スマホを捨てよ、街へ出よう
かりに私がリベラル思想をかかげ、立憲民主党の公認を受けた立候補者だとして、SNSを活用しながら政治運動を展開しようと考えていたとすれば、四方八方から大きなボリュームとスケールで伝わってくる「ジェンダー平等」「環境問題」「SDGs」などの論点が、「自分が投票を呼びかけ、支持を得るべき大衆にとって本当は優先度の低い問題である」と見抜くのは難しかっただろう。自分に近しい支援者や選挙スタッフも、同じようにスマートフォン越しに聞こえる「声」を拾い集めていたとなればなおさらだ。私もきっと「ドッキリ」に嵌って落選していたに違いない。
今回の大敗を受けて引責辞任した立憲民主党前代表の枝野幸男氏が述べるように、ここから立憲民主党が信頼される野党第一党として捲土重来をはかるには、「地に足を付けた活動」をやっていくほかない。SNSのなかではなく、SNSの外側にある声を拾い集めなければならない。街の声は、SNSの声とはまったく違うのだ。
枝野氏の語ったそれは奇しくも、作家のカズオ・イシグロがいう「縦の旅行」と同義である。ラディカルで先鋭化した一部の人びとの意見やイデオロギーが、実際よりも巨大に投影されるSNSを見て世の中をわかろうとするのではなく、自分自身が生活する街に出て、そこで働き、暮らし、生きている名もなき人びとの肉声が聞こえる場所にまた戻らなければならない。
立憲民主党や共産党に所属する政治家や候補者だけではない。かれらを支援するリベラル派の知識人も、言論人も、ジャーナリストも、社会活動家も、文化人も、有権者も、みんなそうだ。スマホを置いて、街に出なければならない。
SNSには真実はない。「自分が見たい真実」があるだけだ。
「自分が見たい真実」ばかりを見たせいで、立憲・共産連合は敗北した。
*1 日テレ政治部(@ntvseijibu)のツイート(2021年10月31日)より引用
*2 ハフポスト日本版『衆院選、若者が最も関心あるのは「ジェンダー平等」だった。アンケートから見えたこと』2021年10月30日
*2 ハフポスト日本版『衆院選、若者が最も関心あるのは「ジェンダー平等」だった。アンケートから見えたこと』2021年10月30日