今年7月に民放テレビキー局初の女性編成部長に就任したフジテレビの中村百合子氏。男性社会と言われてきたテレビ業界だが、女性という立場から現状をどのように捉えているのか。
また、直前までグループ会社に4年間出向し、いち視聴者という視点から地上波コンテンツへの向き合い方に変化が生じたという同氏。「視聴者の心を揺り動かす」番組ラインナップを目指す10月改編の手応えや、コア層を中心とした視聴率戦略、大ヒットアニメの貢献、そして放送同時配信への期待など、話を聞いた――。
■フジとカンテレで「いいライバルに」
10月改編で「家族そろってフジテレビ~DEEPなテレビ体験を!~」というキャッチコピーを掲げた同局。その背景は「『サザエさん』のようにお茶の間でみんな一緒に見るということではなく、笑えるとか、泣けるとか、怒るとか、本能的な感情に訴える輪郭がはっきりした番組を編成することで、老若男女が感情的に揺さぶられることがあれば、デバイスが違っても広義として“家族そろって”ということになると考えました」と狙いを語る。
それを明確に打ち出したのが、月曜日と土曜日のゴールデンタイムだ。「視聴者にどういう感情になっていただきたいかということをコンテンツにメッセージとして明確に込める」ということで、月曜は21時からドラマを2枠、土曜は19時からお笑いバラエティを2枠並べた。
月曜21時台は看板枠“月9”で10月期は『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』、22時台は系列のカンテレ制作で『アバランチ』を編成。「フジテレビも関西テレビさんも、互いに負けないぞといい意味でのライバルとして切磋琢磨しながら、一方で類似した企画を同クールに放送しては視聴者ファーストにならないので、作品選定の情報を共有して、戦略的に企画を差別化してやっていきます」と調整している。
■「2時間編成が多くなりすぎても良くない」
土曜は19時台に『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』、そして20時台のバラエティ伝統枠“土8”に『新しいカギ』を編成。後者については、「『オレたちひょうきん族』や『めちゃイケ』といった数々のバラエティが放送された“伝説”的な枠で、総合バラエティの象徴として成長していけるように、私たちが推したい番組として編成しました。それは過去へのオマージュだけでなく、“令和の土8はこれで行くんだ”という強い意志を持って取り組んでいます」と力を込める。
土曜に関しては、いずれかの番組を2時間SPにして隔週交互に編成するケースが多いが、視聴習慣をつけるには毎週レギュラー編成したほうが良いという見方もある。これについては、「他局の編成など様々な裏環境の中で2時間編成することで“出現感”を出す狙いもありますが、2時間編成が多くなりすぎても良くないと思っています。“月9”“土8”と言うように、やはりタイムテーブルの何丁目何番地にどの番組があるかというのを視聴者に伝わる編成も大切なので、そこは必然で使い分けていきます」との考えを明かした。
この改編を実施して2カ月が経過したが、「縦の流れとその固定層を取り込んで定着させるという戦略で言いますと、私たちが考えている良い形ができているのかなと感じています」と手応え。その上で、「今のフジテレビの視聴率の状況はまだまだ満足いかないので、視聴率向上は継続的な課題です」とした。