ある日突然の病気や怪我……働くことが難しくなり、生活費の捻出が厳しくなる可能性があります。
私たちの生活は何が起こるか分からないため、万が一に備えておかなくてはいけません。
「障害年金」は、そんな不安を解消してくれる公的年金の一つです。
50代は、様々な病気のリスクが高まる年代でもあります。いつなにが起きるかわからないからこそ、障害年金について知識を深めておくと良いでしょう。
今回は、「もしも」の場合に役立つ、障害年金の基本情報や支給額、請求方法を解説します。
意外と知られていない障害年金制度
「年金」と聞くと、老後の生活を支えるものというイメージが一般的です。
しかし、公的年金には様々な種類があり、障害年金は不慮の病や事故によって仕事はもちろん、生活が困難になったときに支給される社会保障制度です。
大きな特徴は、現役世代であっても保険料の納付要件などの条件を満たしていれば受給の対象となる点です。
また障害年金は、三大疾病と呼ばれるがん、脳卒中、心疾患などありとあらゆる傷病が対象となり、障害認定されることで受給ができます。
あらゆる傷病とは、主に下記の3種類に大別できます。
・外部障害・・・・・・手足、眼、聴覚などの障害
・精神障害・・・・・・うつ病、認知障害、知的障害、統合失調症、発達障害など
・内部障害・・・・・・心疾患、糖尿病、がん、糖尿病など
内閣府による「平成30年版 障害者白書」によると、障害をお持ちの方は936万人おり、障害年金を受給している方は208万人となっています。
つまり700万人以上の方が、制度を活用できていないのです。
「いまは健康だから」という考えは一度忘れて、将来のために備えておきましょう。
障害年金の種類と支給要件を理解しておこう
ありとあらゆる傷病が対象と説明しましたが、「初診日要件」「障害状態該当要件」「保険料納付要件」を満たさなくてはいけません。
障害年金は、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類と、一時的に支払われる「障害手当金」、配偶者がいる場合の「配偶者加給年金」があります。障害年金の受給要件と種類について説明します。
障害年金の受給要件
障害年金を受給する3つの要件を解説します。
①初診日要件
障害の原因となった傷病について、初めて医師(歯科医師を含む)の診療を受けた日が特定できること。
傷病や障害が特定された日ではなく、初めて病院に訪れた日になりますので、注意が必要です。
②障害状態該当要件
一定の障害の状態でなくてはいけません。障害の状態とは、障害等級に認定される必要があります(後述)。
③保険料納付要件
障害基礎年金
前述した「初めて医師の診療を受けた」ときに加入している公的年金が国民年金。
さらに18歳到達年度の末日を経過していない子供がいる場合、加算されます。
子供が障害等級2級以上であれば、加算の期間は18歳到達年度の末日から20歳に達するまで延長されます。
障害厚生年金
前述した「初めて医師の診療を受けた」ときに加入している公的年金が厚生年金。障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。
障害手当金
上記2種類の障害年金のほか、厚生年金に加入している間に初診日のある病気や怪我が5年以内に治るなど、障害等級が3級に達しない障害の場合でも、条件を満たせば一時金として障害手当金が支給されます。
配偶者加給年金
3級の障害厚生年金を受けている方を除いて、配偶者がいる場合は、配偶者加給年金額が付きます。
障害年金の支給額が決まる障害等級
これまで何度か出てきた障害等級について解説します。それぞれの障害等級について、法律の定義と具体例を下記の図にまとめました。
ただし、あくまで目安となりますので、下記の通りにならないケースもあります。
<参照>障害等級1、2級は「国民年金法施行令別表」、障害等級3級は「厚生年金保険法施行令別表」をもとに図を作成
障害年金と障害者手帳は混同されがちですが、障害者手帳は税制上の優遇措置や医療費の割引・助成などが受けられる制度。
一方で、障害年金は定期的・継続的に一定の金額を受け取れる制度です。
そのため、障害年金と障害者手帳の認定基準は異なり、連動はしていません。受給できる条件も異なるほか、障害者手帳を持っていなくても障害年金の請求は可能です。
納付要件のルールはややこしくここでは割愛しますが、自分で計算する必要はありません。
納付要件を満たしているかどうかは、年金事務所などで相談をしたときに調べてもらえます。
障害年金の支給額
障害年金は障害等級ごとに支給される金額が異なり、その金額は毎年変動しています。ここでは、障害年金の支給額について解説します。
障害基礎年金
【1級】 780,100円×1.25+子の加算
【2級】 780,100円+子の加算
<参考>障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構
受給者に18歳になった後の最初の3月31日までの子供(または障害等級1・2級にある20歳未満の子供)がいる場合、障害基礎年金の通常の支給額からさらに子の加算が追加されます。
金額は第1子・第2子までであれば22万4,500円、第3子以降であれば7万4,800円が加算されて支給されることとなります。
障害厚生年金
【1級】
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※
【2級】
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※
【3級】
(報酬比例の年金額) 最低保障額 585,100円
※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算。
<参考>障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構
受給者に65歳未満の配偶者がいる場合は、障害厚生年金にさらに22万4,500円が加算されます。
障害手当金
障害手当金は報酬比例の年金額の2年分となっています(最低保障額117万200円)。
また、障害手当金は障害基礎年金、障害厚生年金とは異なり、定期的に受給できるものではないということも覚えておきましょう。
障害年金の申請に必要な書類や方法
障害年金を受給するためには、提出に必要な書類を準備したうえで、請求する必要があります。手続きや必要書類について疑問があった場合は、次のところで相談するようにしましょう。
必要書類
場合によっては上記以外の書類が必要になることがありあます。詳しくは相談窓口などで確認してください。
障害年金受給までの流れ
1.初診日を確認し、年金事務所や市役所(または区役所・町村役場)に相談する
2.医師に診断書の作成を依頼する
3.「病歴・就労状況等申立書」を作成する
4.必要書類を年金事務所や市役所(または区役所・町村役場)に提出
自分で手続きを行うほか、社会保険労務士に依頼して手続きを進める方も多くいます。
費用はかかるものの、請求に必要な書類の取得、作成、提出などのすべての業務を代行してくれるからです。
自分で申請するのが大変な場合は、プロの手を借りるのも一つの方法です。
何があるか分からない世の中、障害年金で不安を解消しよう
老齢年金とは異なり、条件を満たしていれば50代でも受給対象となるのが障害年金です。
障害が原因で働くことに制限が出てしまったときでも、障害年金が受け取れれば生活を助けてくれます。
いざというときに備えて、障害年金の仕組みを知っておけば不安を軽減できるはずです。
転ばぬ先の杖として、不慮の出来事が起こったときのために念頭に置くのも良いでしょう。
2020年8月5日時点