「盗作話」はエヴァでも

アニメのオリジナリティーを巡るトラブルは、京アニに限った話ではない。90年代に社会現象を巻き起こしたSF作品「新世紀エヴァンゲリオン」でも同様の問題は起きた。

煙を上げる京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)

同作では、少年少女が人型兵器を操り、「使徒」と呼ばれる生物と激闘を繰り広げる。

手掛けた「ガイナックス」設立メンバーの1人で、現在は別会社「GAINAX(ガイナックス)京都」(京都市左京区)を経営する武田康廣(63)は、会社に分厚い手紙が送りつけられてきた時のことをはっきりと覚えている。

「エヴァは自分のアイデア」「高校生の頃、鉛筆で教室の机の上に落書きした物語を盗まれた」

便箋には突拍子もない恨みつらみが書かれていた。武田は「当時は笑い話でしかなかった。でも、京アニ事件が起きたことで全てを切って捨てるわけにもいかなくなった」。

2019年7月の京アニ事件後、「エヴァ」シリーズの監督庵野秀明が代表を務める会社に対し、ツイッターで放火をほのめかす投稿をしたとして、威力業務妨害などの容疑で男が警視庁に逮捕された。

繰り返された中傷

ガイナックス時代のトラブルを回想する武田康廣

共同通信の配信記事によると、男は「アニメの著作権は自分の家族が保有している」と主張し、数年前から誹謗(ひぼう)中傷を繰り返していたという。

武田がため息交じりにつぶやく。「アニメやスタジオが有名になればなるほど、この手の『盗作話』は必ず出てくる。でもね、だからと言って『放火する』とか『殺す』とか、それは明らかにおかしいでしょう」(敬称略)

京アニ放火殺人事件は12月16日に容疑者が起訴され、大きな節目を迎えた。高品質の作品と優良な職場環境から同業者たちに「理想郷」と呼ばれた京アニ。「ユートピアの死角―京アニ事件」(計6回)では、業界が草創期から抱えるひずみを描き、未曽有の災厄が起きた背景に迫る。(岸本鉄平、本田貴信)

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