どうも、つばこです。
大変申し訳ないのですが、天才クソ野郎の事件簿では人が亡くなることがあります。。。
涼太は着かず離れずの距離を保ちながら、巧みに長谷川を尾行していた。
長谷川はヘッドフォンで音楽を聴きながら、時折軽くリズムを取るように太腿を叩いている。尾行されているとは気づいていない様子だ。
長谷川は大学を出ると、バスにも電車にも乗らず、住宅街の方向へ歩いていった。
学校の近くにアパートを借りているのだろうか。
もしくは誰かと待ち合わせをしているのだろうか。
涼太は住所とスマートフォンのGPS記録を確認しながら尾行を続けた。
今のGPS機能はかなり進化している。
自分の歩行した道のりと時間まで正確に記録することが可能だ。
10分ほど尾行を続けると、長谷川は古臭いアパートの中に入っていった。
鍵を取り出して扉を開けている。
部屋は1階の奥から2番目。102号室だ。
涼太は素早く住所を確認し、アパートを見渡した。
かなりのオンボロ木造アパートだ。
学生、もしくは単身者向けなのだろう。
とても2人が住めるような建物には見えない。
涼太は足音を立てずにアパートの裏側に回った。
運が良いことに小さな庭がある。
102号室の窓が見渡せる場所にしゃがみこんだ。
部屋の物音は聴こえない。
涼太はもう少し近づこうと距離を詰めようとした。
その時だった。
ドカン
部屋の中から大きな物音が響いた。
一度だけでない。
数回、何かを叩きつけるような音が聴こえた。
涼太は何事かと思い、窓を覗きこもうと近づいた。
すると今度は玄関方面で大きな音が聴こえた。
ドアが勢い良く開かれた音。
そして急いで走り去る足音。
何者かが、脱兎の勢いで部屋から出て行ったのだ。
涼太は恐る恐る窓から部屋の中を覗きこんだ。
佐伯涼太
……うそ、だよね。
長谷川がうつ伏せに倒れていた。
頭から大量の赤黒い液体が流れている。
金髪を赤く濡らし、床を赤黒く染めている。
壁の一部にも飛び散っていた。
涼太は慌ててアパートの玄関に戻った。周囲を見渡す。
外に誰かが飛び出して行った。
考えるまでもない。誰かが長谷川を殴り、逃げ去ったのだ。まだ近くにいるかもしれない。
しかしアパートの周囲には、どこにも人の姿が見当たらなかった。
涼太はアパートに踵を返した。
震える手で102号室のドアを開ける。
中にゆっくり忍び込んだ。
佐伯涼太
は、長谷川くん……?
返事はなかった。
佐伯涼太
長谷川くん……?
土足で悪いけど、お邪魔するね……?
部屋の中央にうつぶせに倒れた長谷川と、中央から真っ二つに折れたギターが落ちていた。
ギターは真っ赤に濡れ、血だまりの上に浮かんでいる。
畳に真っ赤な液体が染みこんでいる。
壁には血痕と思わしき血飛沫が付着している。
室内には女の香水の匂いと、むせかえるような生臭い血の香りが漂っていた。
部屋の中はそれらのイレギュラーな要因を除けば、ありふれた一人暮らしの男の部屋と何ら変わりない。
佐伯涼太
……長谷川くん!
涼太は長谷川の肩を掴んで呼びかけた。
抱き起こすと長谷川の唇が震えた。
わずかに意識がありそうだ。
佐伯涼太
良かった!
今すぐに救急車呼ぶから!
長谷川潤
……て………
佐伯涼太
え? な、何?
どうしたの?
長谷川潤
い、なり……なぐ、ら、れて……。
長谷川の唇が何かを訴えるよう動いている。
涼太はいけないと思いつつも、尋ねずにはいられなかった。
佐伯涼太
だ、誰に!?
誰にやられたの!?
長谷川潤
……ぎ……
佐伯涼太
ぎ? そ、それってなに!?
誰のこと!?
長谷川潤
……ぎ、ぎたー……
佐伯涼太
ギター?
ギターで殴られたの!?
長谷川くん! しっかりして!
涼太は必死に叫んだ。
しかしそれが長谷川の最後の言葉になり、力なく涼太の腕の中で短い生涯を終えた。
天野勇二
とんでもないことになったな。
佐伯涼太
うん……。
時刻は夜。天野と涼太は警察署の側でタバコを吸っていた。
第一発見者である涼太の長い取調べが終わり、天野は涼太を迎えに行ったのだ。
涼太の両親も迎えに来ていたが、2人で話したいと、席を外してもらっていた。
天野勇二
もうショックは抜けたか?
涼太は力なく頷いた。
顔色が青白い。
いつもの軽薄なチャラ男の面影はなかった。
佐伯涼太
まぁ、なんとか。
いや、あれだね。
死体を見た時ってさ、あんなに恐怖感を覚えるもんなんだね。
天野勇二
誰だってそうさ。
俺だってそうだった。
医学部の天野にそう言われ、涼太は少し安堵した。
天野勇二
長谷川を尾行していたことは言ったのか?
佐伯涼太
いや、後で自宅に遊びに行く予定だった、としか供述していないよ。
天野勇二
そうか。岸野のことを警察に話すべきかもしれないな。
詳しい死因はわからない。だが、部屋に人がいたこと、聞こえた打撲音、血まみれのギター、頭部からの出血、といった状況を踏まえると、誰かが長谷川を待ち伏せしギターで撲殺した、という可能性が高い。
佐伯涼太
長谷川くんは、最後に『ギター』って呟いたよ。
天野勇二
ギター……。
確かにそう言ったのか?
佐伯涼太
うん。たぶんね。
ギターで殴られたことを僕に伝えようとしたのかな。
天野勇二
まぁ、そうなんだろうな。
天野は軽く答えながら、自らのスマートフォンを何度も確認している。
涼太はそれを見て尋ねた。
佐伯涼太
岸野さんと連絡は取れたの?
天野は静かに首を振った。
天野勇二
いや、そもそも連絡先は聞いていない。大学を通じて連絡してもらったが、電話に出やしないんだ。もう待っている時間も惜しいかもしれん。
天野はそう言うとゆっくり警察署に向かった。
佐伯涼太
勇二? どこに行くのさ?
天野勇二
岸野のことを警察に話してくる。
今のところ容疑者として疑わしいのはアイツだ。とっとと科学捜査に解決してもらおう。
お前はもう家に帰れ。
佐伯涼太
うん。わかったよ。
天野は警察署にて、岸野と話したことを供述した。
長谷川と男女関係にあったこと。
恨みがあると言っていたこと。
岸野と連絡がつかないこと。
岸野について調べて欲しいと頼んだ。
そして時を同じくして、岸野の遺体が発見された。
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