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2020-06-25

CVC高値掴み問題を対処。三井不動産が語る、独立系VCとのCVC共同運用

見えにくかったCVCの実務を明らかにする「CVC虎の巻」。本記事では三井不動産でCVC運用を担当する上窪氏、塩山氏のインタビューから、スタートアップと協業の実践方法を紐解いていく。

三井不動産のCVCは2016年から本格的に始動。50億円のアーリーステージ中心ファンドのほか、グロース企業を投資対象とした300億円規模のCVC事業など、国内外の企業に投資を行う。独立系VCのグローバル・ブレインと共同運用体制を取るほか、LP投資家として外部のVCファンドにも出資を行う。

CVCファンド運用、CVC事業、外部ファンドのLP出資、直接投資とCVCのほぼ全ての形態で投資を行う三井不動産の狙いは何か。また共同運用体制を取るグローバル・ブレインとどのように役割分担しているのか。

財務的リターンと戦略的リターンの考え方、協業と投資の関係性についても具体的な協業事例をもとに話を伺った。

10名で約350億円のCVCをグローバル・ブレインと運用。LP出資や直接投資も

三井不動産のCVCの組織体制について教えてください。

三井不動産 塩山氏(以下、塩山) 三井不動産では、ベンチャー共創事業部(31 Ventures)がスタートアップとの共創に取り組んでいます。

2014年に新たなビジネスを開拓するベンチャー共創事業室が設立、2015年にベンチャー共創事業部が設立され、2016年から本格的に始動しています。

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塩山 裕介(しおやま ゆうすけ)/ 三井不動産 株式会社 ベンチャー共創事業部 プリンシパル。大手監査法人での会計監査業務、コンサルティングファームでの新規事業開発支援、コワーキングサービス会社でのスタートアップ投資・アライアンス支援やイベント企画等の経験を経て、2019年に三井不動産入社。(写真:三井不動産 提供)

三井不動産 上窪氏(以下、上窪) CVCの運用は10名体制で行っています。投資を担当するフロントが8名、管理業務を行うバックオフィスが2名です。

フロント8名の棲み分けは、キャピタリストのように個人で投資領域や分野を持っているのではなく、オフィスビルや商業施設、住宅などの各事業に紐づいています。ただしこの分け方も明確ではなく、担当者ごとの興味や熱意も考慮しながら柔軟に運用しています。

ベンチャー共創事業部のメンバーはこれまで三井不動産のプロパー社員で構成されていましたが、私と塩山は初めて社外から2019年に入社しました。我々の他にも6名、社外から入社し、部署としては拡大傾向にあります。

ベンチャー共創事業部では他にも、オープンイノベーションの概念・方法論を用いた大企業の新規事業開発プログラムを運営するBASE Q(ベースキュー)に携わる社員や、スタートアップ向けオフィスの運営、およびエコシステム構築、新規事業を担当する社員やバックオフィス含め合計22名います。(編集部注:2020年6月現在)

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上窪 洋平(かみくぼ ようへい)/ 三井不動産 株式会社 ベンチャー共創事業部 プリンシパル。長きにわたる音楽活動、有限責任監査法人トーマツでの監査・IPO支援およびFAS業務、三井住友信託銀行NY支店でのアナリスト業務を経て、2019年に三井不動産入社。(写真:三井不動産 提供)

CVCはどのように運用しているのでしょうか。

上窪 CVCファンドとCVC事業を中心にスタートアップ投資を行っています。

アーリーステージ中心の総額50億円のCVCファンドと、グロースステージを対象にした300億円規模のCVC事業として、それぞれ独立系VCのグローバル・ブレインと共同で運用しています。

直近は追加投資を含め月1件ペース以上で投資しています。案件としての魅力に加え、当社の事業部のペインを解消する企業が出資の対象です。

ファンド投資をしているので、意思決定のスピードは比較的早いと思います。

また、ソーシングと情報収集を目的に、LP(リミテッド・パートナー)として複数の外部VCファンドにも出資しています。LP出資しているVCさんから投資先や協業先をご紹介いただくこともあり、貴重な情報源となっています。

ほかにも一部直接投資も行っていますが、日々の活動は圧倒的にCVCファンドとCVC事業が中心です。

「CVC高値掴み」問題を対処し、経営陣や事業部に積極的に情報共有

CVCファンドはグローバル・ブレインも関わっていますが、どのように役割分担をしていますか。

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CVC虎の巻

01【解説】今から学ぶ、CVC。3大課題から紐解く
02【解説】いまさら聞けない、スタートアップ投資の実務
03研究開発部門が主導。三菱電機のスタートアップ共創に向けた実践法
04CVC高値掴み問題を対処。三井不動産が語る、独立系VCとのCVC共同運用
05三井不動産とスタートアップが協業に本気になった瞬間
06ゼロから始めて5年で12社EXIT。マイナビ流スタートアップ出資の極意
07技術の掛け合わせで事業創出。旭化成が語る、米国での「やめない」挑戦
08旭化成ベンチャーズに見る、社内サポーターの作り方
09シリコンバレー黎明期から続く、伊藤忠とスタートアップの協業
010強いコミットで信頼のスパイラルを起こす、凸版印刷CVCの闘い方
011投資領域特化が成功のカギ。ポーラ・オルビス流CVC運営の極意とは
012シナジーか飛び地か。独立系VCとCVCが語る投資の決め手
013上場前後の壁をなくす。機関投資家ハヤテ、MS-JapanがCVCを始める理由
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