どうも、つばこです。
今週もお読みいただきありがとうございます。
今回のエピソードは少々長めになると思います。天野くんが出会った小国のお姫様が、どのような形で物語に関わってくるのでしょうか。
まぁ、アイコンに挿絵がある時点でキーキャラクターのようですし、サブタイトルを見る限り「守る」ことになるんだと思いますが、それはそれとしてご期待ください!!!
今回の天野くんはとにかくシブいぜ!
では、いつもオススメやコメント、本当にありがとうございますヽ(*´∀`*)ノ.+゚
とある日の午後。
天野勇二
……うん?
視界の隅に大げさな集団が入った。
20人ほどの集団だ。
先頭にはビデオカメラを持ったマスコミと、何人かの見知った教授と学生。
中央には黒髪で
東南アジア系と日系人のハーフだろうか。
日本ではあまり見ることのない民族衣装を身にまとっている。
背後にはSPらしき黒服が立っていた。
天野勇二
(アイツら、何をしているんだ?)
天野は何となく集団を眺めた。
どうやら教授や学生は褐色の美少女に、大学の様子を説明しているようだ。
褐色の美少女は興味深そうにキャンパスを眺めている。
天野勇二
(マスコミや教授を引き連れてキャンパス見学とは、随分とお偉い身分だな)
何気なく近づくと、英文科の
金子とはとある縁で顔見知りだ。
(詳しくは『彼を上手に殺す方法』を参照)
天野勇二
金子よ、久しぶりだな。
金子瞳
あら? 天野くんじゃない。
天野は集団を顎でさした。
天野勇二
なんだあの連中は?
金子瞳
天野くん知らないの?
東南アジアのサリス国のお姫様よ。
天野勇二
お姫様、だと?
金子瞳
そうよ。
来日中だってニュースで観なかった?
天野は頭をかきながら言った。
天野勇二
知らなかったな。
そのお姫様がうちの大学に何のようなんだ。
金子瞳
お姫様は18歳、日本の大学に留学するかもしれないの。
それで来日のついでにキャンパス見学に来たわけ。
天野勇二
なるほどね。
わざわざ日本に留学しなくとも、アメリカにでも行けばいいのにな。
金子はため息を吐きながら言った。
金子瞳
天野くん、サリス国はかなりの親日派なのよ。
小さな島国だけど、お姫様には日系人の血も流れてるの。
日本の大学を選んでいただくなんて光栄なことじゃない。
天野は「ふぅん」と軽く呟くと、金子に尋ねた。
天野勇二
しかしなぜ金子が一緒なんだ?
あれ、国際経済学部の連中だろう?
金子は苦笑した。
金子瞳
通訳のためにヘルプで呼ばれたんだけど、お姫様日本語ペラペラなの。
出番なくてまいっちゃった。
天野勇二
大したものだな。
日本語が話せるとは。
金子瞳
だから、超親日派なのよ。
天野は集団を眺めると、中に1人のよく知った顔を見つけた。
医学部の同級生、
天野はさりげなく近づいて梶谷を捕まえた。
天野勇二
おい梶谷。
お前なんでこの集団に紛れている。
梶谷
げっ、天野か……。
梶谷は顔中に「マズイ」という文字を貼りつかせた。
梶谷
あ、あ、天野……。
今日は僕が呼ばれたんだ。
天野には関係ないよ。
天野は「ほう……」と呟くと、ニタニタと悪い笑みを浮かべた。
天野勇二
医学部であるお前が指名され、お姫様と同行し、俺様がいると宜しくない……。
つまりお姫様に医学部を案内するんだな。
面白そうだ。変われ。
梶谷は慌てて天野にしがみついた。
梶谷
天野!
教授から失礼のないように言われてるんだ!
頼むからここは僕にやらせてくれ!
天野は「チッチッ」と指先を振りながら呟き、
天野勇二
しょうがねぇな。
じゃあ付き添ってやろう。
首席の俺様がいれば何かと安心だろ。
と、偉そうに言い放った。
梶谷は深くため息を吐き、天野の姿を見つけた国際経済学部の学生たちも「やばい」という表情を浮かべている。
梶谷
国際問題になりかねないんだから、失礼のないようにしてくれよ。
天野勇二
あっはっは。
俺は日本がどこの国とドンパチやろうが興味ないね。
梶谷
あ、天野!
頼むって!
天野勇二
わかったよ。
梶谷、そんな泣きそうな顔をするな。
ただでさえブサイクな顔がもっとブサイクになるぞ。
天野は梶谷の後ろについて集団に混ざった。
お姫様に校舎や図書館、グラウンドなどを案内している。
やがて集団は校舎の中に入った。
国際経済学部の学生
おい、梶谷、
あれって……。
国際経済学部の学生が梶谷に声をかけた。
どこまでもついて来る天野を
梶谷
大丈夫、天才クソ野郎を抑えてみせる。
梶谷は冷や汗をかきながら、天野を睨みつけた。
集団の迷惑げな視線なんて、天才クソ野郎はそよ風程度にしか感じていないようだ。
お姫様を口笛を吹きながら眺めている。
やがて、お姫様は医学部のテリトリーに入った。
天野は背後についていた黒服のSPに近づき、さりげなく声をかけた。
天野勇二
おい、背後にいる紺のジャケットを着た男。
うちの人間じゃない。
さっきから尾行している。
ちょっと声をかけたほうがいい。
SPが驚いて背後を振り返る。
紺のジャケットの男はさりげなく物陰に隠れた。
SPの男
了解です。
SPは2人いる。
1人のSPが紺のジャケットに近づくと、男は踵を返して去った。
天野勇二
なんだ、お姫様は誰かに狙われているのか?
天野はもう1人のSPに声をかけた。
SPは何も答えない。
天野勇二
俺様はTKプロダクションのSP、天野というものだ。
男は
SPの男
……残念ながら存じ上げません。
天野勇二
そうか。
まぁ、誰でも知っているもんでもないか。
天野はSPから離れ、また集団に混ざった。
間もなく医学部の紹介があるはずだ。
梶谷がさり気なくお姫様に近づいた。
梶谷
こちらは医学部の実習室です。
最初の年では主に物理、化学、生物学の実験を行います。
お姫様は興味深そうに実習室を覗いている。
天野がすっと梶谷の隣に並んだ。
天野勇二
お姫様、宜しければカエルの解剖実験でもご覧になりますか?
お姫様は驚き、
お姫様
まぁ……。
見せていただけるのデスカ?
天野勇二
そりゃ、もちろん喜ん……
梶谷が必死に天野を引っ張った。
梶谷
天野!!!
お姫様は時間がないんだ!
……すみません。
お時間の都合があるので、生物学実験はご紹介できないんです。
梶谷はお姫様に謝ると天野に詰め寄った。
国際経済学部の学生たちも天野を睨みつけている。
梶谷
天野、頼むよ!
余計な口を挟まないでくれって!
天野は肩をすくめ、しれっと言い放った。
天野勇二
親切のつもりだったのに。
仕方ない。
梶谷に任せるよ。
そう言うと、天野は国際経済学部の学生たちを睨み返した。
天野勇二
それで……。
お前らはいつまで俺様を睨んでるんだ?
さては俺様に生物学実験をして欲しいのか?
丁寧にオペしてやるぜ。
最初に解剖されたいのはどいつだ?
国際経済学部の学生たちは慌てて天野から目を逸らした。
そして心からため息を吐いた。
よりにもよってこんな時に来なくていいのに、というのが、その場の人間の総意だった。
やがて全ての紹介が終わり、集団はキャンパスの中庭に戻った。
マスコミも撮影を終え撤収。
お姫様はロールスロイスでご帰宅だ。
お姫様
皆様。本日はご親切にありがとうございマシタ。
日本の大学の様子を知ることができ、ユウイギな時間を過ごせマシタ。
国際経済学部の教授が
国際経済学部の教授
是非とも、日本でも一流の我が大学をお選びいただければ光栄です。
お姫様
はい。
参考にさせていただきマス。
天野は大したものだとお姫様を見つめた。
綺麗な黒髪で琥珀色の瞳。
褐色の肌に
お姫様
それでは本日はこれで失礼いたしマス。
お姫様が正門に向かった時、先ほど天野がSPに注意した紺のジャケットの男が物陰にいるのが見えた。
長い棒のような物を持っている。
天野勇二
(……嫌な予感がする)
天野はいち早く駆け抜け、お姫様を抱いて集団の中に押し込んだ。
天野勇二
その中から出るな!
いいな!
天野は学生たちの混乱の声を無視して、紺のジャケットへ一直線に走った。
紺のジャケットは慌てて長い棒をしまい逃げようとしている。
SPも一歩遅れて天野の後を追いかけた。
天野勇二
おらぁ!
天野は逃げる男にタックルを決めて倒すと、持っていた長い棒を取り上げた。
思わずぎょっとした。
銃身の長いライフル銃だ。
SPの男
どうしました!?
SPが天野に追いついた。
天野勇二
あれを捕まえろ。
SPは天野が取り上げた銃を見て青ざめ、慌てて紺のジャケットの男を取り押さえた。
国際経済学部の学生たちも天野のもとへやって来る。
梶谷
あ、天野?
いったい何が起きたんだ?
天野は黙ってライフル銃を手渡した。
梶谷
ひ、ひいいいっ!
ライフル銃を渡された梶谷が悲鳴をあげる。
天野は気にせずゆっくりお姫様のもとに戻った。
国際経済学部の教授
天野くん、何事だったのだね……?
教授の声さえ無視して、天野はお姫様の前に立った。
お姫様は天野の顔を見て、少々怯えている。
天野勇二
ライフル銃で狙撃されるところだったぞ。
君は命でも狙われているのか?
お姫様
あ、あなたは……?
天野勇二
俺様は医学部の天野だ。
この学園では『天才クソ野郎』と呼ばれている。
お姫様
天才、クソヤロウ?
お姫様は「天才」という意味は理解できたが、さすがに「クソ野郎」という単語は教わっていなかったようだ。
天野は
天野勇二
性格の悪い最低の男、って意味ですよ。
お姫さん。
お姫様はまた驚き、琥珀色の瞳を丸くさせた。
そして口元に手を当てて微笑んだ。
お姫様
天才と呼ばれながら、そのようにも呼ばれているんデスネ。
ウフフ……。
不思議な人デスネ。
国際経済学部の学生が、天野の肩を掴んで呼んだ。
国際経済学部の学生
天野、状況を理解した。
お姫様を車に戻そう。
天野勇二
警察には連絡したか?
国際経済学部の学生
ああ、もう通報した。
急ごう。
天野勇二
よし、行こう。
天野はお姫様に寄り添い車まで護衛した。
お姫様
天野サン、ありがとうございマス。
またお話したいものデスネ。
その言葉を聞くと、天野は懐から自らの名刺を取り出した。
実はこの男、学生のくせに名刺を携帯しているのだ。
天野勇二
俺様の連絡先だ。
何かあれば連絡するがいい。
東京くらいは案内してやろう。
お姫様は名刺を受け取り、嬉しそうに笑った。
お姫様
ありがとうございマス。
いただきマス。
丁寧に礼を告げると、お姫様はロールスロイスに乗って去った。
車が見えなくなると、天野は「ふう」とため息を吐いた。
梶谷
あ、あ、天野……。
こ、これ……。
どうしよう……?
ライフル銃を抱え、梶谷はもう涙目だ。
天野勇二
お前、そんな持ち方すると暴発するぞ。
梶谷
ひいい!!!
全員慌てて梶谷から離れる。
天野は梶谷からライフル銃を奪い取り、カチャカチャといじくり回した。
梶谷
お前……。
ライフルなんて触ったことあるのか?
天野勇二
いや、俺様も初めて見る。
梶谷
だ、大丈夫なのか?
天野勇二
ちょっと黙ってろ。
お、こうか。
ガチャン、と派手な音をさせて、ボルトをスライドさせる。
銃弾を取り出す天野を見て、一同大きく息を吐いた。
天野はライフルを持ったままSPに尋ねた。
天野勇二
狙撃犯は日本人か?
SPの男
ええ、金で雇われたチンピラのようですね。
天野勇二
ふむ……。
やがてパトカーが到着して、狙撃犯は連行されて行った。
狙撃犯も
どうせこの事件は報道されることもないだろう。
お姫様もこの大学に通うことはないだろう。
もうお姫様と会うこともないだろうなと、この時の天野は楽観的に考えていた。
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どうも、つばこです。
今週もお読みいただきありがとうございます。
今回のエピソードは少々長めになると思います。天野くんが出会った小国のお姫様が、どのような形で物語に関わってくるのでしょうか。
まぁ、アイコンに挿絵がある時点でキーキャラクターのようですし、サブタイトルを見る限り「守る」ことになるんだと思いますが、それはそれとしてご期待ください!!!
今回の天野くんはとにかくシブいぜ!
では、いつもオススメやコメント、本当にありがとうございますヽ(*´∀`*)ノ.+゚
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