ついに……ついに!
天野くん以外のキャラにイラストがついたよぉ(´;ω;`)ブワァ
次週は涼太くんも登場しますが、ちゃんとイラストがあるのでご期待ください!
小さいので分かりにくいですが、前島ちゃんはとっても可愛いし、涼太くんはチャラカッコイイです!
素敵なイラストをありがとうございます!!!
今回は区切りの良い所まで書きたかったので、少々長めの文量(約2話分)となってしまいました。
いかがでしょうか? もうちょっと短いほうが読みやすいでしょうか?
高木と別れると、天野はキャンパスを駆け抜け、ひとつの校舎の2階を目指した。
2階のフロアには様々なサークルの部室が並んでいる。
その中のひとつに「メディ研」の部室はあった。
部室の壁にはミスコン出場者たちの顔写真が掲示されていた。
ミスコンの投票は学園祭当日に開催されるが、事前人気を調査するため、顔写真の下に「小さな丸いシール」を貼るスペースが設けられている。
シールの数だけ人気が高い、ということだ。
前島悠子の顔写真の下には、シールが隙間なく貼られている。
余白がない。
他にエントリーしている娘の10倍はあるだろう。
天野勇二
チッ、本当にぶっちぎりの最下位だ。
天野に依頼を持ちかけた高木美穂の下には、申し訳程度に1枚のシールが貼られているだけ。
天野は格差社会の厳しさを感じた。
天野勇二
邪魔するぞ。
天野はノックもせず、メディ研の扉を開け放った。
白衣を着た突然の来訪者に部員たちは仰天している。
???
あ、天野じゃないか!
一番奥の席に座っていた男が立ち上がった。
天野勇二
久しぶりだな。
会うのは2年ぶりかな?
葛西と呼ばれた男は戸惑いながらも、笑顔を浮かべて天野を出迎えた。
葛西駿
そうだな。
その節は本当に世話になったよ。
天野がうちの部室に来るなんて珍しいこともあるもんだ。
天野勇二
お前と話がしたくてな。
時間をもらえないか?
葛西駿
残念だけど、今は来週のミスコンの打ち合わせ真っ最中なんだ。
時間を取れそうにもないよ。
この葛西という男はメディ研の部長だ。
ミスコンを仕切る代表者。
この時期は嘘ではなく本当に忙しい。
天野勇二
冷たいことを言うなよ。
天野は馴れ馴れしく近づき、葛西の肩を抱いた。
天野勇二
久しぶりに顔を合わせるんじゃないか。
まさに旧友の再会だ。
前回は色々なトラブルがあったよなぁ。
葛西の顔が「ギクッ」と固まった。
天野勇二
あの時はお前が泣きついて来たんだよなぁ。昨日のことのように覚えてるぜ。医者の息子である俺様にアフターピ……
葛西駿
ちょ、ちょっと待て!
慌てて天野の言葉を静止させる。
葛西は部員たちを見渡して告げた。
葛西駿
す、少し休憩しよう。
15分後に再開だ。
テレビコマーシャル撮影後のスケジュールについて、もう一度ミーティングしよう。
葛西はため息を吐きながら天野に向き直った。
葛西駿
非常階段に喫煙所がある。
そこで話そう。
天野勇二
ああ、助かるぜ。
天野は満足気に頷き、葛西の肩を抱いたまま喫煙所へ向かった。
2人は喫煙所に人気がないことを確認すると、お互いにタバコを取り出した。
葛西駿
本当に今は忙しいんだ。
手短に頼むよ。
タバコに火をつけながら懇願する。
葛西駿
……あと、頼むから昔のことを、皆の前で話さないでくれよ……。
天野勇二
あっはっは!
別にバラすつもりはないさ。
俺の口は固い。
ただ葛西に素直になって欲しかっただけさ。
葛西駿
そうであって欲しいと願うよ。
それで、話ってのはなんだ?
天野勇二
ミスコンのことを聞きたくてな。
葛西駿
ミスコンだって?
お、お前、ミスコンに興味があったのか……?
天野勇二
おいおい葛西よ。
俺もこの大学を愛する学生だぜ?
誰が大学を代表する美女に選ばれるのか、とても気になるじゃないか。
葛西は訝しげに天野を見つめた。
絶対に嘘だ。
このクソ野郎はミスコンに興味を抱くような男ではない。
葛西は念の為、天野に釘を刺した。
葛西駿
……なぁ天野、ミスコンを潰そうなんて、考えてないよな?
天野勇二
ほう?
なぜ、そんなことをしなければならない?
葛西駿
いいか。ミスコンは学園祭のイベントってだけじゃない。沢山の企業がスポンサーとして参加し、莫大な金が動いているんだ。
天野勇二
そうだな。
さすが俺様の通う大学だ。
葛西駿
天野がストーカーを潰したり、殺人犯を警察に突き出すのとは訳が違うんだぞ。
ミスコンに手を出そうなんて、考えてないよな?
天野勇二
いくら野蛮なクソ野郎でも、そんな馬鹿なことはしないさ。
俺様が訊きたいのは、誰がミスに選ばれるのか、ということだ。
葛西は「あはは」と軽く笑うと、天野の肩をぽんぽんと叩いた。
葛西駿
ミスは一般生徒や来場者の投票で決まる。結果はその日じゃないとわからないさ。俺だって誰が選ばれるのか楽しみだよ。
天野勇二
いや、もう決まっているだろう?
天野は嫌みったらしい笑みを浮かべると、葛西の顔の前で指先をパチリと鳴らした。
天野勇二
さっきお前は 『テレビコマーシャル撮影後のスケジュール』と言った。
なぜミスが決まってもいないのに、今から撮影後のスケジュールを打ち合わせている?
しかもただの学生ならば、スケジュールの打ち合わせなんて不要だ。
もし必要があるとすれば、多忙な人物の場合だけ。
つまり前島悠子……。
このアイドル様がミスになる。
そう決まっているんだろう?
葛西駿
お、お前、何を言ってるんだ。
そんな訳ないじゃないか……。
動揺してたじろぐ葛西に、畳み掛けるように言った。
天野勇二
それに俺は独自の情報網を持っている。
天才クソ野郎は地獄耳なんだ。
前島がミスに選ばれるシナリオは耳にしているさ。
葛西駿
……な、なぜだ。
なぜそれを知っている。
誰から聞いたんだ!?
その言葉を聞くと、天野はニヤリと下品な笑みを浮かべた。
天野勇二
そうか。
やはり前島がミスになるのか。
ここで葛西はハッタリを仕掛けられていたことに気づいた。
葛西駿
天野……。
お前、ハメやがったな……。
天野勇二
葛西が単純なだけさ。
さすがトップアイドル。
歴代ミスが束になっても勝てやしない、というワケか。
ミスコンの歴史に新たな伝説が生まれるな。
改めて周囲に人がいないのを確認すると、葛西は怯えたように言った。
葛西駿
頼むよ。内緒にしてくれ。
ミスコンがデキレースなんて知られたくない。
天野勇二
それはお前の態度次第だな。
中途半端な情報では喋ってしまうかもしれないぜ。デキレースも、お前の過去のネタもな。
実に嫌みったらしい言葉だ。
葛西の不快感を刺激している。
――これを隠し通すのは不可能だ。
葛西はため息を吐きながら言った。
葛西駿
……くそ、わかったよ。
この話はオフレコにしてくれ。
確かに前島悠子がミスに選ばれる。
スポンサー様からの強い要望だ。
天野勇二
なるほどね。
そのために振り回されるお前も大変だな。
葛西駿
本当だよ。
もはやミスコンは学園祭のイベントなんかじゃない。
ひとつのコマーシャルだ。
規模が大きすぎて、俺たちがコントロールできる権限なんてほとんどない。
もう前島の撮影日、出演する番組、雑誌のインタビュー……。
全てのスケジュールは決まってるんだよ。
天野勇二
それはそれは。
天野は両手を広げ、何かが弾け飛ぶような仕草を見せた。
天野勇二
誰かさんが、どかーんと台無しにしたら、困ることになるんだろうなぁ。
葛西は慌てて天野の肩を掴んだ。
このクソ野郎なら、やりかねない気がする。
葛西駿
おい天野、頼むよ。
ミスコンには手を出さないでくれ。
何度も広告代理店と打ち合わせしてるんだ。
俺たちの将来もかかってる。
マジで頼む。
天野勇二
クックック……。
イヤだと言ったら?
葛西駿
あ、天野!
冗談はやめろ!
何を考えてんだよ!?
葛西はもう泣きそうな表情だ。
それも無理はない。
葛西としてもミスコンは自らの将来をかけた一大イベントだ。
ミスコンが成功すれば大手広告代理店とのコネができるが、失敗すれば全て失ってしまう。
天野なんかに邪魔をされては困るのだ。
天野勇二
わかってるよ。
葛西、冗談だ。
葛西駿
ほ、本当だろうな……?
天野勇二
ああ、さすがにお前の将来まで潰すつもりはないさ。
ついでに教えて欲しいんだが、準ミスは誰がなるんだ?
葛西駿
準ミスか……。
葛西は困ったように顔を伏せた。
葛西駿
準ミスはナシ、でいく話になっている。
天野勇二
なぜだ?
葛西駿
前島の予定が決まりすぎていて、準ミスの入る隙間がない。
そしてスポンサー様は、前島を準ミスなしの『最強女王』として売り出したい。
そう考えてるんだ。
天野は腕組みをしながら頷いた。
天野勇二
そうか。
前島というトップアイドルと並ばせるには、一般の女子大生では差がありすぎる。
どうせ注目もされず、前島の足を引っ張るだけ、ということか。
葛西駿
前島悠子の人気は絶大だからな。
この最強アイドル様に匹敵する学生なんかいないよ。
天野勇二
候補者には過去のミスもいるのに、前島は他を寄せ付けないほどの圧勝劇を見せるのか。
ミスの肩書きを持っていても、所詮はアイドルの『当て馬』かつ『踏み台』として利用される定め、ってことか……。
葛西駿
仕方ないさ。
候補者はもちろん、うちの大学にとってもメリットはある。
前島悠子の人気を最大限に利用したいと、誰もが考えているんだ。
葛西はそこまで言うと時計を見た。もう15分経過している。懇願するように言った。
葛西駿
そろそろいいか?
本当に今は忙しいんだ。
天野勇二
ああ。
手間を取らせて悪かったな。
葛西駿
いや、いいんだ。
頼むから、ミスコンをぶち壊さないでくれよ。
念を押すと、葛西は喫煙所を出て行った。
天野はしばし、タバコの紫煙を眺める。
やがて肩を落としながら、
天野勇二
……これは無理だ。
このデキレースは覆せん。
どうしたものか……。
と呟き、途方に暮れていた。
その後、天野は夜遅くまで大学に残り続けた。
時刻は21時を過ぎているが、まだ校舎には明かりが灯っている。夜学部のために夜間講義が開かれているのだ。
夜間講義は単位が足りない学生や、履修の調整に失敗した学生も受講することができる。学生であれば基本的に誰でも参加できる講義だ。
天野は講義室に入ると、お目当ての娘を見つけて隣に座った。
天野勇二
やぁ、前島さん。
遅くまでお疲れ様。
前島は隣に座った男を驚いて見つめた。
白衣を着た長身の男。
目つきが鋭いが顔立ちは整っている。
少なくとも前島の知人ではない。
だが、一度だけ見たことがあった。
いつかどこかで、もう一度、再会して御礼を言わなければならない。
そう、考えていた相手だった。
前島は瞬時に表情を切り替えると、
前島悠子
あなたのこと知ってます。
天野さんですよね。
と言って、純真無垢な笑みを浮かべた。
天野勇二
ほう?
俺のことを知っているのか?
前島悠子
友達から聞いたんです。
白衣を着た背の高い人は学園の有名人なんだよって、教えてくれたんですよ。
天野勇二
どうせ野蛮なクソ野郎だとか。
大学の問題児だとか。
白衣を着た悪魔だとか。
ボロクソに言ってたんだろう?
前島悠子
えへへ。
そんなことありませんよ。
前島は朗らかに純真無垢な笑顔を浮かべている。
天野はじっとその顔を見つめた。
天野勇二
(相変わらず、笑顔だけは上手く作る女だ)
この娘と出会ったのは入学式の時だった。
無愛想で近寄りがたい雰囲気をまとっているのに、いざ営業スマイルに切り替えると、抜群の愛嬌を振りまき周囲を魅了する。
この娘が放つオーラは明らかに違う。
愛嬌を振りまく態度そのものが、一般人とは桁違いに優れている。
根本的な仕草が洗練されているのだ。
天野は得意の偉そうな言動を引っ込め、できるだけ爽やかに語りかけた。
天野勇二
ずっと話しかけたいと思っていたんだが、君には取り巻きが多すぎる。
1人になるタイミングを伺っていたら、こんな時間になっちまった。
前島は嬉しそうに瞳を輝かせた。
前島悠子
私が1人の時を待っていたんですか?
天野勇二
どうしても話がしたくてね。
前島悠子
ありがとうございます。
お世辞でも嬉しいです。
心から嬉しそうに純真無垢な笑顔を浮かべている。
天野勇二
(……なんだこの女、落ち着かないな)
不思議と居心地の悪さを感じた。
天野が偉そうな言動で場を支配するのであれば、このアイドルは純真無垢な笑顔で場を支配している。得意のペースに持ち込むのが困難だった。
前島悠子
天野さん、お芝居が上手ですよね。
役者さんなんですか?
天野勇二
役者? この俺が?
前島悠子
はい。
背も高いですし、スタイルも良いですし、舞台映えしそうですよねぇ。
天野勇二
あはは。
冗談じゃない。
俺は芝居なんて御免だよ。
前島悠子
そうなんですか?
入学式の時は、お芝居の練習をしてましたよね?
天野勇二
芝居の練習?
君は何のことを言ってるんだ?
前島は純真無垢に微笑んだ。
前島悠子
襲ってきた男の人を取り押さえて私を救う……。
まるでヒーローショーみたいな 『お芝居』をしていたじゃないですか。
天野は思わず真顔になった。
前島は嬉しそうに微笑んでいる。
満面の笑みだ。
笑顔の周囲に「にっこり」という擬音が踊っているかのようだ。
前島悠子
あの時は、本当にありがとうございました。
ぺこり、と頭を下げる。
前島悠子
御礼も言わずに立ち去ってしまい、本当にごめんなさい。
お怪我はありませんでしたか?
天野勇二
あ、ああ、まぁ……。
前島悠子
あっ、お怪我はしませんよね。
えへへ、お芝居なんですもん。
天野は唖然として前島を見つめた。
――この女はなんだ。
天使のように汚れなき笑顔を浮かべているのに、心の中はまるで違うように感じた。
前島悠子
……天野さん?
前島が小首を傾げながら前方を指さしている。いつの間にか講師が入って来ていたようだ。講義が始まっている。
天野はしばし、黙って講義を受け始めた。
天野勇二
(……抜け目ない女だ。俺たちの演技を見破っていたのか)
天野は静かに深呼吸し、気分を切り替えた。
講義の隙を狙って小声で話しかける。
天野勇二
来週のミスコン、君が優勝するらしいじゃない。
前島悠子
そんなのわかりませんよ。
皆さん綺麗な方ばかりです。
様々なスケジュールが決まっているのに、前島は自然にとぼけた。
一瞬、葛西の言っていたことが嘘なのではないか、と天野は疑った。
そうではない。
前島のとぼけ方が巧みなのだ。
天野勇二
俺は君に投票するよ。
前島悠子
やった。
一票いただきました。
天野勇二
みんな君に投票するね。
前島悠子
優勝できますか?
天野勇二
きっとね。
前島悠子
やった。
パチパチ。
講義中に話しかけてくる天野に対しても、まったく迷惑な素振りを見せない。純真無垢な笑顔を浮かべて切り返している。
天野はしばらく前島を観察し、ひとつの結論に至った。
天野勇二
(認めるしかないな。想像以上の小娘だ。これがアイドルというものか)
天野は困ってしまった。
この娘は格が違いすぎる。
高木と前島が「ただの学生」という土俵で争っても、高木が前島に勝てることはないだろう、と感じた。
天野勇二
(それだけじゃない。この小娘は、腹に何かを隠し持ってやがる)
天野は黙って席を立った。
前島が驚いて天野を見上げる。
前島悠子
講義を受けないんですか?
天野勇二
ああ、この講義は3年前に受けた。
前島悠子
えっ?
じゃあどうして来たんですか?
天野勇二
前島さんと友達になりたくてね。
前島は心の底から嬉しそうに微笑んだ。
前島悠子
やった。
友達ゲットです。
大学の友達、沢山欲しいんです。
天野勇二
そう。じゃあまたね。
前島悠子
はい。
別れを告げ、こっそりと講義室を抜け出した。
天野勇二
(あれは駄目だ。高木があれに勝ってミスになるなんて、あり得ない)
天野ほどの傍若無人なクソ野郎でも、いつもの調子を出すのが難しい。人間、上には上がいるなと、素直に感心していた。
翌日の昼時。
天野はテラスで思案していた。
ミスコンの開催を潰すのは困難。
デキレースによって勝敗は決まっている。
おまけに前島というアイドルが強敵すぎる。
何もかも八方塞がりの状況だ。
天野勇二
(さぁ、これは難問だ。どうすればいい? どうやって、高木をミスコンで優勝させればいいんだ……?)
思案しながらコーヒーを飲んでいると、1人の娘がテラスに上がって来た。
前島悠子
天野さーん!
こんにちは!
私のこと覚えてますか?
天野は仰天して来訪者を見つめた。
アイドルの前島悠子だ。
うどんをお盆に乗せて、純真無垢な笑顔を浮かべている。
天野は驚きながらも、いつもの偉そうな口調を引っ張り出した。
天野勇二
お、覚えているさ。
アイドルが俺様の根城に入って来るとは、珍しいこともあるものだ。
前島悠子
今日はお昼に来れたんです。
ご一緒してもいいですか?
天野勇二
まぁ、そりゃ、構わないが……。
前島悠子
じゃあ、一緒に食べましょう。
平然とテーブルにお盆を置き、嬉しそうにうどんをすすり始めた。
天野勇二
このテラスには野蛮なクソ野郎がいるから近づくなって、友達に言われなかったのか?
前島悠子
はい、白衣を着た人殺しがいるから、ここには行っちゃダメだと教わりました。
天野勇二
それなら、どうして来たんだ?
前島悠子
天野さんとお友達になりましたから。
澄んだ瞳を輝かせながら天野を見上げた。
前島悠子
お友達と一緒にお昼を食べるのは、普通のことじゃないですか?
天野は本当に困ってしまった。
これは強敵だ。
クソ野郎の凶暴な噂を知り、それでも近づく娘と会うのは初めてだった。
天野勇二
大丈夫か?
俺の周囲は敵だらけなんだぜ。
無理やり大げさなジェスチャーを振り回し、前島に語りかけた。
天野勇二
近づくと、君も危険かもしれないなぁ。実はな、俺様は事件屋みたいな趣味を持っているんだ。
前島はうどんをすする手を止め、どこか嬉しそうに頷いた。
前島悠子
それも聞いてます。
天野さんにお昼を奢ると、依頼することができるんですよね。
天野勇二
そんなことも知っているのか?
前島悠子
友達が教えてくれました。
評判は悪かったですけど。
前島は天野の顔を覗きこみ、にんまりと無垢な笑顔を浮かべた。
前島悠子
でも、良い噂も聞いてます。
女の子につきまとうストーカーを退治したり、困っている女の子に病院を紹介した、って。
おまけに殺人事件を解決した、って噂もあるんですよ。
天野さんって凄いんですね。
天野勇二
まぁな、その程度であれば、天才クソ野郎にかかれば全てうまくいくのさ。
前島は嬉しそうに手を叩いた。
前島悠子
ああぁっ!
友達が言ってた通りです!
天野さんって『天才クソ野郎』というあだ名なんですよね!
それにキザったらしい台詞をよく喋るって!
両手を広げ、天野の仕草を真似している。
前島悠子
天才クソ野郎にかかれば全てうまくいくのさ……って!
あはは!
やったぁ!
生で見れました!
天野はギリギリと歯ぎしりをしながら、腹を抱えて笑っている前島を睨みつけた。
天野勇二
(おい、なんだ。この女はなんだ。変わった女だ。チッ、やりにくい……)
心の中で何度も舌打ちを繰り返す。
自分のペースに乗せることが難しい。
無理やり話題を切り替えた。
天野勇二
だがな、変わった依頼もあるんだぜ。この間は1人の女から、こんなことをお願いされたよ。
前島悠子
へぇ、どんなお願いですか?
天野勇二
来週のミスコンで優勝したい、とな。
笑ってしまうだろう?
君がエントリーしているのに、無謀なことを願う女がいるものだよ。
前島はしょんぼりと肩を落とした。
前島悠子
それは困りました。
私ミスコンで優勝したいのに、天野さんに邪魔されてしまいます。
どうしましょう。
……あっ、そうだ!
何かを閃いたように呟くと、前島は自らの鞄を漁り始めた。
中から財布を取り出す。
そして、数枚の小銭を差し出した。
前島悠子
はいどうぞ。
天野勇二
これはなんだ?
前島悠子
300円です。
天野勇二
それは見ればわかるぜ。
前島悠子
これで、うどんにかき揚げをトッピングできますよ。
天野勇二
そうだな。
前島悠子
だから、お願いです。
前島は胸の前で両手を組み、潤んだ瞳で天野を見上げた。
前島悠子
天野さん、私をミスコンで優勝させてください!
天野は呆然と目の前のアイドルを見つめた。
12,023
ついに……ついに!
天野くん以外のキャラにイラストがついたよぉ(´;ω;`)ブワァ
次週は涼太くんも登場しますが、ちゃんとイラストがあるのでご期待ください!
小さいので分かりにくいですが、前島ちゃんはとっても可愛いし、涼太くんはチャラカッコイイです!
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