長いトンネルを抜けて、多くのサポーターが待ちかねた舞台への復帰を果たした。
サッカーJ2の京都サンガFCが自動昇格できる2位以内を確定させた。来季は2010年以来12年ぶりにJ1で戦うことが決まった。
今季就任した京都市出身の曺貴裁(チョウキジェ)監督の下、新型コロナウイルス感染拡大に伴うさまざまな制約にも負けず奮闘した選手やスタッフに敬意を表したい。
球技専用のホームスタジアムとして亀岡市にサンガスタジアム京セラ(府立京都スタジアム)が昨年開業したのも、躍進の大きな後押しとなったのだろう。地域密着を進め、府民にさらに愛されるチームに育つ契機としてほしい。
4度目となるJ2降格からの道のりは険しかった。12、13年は3位となり昇格プレーオフに進んだが、ともに敗退。監督の交代と主力選手の流出が相次ぎ、18年には過去最低の19位も経験した。
来季はJ1定着の礎を築く試金石となろう。選手たちを鼓舞し、チーム運営を軌道に乗せるためにも、昇格の効果を集客拡大につなげる取り組みが求められる。
約2万1600席あるサンガスタジアムでの今季の平均観客数(無観客試合除く)は、コロナ禍に伴う入場制限も影響し、約5500人にとどまっている。
新スタジアム建設の総事業費約180億円の大半は府や亀岡市の公金で賄われている。建設前に府が想定した「平均1万人」のクリアが、当面の目標となろう。
1994年にJリーグに準加盟したサンガは、一昨年までホームだった西京極陸上競技場がある京都市を手始めに、2010年以降は練習場のある城陽市、現ホームの亀岡市のほか、府北部の福知山市や舞鶴市などもホームタウンに加えてきた。現在では14市町に上る。
選手やコーチが参加する子ども向けのサッカー講習や献血への協力、福祉施設への慰問などの地域活動を通じ、サンガに親しみを持つ人も増えていることだろう。
Jリーグでも屈指の臨場感があると評されるスタジアムには今夏、コンピューターゲームの腕を競う「eスポーツ」の専用施設もオープンした。地元の保津川下りやトロッコ列車などの観光事業とも連携した集客の相乗効果も期待される。
広く「わが街のチーム」と感じてもらう地道な努力を重ね、プロスポーツチームとして京都を盛り上げてもらいたい。