乖離してゆくSNSと有権者
はっきりと言えば、今回の選挙でほとんどの有権者にとっては、米山氏の考察のとおり「ジェンダー平等」の優先度は低かった。いや、低いどころか、ほとんど関心の埒外にあったといっても過言ではない。
「この衆院選は、ジェンダー平等や環境問題が一大論点となる史上初の選挙だ」と投開票の日まで本気で信じていたのなら、すでに相当に偏った認知フレームワークのなかで生きていることを疑った方がよい。実社会においては、そんな「一大論点」など存在していなかったからだ。
日本テレビが行った出口調査によれば、有権者が「最も重視した政策」の上位は「外交・安全保障」「格差是正・貧困対策」「景気対策」「子育て・教育政策」「社会保障の充実」「新型コロナ対策」だった。選挙期間中にはツイッター上では見ない日がなかった「環境問題」や「ジェンダー平等」は、実際にはすべての世代において重視されていたとは言い難いテーマだった。*1
「ジェンダー平等」「気候変動」が政権を揺るがす大問題であるかのように言われていたのは、結局のところ、ごく一部の人の声が実体以上に大きく共鳴し増幅されるSNS(≒ツイッター)の中だけだったのだ。
一般大衆はよくもわるくも、それぞれが自分や家族のミクロな「生活」のことを考えている。今日明日の生活をやりくりしていくことに最大の関心とリソースを割く生活者に対して「一流企業の役員の男女比が~」「政治家の男女比が~」「東大合格者の男女比が~」「地球温暖化によって生態系に悪影響が~」などと説いてまわっても、響くわけがない。当たり前のことだ。