会社員の場合、お金や生活に関する手続きは会社が代行してくれていたはずですが、退職を迎えてしまうと、それらの多くは自分で行うことになるため、きちんと理解していなかったために損してしまったということもありえます。
退職後の生活に向けた準備をしっかりと行うことで、より楽しく豊かなセカンドライフを迎えたいものです。
ポイント1:失業給付金を受け取るか?
意外に思われるかもしれませんが、定年による退職でも、失業給付(正確には雇用保険の基本手当)を受け取ることができます。ただし、いくつかの条件とデメリットもありますので、注意しましょう。
1.失業給付金を受け取る条件
失業給付を受け取るには、以下の条件があります。
- 退職まで最低でも6ヵ月雇用保険に加入し保険料を支払っている
- 65歳未満である
- 働く意思があり、健康上働ける能力がある
- 求職活動をしているが、就職ができない状態である
2.失業給付金を受け取るデメリット
- 失業給付を受けている間は、老齢年金が受給できない
- 決められた日にハローワークへ行き、求職活動の状況などを報告する必要がある
3.受け取る場合に必要な書類
雇用保険被保険者証、離職票など必要書類をそろえてハローワークに提出することで、失業認定がされます。
- 雇用保険被保険者証
従業員本人が保管している場合と会社が保管している場合があります。ハローワークへの提出に加え、年金受給申請においても必要になります。 - 離職票
退職後、会社から送られてきます。離職票とは別に、ハローワークや再就職先から「退職証明書」の提出を求められる場合があります。退職証明書は所属していた会社に発行を依頼します。
4.FPからのアドバイス
「退職をすると、『さすがに少しは休みたい』と思われる方も多いかもしれません。
失業給付には受給期間延長という制度があり、本来の受給期間である1年に加え、最長1年間(60歳以上の定年退職などではなく、病気・けが・妊娠・出産などは最長3年)の延長が可能です。
60歳以上の退職者の場合は、この期間を利用して、心身を休めたり、やりたかったことに挑戦してみるという選択肢をとることもできます。
延長手続きは、離職日の翌日から2ヶ月以内に行う必要があります。またそのようなプランをたてるときは、しっかりとライフプランニングシートに記入して、支出と預貯金のバランスをとるようにしましょう。
ポイント2:いまの会社の健康保険を任意継続するか?
退職をすると、基本的には会社の健康保険に加入する資格を喪失し、国民健康保険に改めて加入することになります。
しかし、退職から2年以内なら会社の健康保険への加入を任意で継続することもできます。
注意したいのが、退職日の翌日から20日以内にいずれかを選択しなければならない点です。あらかじめ慎重に検討しておきましょう。
それでは、会社の健康保険を継続する場合と、国民健康保険に切り替えた場合とではどんなメリットとデメリットがあるのか見ていきましょう。
1.健康保険を任意継続する場合
<メリット>
給付額や保障内容は現役時代とほぼ同様に継続されるため、比較的手厚い保障が受けられます。しかも、本人だけではなく扶養家族も対象です。
<デメリット> 在職中は会社と折半で負担していた保険料が加入者の全額負担になるため、保険料はおおむね倍額になります。(厳密には、上限が設けられているため倍額とまではならなかったり、退職時の標準報酬月額に住所のある都道府県の保険料率を乗算した額等で計算するなどさまざまです)
2. 国民健康保険に切り替える場合
<メリット>
収入が低かったり、減免措置を受けられることで、保険料が抑えられることがあります(市区町村によって保険料は異なる)。
<デメリット>
扶養家族は保障対象になりません。本人以外の扶養家族も国民健康保険に加入する必要があるため、保険料が人数分発生します。
3.国民健康保険に切り替える場合に必要な書類
- 健康保険証
国民健康保険に切り替える場合、退職とともに、会社に返却します。有給休暇消化などで最終出社日と退職日が異なることもあるので、念のためにコピーしておきましょう。 - 健康保険被保険者資格喪失証明書
健康保険証の返却と引き換えに会社から渡されます。
4.FPからのアドバイス
保障が手厚い会社の健康保険がきく現役のうちに、歯の治療を済ませたり、人間ドックで検査して必要なら治療をするなどして、健康状態を万全にした状態でセカンドライフに入ることも意外に重要です
会社の健康保険の任意継続は原則2年の期間限定です(会社の健康保険組合によってはもっと長く加入できることも)。
つまり、いつかは国民健康保険に切り替えることになるわけですが、前年度の所得などによって給付額が算定されるため、退職後すぐにしてしまうと、高額になることもありえます。
まずは任意継続を選択するのが一般的にはおトクになりやすいでしょう。
ポイント3:公的年金や確定申告の書類は万全か?
1.公的年金受給用の年金手帳
公的年金は支給開始年齢になっても自動では支給されず、本人が請求しなれば受け取ることができません。その際に必要なのが年金手帳です。
年金手帳は会社が保管している場合があるので、勤務先に確認しておきましょう。
なお、その他の書類は日本年金機構から送られてきます。くわしくは日本年金機構のウェブサイトにてご確認ください。
2.確定申告用の源泉徴収票
会社員のときは毎月の給料から所得税が天引きされ、会社が年末調整を行うことで所得税額の過不足が正しく精算されていました。
なので、確定申告を行った方は少ないかと思います。 当然、退職してしまうと会社は代行してくれないので、ご自身で手続きを行わなければならなくなります。
退職時に退職金を受け取りながらも”退職所得の受給に関する申告書”を提出していない場合や、退職後に再就職をしなかった場合は、申告を行ったうえで、過不足金を精算する必要があります。
ここで必要になるのが源泉徴収票です。過払いした税金が還付される場合もあるので、しっかりと確認しましょう。
くわしくは国税庁 タックスアンサーのウェブサイトにてご確認ください。
まとめ
定年退職であっても、場合によっては失業給付が受けられるので検討してみましょう。また、会社の健康保険を継続することもできるので、国民健康保険とくらべてどちらの方がメリットを得られるか確認してみましょう。
会社が設けている制度やご自身の状況によって選択する道は異なるので、定年退職までにあらかじめ検討しておきたいですね。