翌日。

 天野と奥田は秋葉原の電気街入り口に立った。

 

 奥田は昨日購入したシックなアル◯ーニを着ている。

 天野は不敵な笑みを浮かべながら街を見回し、偉そうに語りかけた。

 

 

天野勇二

見ろよ奥田。
秋葉原を歩く男たちのファッションセンスを。
吐き気がするほどダサイだろう?
これは全て、昨日までのお前だ。

奥田和彦

信じられないね。
流行色も清潔感も気品のカケラも感じられない。
あんな服で外に出るなんて正気を疑うよ。

 

 奥田は街を歩くオタク達を見下して悦に浸っている。

 天野は一度、天狗の鼻をへし折ることにした。

 

天野勇二

だが、お前は『イベリコ』だ。
ブタであることは間違いない。
ちょっと値段の高い脂がジューシーで美味しいただのブタだ。

 

 天野は奥田の肥大した腹を「バチコォーーン」と叩く。

 

天野勇二

いいか。
飛ばない豚はただの豚なんだ。
そしてお前はただのブタだ。
デブはオシャレをしてもデブ。
腹は急にへっこまない。
そのことを忘れてあまり調子に乗るんじゃないぞこのデブ。

奥田和彦

わ、わかったよぅ……。

 

 2人は奥田の行きつけであるメイド喫茶、『メイドにゃんにゃん』へ向かった。

 

天野勇二

よし、行くぞ。

奥田和彦

うん。
昨日までのボクとは違うところを見せるよ。

 

 奥田は勢い良く店の扉を開け放った。

 

 

メイドさん

お帰りなさいませ!
ご主人様!

 

 メイド姿の娘たちが元気よく出迎えた。

 

奥田和彦

や、やぁ……。

 

 奥田が照れ臭そうに手を振ると、メイドたちは素早く奥田に訪れた変化に気づいた。

 

メイドさん

キャァーーー!!!
カンちゃんご主人様!!!
超カッコイイ!!!

奥田和彦

そ、そうかなぁ?

メイドさん

スゴォーーイ!
何かのブランドですかぁ!?

奥田和彦

うん、全部アル◯ーニなんだよ。

メイドさん

キャァァァァァーーーー!!!
素敵じゃないですかぁ!

 

 奥田はこの店の常連客だ。

 そのためか、店中のメイドから喝采を集めている。

 ご主人様のファッションを褒め称えることも、メイドにとって重要な仕事なのだろう。

 天野は「メイドの仕事も大変なんだな」と感じた。

 

 

 テーブルにつくと、奥田は嬉しそうに言った。

  

奥田和彦

天野くん!
みんながボクのこと素敵だって!
カッコいいって!
生まれて初めて言われたよ!

天野勇二

良かったな。
これもお前の努力の結果だ。

奥田和彦

これならマユにゃんも喜んでくれるよね!

天野勇二

イベリコよ、
まだ調子に乗るのは早い。
本番はこれからだ。

 

 他の客と話し込んでいたマユにゃんが、天野たちの下にやって来た。

 

マユにゃん

……えっ!?
カンちゃんどうしたの!?

 

 マユにゃんも優秀なメイドだ。

 ご主人様のオシャレを素早く褒め称えた。

 

マユにゃん

凄くカッコイイにゃん!
カンちゃん素敵すぎる!!!
これまでもカッコ良かったけど、今日は一段と男前にゃん!!!

奥田和彦

でへへ、でへ……。
そお、そおかなぁ……。
ブヒッ、ブヒヒヒヒ……。

マユにゃん

このジャケットも、
この時計も、
すっごくオシャレ!
カンちゃんのセンス最高にゃん!

 

 マユにゃんの反応は上々だった。

 

マユにゃん

……あ、呼ばれちゃったにゃん!
楽しんでにゃん!

 

 マユにゃんは数回言葉を交わすと、他のテーブルへ移った。

 とにかくマユにゃんは人気者だ。

 あちこちのご主人様から声がかかる。

 奥田だけと長話はできないのだ。

 

天野勇二

ふむ……。
イベリコよ、この店は指名とかできないのか?

 

 店内をよく観察すると、メイドはウエイトレスを兼ねながら、時折客と会話を交わしているようだ。

 長時間話し込むことは少ない。

 これでは親交を深めることが難しい。

 

奥田和彦

指名はできるよ。
だけどゲームとかをしなくちゃいけないんだ。

天野勇二

ゲーム?

奥田和彦

これこれ。

 

 奥田はメニュー表を天野に手渡した。

 

天野勇二

ほう……。
この 『あっちむいてにゃんにゃん(500円)』とはなんだ。

奥田和彦

メイドさんと『あっちむいてホイ』が1回できるんだよ。
勝つと褒めてくれるし、負けると罵ってくれるんだ。

天野勇二

『スーパーニャミコン5分(3000円)』とはなんだ。

奥田和彦

メイドさんとTVゲームで対戦できるんだよ。
勝つと褒めてくれるし、負けると罵ってくれるんだ。

天野勇二

『ブロックにゃんにゃん崩し(5000円)』とはなんだ。

奥田和彦

メイドさんとブロックの積み木崩しで遊べるんだ。
これはね、勝つとプラス1000円でツーショットチェキを撮ってもらえるんだ。
ボクはもうマユにゃんに3回勝ったことがあるんだよ。
でも、負けても罵ってくれないから注意してね。

 

 天野はメニュー表を見てため息を吐いた。

 

 どれもこれも高すぎる。

 客をバカにしているのか、と思うほど高い。

 

天野勇二

(だが、実に良くできたシステムだ。これで客単価を上げているのか)

 

 メイド喫茶とは一種の『水商売』だ。

 キャバクラやスナックでは「シャンパン」や「ボトル」を客に入れさせることによって、高い客単価を得ている。

 メイド喫茶ではそれが「ゲーム」になる、という訳だ。

 

 しかもゲームの時間が絶妙に短い。

 人見知りなキモオタでも楽しめる形式だが、長話はできない。

 その場では仲良くなれるかもしれないが、本格的に口説くとなれば邪魔でしかない。

 客から金を引き出すと同時に、メイドを守る役割まで果たしているのだ。

 

天野勇二

イベリコはマユにゃんと連絡先ぐらいは交換したのか?

 

 奥田はブンブンと首を横に振り、

 

奥田和彦

メイドさんとの連絡先交換は禁止だお!

 

 と叫んだ。

 腕を交差させてバツ印まで作っている。

 

天野勇二

そうか……。ふむ、厄介だな。

 

 天野は思案しながらメニュー表を眺めた。

 

 これは難しい。

 

 どう切り込むべきか、天野は灰色の脳細胞をフル回転させた。

 

天野勇二

おいイベリコ、
今日も軍資金は大丈夫だろうな。

奥田和彦

ふっふっふ。
金のことなら任せてよ。

 

 奥田はアル◯ーニのワニ革財布からプラチナカードを取り出した。

 昨日まで使っていたマジックテープのバリバリ財布は天野がゴミ箱に投げ捨てた。

 

天野勇二

よし、邪道だが金とコネクションの力をフル活用しよう。
この天才クソ野郎が最低の女の口説き方を見せてやる。
お前はメニュー表のゲーム全てを、マユにゃんにぶち込め。

奥田和彦

天野くんは? 一緒に遊ぶの?

天野勇二

俺は違うメイドを口説く。
別行動だ。

奥田和彦

イエス、ボス!

 

 奥田は敬礼するとマユにゃんを呼び、一緒に部屋の隅にあるTVゲームで遊び始めた。

 

天野勇二

(さて、どの女にするかな)

 

 天野は店内をぐるりと見回した。

 この男は相手の瞳を見れば、ある程度の心理を読み取ることができる。

 

天野勇二

(……あいつだ)

 

 1人のメイドにターゲットを絞ると、席に呼び寄せた。

 

天野勇二

おーい、ちょっと来てくれ。

???

はぁーい!
なんですかご主人様ぁ。

 

 ブリッコ全開でメイドが飛んできた。

 

天野勇二

君、可愛いよね。
俺と一緒に『ブロックにゃんにゃん崩し(5000円)』で遊んでくれない?

???

はぁい。かしこまりましたぁ!

 

 スカートの上に『メグにゃん』と書かれた名札を貼ったメイドは、満面の笑みで承諾した。

 

天野勇二

(コイツは口が軽そうでノリも良さそう。交友関係も広そうだが、ある程度のブサイクでオタク受けは悪いだろう)

 

 天野は総合的に判断し、メグにゃんを指名した。

 

 メグにゃんは一旦奥に引っ込むと、大量のブロックを持ってやって来た。

 そのまま天野を部屋の隅まで誘導する。

 

メグにゃん

ご主人様、
これやったことあります?

天野勇二

いや、初めてなんだ。
一度もやったことない。

メグにゃん

へぇ、そうなんですかぁ。

天野勇二

どうしてもメグにゃんと遊びたくて選んじゃった。

メグにゃん

わぁい!
メグにゃん嬉しいにゃん!

 

 メグにゃんは満更でもない笑みを浮かべた。

 天野はクソ野郎なことさえ言わなければ、端整な顔立ちの男前だ。

 圧倒的にイケメンの部類に属する。

 キモオタだらけの店内では特に目立っていた。

 

天野勇二

どうやって遊ぶの?

メグにゃん

まずはこうやって、
ブロックを積み上げるんですぅ。

 

 メグにゃんは高さ30cmほどのブロックの塔を作りあげた。

 

メグにゃん

それでぇ、ご主人様と私が交代で、1本ずつブロックを抜いて、上に置いていくんですー。
倒れたら負けですよぉ。

天野勇二

よし、負けないぜ。

メグにゃん

まずはぁ、
にゃんにゃんじゃんけん
先攻後攻を決めまーーす。

天野勇二

……うん?
にゃんにゃ……なんだって?

メグにゃん

にゃんにゃんじゃんけん、はっじまぁるよぉー!!!

 

 メグにゃんは何がそんなに楽しいのか知らないが、笑顔いっぱいに叫んだ。

 

メグにゃん

にゃんにゃんにゃん!

最初はにゃん!

お次もにゃん!

ぐるぐるにゃん!

じゃんけんにゃーん!

 

 天野は顔を引きつらせながらも『にゃんにゃんじゃんけん』をした。

 本心は今すぐに帰りたかった。

 

メグにゃん

あ、にくきゅうパーで、
ご主人様の勝ちでぇーーす!

天野勇二

じゃあ、俺からいこう。

メグにゃん

ご主人様が先行でぇす!

 

 2人は積み木崩しで楽しく遊び始めた。

 初戦は相手のテンションを見極めることにした。

 

メグにゃん

あぁぁーーーー。
ご主人様、倒しちゃいましたー。
残念にゃん!

天野勇二

よしもう1回だ。
メグにゃんに勝つまで続けるぜ!

 

 このゲームは勝つと『チェキを撮る権利』が手に入る。

 本来であれば勝利を目指すべきだ。

 しかし、天野は「ここは負け続けるべき」と判断した。

 

天野勇二

あぁぁぁ。ちくしょーー。
惜しかったのになぁ。

メグにゃん

にゃははは!!!
ご主人様、残念でーーす!

天野勇二

もう1回! もう1回お願い!

メグにゃん

ばっちこいにゃん!

 

 メグにゃんは楽しそうにブロックを組み立てる。

 恐らくこのゲーム1回ごとに『キックバック』が入るのだろう。

 そんな喜び方だ。

 

天野勇二

(なるほど。ゲームをすればするほど、メイドは儲かるワケか)

 

 これで3戦目。

 既に15,000円が店に入ったことになる。

 メイドには50%ほどバックされてもおかしくない。

 良くできたシステムだと天野は心底感心した。

 

 

 

 何度かゲームを繰り返すと、ゲームの話題も少なくなり沈黙の時間が増える。

 そのためゲームしながらメグにゃんが尋ねた。

 

メグにゃん

ご主人様は学生さんですかぁ?

天野勇二

そう大学生。
こう見えても医学部なんだぜ。

メグにゃん

すごいですね!
どこの大学なんですか?

天野勇二

そうだなぁ。
前島悠子って、知ってる?

メグにゃん

えっ!?
もちろん知ってますよ!

 

 前島悠子とは国民的アイドルグループのセンターに立つ娘だ。

 しかも独学で進学し、芸能活動と学業を両立しているスーパーアイドル。

 先日、大学のミスキャンパスにも選ばれた。

 

天野勇二

そいつが通ってる大学だよ。

メグにゃん

じゃあ悠子ちゃん、
見たことありますかぁ?

天野勇二

見たことあるも何も友達だよ。

メグにゃん

えぇぇぇっ!?
ほ、ほんとですか!?

 

 前島とは、ひとつの事件をきっかけに親しくしている。

 最も天野は前島のことを『弟子』としか思っておらず、前島もそれにならって天野のことを『師匠』と呼んでいる。

 

天野勇二

ほら、写真。

 

 天野はスマートフォンを取り出し、前島の写真をメグにゃんに見せた。

 テラス席でふざけている写真や、前島が送ってきた写真などだ。

 

メグにゃん

わぁぁぁ!!!
悠子ちゃーーん!
超かわいいーーー!

私あのアイドルグループ入るの夢なんですよぉ!

 

 この街じゃ前島は神に近い存在だ。

 天野でもそれぐらいは理解している。

 

天野勇二

メグにゃんのほうが、
愛嬌あって可愛いと思うけど。

メグにゃん

いやいやいや!
私と悠子ちゃんじゃ、月とスッポンですよ!

 

 天野は「そうだね」と思ったが、そんな感情は表に出さずしれっと告げた。

 

天野勇二

本人見てるからわかるけど、
メグにゃん負けてないよ。

メグにゃん

そんなぁーー!
ホメすぎですよぅ。

天野勇二

メグにゃんの写真も見たいな。

メグにゃん

わぁ、見せたいですぅ。
でもお店にはケータイ持ち込み禁止なんです……。

 

 ケータイを出させるのは困難か。

 天野は内心舌打ちして、話の方向性を変えた。

 

天野勇二

まぁ、前島とは学部が違うから昼ぐらいしか会わないけどさ。
なかなか大変なんだぜ医学部も。

メグにゃん

やっぱり将来はお医者さんになるんですか?

天野勇二

親父がさ、美容整形とか産婦人科やってるんだ。
そこを継ぐかも。

メグにゃん

えぇっ! 美容整形!?

 

 メグにゃんが食いついた。

 天野は色気を含んだ流し目を送った。

 

天野勇二

そうだよ。
メグちゃんはイジる必要はなさそうだよね。
こんなに可愛いんだもん。

 

 メグにゃんは顔が千切れるんじゃないか、と思うほど首を振った。

 

メグにゃん

そんなことないですよ!
私ブスですもん!
整形したいとこ、いっぱいありますってば!

天野勇二

そうかな? 必要ないよ。

メグにゃん

必要ですって!
鼻だってぺちゃんこだし、目だってぱっちりさせたいし。

天野勇二

ふーん。
まぁ、目頭切開くらいだったら、自然に目が大きくなるからね。
結構おすすめだよ。

メグにゃん

整形ってどうなんですか?
ちょっと怖いんです。

天野勇二

化粧と同じだよ。
つけ睫毛つける感覚かな?

 

 メグにゃんはアイテープを使っており、一重の瞳を広げようと努力している。

 確かに瞳の整形は効果的だろう。

 

メグにゃん

えー。
じゃあやってみたいなぁ……。

天野勇二

あはは。
メグにゃんがメイドさんじゃなかったら、安くて腕の良いとこ紹介できるのにね。

 

 天野は餌を撒き始めた。

 

メグにゃん

残念……。しょんぼり……。

天野勇二

それよりつみき崩しやろうよ。

メグにゃん

はぁーーい!

 

 

 2人はまたゲームに熱中し始めた。

 

 ギリギリのところで天野が負けて、もう一度再戦を要求、といったサイクルだ。

 キックバックをこれでもか、と送りつけた。

 

 

 天野は会話の途切れたタイミングで尋ねた。

 

天野勇二

メグにゃんはオフの日何してるの?

メグにゃん

やっぱり買い物が多いかなー。
最近原宿によく行きます。

天野勇二

俺も原宿はよく行くな。
馴染みの美容院があるから。

メグにゃん

原宿いいですよね!

天野勇二

いいよね。
メグにゃんが一緒だったら色々買ってあげちゃうなー。

メグにゃん

わぁ、学生さんなのに、
やっぱりお金持ちですねぇ。

天野勇二

違うって。
メグにゃんが可愛いからだよ。

メグにゃん

そんなお世辞は信じませんよぉー。
でも、ご主人様となら楽しそう!

 

 ここで天野は勝負をかけることにした。

 ぐぐっとメグにゃんに顔を近づける。

 

天野勇二

じゃあ、今度一緒に行こうよ。
メイドとご主人様じゃない関係で。

メグにゃん

えぇーー?
どんな関係ですかそれ。

天野勇二

ただの友達じゃん?
俺と前島悠子の関係と同じだよ。

メグにゃん

友達ですかぁー?

天野勇二

そうそう、いいじゃん。
行こうよ。

メグにゃん

でもぉ……。
メグにゃんはメイドさんだしぃ。

 

 天野は小声でメグにゃんに囁いた。

 

天野勇二

俺、わりと物覚え良くてさ。
30桁までだったらアルファベット英数字、その場で暗記できるんだ。

メグにゃん

えぇっ! すごい!

天野勇二

だからさ、
ぱぱっとメアド言ってみな。

メグにゃん

えぇ? ダメですよぉ。
メイドさんとの連絡先交換は禁止なんですよぉ。

天野勇二

交換じゃないって。
ただメグにゃんが呟くだけさ。

メグにゃん

んんーー。そうかなぁ?

天野勇二

メグにゃんのこと、よく知りたいんだ。
前島の話とか、美容整形の話も、できると思うし。
それに、マジでここだけの話だけど……。

 

 天野はメグにゃんに近づき、耳に手をあてて囁いた。

 

天野勇二

二重程度の整形だったら、タダにできるよ。

 

 メグにゃんはビックリして天野を見つめる。

 天野は自信たっぷりの笑みを浮かべ、色気を含んだ視線でメグにゃんを見つめ返す。

 

 実際のところ、天野には整形手術をタダにできるほどのコネはない。

 いざとなれば話自体ぶち壊せばいいし、奥田に払わせる手もある。まぁ最悪俺様が切ればいいんだ、ぐらいのことを考えていた。

 

天野勇二

いいじゃん。いいじゃん。ほら。

 

 天野は自分に耳打ちするよう、メグにゃんに催促した。

 

メグにゃん

で、でもぉ、
それは良くないんですよぉ……。

 

 メグにゃんはまだ迷っている。

 天野は小さく笑うと、メグにゃんの背中を押す決定的なフレーズを吐いた。

 

天野勇二

軽く考えればいいじゃん。
大したことじゃないよ。
いつか前島も連れて遊びに行こうぜ。

 

 

 

 メグにゃんの思考回路が止まった。

 

 

 

天野勇二

(さぁどうだ。医者の息子のボンボンかつ芸能人のダチだ。お前の好きなアイドルに会えるかもしれんのだぞ。早く乗ってこい)

 

 メグにゃんは周囲をきょろきょろと見回す。

 誰も自分たちに注目していない。

 そっと天野の耳元に唇を近づけた。

 

メグにゃん

エル、オー、ブイ、イー、アール……

 

 よしもらった。

 天野は灰色の脳細胞にメグにゃんのアドレスを叩き込んだ。

 

 メグにゃんがアドレスを言い終えると、天野は畳み掛けるように囁いた。

 

天野勇二

ついでだからさ、
電話番号も言っちゃいなよ。

メグにゃん

えぇーー。でもぉ……。

天野勇二

言うだけ言うだけ。
ほらほら。早く早く。

メグにゃん

えっとぉ……。
080……

 

 メグにゃんは天野に電話番号を囁いた。

 

天野勇二

うん、もう覚えた。

メグにゃん

ホントに覚えたんですかぁ?

天野勇二

後で連絡してあげるよ。
今度はいつがお休み?

メグにゃん

明日ですぅ。

天野勇二

暇してる?

 

 メグにゃんは周囲を警戒しながらコクンと頷いた。

 

天野勇二

じゃあ、きっと特別な日になるよ。
これからは『私は前島のダチだけど?』って、大きな声で言えるさ。

 

 天野は爽やかな笑顔を浮かべた。

  

 その裏に隠された黒い笑顔に、メグにゃんは残念ながら気づくことができなかった。

 

 

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つばこ

また、本日から「火曜日」と「土曜日」にて連載させていただくことになりました。
これも全て応援していただいている読者の皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!
これからもcomicoノベルがどんどん盛り上がっていくよう頑張ります!
「毎日comicoノベルを開かないと落ち着かないよぅ」
なんてことを思っていただけるまで頑張ります!!!!
是非とも天才クソ野郎と火曜日のcomicoノベルの応援、よろしくお願いいたします!!ヽ(*´∀`*)ノ.+゚

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コメント 284件

  • rtkyusgt

    俺様が切ればいいんだ

    とか恐怖((( ´ºωº `)))

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  • phenyl

    クソ野郎恐ろしいわwwww

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  • ゆんこ

    こわい

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  • ゆめおぼろ@天クソ/パステル

    めぐにゃん頑張りすぎだよ

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  • マッチョッチョ

    天才クソ野郎じゃないただのゲス野郎だ

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