研究生⑭番

…………。

天野勇二

それにダンスパフォーマンスには基礎体力が必要不可欠だろう?
お前は公演の後半にへばり、十分な実力を発揮していない。
実にもったいない。
まずはどこまで出来るのか、その『根性』を見せてくれ。


 14番の娘は少々むくれた顔をしていたが、黙って列に戻った。


 そして腹筋の体勢に入った。


天野勇二

それでいい。
他に異論のあるヤツはいるか!?
いないな!
では始めろ!
いち! に! さん!


 哀れな研究生たちが涙目で腹筋を始める。


 涼太はその光景を眺め「あんなのブラフに決まってるじゃん。みんなホント可哀相に」と思いながら、天野の隣でため息を吐いていた。





 別に天野は過酷なオーディションのみを行った訳ではない。


 研究生たちの公演を見学し、ファンと一緒に歓声を送ってみた。


 握手会にも参加し、ファンと接する様子を観察した上で、実際に握手もしてみた。


 それぞれのブログやSNS、生放送までチェックし、ファンに対する『営業活動』の全てを調べ上げた。



天野勇二

ふむ……。
思ったより、どの娘もしっかりアイドルしているな……。



 ド素人の天野から見れば、アイドルとしての活動は申し分ない。


 ダンスやパフォーマンスも満点だ。


前島悠子

どうですか師匠。
ユニット選抜は順調ですか?


 名簿を見ながら悩む天野に、前島が声をかけた。


天野勇二

まぁ、大体はな……。
お前から見ると、どの娘が一番優れている?

前島悠子

やっぱり12番の娘ですね。
ダンスのキレがいいですし、すごく舞台映えしてます。

天野勇二

12番か……。
確かにセンスは悪くないな。

前島悠子

あと1番の娘は握手対応がいいですね。
として人気出ると思いますよ。

天野勇二

釣り師?
なんだそれは?

前島悠子

今のアイドルは、握手をした時に『ファンの心を掴む娘』が成功したりするんです。
上目使いで甘えたり、他の娘より強く手を握ったり、思わせぶりなことを言ったり……。
そんな握手ができるアイドルを『釣り師』と呼ぶんです。

天野勇二

あんな泣き虫の中途半端な女が成功するのか……。
アイドルってのはよくわからんな。


 天野は名簿を見ながらため息を吐いた。


天野勇二

だが、どちらの娘も『不合格』だ。
やはり魅力を放つ女は『非処女』が多いな。

前島悠子

むむっ……!
またそれですか!


 前島はプンスカながら天野を睨んだ。


前島悠子

いつから師匠は処女厨しょじょちゅうになったんですか!
別にどっちだっていいじゃないですか!
女子の魅力に処女も非処女も関係ありませんよ!


 天野はニヤニヤしながら頷いた。


天野勇二

同感だ。
俺様もそう思う。
だがな、これは春川からの依頼リクエストなんだ。
『処女のユニット』を組みたいんだとよ。

前島悠子

えっ!?
春川さんがそんなこと言ったんですか!?

天野勇二

そうだ。
だからこそ俺に依頼した。
逆に言えば、『処女でなければならない理由』がある、ということだ。


 前島は小首を傾げた。


前島悠子

そ、そんな理由あります?

天野勇二

春川が言うには、アイドルマニアってのは『処女性』を重視するらしい。
すぐ男に股を開くような尻軽女とは擬似恋愛できないんだとよ。
グループにだって『恋愛禁止』というルールがあるだろう?

前島悠子

だけど、過去の恋愛は別じゃないですか。
見てほしいのは今の自分です。
過去は関係ありません。

天野勇二

そうだろうな。
だが、世の中そうやって割り切れない『素数そすう』を持つヤツが多いのさ。


 前島はしょんぼりと顔を落とした。


 天野はそれを眺め、どこか嫌そうに吐き捨てた。


天野勇二

処女か非処女か。
そんなものにこだわる男の器なんてたかが知れている。
だが、春川はそれを『条件』にして依頼を持ちかけた。
つまり、それに『価値を見出すやからが存在する、ということだろう……。


 名簿をぱたんと閉じる。


 天野はぼんやり呟いた。


天野勇二

さて……。
そろそろ『最終選考』に入るか。

前島悠子

最終選考?
今度は何をするんですか?

天野勇二

個人面接をするのさ。
俺とセックスできるかくんだよ。


 前島は「ぎょっ」として詰め寄った。


前島悠子

し、師匠!
もし女の子が『する』って言ったらするんですか!?

天野勇二

さぁ?
どうしようかな。

前島悠子

それはダメです!
ダメですよ師匠!
そんな酷いこと、研究生たちが可哀相です!


 天野はニタニタと悪い笑みを浮かべた。


天野勇二

なぜだ?
売れるためなら抱かれても構わない。
そう考える娘がいるかもしれないぜ。

前島悠子

いるワケありませんよ!
正気ですか師匠!?

天野勇二

俺はいつだって正気マジだ。
お前、俺様が『クソ野郎』だと忘れてないか?
その行為を選ぶかどうか、それは本人の自由じゃないか。



 前島は真っ青になって首を横に振った。



 違う。そうではない。



 前島が一番気にしていることは、それではない。



前島悠子

ダメですってば!
弟子は許しません!
グループに変な誘いを持ち込まないでください!

天野勇二

何を言ってやがる。
俺様は知っているぞ。
グループには『枕』として身体を差し出した女も多いはずだ。
そいつらのことも否定するのか?



 前島は言葉を詰まらせた。


 確かに天野の言う通りだ。




 それを望んで『利益』を手にした娘。


 それが将来のためになると信じて我慢した娘。


 それが嫌でグループを去った娘。




 どの数も多い。


 絶対的センターである前島には無縁の話だったが、そんな『裏取引』が存在したことは聞いている。


 黙り込んだ前島を見て、天野は不敵な笑みを浮かべた。



天野勇二

クックックッ……。
個人面接を終えたら春川に結果を伝えてやる。
あのタヌキは喜んでくれるかな?
実に楽しみだ。






この作品が気に入ったら「応援!」

応援ありがとう!

17,581

つばこ

☆涼太くんがこっそり教える天野先生から合格を貰えるプロレス技コーナー☆
 
「今日はみんなに『スーパーマンパンチ』っていう簡単な技を教えるよ。これはアメリカのプロレスで有名な『ローマン・レインズ』っていうイケメンレスラーの技なんだ。やり方はすごく簡単。僕の前でジャンプして右フックをぶちこむだけ。ほら簡単でしょ? 殴る時にネイティブっぽく『シュパマンパァンチ!』とか叫んでみるとそれっぽくなるよ。アメリカ人が観たらバカウケすること間違いなしだね!」
 
 
以上、「涼太くんがこっそり教え(以下略)」でした。
いよいよ『プロデュース編』も大詰めです。
次週はお待ちかねの結果発表!
天クソ選抜はいったいどうなってしまうのか!? ご期待ください!
 
ではではいつもオススメやコメント、本当にありがとうございます!(゚O゚(☆○=(`◇´*)o シュパマン!!

この作品が気に入ったら読者になろう!

コメント 86件

  • くちなし先生親衛隊

    ハイって言った人は落ちる気がする。

    通報

  • バルサ

    早く、続き知りたい…(^^;;
    涼太、幸せそうで良かったよ(^^)

    通報

  • アノニマス

    ↓初モノで作ったユニットをお偉いさんに捧げるつもりかもですね。春ブタの様子から察しましたが。それを糧に、業界での地位を確立する、と。

    わりと、リアルな数値だと思います。5年前まで高校生だった私ですが、中学生で行為に及ぶ子がいる現代ですから、そんな話も耳に入ってきますし。初モノダサいみたいな価値観が、今の少年、少女に広がっているのは事実です。

    通報

  • 天才クソ野郎ラブ

    春ブタがゲスい事考えてるんだろうな。
    そしてその事を見抜いて処刑を考えた天才クソ野郎サマ…ってか?
    にしても、春ブタが秋ブタと被るしキモい。

    通報

  • とおりすがりのモブ

    男の器ね…。でも、選べるとしたら、どっちがいいか?と聞かれたら、おそらく全員の答えは同じさ…。
    皆、簡単に捨てるなよ!大切にしてください。

    通報

関連お知らせ

オトナ限定comicoに移動しますか?
刺激が強い作品が掲載されています。

  • OK