2年8ヶ月ぶりのお久しぶりです。kosoです。
最近の衝撃的な話題といえば、やはりVirgil Ablohの急逝ですよね。彼の功績については既に様々なところで語られていますが、個人的に思っているのは、こちらの一連のTweetで書いたような内容でして、端的にはストリートとラグジュアリーの間に、(いわゆるモードの解釈を介することなく)直通する大きな風穴をあけた点かなと。さらに、Tweetでも触れたとおり、Virgil Abloh/Louis Vuittonだけではなく、一方にはDemna Gvasalia/Balenciagaがおり、出自こそ違えどストリートからふたつの系統で、ラグジュアリー/ストリート/モードの関係性を大きく揺るがす動きが、同時代的に起こっていたことにも、大きな意味があるのだろうな、ということでした。
Virgil AblohとDemna Gvasalia
このふたりは、モードのヒエラルキーでの承認をある程度確かなものとした後に、ラグジュアリーメゾンのクリエイティヴ・ディレクターに就任するという起用パターンとは明らかに異なっていたのも、ひとつ大きなポイントなのではないかと思います。
印象論的側面が強い話にはなるのですが、AblohのOff-Whiteにせよ、GvasaliaのVetementsにせよ、このふたりがモメンタムを得ていく過程には、従来のモードのヒエラルキーを意識的にハックしつつ、外部のストリートの(市場としての)パワーを背景に、モードのヒエラルキー内でも一定の承認を余儀なくさせたような雰囲気が強かったように感じます。ふたりは、このようなモードのヒエラルキー内での承認を利用しながら、そのヒエラルキーを中抜きにするような形で、ラグジュアリー側のヒエラルキーのトップにいきなり躍り出たというのが、最初に書いた「直通」という意味合いではあります。
加えて、わかりやく革新的なのはVirgil Ablohで、だからこそRaf SimonsのVirgil Ablohに対する否定的なコメントのような、反発も受けやすい(しやすい)のだろうと思いますが、クチュール/クラフトマンシップを用いたプロダクト指向という手法を取るDemna Gvasaliaの方が、(Marigielaの延長という意味も含めて)が影響の深度はあるのかもしれないというのも、思うところではあります。最近のDemnaと呼べ宣言は謎ですが。
モードとラグジュアリーのヒエラルキーは違い、クラフトとクラフトマンシップは違い、などなど書き出すとまた長くなりそうですし、そこまでの準備がまだないので、このあたりにしておきますが、こういった話題もまたどこかで継続的に書き溜めていくとよいのかなとは、考えている次第です(いつもの書く書く詐欺)。
やっぱりCelineは最高というお話
などなどVirgil Ablohの早すぎる死を嘆いていたところに、2022SSのウィメンズの発表を引っぱりまくっていたHedi SlimaneのCelineのコレクションが満を持して公開されたのは、なんというか個人的には一筋の光のようでした。
WWDの"parade of perfectly styled outfits, a calculated mash-up of bourgeois tailoring and varsity casualness — with a soupçon of streetwear cool"という評以上の何もいらないのではというくらい、完璧に洗練された内容で、Celineに来てからのHedi Slimaneの編集力は本当に異常だなと改めて思い知らされたコレクションでした。
パンデミックの収束後も、この完璧なイメージコントロールが可能な映像のみ、かつ実際のシーズンの立ち上がりに近いタイミングでの発表というスタイルを継続して、ファッション・ウィークに戻ってこないのではという気すらするのですが、どうなのでしょうか。ともかく映像がよすぎて繰り返し眺めているうちに、BGMで使われているCanの"Vitamin C"が頭にこびりついてしまい、本当にビタミンCが失われそうな恐怖に苛まれています。
Virgil Ablohのあとは…
ちなみに、Virgil AblohのLouis Vuittonの後継については、当然色々な予測や憶測がとびかっているようで、Kanye Westの名前まで挙がっていたりしますが(なったとしても意外というわけでもない)、個人的にはHypebeastの書きぶりがしっくりくる感じでした。あと候補として加えるなら、Marine Serreあたりかなとか。1月に発表予定の2022FWは、Virgil Ablohのもとで95%は完成しているそうなので、問題は6月の2023SSからということにはなり、そのあたりのスケジュール感も踏まえつつ、どのタイミングで決まるかなというのが気になるところですね。
ご挨拶
と、急に色々書いてどうしたのかと思われそうですが、VOGUE Blogが12月16日の10:00をもってサービス終了とのことで、最後のご挨拶に参った次第でございます。 私がお声がけをいただき参加したのは、2013年の8月からでしたので、リニューアルも挟みながら8年余りの長い期間、枠をいただいていたことになります。
私に期待されていたことは、いわゆるファッションやビューティの世界で活躍しておられるブロガーの方々とは違った切り口で、ラグジュアリーやファッションの世界で起こっている出来事をご紹介していくことかなとは思っておりましたので、ビジネス面の話題なども折り込みながら、毎週のニュースのラップアップを中心にお届けするスタイルで、書き始めていたように思います(リニューアル前のエントリは残っていないので、すべてを覚えているわけではないのですが)。
ただ個人的な事情もあり、毎週継続していくための時間をとることがなかなか難しく、VOGUEのオーディエンスのみなさんにとって需要のありそうな内容を模索し試行錯誤していくということもままならないまま、特にリニューアル後は、投稿頻度も年に一度あるかないかという状況になってしまい、最終的にせっかくお声がけいただいた編集部の方々のご期待に適うような形にできなかったことは、ずっと申し訳なく感じていると同時に、心残りな部分でもありました。
とはいえ、こうして久しぶりにつらつらと書き記してみるとそれはそれでおもしろく、一文が長くなる癖はTwitter中心で書いていても変わらないなあというのは、ちょっとした発見ではありました。 書く書く詐欺みたいなことは、ここ数年続いているのですが、なんとなく隔週のニュースレター的なものならサステナブルかつ自分の書くテーマ的にも合っているかしら、といったことはぼんやりと思ったりしております。個人のブログもいい加減、手を入れるか移設するかしたいなと考えているので、VOGUE Blogでのエントリは、そのタイミングで移したりするかもしれません。
ということで、これまで一度でも読んでくださったみなさん、そして編集部のみなさん、改めてありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。
koso
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