天野は警察署にて長い取り調べを受けた。



 死体の第一発見者とは警察に長時間拘束され、何度も同じことを訊かれるものだ。



 事情聴取が終わり、天野が解放されたのは深夜になる頃だった。



天野勇二

まったく……。
第一発見者ってのはラクじゃねぇな。



 警察署を出るとスマホを取り出した。


 ひとりの人物に電話をかける。



天野勇二

橋田はしだよ。
久しぶりだな。

橋田翔馬

ゆ、勇二か!?
驚いたな。
こんな遅くにどうした?



 橋田翔馬はしだしょうまは小学校の同級生。


 かつて同窓会で再会した男だ。


 橋田の父親は警視庁の捜査一課に在籍している。


(詳しくは『彼女に上手にさよならを伝える方法』にて)



天野勇二

ついにお前のコネを頼る時がきたよ。
殺人事件に巻き込まれた。

橋田翔馬

さ、殺人事件?
どういうことだ?
お前、また何かやったのか?


 橋田はかなり緊張していた。


 天野は過去に指名手配されたり、殺人犯を勝手に捕まえたりと、何度も殺人事件に巻き込まれている。


 それでも橋田を頼ることはなかった。


 だからこそ橋田は緊張していた。


天野勇二

別に俺は何もやらかしちゃいない。
死体の『第一発見者』になったんだ。

被害者は頭と胴体を切り離されている。
実にショッキングな事件だ。
メディアは無視しないだろう。
明日から少しやかましくなるぜ。


 橋田はゴクリと生唾を飲み込んだ。


橋田翔馬

なぜ勇二が第一発見者になったんだ?
山とかで見つけたのか?

天野勇二

違う。
高校時代の同級生にとあるアパートまで誘導されてな。
室内に入ってみたら死体とご対面。
犯人は間違いなくその同級生だ。

橋田翔馬

何という名前なんだ?

天野勇二

雨宮誠司あまみやせいじ
警察は明日から一斉捜査に入るだろう。


 天野は雨宮の特徴を橋田に伝えた。


橋田翔馬

なるほど……。
俺に何ができそうだ?

天野勇二

警察とのコネが欲しい。
父親を紹介してくれ。
雨宮は恐らく快楽殺人者サイコキラーかつ連続殺人者シリアルキラーだ。
また殺人が行われる可能性が高い。
その時、俺と捜査一課が連携できるよう便宜べんぎはかってほしいんだ。


 橋田は苦しそうにうめいた。


橋田翔馬

……難しいな。
警察は勇二の言うことなんか聞かないぜ。

天野勇二

わかってる。
だが、雨宮の狙いは俺だ。
何らかの連絡アクションが入る。
警察と連携できれば雨宮を追える。
もし橋田の父親が捜査に入るのでれば、俺の連絡先を伝えてくれないか。

橋田翔馬

わかった。
できるだけやってみよう。

天野勇二

すまない。
頼む。


 天野は電話を切った。


 タバコに火をつけて呟く。


天野勇二

雨宮の野郎……。
今度こそ厳しくお仕置きしてやるぜ。






 翌日。


 あまりに残虐な事件だったため、全国誌に載るようなニュースになった。


 だが『雨宮誠司』という名前は報道されていない。


 雨宮に繋がる物的証拠がまだ見つからないのだろうと、天野は判断した。




 昼になると、天野はテラスに涼太りょうたを呼び出した。


 涼太は天野の幼馴染。


 高校も一緒。


 雨宮のことも知っている。


天野勇二

涼太よ、覚えてるか。
雨宮だ。
『ウサギ殺し』で高校を追われたヤツさ。


 涼太は静かに頷いた。


佐伯涼太

覚えてるよ。
勇二が右腕を複雑骨折させて追い出したヤツね。

朝に勇二から電話をもらった後、高校時代の友達に色々聞いてみたけど、雨宮くんの行方を知ってる人はいなかったよ。


 涼太は「お手上げ」とばかりに両手を広げた。


 涼太は顔の広い社交派だ。


 知人の数は圧倒的に多い。


 涼太でも手がかりが掴めないとなれば、後は警察に任せるしかない。


天野勇二

アイツはとんでもない殺人鬼に変貌へんぼうしていた。
あそこまで残虐性が増しているとは思わなかった。
高校の時、息の根を止めておけば良かったとすら思うよ。

佐伯涼太

被害者が雨宮くんの知り合い、って可能性はあるかな?

天野勇二

ないだろうな。
アイツは俺様への『見せしめ』のために手短な人間を殺した。
被害者と雨宮の関連性は恐らく皆無かいむだ。


 天野は悔しそうに顔を歪めた。


 昨日雨宮がいた空間を睨みつける。


天野勇二

こんなことなら再会した時、全身の骨をバラバラにしてやるんだった。
俺も丸くなりすぎたのかもしれん。

佐伯涼太

仕方ないって。
高校時代のことを根に持ってて、それで無関係な人間を殺すなんて誰も考えないよ。
いくら勇二でも昨日の時点で見抜けるはずがない。


 辛そうに黙りこむ。


 テラスにしばしの沈黙。


 それを破るように天野のスマホが鳴った。


 見知らぬ番号からの着信だ。


 嫌な予感を感じながら電話に出る。



雨宮誠司

やあ、勇二くん。
雨宮だよ。

天野勇二

雨宮!



 天野は思わず立ち上がった。


 涼太も緊張しながら天野を見つめる。


雨宮誠司

調子はどうかな。
僕からの『プレゼント』は受け取ってくれたかい?

天野勇二

プレゼントだと?
何のことだ。

雨宮誠司

とぼけないでくれよ。
僕の『作品』さ。
綺麗な『生首』だったろ?




 天野は口唇を噛み締めた。




天野勇二

雨宮……。
お前は何を考えている。
なぜ無関係の人間を殺した。


 雨宮は「クックックッ……」と嫌らしい笑い声をあげた。


 天野は懐からボイスレコーダーを取り出し、雨宮の声を録音し始めた。


雨宮誠司

決まってるだろう?
あれは君への『復讐』のための生贄イケニエさ。
そしてまだ終わりじゃない。
君もこれで僕の恨みが消えるとは思っていないだろう?

天野勇二

復讐、恨みか。
なぜ俺を直接狙わない。

雨宮誠司

もちろん、君もいつかは殺すよ。

僕も学習しているんだ。
君と真正面からやりあっても勝てるはずがないだろう?

だからまずは君への『恨み』のために、無関係な人間が殺されていく苦しみを味わってもらおうと思ってね。


 雨宮の口調は昨日と変わらない。


 世間話をしているような口調だ。


雨宮誠司

君のせいで大勢の人間が死ぬよ。
全てが『作品』になる。
彼らに死ぬ理由なんか何もない。
あの『飼育小屋のウサギ』のようにね。

でも、死ぬんだ。
君のせいで死ぬんだよ。


 天野は強くスマホを握りしめた。


天野勇二

ふざけるなよ……。
それはお前の『趣味』だ。
取ってつけたように俺のせいにしやがって。
お前は頭がイカれてるよ。

雨宮誠司

クックックッ……。
たまらないな。
それこそ僕が欲しかった君の声だ。

JR上野駅の14番線。
男子トイレ。

そこに次の『プレゼント』を用意してある。


 天野の全身から血の気が引いた。


天野勇二

なんだと?
お前、また誰かを殺したのか!?

雨宮誠司

さぁ?
どうだろうね。
また連絡するよ。


 そこで電話は切られた。



佐伯涼太

ど、どうなったの?
ま、ま、また殺人?



 涼太が怯えている。


 天野は何度か深呼吸して言った。


天野勇二

……わからん。
涼太よ、上野駅まで送ってくれ。
14番線の男子トイレに何かあるらしい。


 涼太は頷き天野を車に乗せて上野駅へ向かった。


 車内で天野は橋田に電話をかけた。


天野勇二

勇二だ。
今いいか?

橋田翔馬

ああ、何か進展があったのか?

天野勇二

雨宮から電話があった。
お前の父親と連絡は取れるか?

橋田翔馬

大丈夫だ。
勇二に連絡先を伝えて良いと言われてる。
役職は警部補けいぶほだから多少は使えると思う。
メールで番号を送るよ。

天野勇二

頼む。


 電話を切ると橋田からメールが届いた。


 すぐさま書かれている電話番号へ発信する。


???

はい、橋田です。


 中年男性の声だ。


天野勇二

天野勇二と申します。
翔馬くんとは小学校の同級生。
もうお話は聞いてますか?


 橋田は穏やかな声で答えた。


橋田在昌

勇二くんか。
懐かしいね。
君のことを運動会で見たことがあるよ。

息子から事件の話は聞いている。
ちょうど私の担当だ。

天野勇二

それは幸いだ。
犯人から連絡がありました。
携帯からの着信です。
すぐに調べてください。


 雨宮の電話番号を伝える。


天野勇二

そして上野駅14番線の男子トイレへ向かうよう言われてます。
警邏けいら中の捜査員がいれば回してください。

橋田在昌

いいだろう。
私も近くにいる。
すぐに向かうよ。

天野勇二

お願いします。


 電話を切る頃には上野駅が見えてきた。


 涼太の車を飛び出して走る。


 14番線は朝と夜以外は使われないような乗り場だ。


 人気ひとけはほとんどない。

天野勇二

ここか!


 男子トイレを発見した。



 中に飛び込む。



 まず天野を襲ったのは激しい異音』だった。



 「ブブブッ……」と風を切る低い音。



 異音の正体はトイレの中を縦横無尽に飛び回っていた。




天野勇二

ハエか……!
くそっ、なんて数だ。




 蝿の羽音がトイレの中にこだましている。



 その理由はすぐに理解できた。



 トイレの中には凄まじいほどの『腐敗臭』ただよっているのだ。





 肉が腐った臭い。



 昨日、アパートで嗅いだ臭い。








 死体の臭いだ。







 トイレの中は無人。


 だが、ひとつだけ閉まっている個室がある。



天野勇二

誰か入ってるのか!
いたら返事をしろ!



 個室のドアをノックして叫ぶ。









 何の反応もない。









 天野がどうすべきか迷っていると、鉄道警察官がやって来た。


天野勇二

橋田警部補の指示か?


 警察官は黙って頷いた。


天野勇二

犯人はこのトイレを指定してきた。
今から中を覗くぞ。


 ドアの上には人が通れるような広いスペースがある。


 天野はドアの上に手を伸ばし、身体を持ち上げ、中を覗きこんだ。



天野勇二

ちくしょう!



 すぐに飛び降りてドアにタックル。


 警察官が慌てて尋ねた。


警察官

中に、何があったんですか!?

天野勇二

見ればわかる!
お前らも手伝え!


 タックルを3度ぶちかまし、前蹴りを連発。


 ドアの鍵をぶち壊した。


 警察官が飛び込むように中を覗く。




警察官

ひいいいっ!




 警察官が思わず悲鳴をあげた。


 天野は大声で叫んだ。




天野勇二

雨宮ッ!
あのバカ野郎が!







 洋式便座の上。

 かなり腐敗の進んだ人間の『生首』が置かれていた。




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つばこ

【天野くんがメディアに登場したまとめ】
 
・前島ちゃんとのスキャンダル
・お姫様のボディガード
・恐喝動画がユー○ューブに流出
・殺人容疑で全国指名手配
・真犯人を捕まえて汚名返上
・バラバラ死体の第一発見者 ← New!!
 
これはいけない( ゚д゚)
そろそろ世間は天野くんに気づいちゃう。
バラエティ番組とかに呼ばれちゃう。
アウトデ○ックスとか出ちゃう。
『新三大・天野くんがやらかした珍事件』とか『天野くんのクソ野郎発言で打線組んだwww』とか話題になっちゃう。
 
1(遊) 実はあれ、友人の車なんだ。外務省の車を1台くれよ。
2(右) 負け犬は負け犬らしくキャンと鳴けよ。
3(三) デブがどれだけオシャレをしてもデブなんだぞわかってんのかデブ。
 
こんな感じになっちゃう!
そんな天野くんにいつもオススメやコメント、本当にありがとうございます( *・ω・)*_ _))ペコリ

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コメント 143件

  • rtkyusgt

    ハエがいる時点でトイレには近寄れない・・・虫無理です・・・

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  • 雨宮の電話やら何やら、音とっとけば100つるせるくね?

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  • バルサ

    前回の作者コメが ひとことだったので、ちょっとビビったのですが、今回は普通だった…和んだ。でも、話しはヒェ〜どうなるんだ‼︎

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  • アノニマス

    アウトDX
    っていうか、
    アウトMAX

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  • さっちー

    作者さんのコメいつも面白くて楽しみにしてます!笑

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