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影の輪舞曲[ロンド] 第2夜:影に咲くもの-咲耶
アスペルギルス 著


  暗闇の中で、わたしをまさぐる指。それは、お兄様の指。

  あさましくぱっくりと開いたわたしの中で蠢いて、くちゅくちゅと淫らな水音をたててわたしを狂わせる、これは…お兄様の指。

  「…お兄様…」

  耐え切れずに吐息を漏らすわたし。指はわたしの中で次第に大胆に動く。下着からシーツまでびっしょりと濡らしてしまったわたしの中を泳ぐ、お兄様の指…。

  指の腹が、そっとわたしのクリトリスを捉える。わたしは枕を噛みしめて、声をあげるのをこらえる。

  指先から、できるだけ意識を遠ざける。指がわたしの意思を離れ、欲望のまま自然に動くようになるまで。そうすればほら、これはもうお兄様の指…。

  遺伝子の半分は少なくとも同じものなのだから。同じ部品でつくられたこれは、だからお兄様の指…。

  「お兄様…」

  誰もいない闇の中に呼びかける。呼びかけずにいられない。

  「お兄様…っ!」

  決して、目を開かない。そうすれば、そこにお兄様がいる。優しい笑顔をわたしに、わたしだけに向けてくれるお兄様の、声が聞こえる。

  『咲耶…』

  それを脳裡に感じただけで、わたしの脊髄を甘い感触がざわざわと駆け抜ける。

  『愛しているよ』

  まぼろしの声が頭の中に響く。その瞬間わたしはのぼりつめて、雷にうたれたように全身を震わせる。

 

  …わたしがもうヴァージンじゃないと知ったら、お兄様は悲しむかしら?

  …それとも、そんなことは気にもしない?

  別に、好きでもなんでもなかった。ただ、少しだけ…、ほんの少しだけ、雰囲気がお兄様に似ていたというだけ。

  抱かれてみたら何か変わるかと思った。

  お兄様ではない人を愛することができるかどうか、一つの実験。

  もちろん、そんなことがあるはずがなかったのに。バカな咲耶。

  ベッドに入った時にはもう、お兄様とは違うところだけが目についた。恥も面子もかなぐり捨てて逃げ出したい気分。けれど、男と二人きりでベッドの中にいて今更そんなことができるはずもない。

  …何も、気持ちよくなんかなかった。ただ無闇にサカりきった欲望をぶつけてくるだけの、つまらない男。犬と同じ。わたしは、目を閉じてお兄様を思い浮かべることで、その時間をただ、耐えた。自分で播いた種だから。

  処女膜を破られる痛みよりも、加減がわからず力任せにわたしを抱く彼の腕の方が、わたしにはずっと不快だった。

  シーツについた血を見て、妙に感激していた彼とは、その後二度と会いさえしなかった。

  …そう、この『実験』もまったく無駄じゃなかった。やっぱりお兄様でなくては駄目ということがはっきりしただけのことでも。

 

  次第に、指先に意識が繋がっていく。自分が漏らした液体にびっしょりと濡れた、これは…わたしの指。

  夜毎お兄様を想って自分を慰めずにいられない、わたしの指。

  粘つく液体に濡れた指先を、そっと舐めてみる。ちょっと酸っぱい味がする。

  何故だか悲しくて、悲しくて、悲しくなって。

  どんなにこらえても、涙は止まらなかった。

  ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

  それでも、必ず朝は来るのだった。

  起きてまず、シーツを替える。そろそろ何か考えないと、毎朝のようにこんなにお漏らししてたんじゃたまらない。

  それから、下着を替え…ようと思って、考え直して先にシャワーを浴びることにする。汗が気持ち悪い。

  鏡に映る裸のわたしを眺めてみる。悪くない…っていうか、結構イケてるわよね?

  腕にも、お腹にも、お尻にも脚にも、無駄な肉はつけてない。バスト…は、もうちょっと大きくてもいいかな、とは思うけど我ながら形はきれいだと思う。乳首だってピンク。大きすぎも小さすぎもしない…はず。

  最近確かにオナニーはし過ぎだからちょっと不安だけど、指しか使ってないし何か入れたりしてないから、アソコだって新品同様。殿方のよろこびそうな鮮やかなピンク。

  「いつ奪いにいらしてもよろしくてよ、お兄様」

  鏡に向かって、微笑んでみる。…ダメダメ、まだ昨夜のちょっとブルーな気分を引きずってる。もう一回。

  …ようし、合格ぅ!

  シャワーを出て、着替えをしながらカレンダーをチェック。赤いハートのついた日…『お兄様の日』までの日数を確認する。これが、朝の日課。今日は…そうそう、鈴凛ちゃんのところにいく約束があったっけ。

  ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

  「いらっしゃーい!」

  鈴凛ちゃんが、いつもの通り元気いっぱいにわたしを出迎える。何気なく彼女を見たわたしは、鈴凛ちゃんが珍しく装飾品を身につけていることに気がついた。地味だけど上品なデザインの、シンプルな黒のチョーカー。

  「ちょっと素敵ね、それ」

  「そう?…ホラ見て、実はネーム入りなんだよ、これ」

  ほんとだ。飾り文字で”Rinrin”とネーム入り。

  「あのね咲耶ちゃん、実は今日はお願いがあるんだ」

  「先に言っておくけど、お金ならないわよ」

  「ああ、違う違う、研究費なら足りてるの。そうじゃなくって、実はメカ鈴凛に新しい機能をつけたんだけど…」

  鈴凛ちゃんはそう言って、ちょっと上目遣いにわたしを見る。

  「それを咲耶ちゃんに見て貰って、感想とかアドバイスとかお願いしたいんだ」

  「わたしに?」

  「そっ!これは何といっても咲耶ちゃんにしか頼めない。ねっ!一生のお願い!」

  鈴凛ちゃんの『一生のお願い』を何度も聞いたことがあるのはわたしだけじゃないはず。だけど、大きな目をくりくりさせて少しも悪びれずにこういうことをいう鈴凛ちゃんは結局のところどうにも憎めないので、みんな何やかや言いながらお願いを聞くはめになる。

  …もちろん、お兄様がいちばんの被害者なのは言うまでもない。

  「…はいはい」

  だからその時も、何の気なしにわたしはそう答えていた。

  「ありがとー!…ま、その前にお茶でも一杯」

  …などという気の使い方は、後から考えてみれば確かに鈴凛ちゃんらしくはなかった。

  けれど、その時のわたしがそんなことに気がつくはずもなく、わたしは、鈴凛ちゃんの煎れてくれた紅茶を半分も飲まないうちに意識を失っていた。

  ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

  気がつくと、わたしは鈴凛ちゃんの研究室(彼女は『ラボ』と呼んでいる)にいた。狭くはないけれどもごちゃごちゃと色々な、わたしが見ても何が何やらわからない器材が置いてある研究室のほぼ中央に置かれた、なんだか手術台のように見えないこともない台の上に寝かされている。

  …寝かされているなんてものじゃない、両手、両足を縛りつけられている。前にテレビのレトロ番組で、せがた三四郎のおじさんが若い頃こんな風に縛られているのを見たっけ。ただ、それと大きく違うのは、わたしは丸裸にされているということだった。

  「…あ、咲耶ちゃん、お目覚め?」

  鈴凛ちゃんは、あっけらかんとそう言った。そのお気楽な口振りに、わたしはついかっとする。

  「…何よこれ!悪い冗談はやめて!」

  「…冗談じゃ、ないんだなぁ…」

  鈴凛ちゃんはにっこりと笑う。

  その外見はいつもの鈴凛ちゃんと何もかわらない…けれど、その笑いを見た時わたしはなんだか背筋に寒気が走るのを感じた。

  「ちょっと、鈴凛ちゃん…その笑い方やめてよ…。まるで、千影ちゃんみたいな…」

  「…ひどい言われ様だ」

  …え?

  まるでわたしがそう言うのを待っていたかのように、物陰から現れる人影。

  床まで届く漆黒のマント。そこから現れた白い手が、道化のマスクをそっと外す。

  「それじゃ、まるで私が妖怪か何かみたいじゃないか…」

  千影ちゃんは、冥い瞳でわたしを見て、それから何かを嘲笑うように、唇の端だけをふっと歪めた。

  「…千影ちゃんも?…いったい何なのよ、これぇ!」

  千影ちゃんは答えない。ただ、大きく広げられたわたしの脚の間を…剥き出しにされたわたしの恥ずかしい部分を、冷たい目をしてじっと見ている。

  わたしは、なんとか脚を閉じたくて身を捩ったけれど、両足首をしっかりと括り付けられていて思うにまかせない。女の子同士、それも姉妹とはいえ、誰にもじっくり見せたことのないその部分(例の初めての男にだってそんなにまじまじ見せてなんかいない)を白日に曝されて、しかもじっと見られている。わたしはどうしようもない恥ずかしさに身悶えした。

  やがて、千影ちゃんがぽつりと口を開く。

  「…始めよう、鈴凛」

  「はい、千影さま」

  千影『さま』?…いったい何が起こっているの?

  気が付くと、鈴凛ちゃんも何も身につけていない。あのチョーカーをつけただけの生まれたままの姿のまま、鈴凛ちゃんはわたしの上に身を重ねてくる。

  「…い、いやぁ!」

  「うふっ、咲耶ちゃん、おっぱい大きい」

  鈴凛ちゃんは、私の乳首をいきなり口に含んだ。軽く歯をたててしっかり固定しておいて、舌先でころころと乳首の先端を弄ぶ。

  「ひっ…!あ、はぁうん…!」

  甘い感覚がそこから全身を貫く。わたしは思わず声を立てていた。鈴凛ちゃんはもう一方の乳房を掌で包み込むように優しく揉みしだく。

  「咲耶ちゃんてばビ・ン・カ・ンー!もう濡れちゃってるよ」

  鈴凛ちゃんの言葉がわたしを嬲る。わたしの体は鈴凛ちゃんの愛撫に敏感に反応して、その言葉通りに濡れ始めていた。千影ちゃんは、まだ冷ややかな視線をわたしの股間に向けたまま…。このまま、女の子に嬲られて濡れているところを見られてしまう!

  「いや…見ないで…」

  鈴凛ちゃんの手招きに応じて、メカ鈴凛がわたしに歩み寄る。メカ鈴凛は、鈴凛ちゃんが責めているのと反対の乳首を口に含む。

  メカ鈴凛の口の感触は、人間のそれと区別がつかない。何でできているのか、メカ鈴凛の舌がわたしの乳首を嬲る。二人がかりで微妙にタイミングを外した両方の乳房への愛撫。わたしはたちまち感じさせられてしまい、恥ずかしい喘ぎ声をあげながら身を捩る。

  脚の間から熱いものが流れるのがわかる。千影ちゃんはそれに冷ややかなまなざしを投げている。

  鈴凛ちゃんは、メカ鈴凛に胸への責めを任せて、体をずらして顔をわたしの股間に近付けてきた。

  「や…いやぁ…」

  「すごぉい…もうびしょびしょだよ…」

  鈴凛ちゃんは、そんな言葉でわたしを嬲る。

  「咲耶ちゃん、濡れすぎ。…もしかして、毎晩兄貴を想ってオナニーしてたりするのかな?」

  図星をつかれて、わたしはびくっと体を震わせる。

  「…でも、さすが咲耶ちゃん、ここのお手入れもバッチリだね!…いつでも準備オッケーって感じ?咲耶ちゃんこんなにエッチだって教えてあげたら、兄貴どう思うかな?案外喜ぶんじゃない?」

  「いや…いやぁ!」

  「…そんな咲耶ちゃんに、鈴凛特製スペシャルアイテムをプレゼント!」

  そう言いながら鈴凛ちゃんは、どこからともなくそれを取り出した…。

  「じゃーん!バイブレーターRX-99、開発コード『イケイケくん』!形状モデルは一応兄貴なんだけど、服着た上からのサンプリングしかないし、勃起率とかのデータも不足なんでどこまでの再現性があるかははなはだ疑問だけど、入れたら気持ちいいことだけは保証するよ!」

  鈴凛ちゃんは、その黒光りのする不気味な樹脂の棒をわたしの顔に突きつける。

  …嘘、わたしのお兄様のがこんなに不気味なはずがない。

  「よぉし、入れてみよー!」

  「や…やめてぇ!」

  鈴凛ちゃんは、何の躊躇いもなくわたしのそこに『イケイケくん』とやらを押し込んだ。すっかり濡れているそこは、わたしの意思と関係なくその不気味なものを根本まで呑み込む。

  「ひ…ひぁぁ!」

  痛みはなかった。鈴凛ちゃんがそれを微妙に動かすのに合わせて、じわじわと快感がわたしの体を支配し始める。

  「あれぇ!…あっさり入っちゃった。咲耶ちゃんたら、初めてじゃなかったの?」

  鈴凛ちゃんの言葉が、わたしをふっと我に返らせる。

  「ふぅん…」

  鈴凛ちゃんが邪悪な微笑みを満面に浮かべる。

  「まさか兄貴と、ってことはないよねぇ…お相手は誰だろう。兄貴の知ってる人かなぁ…?」

  「い…いや…りんりん…」

  「兄貴に教えてあげよっかなー。咲耶ちゃんは実はもう…」

  「や…やめて!…それだけはやめてぇ!…」

  「…気にすることはない…」

  千影ちゃんが、ぽつりと言った。

  「どのみち、すぐにそんなことは大した問題ではなくなる…」

  鈴凛ちゃんが、スイッチを入れる。バイブレーターが、わたしの中でまるで生き物のように動き始めた。

  「あぁぁぁぁあーーーっ」

  その部分から苦痛とも快感ともつかない感覚がわたしの全身を激しく揺り動かしていく。荒々しく、強引で、有無をいわさずわたしを悦楽にむけて押し流していく機械。

  …これは違う。こんなものが、わたしのお兄様であるはずがない。

  メカ鈴凛は、ずっとわたしの乳房を嬲り続けていた。すっかり充血してぷっくり膨れ上がった乳首。

  並行して与えられる苦痛。快楽。羞恥。わたしの中で何かが壊れていく。

  『イケイケくん』の無遠慮な動きが、次第にわたしの中を快楽で満たしていく。わたしが、もう一息でその悦楽に完全に身を委ねようとした時…。

  鈴凛ちゃんは、それをわたしから引き抜いた。

  「…はぅ!」

  突然その激しい感覚から放り出されて、わたしは全身が宙に浮いたような気分のまま、鈴凛ちゃんとその手の中の兇悪な道具を見つめた。メカ鈴凛も、いつのまにかわたしから離れて側に立っている。

  「悪いが…まだ楽にしてあげるわけにはいかないんな…。鈴凛、本題に入るんだ」

  …本題…?

  「あぁ、そうそう、忘れるとこだった」

  鈴凛ちゃんは、メカ鈴凛の傍らに立って、その服を脱がし始める。

  「言ったでしょ。メカ鈴凛に新しい機能をつけたって…それを、咲耶ちゃんに試してみて欲しいんだ」

  そして、メカ鈴凛もまた、一糸纏わぬ姿になる。

  「…これをね!」

  メカ鈴凛の…裸になると一層、鈴凛ちゃんと区別のつかないその体の、ちょうど股間の部分に、血管を浮き出させた黒い肉塊がそそり立つ。

  …わたしは、それを見た瞬間、気を失ったようだった。

  ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

  気がつくと、両手脚の縛めは外されていた。けれど、もうわたしは見動きもできない。

  鈴凛ちゃんがわたしを後ろから抱いて、わたしの胸をまさぐりながら時々耳を噛んだりする。鈴凛ちゃんの胸のふくらみがわたしの背筋をくすぐる。わたしは逃げることもできずに、目の前に立ったメカ鈴凛の股間にそそり立つ異形の肉塊から目を離せない。

  「いま、君に触れているその指も、兄くんの指だよ…」

  千影ちゃんが言う。

  「遺伝子の半分は同じものだ。この指も…」

  千影ちゃんの白い指が、わたしの目の前に差し出される。

  「私たちはみんな、兄妹なんだから…」

  「お兄様の、指…」

  「…咲耶。きみは考え違いしているんだ。きみは『血の繋がった兄なのに愛してしまった』わけじゃない」

  「でも…お兄様が…すきなの…」

  わたしは何も考えない。ただ、このわたしに触れる指の心地よさに身を委ねるだけ。

  「…きみは『血の繋がった兄だから』愛した…きみと同じ遺伝子を共有する兄くんだから…」

  「…わたしと…おなじ…だから…?」

  「きみは、自分と同じものしか愛せない…きみが本当に愛しているのは、自分だけだから」

  「…」

  頭がぼーっとする。わたしは何も考えられない。ただ、わたしに触れる、わたしを愛するこの指の動きにただ身を委ねる。

  「見たまえ。…その己の姿を」

  千影ちゃんは腕を横に振り、わたしの目の前にかざした指を大きく動かす。わたしはその動きに導かれるままにその先に視線を向ける。

  鏡。逆光に浮かぶシルエットのわたし。姉妹の指に胸を、股間を、いたるところを嬲られて欲望に身をまかせたわたし。

  焦点を失った瞳、ぼんやり開けた唇から涎が洩れる。開いた脚のあいだからとめどなく溢れる愛液。

  …綺麗。

  つまらない決め事に囚われる必要なんてなかった。わたしは、ただわたしの求めるものだけに忠実であればよかった。わたしの愛するわたし。わたしを愛するわたし。

  同じ遺伝子を共有する、わたしの愛する分身。

  鏡に浮かぶわたしのシルエットの中から、新しいわたしが生まれる。

  わたしは、目の前に突きつけられたメカ鈴凛の股間にそそり立つ醜怪な肉塊に口をつける。それは自らわたしの口に入り込もうとするようにさらに大きさを増す。肉塊の兇暴な脈動が、わたしをさらなる悦楽の高みへと導いていく。喉の奥に声にならない叫びを呑み込んだわたしの中に、それが熱い精を放つ。それはそれ自体が意思をもつもののように、わたしの中へと降りていく。

  「…来て…」

  わたしは自分から脚を開き、メカ鈴凛を導いた。メカ鈴凛は鈴凛と同じ顔に妖艶な笑みをうかべながらわたしを貫く。

  「あ、あはぁぁぁぁぁ、イク、イっちゃうぅぅぅ!」

  わたしはメカ鈴凛に犯されながら何度も何度も達した。

  …数え切れないほどの絶頂の後、わたしはわたしの股間に、さっきまでメカ鈴凛の股間でわたしを犯していたそれがそびえているのに気付く。

  そして鈴凛ちゃんもまた、体のうちから湧き起こる欲望に満ちた視線をそれに注いでいることに。

  「…咲耶ちゃん…」

  蚊の鳴くような声で、鈴凛ちゃんが請う。薄い胸のふくらみの先で乳首を尖らせ、華奢な腰を欲望に揺らし、脚の間をびしょびしょに濡らしてそれを迎え入れることを。

  わたしは、鈴凛ちゃんを押し倒し、それを突き入れる。鈴凛ちゃんの熱い秘唇が絡み付き、わたしを締め付ける。

  わたしは凶暴な喜びにかられて、鈴凛ちゃんを犯した。

  「ひ、ひゃぁ、あぁぁ!」

  わたしの下で悦びに喘ぐ鈴凛ちゃんの姿を見ながら、わたしは全身が深い喜びに満たされていくのを感じていた。

 

  …それから、わたしたちは夜明けまで互いを貪りあった。例の『山羊のペニス』は、ある時は鈴凛ちゃんの股間でわたしを犯し、ある時にはわたしと共に鈴凛ちゃんを貫く…。

  夜明け前、精魂尽き果てて横たわるわたしに、千影ちゃ…千影、さま、が、それをつけてくれた。

  ”Sakuya”と飾り文字でネームの入った、鈴凛ちゃんとお揃いのチョーカー。

  そう、お揃いの…首輪。

  闇の中に、千影さまの嗤う声が聞こえた、ような気がした。

 

  ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

 次回予告

  衛だよっ!

  咲耶ちゃんと海へ遊びに行ったんだ。

  咲耶ちゃんはとってもスタイルがよくって、一緒にいると、

  女同士なのになんだかドキドキしちゃう。これって、変かなぁ…

  大変だ、咲耶ちゃんが溺れてる。助けなきゃ!

  次回「影の輪舞曲[ロンド]」

  「第3夜:影の誘い[いざない]-衛」見なきゃだめだよ、あにぃ!

 

 

 


解説

 第2話です。なんだか妙に咲耶の年齢が上がってしまって(これではミドルティーンじゃなくて最低ハイティーンだよなぁ…)困ったもんですが、ま、女のコは成長速いからいいや。

 千影「…なんだか私はどんどん悪役になっていくような気がするんだが…?」

 『なっていく』も何も、もとから悪役ですってば…そう言えば、今回のクライマックス、千影が咲耶を『落とす』シーン、書いててどうしても笑ってしまって困ったんだよね。

 千影「…?…あそこは別に、笑いをとる場面ではなかったと思うが?」

 だって、ほら、黒ずくめのカッコして現れて…。

 千影「…それで?」

 こう相手に指を突きつけて、『ドーン!』って、これではまるで喪黒福造、笑うせぇるすまん…。

 千影「…」

 …

 千影「…」

 …

 千影「…作者くん」

 は、はいぃ?

 千影「…せめて、選ばせてあげるよ。メディゥサの呪いと、サテュロスの業火と、どちらがいい?」

 …では、次まで生きてたらまたお会いしましょう。

 


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