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悪堕ち〝元〟魔法少女は怠惰な日常を変えたいみたいです。 〜 毎日毎日しっぽりだけでは流石に飽きてしまいますの 〜 作者:ちむちー

第1章【導入編】

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ヨーグルト職人の朝は早い

ノリで書いてるけど割と楽しい。

2ページ目にしてもう主人公が勝手に

喋り倒してくれてます笑

 

 部屋のドア横にはネームプレートが掲げられております。私の部屋には、


「ブルーの部屋。ぷっ、そのままですわよね」


 そういえば自己紹介を忘れておりましたわ。私、〝元〟魔法少女の蒼井美麗です。他の方からは基本的にブルーと呼ばれておりますの。今はもうぴっちぴちの18歳です。


 世間では正直もう少女とは呼べない高校3年生くらいだと思いますが、生憎中卒止まりでございます。だってほら、ご主人様に匿われて屈服させられてこの生活に甘んじた以降、一度も実家にも帰っておりませんもの。どうやら行方不明扱いらしいですのね。生身では娑婆を歩くのも大変でございます。


 先日学歴コンプを気にしているかとおちょくりあそばす方がいらっしゃいましたが、先日に通信教育で高卒認定を得ましたので鼻を明かしてやりましたわ。

 その気になれば大学にも進めるとは思いますが別に今更これ以上勉強なんてしたくないですし、もはや人生の自由時間なんて必要ありませんの。


 横道な話はさておき、です。



 ここは社員寮ですので沢山の方が一つ屋根の下に暮らしております。正確には地下施設ですので屋根といっていいのかは甚だ疑問ですが、そこはおスルーいたしましょう。


 ここは実にクリーンな職場なもので女子寮男子寮なんていう差別はございません。私のような境遇の〝元〟の女性から、日々営業回りでお忙しい怪人の方まで、有りとあらゆる方が仲良く寝泊まりしております。


 皆さんあまりにも仲がよろしいので、二、三部屋を通り過ぎる毎に中から男女の仲睦まじい楽しげな宴の声が聞こえてきますわ。

 この施設、基本壁が薄い上にドアキーなんて邪推なモノも必要ありませんので開放的な部屋が多いのです。


 どれどれ、聴き耳立ててみましょうか、なになに…



 もっとかけて? 棒を出して? 中?

 もう一発? ダブル…まん……なるほど。



 きっとお麻雀でもやっているのでしょう。私も気分が乗れば混ざりたいのですが、生憎今はまだブルーな気持ちの方が上回っておりますの。参戦はまたの機会にいたしましょう。



 辺りから聞こえてくる阿鼻嬌声を心地よく耳にしながら、それぞれのドアの前を通り過ぎようとしましたところ、最奥のドアがゆっくりと開きました。どなたか出てくるようです。


 視認するよりも先に香る、強烈な刺激臭。これは、うん。きっと栗の花の香りですわね。


 身体から芳しい花の香りを漂わせ、まるでヨーグルト風呂を上からひっくり返したかのように全身ドロドロ姿で現れたその人は、フラフラな足取りでこちらに歩いていらっしゃいます。


 紅い髪の毛にヨーグルトを乗せて、まるで冠雪赤富士のように頭のめでたいこの女性は、とても心此処にあらずなふわふわなご様子です。お名前は小暮茜さん。頬を赤く紅葉させた彼女は私と同じ〝元〟魔法少女、かつての相棒でございます。



目と目が合いました。


「ふわぁへぁ…あ、美麗ちゃんんぁ。こんばんは〜あはぁ」


「こんばんはですわ。ご機嫌うるわしゅう」


 既に呂律が回っていない様子ですが、きっとたくさんの乳酸菌活性化運動をしたのでしょうね。よく見れば上の口からも下の口からも絶えず新鮮なヨーグルトが垂れ流れ出てていらっしゃいます。


「今オーク怪人さんのところで遊んでるんだぁ〜、朝から数えて11回戦中ぅあ、今はっ休憩なの」


「あらぁ、まったくお二人ともタフですこと。ちなみに勝敗はいかほどです?」


「えへへぇ、なぁんと0勝11敗の連敗中。オークさん強いねぇ……ぁはぁ、たっぷたぷだよぅ」



 ヨーグルト職人の朝は早い。そして今日はきっと夜も遅いのでしょう。ぽっこりと膨れたお腹を見るに沢山ご馳走になっているのだと想像ができます。ましてオークさんのは無尽蔵と聞きますからさぞかし大変なのでしょうね。

 私も以前つまみ食いをさせていただきましたが1日中はさすがに未プレイでございますわ。じゅるり。



 しかしながら、興味深いお話をもっと聞かせていただきたいのも山々なのですが、いかんせんオーク怪人さんの栗の花ヨーグルトは特別鼻につきますの。自分が当事者で気分がノッているときでもなければ、これはわりと耐えられないほどの刺激臭なのです。


 このままでは気分が乗る以前に気分が冴えなくなってしまいそうですの。ここは早々に話を切り上げさせていただきましょう。


「お楽しみもほどほどに。あんまりご無理をなさらないようにしてくださいね。お通じに効くヨーグルトではなさそうですから」


 粘り気がすごいですし。糸引いたまま床につくくらいドロりとしていらっしゃいますし。


「えへへぇ、まだ半分もやってないからねぇ。あ、そうだ。美麗ちゃんもどう?」


「謹んで。また今後ご一緒させていただきます」


「うーん、わかったぁ。それじゃ戻るねぇ」


「ええ、ご武運を」



 まぁあの様子では無理そうですけど。あ、あと終わったら歩いた床はお掃除してくださいな。ここは共有部なんですから。刺激臭で煙検知が作動してしまいますわ。


 ふらふらと元の部屋に戻る彼女を見送ります。この先には進めそうにないですね。足元のベタベタを取られてしまいます。



 私は踵を返して歩き始めました。自室から反対側のルートに向かいます。まだまだお散歩しておきたい気分なのでございます。


 少し歩いたからでしょうか。ちょっと小腹が空いてきました。これはホントの小腹ですので悪しからず。

 

※麻雀です。


※ヨーグルトです。


隠喩って楽しいね!

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