【テレビの開拓者たち / 矢延隆生】「お台場みんなの夢大陸」団長が明かす 明石家さんまとの不思議な因縁
今のテレビは、もっと遊びがあってもいいのかなと思います
――他に、番組を作る上で工夫している点はありますか?
「バラエティー番組と一緒で、スポーツ番組も、やはり話題作りは大切だと思うんです。スポーツの魅力を伝えることはもちろん大事なんですが、ただ単純に伝えるだけでは、視聴者の方になかなか見てもらえない。『F1グランプリ』(1987~2011年)を僕が担当したときは、今まで使っていたテーマ曲ではなく、B'zのギタリストの松本孝弘さんにオリジナルの楽曲を作っていただきました。他にも、鈴鹿の日本GPでは、松本さんによる『君が代』の生演奏を企画して。このときは、B'zのファンがたくさん見に来てくれましたし、各メディアもニュースとして取り上げてくれました。こういうふうに、誰もが思いつきそうで実は思いつかない、そんなアイデアが大事なんです。後に競馬番組を担当するときにも同じ意識で取り組みました」
――フジの競馬番組は個性的なものが多かったような気がしますが、矢延さんが手掛けられた中で、特に印象に残っている番組は?
「やはり『うまッチ!』ですね。このタイトルも僕のアイデアなんです。僕のあだ名の『やのべっち』をもじっただけなんですけど、『たまごっち』みたいで響きがかわいいかなと(笑)。これが、後に『たまッチ!』につながるんですよね。いわば、『やのべっち』『うまッチ!』『たまッチ!』の三段活用(笑)。番組のタイトルは分かりやすくて口にしやすいものが、長く愛されるような気がします」
――「うまッチ!」は、MCの若槻千夏さんとアンタッチャブルの3人のコンビネーションも抜群でした。
「視聴者層の拡大を狙ってミニドラマを作ったり、山崎(弘也)に替え歌で競馬の予想をやらせたり、バラエティー色の強い企画もたくさん仕掛けましたね。さんまさんにも、要所要所で出ていただいて。新しいファンが増えるということで、JRAの関係者もみなさん喜んでくれました。ただ、あくまでも競馬番組なので、本職のトラックマンや競馬評論家の井崎脩五郎さん、途中からは元騎手の細江純子さんにも参加していただいて、上手くバランスは取ったつもりです」
――そういえば、矢延さんは番組の企画でCDデビューもされてますよね?
「そんなこともありましたね~、若槻とアンタッチャブルと一緒に、“やのべ副部長とチナッチャブル”というユニットを作って(笑)。さんまさんには宣伝部長をしてもらいました。僕らが歌番組に出ることで、競馬を見たことがない人たちにも『うまッチ!』に興味を持ってもらおう、ということで、『HEY! HEY! HEY!(MUSIC CHAMP)』(1994~2012年)をはじめ、歌番組にもいくつか出させていただいて。おかげで、『うまッチ!』の視聴率も上がりました。CD発売イベントを東京競馬場で開催したときは、G1のヴィクトリアマイルカップ当日ということもあって、パドックに6000人が集まってくれて。競馬界のレジェンド・岡部幸雄騎手の引退のときが5000人ですから。すごいですよね(笑)」
――矢延さんは今、情報制作局長を務められているわけですが、最近のテレビ番組を見て思うことはありますか?
「もっと遊びがあってもいいのかな、と。演出の切り口というのは、テロップの入れ方一つにしても、まだまだやり方はいっぱいあるはずなんです。僕がよく言っていたのは、ラーメン屋さんの奥の方にある小さいテレビで見ても内容が分かるような番組を作れ、ということ。視聴者の皆さんは、いろいろなシチュエーションで見ているわけですから、どんな人でも食いついて見てくれるような、何をやっているのかが一目で分かって、なおかつインパクトのある見せ方を考えないと。例えば、スタジオセットの色合いなんかもそうですよね。実際、僕の番組では、かなりド派手な色味のセットだった時期もありましたし(笑)。別に“やのべ副部長”を参考にしろとは言いませんが(笑)、どんどん面白いことを仕掛けていってほしいなと思いますね」
――そして、現在開催中のフジテレビ恒例の夏イベント「お台場みんなの夢大陸2017」では、矢延さんは昨年に引き続き“団長”を務めていらっしゃいます。
「2年連続で団長をやる人なんていないんで、大変というか、おこがましいというか…(笑)。ただ、今年は、社屋がお台場に移転して20周年という区切りの年であり、豪華アーティストが出演する『めざましライブ』も10年目。『みんなの夢大陸』というイベント名は、フジテレビの社員、スタッフ、出演者全員で皆さんを楽しませますよ、という意気込みで付けたんですが、その名に恥じないよう、総力を挙げて皆さんをおもてなししたいと思っています。
『(痛快TV)スカッとジャパン』や『今夜はナゾトレ』といった人気番組の体験型アトラクションはもちろん、『ワンピース』や『ドラゴンボール超』などのアニメ企画も充実しています。そして今年一番の目玉は、長崎のハウステンボスとの同時開催で登場する『お台場ウォーターパークbyハウステンボス』。巨大プールやウォータースライダーは暑い夏にぴったりで、子供だけでなく大人も楽しく涼しく思いっきり遊べるエリアになっています。ぜひ足を運んでください!」
関連ニュース
-
【テレビの開拓者たち / 萩本欽一】欽ちゃん、テレビを語る!
-
【テレビの開拓者たち / 三宅恵介】ひょうきんディレクターのテレビ論
-
【テレビの開拓者たち / 土屋敏男】T部長が今のテレビマンに贈る言葉
-
【テレビの開拓者たち / 山名宏和】ジャンルを超えて活躍する放送作家が語る“テレビの可能性”
-
【テレビの開拓者たち / 小山薫堂】人々の“共感”をどう作っていくかがテレビの課題
-
【テレビの開拓者たち / 王東順】フジの元名物プロデューサーが明かす高視聴率番組誕生秘話
-
【テレビの開拓者たち / 水野雅之】「プレバト」「初耳学」演出家が明かすヒット番組の作り方
-
【テレビの開拓者たち / 玉井貴代志】ベテラン放送作家が教える「テレビマンに必要な資質」
-
【テレビの開拓者たち / 藪木健太郎】自称“テレビ屋”の夢は「お金を払ってでも見たい」と思える番組を作ること
-
【テレビの開拓者たち / 鈴木善貴】明石家さんまさんから教わった“プロ意識”
-
【テレビの開拓者たち / 藤井健太郎】「水曜日のダウンタウン」演出家が語る“攻めてる番組”のつくり方
-
【テレビの開拓者たち / 松井修平】最後の「オンバト」プロデューサーとしての“義務”とは?
-
【テレビの開拓者たち / 佐久間宣行】「ゴッドタン」佐久間Pが仕事をエンジョイできる理由
-
【テレビの開拓者たち / 西田二郎】未来のテレビに必要なのは“間違える勇気”
-
【テレビの開拓者たち / 小松純也】「ごっつ」「笑う犬」演出家の信条は“アマチュアリズム”
-
【テレビの開拓者たち / 伊藤隆行】モヤさま伊藤Pいわく「未来のテレビに必要なのは“素直”と“勇気”」
-
【テレビの開拓者たち / 樋口卓治】売れっ子放送作家が「テレビもまだ捨てたもんじゃない」と思った番組とは?
-
【テレビの開拓者たち / 浜口哲夫】「家族対抗歌合戦」プロデューサーが目論む“テレビへの恩返し”
-
【テレビの開拓者たち / 高橋弘樹】“一般人バラエティー”の旗手が語る番組作りの醍醐味
-
【テレビの開拓者たち / 名城ラリータ】「木村拓哉さんが僕をディレクターにしてくれた」
-
【テレビの開拓者たち / 岡澤正樹】「面白い番組を作りさえすれば、状況は変わると思う」
-
橋本環奈、横山だいすけらが超特急とコラボ! ファン6000人の前でダンスを披露
-
【テレビの開拓者たち / 大古滋久】「ねほりんぱほりん」「昆虫すごいぜ!」プロデューサーが語る番組作りの極意
-
【テレビの開拓者たち / マッコイ斉藤】「必ず視聴率20%が取れる日が来ると信じてます」
-
【テレビの開拓者たち / 福山晋司】「関ジャニ∞クロニクル」演出家が語る“震災以降のテレビバラエティー”
-
【テレビの開拓者たち / 横井雄一郎】「クレイジージャーニー」演出家が画策中の新企画とは…?
-
【テレビの開拓者たち / 安永英樹】「金の事件簿」プロデューサーが語る“報道映像の可能性”
-
【テレビの開拓者たち / 小仲正重】林修、坂上忍との出会いがテレビマンとしての転機に
-
【テレビの開拓者たち / 蜜谷浩弥】ダウンタウン、桑田佳祐ら、天才たちから学んだ“ゼロからのもの作り”の精神
-
【テレビの開拓者たち / 角井英之】「アンビリバボー」生みの親が語るテレビの未来