「安心しておばさんになってください」阿佐ヶ谷姉妹の“これから”と不安だった“あの頃”
お笑いコンビ「阿佐ヶ谷姉妹」が東京・阿佐ヶ谷での「六畳一間の2人暮らし」についてつづった『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(幻冬舎)。発売から3ヶ月経ちましたが、4刷と重版が続いており好調です。
この本を読んで、実は渡辺江里子さん(姉)と木村美穂さん(妹)は、血がつながった本当の”姉妹”ではないと知った人も多いのではないでしょうか?
最近は、家族や夫婦以外のつながりや血縁以外の「家族のかたち」も注目されていますが、他人同士が一緒に住む上で大事なことは? 老後はどんなふうに考えてる? など、「家族ではないつながりの形」をテーマにお話を伺いました。
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阿佐ヶ谷姉妹の理想の「老後」は…
——ウートピは主に都会の働く女性をターゲットとしたニュースサイトで……
江里子:都会の女性? 大変。大丈夫かしら? 都会のお話なのね。私たち、阿佐ヶ谷っていう「谷」の話なのだけれど……。
——大丈夫です(笑)。
江里子:芸人さんも少し売れていくと、世田谷とかに行かれたりするんですよね。
美穂:目黒とかね。
——それで、ちょうどウートピを読んでくれているであろう世代の友人と話していていると「老後が怖い」「ひとりになるのが怖い」と言うんです。今回の本でも「老後」に触れられていましたが、お二人は老後についてはどう考えていますか?
江里子:4〜5年前に急に不安に駆られて、保険に入りに行きましたね。
美穂:私はそこまで危機意識がなかったんですが、不安感をあおられてお姉さんについて行って相談して、同じ生命保険に入りましたね。
——今は不安感はないですか?
江里子:保険に入って一安心したんだけれど、次は体が不安になって、美穂さんも急に不安になって健康体操教室に行くというので私もついて行って一緒にやっています。
——本にもありましたね!
美穂:地元の阿佐ヶ谷のお友だちができて楽しい。
江里子:おばさんネタも増えますし。私たちとしては、すごくありがたい。もちろん、運動して元気になるし。30代前後から90歳くらいの方もいらっしゃるので、そういう方たちがお話したり、運動されたりしている空間で、癒しと元気をもらえます。
——コミュニティーができているんですね。
江里子:そうですね、ご近所さんでも天気のごあいさつやお花のこととか、ちょっと立ち話が生まれる関係がすごくいいなと思って。年を重ねてもずっと続いたらいいなと思ったりしています。
おひとりの方もご家族をお持ちの方も、道端でちょっと話をしているのを見ると私たちの老後もそんなふうになったらいいなと思いますね。
いろいろなつながりを作っていきたい
——いろいろな場所につながりがあるというのはいいなあと思います。一箇所だけだとその関係がダメになったときに衝撃も大きい気がします。
美穂:そうなんですよ。ここも二人だけっていうのも心細いんですよね。
江里子:人間関係って一番のトラブルの元とも言われているし、ストレスもあると思うんですけれど、やっぱり最終的に助けたり、助けられたりということになってくるのかなって。最近は天候も不順ですし、災害も多いので。
己を守るというのはもちろんですけれど、守り守られるという関係性がお互いに作り合えるような、そういうものを老後に向けて作っていけたらなと思っています。
美穂:私は、親が離れて暮らしているので、独り身の友だちもみんなで阿佐ヶ谷に住めればいいなと思います。近くというか、一緒のハイムでもいいんですけれど、心強いんじゃないかな、と。
各自の部屋もあって、プライベートもあるけど、ちょっと困ったときは、喫茶室でお茶したり、話したり、そういうことできたらすごくいいですね。助け合いながらできたらいいなという理想はあります。
江里子:家族同士だと当たり前になるというか、甘えも出てきちゃうから。
美穂:家族だけではなくて、いろいろな人がいるほうがいいかもしれないですね。
みほ「流れに身を任せてたからこんな感じになった」
——本の「老後」について書いてらっしゃったくだりで、美穂さんは「若い時に戻りたいとは思いません」とキッパリ書いてらっしゃいました。今が一番いいということですか?
美穂:今が楽しいですね。20代のときは、アルバイトに明け暮れていて、「自分はどうしたいのか?」をハッキリ決めて生きてこなかったものですから。無駄にというか、どうしようかなってモヤモヤしてる時期が結構多かったんです。
そのときよりは今はお仕事もできているし、演劇やお笑いも好きだったので、「やってやるぞ!」という感じでなったわけじゃないですけれど、流れ流れてこういう感じで今はお仕事ができてるので、今が一番いいかな、よかったなって思っています。
江里子:あの頃は美穂さんモヤモヤしていたわね。
美穂:モヤモヤしてて、実家にもいたしね。そういう時期も必要だったのかもしれないですけど、あの頃を思うとやっぱり、今は恵まれてるなと思えるので。
——「今が一番いい」と思えるって素敵ですね。
美穂:おばさんですけどね。
江里子:逆に20代、30代の頃は、老後が心配というのはもちろんですけれど「あと5年後、10年後、私はどうなっているのかしら?」という不安に押しつぶされそうになるというのはちょっとありますよね。
美穂:私たちも幸い、入院もしたことがないしね。これからくるのかという怖さもある。
江里子:私たちもなろうとしてなったというわけでも、ここを目指してこうなったわけでもなくてね。何となくなってしまったというのもあるんだけど。あらがってもまたアレだし……。
美穂:あらがってたら、こんな感じにならない(笑)。もっとスッとした格好いい人になってたかも……。流れに身を任せてたから、こういう感じなんですかね。
エリコ「安心しておばさんになってください」
江里子:そうね。もちろん、若さだったり、素敵でいるための努力を欠かさないということがモチベーションになってる方もいらっしゃいますし、それが憧れになる方もいらっしゃいますけれど、それに対しての「頑張らない自分」がストレスになってしまうよりは、今こうなってしまっている状況を受け入れることのほうが、私たちは合っていたというか、楽だし心地いい感じがして……。
こんなおばさんは何の参考にもならないですけれど、とはいえ、心配だったりモヤモヤしたりすることがあっても、その年になってみたらなってみたで意外と楽しいかな、みたいな。
「まあまあ、それはそれで受け入れた心地よさもありますよ」って。だから、「安心しておばさんになってくださいね」というところはあるかもしれないですね。
——お二人にそう言われるとすごく安心するというかホッとします。日本の社会はまだまだ「女は若くないと価値がない」と思われているフシがあるし、女性自身もそれを受け入れちゃっている気がするので。
美穂:おばさんでも楽しく暮らしてますからね。
江里子:阿佐ヶ谷の「谷のおばさん」みたいなところはあるんだけど。
美穂:都会のおばさんはまた違うから……。
——世田谷も「谷」ですよね。
江里子:そうだ。でも、なんか感じが違うの。あっちはこじゃれてるもんね。杉並区の「谷」は居心地がいい。結局、みんなゆるいところに落ち着くわよね。
※次回は11月1日(金)公開です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)