女子テニス協会、中国での全大会停止「選手にリスク」

【米州総局=宮本英威】女子テニス協会(WTA)は1日、香港を含む中国でのすべての試合開催を停止すると発表した。中国の著名テニス選手の彭帥さんが、中国共産党元幹部との不倫関係を告白したとされる後に安否への懸念があることを受けた措置だ。WTAは「残念ながら中国の指導部は、非常に深刻な問題に対して、信頼できる方法で対処していない」と指摘した。
米フロリダ州が拠点のWTAは、中国と香港でトーナメント開催を取りやめる。スティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)は公表した声明で「彭さんが自由なコミュニケーションを許されず、性的な暴力を受けたとの主張と矛盾する圧力をかけられているようにみえる状況下では、選手に試合を依頼はできない」と説明した。
サイモン氏は「2022年に中国での試合を開催した場合に、すべての選手やスタッフへのリスクを非常に懸念している」とも言及した。ロイター通信によると、WTAは08年には中国で2大会を開催していたが、19年までには9大会に増えた。
国際オリンピック委員会(IOC)は11月21日に、バッハ会長が彭さんとビデオ通話し、無事を確認したと発表した。来年2月に北京冬季五輪を控えているため、IOCと中国政府が事態の沈静化を図っているとの見方が多い。これに対してWTAは中国に対して厳しい姿勢を示したことになる。
欧州連合(EU)は11月30日、中国政府に対して「彭さんの安全と健康、所在地について、検証可能な証拠を提供するよう求める」との声明を公表した。共産党元幹部による性的暴行疑惑についても透明性のある調査を要請した。
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(更新)- 柯 隆東京財団政策研究所 主席研究員ひとこと解説
もともと個人レベルの性的スキャンダルなのに、国家の威信を脅かすレベルにまで発展してしまい、現政権のリスク管理はどうなっているのか。司法に任せれば、ここまでこじれなくて済んだのではないかと思われる
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(更新) - 岩間陽子政策研究大学院大学 政策研究科 教授ひとこと解説
WTAの英断を心から歓迎します。有名な例では、私たちの世代には鮮烈な記憶であるナディア・コマネチなど、特に国家を代表するような女性アスリートは、政治権力の被害者になりやすい、脆弱な立場にあります。協会の役割は、あくまで「アスリート・ファースト」を守り、スポーツが生涯を通して人々の健康と幸福に貢献できるようなものにすることだと思います。その意味で、昨年の夏季オリンピックに続き、今回もIOCの対応は問題を抱えており、オリンピックの将来に悲観的にならざるを得ません。
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