勝手に他人の出版を祝賀する
勝手に見ず知らずの人間に祝賀されるのは嫌かもしれぬが,私にとっては祝賀するような著書が出版されていた。私と同じような発想をしているかもしれぬ人が「網掛けFX」を出版されていた。
これまでFXトレードでは確率とタイミングを狙う博打か,システムの穴をつく不正紛いか,どちらにしてもろくでもない指南本ばかりで,どうしても参考書となる著作を探そうとすれば,古参者らの体験談かFX市場や胴元のシステム,トレード手段について手解きしたものかしかない有様だった。
本著作が発表された日から,初めて日本にもテクニカル分析やファンダメンタルズに依拠しない,個人トレーダーの持つ期間無制限で先物取引が出来る唯一の有利さを活かせる指南本が加わることになった。
FX市場で扱われるのは2通貨の交換比率であり,各通貨価値の相対比には理論値は存在しない。他市場に比べて難易度が高いのは,投機する対象が商品ではないこと,扱う相対比率は必ずどれがどの程度嫌いだからこれが相対的に好きとの2価値の比率を扱うことになること。
故に実需思惑を思惑したり誘導する機関の意思を読解したりするだけでは,十分に相場から利益を上げていけない。況してやお絵かきに毛を生やしただけなくせにますます悪趣味に墜っしているテクニカル分析では,手数料などのコスト分だけ必ず負ける割の悪い勝負を挑み続けて退場することにしかならない。
私は昔から波を捉えようとはしない。波の定義がないからだ。あるのは高い水準と低い水準だけ。高い水準でさらに買っていくのが順張りで,高い水準だから売っていくのが逆張りだ。テクニカル分析はそれなりに回り道をした10数年で手を出したが,水準,時間,モメンタムのどれかに立脚する。全部を立てている理論があると豪語していた一目で分かる分析などと言ったものもあったが,個人的には3要素を全部満たす分析は存立し得ないと考えている。
このやり方は,現水準から一定幅で売買を交叉するように編みかけていくやり方で,やり方自体を聞けばこれを自動化しEAで走らせる発想も成り立ちうるが,私は基本裁量でやる。それが私が著者とは別に,このやり方を含めた様々な仕掛け方を見出す契機となったスイスフランショックなどの相場急変にある。
この種のフラッシュ・クラッシュはファット・フィンガー騒動をはじめ年平均して1度以上は経験しているが,プライスがつかない事態に向き合わねばならない。プライスがつかないと損切りでは身を守れない。しかも,プライスが復活してすぐさま損切り注文が条件を満たしているので執行されるから,執行されるべき水準よりもかなり悪条件での執行になる。結果,追証を食らうことになる。
ポジションを持っていなければこの瞬間に巻き込まれなくて済む。だが,フラッシュ・クラッシュが発生しかねない瞬間は誰にも想像出来ない。そして,だいたいそういう局面ではポジション状況から逃げにくい局面になっていたりする。年1度その大異変を食らえば,それまでの利益の大半,もしくは全部以上が持って逝かれてしまう。
そんなときに,たまたま両建てしていた故に助かった口座が残った。スプレッドがあり得ない幅で拡大しても,両建てすれば助かりうることを海外口座で経験し,フラッシュ・クラッシュがあっても助かり,かつ持続的に利益を上げ続けられる方法があるのではないかと思い始めた。さらに,フラッシュ・クラッシュを引き起こされる通貨ペアを観察し,米株に対するヘッヂングになりやすいクロス円,そもそも対USDで流動性の乏しい通貨ペアを除外するのが,安全策になることも理解した。
故に,プラザ合意以降,基本的に主要国通貨全般がレンジ相場を長期的に形成していると雖も,私がこのやり方で推奨しうる通貨ペアはAUD/NZD一択である(著者はP波動形成途上にあるEUR/JPYを推奨通貨ペアにしている。)。
網の掛け方も筆者とは若干違う。必ず窮余の局面では順張りになるように段数セットをする。窮余の局面とは,保ち合い放れと,想定以上に値放れを起こしながらも,プライスレスで発注も約定も出来なくなった時の2つ。
誰も相場の天底を当てられないだけでなく,相場の上下を当て続けることも出来ない。そもそも値動きはランダムウォークと看做しても矛盾がないことを金融理論で確認されているのだから,因縁をつけようがないところに因縁をつけてマーケット・タイミングとする行為自体ナンセンスなことだ。
相場で利益を出すために必須となるのは変動。値幅。変動があれば部分点で良いから確実に取っていこうと発想するのが,この網掛けである。売買を図のように交叉して入れると,値幅の半分以下しか利益に出来ないとしても,必ず条件の良いところで手仕舞わねばならないわけではなく,ちょっと先んじようが出遅れようが,ほぼ利益が変わらず取れるメリットがある。
そして,5段にする理由も2つ。1つは相場急変時であっても1日5段以上行くケースがほとんど無いこと。もう1つは5段にすることで,上がれば必ず最後が買い,下がれば必ず最後が売りになり,結果,フラッシュ・クラッシュでプライスレスになった後プライスが復活した時,一番端のポジションで利幅を稼ぐことが出来ると同時に,ポジション数を抑えているため絶対に吹っ飛ばない設計になっていること。スプレッドが拡大しすぎていて,網幅よりも拡大しているケースが発生しても(国内ならば,Brexit時にYJFX!でGBP/JPYが50pips以上,ヒロセ通商が46pips以上拡大した記録も存在する。業者が謳っていた原則固定スプレッドはそれぞれ1.2pips,1.3pipsだった。),スプレッドが業者の謳う幅まで収まるのを待ちながら,網掛け段をクロスオーバーしない限りで待つことが出来る。
この著書では様々な含み損の解消方法も紹介されている。最大ドローダウンを限定しながらトータルで利益に持っていくやり方では絶対につきまとう課題で,この建玉の操作が,このやり方で唯一訓練を必要とする腕の見せ所。私の場合はマーチンゲール法が非常に有効な発想となった。
それとともに,併用すると便利なインジケータとしてATRチャネルも紹介しておく。週足のものを用いるのが良い。これを利用しながら,両建て状態の玉を時間差で外していくのもやり方の1つとなり得る。本著では存在しなかったが,私は時折やっている。
AUD/NZDで25pips幅で網掛けする場合,1.00000~1.10000までしか考慮しなくても構わない。1.10000以上になるケースもあるが,1.20000以上になったケースは2013年後半以降は一度も存在しないので,基本含み損にそれだけ考慮していても耐えられる。
逆に1.00000割れを起こした時はチャンス。何が起こっているかと言えば,オーストラリアの信用力よりもニュージーランドのそれが上回った瞬間だと言うことだから。どちらも英連邦諸国で,資源国と農産国とどちらも一次産品国。それでありながらGDPが1兆3927億USDのオーストラリアよりも2069億USDしかないニュージーランドの方が国力があって信用出来ると言われるのが,どれほどイレギュラーなことかを考えれば良い。これまでの歴史で3回程度は瞬間発生しているが,どれもひげ値で解消されている。基本あり得ないことだと言える。
したがって,運用範囲は1.00000~1.10000までの1000pipsのうちのいずれか。そこに25pipsごとに網を掛けるのだから,理論上最大40本の含み損が発生する。これを1000通貨単位で運用しようと考えた場合(含み損を早期に解消するために,マーチンゲールなどを駆使することを考慮すれば,最初の運用単位は小さい方が便利。最大でも理論可能値の10分の1以下でやることを個人的には推奨する。),
10000(1000通貨運用で1000pipsの損失発生ケース)*40/2(両端の網掛け分を足して2で割る)*44.19~97.74/100=88380~195480円
がこれまでの相場から想定される最大ドローダウン。よって,最低でも20万円以上を用意しておく必要がある。著書に書かれた10万円では,値動きの条件次第では結構厳しくなる局面もありうる。
浜本氏のような方が次々排出され(彼のこれまでの経歴を見る限り,お世辞にもきれいな履歴ではなかったようだが,今回の試みには期待している。),動画サイトを賑わせているテクニカル屋と自身を正当化しているペテン師野郎が自動的に整理淘汰されていくよう,密かに期待している。
基本的にはこのやり方。ほぼ半分の値幅分の利益を相場がどのような値動きになってもせしめ取っていこうという発想。
しこり玉が出るケースはこの1つしか発生しない。上下逆とか,他の偶数段とかは対称性から割愛。奇数段をこなした場合は,全部が利確対象になるのでしこり玉は出ない。
どうですかい?損大利小,適当気分トレード(テクニカル分析不要+マーケット・タイミング不問)で,逆張りアリ,難平,損切り概念無しで,常に証拠金を傷つけないようにやっていくトレードでしょ?
爆益は絶対と言って良いほど出ない仕組みだけど,フラッシュ・クラッシュには強いよ。
これまでも惜しい人はたくさんいた。K氏はポジションを建てる前から勝負が決まっていると指摘したので理解しているのかと思った。だが,実際には適正なレバレッジを指摘すれども運用範囲を十分に指摘出来ず,最後は勝ちパターンに走ってしまった。G氏はレンジトレードに着目出来たが,レンジ内での5枚までの買い下げ・売り上げ難平。それではどのような値動きになるか次第で状況が変わってきてしまう。ブレイクされれば終わり。S氏の発想は本体の設定でファンダメンタルズからの思惑が必要となってしまう。浜本氏が初めて合格点になる近しいやり方を出版された。
2021-05-16 11:56
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