日記
秋の岡山探訪 (岡山秋の音会 その1)
久々の岡山遠征です。
岡山・秋の音会への参加は、これで5回を数えます。岡山・音会の皆さんとの交流は楽しいし、皆さんがそれぞれ個性あふれるオーディオ探求をされていて、訪問の度に進化があって勉強になります。ましてや、今回はコロナ禍のために三年越しの訪問になるので、なおのこと期待が膨らみます。

この日は、いかにも11月らしい秋晴れの一日。紅葉にはまだちょっと早いのですが、山の木々はほんのりと色づいていて、空気もとっても爽やか。空港にはスイートサウンドさんが車でお出迎え。羽田空港の混雑と長い行列にも驚きましたが、こちらの駐車場がけっこう満杯だったことにも驚きました。途中で、とりさんと落ち合って軽く昼食を済ませると、いざEDさん宅へ。着いてみると、もうすでにHelicatsさんがいらしてました。

EDさん宅は、自作の真空管アンプとATCの大型スピーカーという中核は少しも揺るぎません。今回の目玉は、そういう外観からは見えにくいさりげない変革なんですが、そのサウンドの進境ぶりには驚きました。
まずはデジタル再生。
その鮮度がぐっとアップしています。しかも、ATCと真空管アンプからの骨太のサウンドは変わっていません。中核の「EDサウンド」はそのままに、SNや解像度といったデジタル再生の品位がぐんと上がった感じ。
その秘密は、自作DACやプリアンプのパーツにあるとのこと。外見上は変わり映えしないようですが、実は、基板から全て作り直したのだそうです。DACチップなどLSIの細かな足や豆粒のようなセラコン、抵抗のパーツを一から植えるのですから大変なもの。それもこれも音質追求のため。出力はオペアンプによるIVCをやめてトランス出力に変更。あのAsoyajiDACと同じです。プリアンプではNFB抵抗を変更されたとのこと。コンデンサー並のサイズにびっくり。

音像の鮮度が高いうえに、音像定位が安定し、奥行き感が素晴らしい。奥行きは、全体の奥行き(Ensemble Depth)も個々の楽器の奥行き(Individual Depth)も、どちらも立体的でリアルです。上流でこれだけ違うんだと感服しました。しかも、基本回路は同じでパーツの変更でこれだけ進化するのです。
デジタルでもうひとつ見逃せないのが、トランポートのノートPC。

ソフトは、LINUXベースのUbuntuStudio。もともとはプロ用のマルチメディア(音楽・映像・画像)編集ソフトですが、その再生機能に特化させたバージョンとのこと。パソコンは、内蔵SSDの交換でOSをそっくりWindowsからLINUXに入れ換えてしまう。完全に音楽再生専用にしてしまうわけですが、いざとなれば簡単に元に戻せるということのようです。PCも、ちょっと選別があるそうでVAIOがベストとのこと。中古で手に入れればさほどのコストにならないそうです。これでもうCDプレーヤーとはおさらばなんだそうです。
EDさんもともとのこだわりはアナログ。こちらも驚き。
前回は、トーレンス(TD-124Ⅱ&オルトフォンSPU)の堅牢な安定感が醸し出す落ち着いた余裕のある量感といざというときの密度の高いエネルギー感の方に圧倒的な魅力を感じました。一方で、リン(LP-12 & オーディオテクニカAT-F7)の方は、調整不足のためか今ひとつ。ところが、今回、再び直接対決してみると、これは互角の闘いで、ちょっと生ツバもの。

話しを伺って、またまた仰天。LP-12は徹底的にバランス調整をされたそうです。LP-12の調整は聞きしにまさる繊細なものだとあるお方から聞いていましたが、EDさんはプロの手も借りずに自分でやってしまったとのこと。それだけも驚きですが、トーレンスはもっと驚き。こちらは何とモーターのオーバーホールまでやってしまったとのこと。リベット止めさえも外して徹底的に分解。クリーニングして組み上げると、電源オフ後の慣性で回っている時間が少しばかり長くなったというから凄い。前回感じた、両者でのピッチの違いのようなことはもはや微塵も感じさせません。

聴き較べてみると、リンの方が情報量が多く高忠実度だと感じます。やはり、現代技術の進歩というものが聴きとれるのです。でも、トーレンスの方は、確かに情報量はわずかに劣ると言えるかもしれませんが、音楽的に必要な情報は漏れなく伝えている。むしろ、だからこそ音楽的だと言えるのだと感じます。この違いはカートリッジの違いなのかもしれません。
エバ・キャシディの2枚組みアルバムで“Autumn Leaves”を聴かせていただきました。
興味深かったのは、このアナログLPのマスターは、ギターの位置から新リリースの“NIGHT BIRD”のほうのようです。以前、この新旧マスターの良し悪しや好みを話題にした時にはオリジナルの“Live at Blues Alley”の方が好みだという人も多くて、私自身も迷いましたが、最近は、やはり新版の方が制作者の本来の意図に沿ったものなんだと思うようになっていたところでしたので、やっぱりという思いがしました。それにしてもアナログとデジタルの齟齬みたいなものを全く感じさせない素晴らしい再生です。
以前と違って、EDさんは音量をさして上げませんし、かける音源もデモンストレーション的なものはかかりません。そんな控えめな音量のしっとりとした音楽であってもATCの相も変わらぬ低域の魅力が素晴らしい。そのことにEDシステムの進境ぶりを感じました。
最後は、余興ということでスイートサウンドさんご持参のアイソレーショントランスの試聴。

もともとEDさんは、トランスを使用されています。この日も、誰かがトイレに入るとその瞬間(便座ヒーターのスイッチオン?)に「ジーッ」と唸るのは相も変わらずです。思わずみんなで爆笑。
ということで比較試聴は、さらにこのトランスを加えることとの比較になりました。結論だけ申し上げれば、満場一致でトランスが無い方が良い。ボーカルに堅さが出て、当たるような感じがします。
EDさんのオシロスコープで電源波形を観察しましたが、EDさんによればこの日は例外的に波形がきれいなんだそうで、高調波ノイズがほとんど見えません。やや波形の頭が平らになっているかなという程度。ということで、比較試聴の結果は、もともとの電源の状態が良かったということもあったのかもしれません。電源のプロのHelicatsさんによれば、アイソレーショントランスは電源インピーダンスを上げてしまうからだとのこと。持参のトランスの容量が0.5KVAと小さいこともあるのかもしれません。少なくとも「“カスケード(直列連結)”はダメということはわかったね」というのが、この日のみんなの結論となりました。
反省会は、岡山の繁華街は避けて、最寄りの居酒屋。いつものようにオーディオ談義で大盛り上がりでした。
(続く)
レス一覧
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ベルウッドさん、こんばんは。
ノイズ対策用のトランスは難しいですね。
機器の内のトランスよりもノイズ対策用の容量が少ないトランスを繋げたらメリットは無いと思います。
例えばウチのソウルノートはフォノイコが400VA、プリやSACDプレーヤーが550VAのトランスが入っている強心臓ですから、500VAクラスのトランスを繋げたら血流を狭めて逆効果になってしまうかと思います。
byニッキー at2021-11-30 18:42
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ベルウッドさん、こんばんは。
積極的に遠征されていますね。岡山の皆さんもお元気そうで何よりです。皆さんの立ち位置は異なれど、和気あいあいとオーディオを楽しんでいる様子が伝わってきました。地酒も美味しかったことでしょう。
by横浜のvafan at2021-11-30 19:49
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ベルウッドさん、こんばんは。
今回も遠くて不便な所までお越しいただき、詳細なレポートを書いて下さりありがとうございます。
今までのオフ会では気負い過ぎて失敗した教訓を生かして、今回は違いが分かり易いボーカル系を中心にして何時もの音量で聴いて頂いたのが良かったと思います。
アナログ系は徹底的に調整したので、それぞれの特徴が良く出るようになりましたが、一つ説明を忘れていたことがあります。
それは、TD124側SPU_SynergyのシェルリードをWE絹巻線に変更していて、これがややナローレンジになりますがボーカルやピアノの明瞭度を上げ音楽を楽しくしているようです。
LP12のほうは、会社の同僚に譲ってもらったAT-F7を使っていますが、解像度が高くて中低域もしっかり出る良いカートリッジだと思います。
両機の比較ではLP12のほうがデジタルに近くて違和感が無いという評価も頂きましたので、もう少しTD124のほうも調整してみます。
それからもう一つ聴いて頂きたかったのは、VAIO+UBUNTU_Studioです。
このPCの詳細は以下の記事に書いていますが、Linuxベースで音楽再生用にチューニングされていて、やや古くなったPCでもサクサク動作してYoutube等が手軽に楽しめるのが良いと思います。
https://community.phileweb.com/mypage/3969/
貸出できる別のVAIO-PCがあるので、必要でしたら送りますので気軽に申し付けください。
来年早々にはデュアルモノ構成OPT入出力の真空管差動プリが完成しているハズなので、次回は是非聴いてください。よろしくお願いします。
byED at2021-11-30 22:38
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ベルウッドさん、こんばんは。
岡山・香川遠征お疲れさまでした。また、レポートお疲れさまです。
最近はなかなかレポート書けなくて、EDさん宅のレポートお待ちしていました。
引き続き第2弾、第3弾も楽しみに待っています。
僕からは目新しいコメントはありませんが、前回に比べて随分と音の鮮度が上がっていたのが印象に残っています。
また、EDさんも2Hさんもプリの蓋を開けていましたが、効果があるのならマネてみようかな・・・。
自作をしないためアクセサリー等に頼りがちですが、アイソレーショントランスは二の足を踏んでいます。
EDさん、こんばんは。
先日は、お世話になりました。
以前は低音に圧倒されましたが、今回はそういう音源を控えられたせいか、鮮度の高い音が印象に残りました。
また、Youtubeの弾き語りは音が凄かったです。
ところで、画像の出力(HDMI)等は可能なのでしょうか?
byとり at2021-12-01 00:46
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ベルウッドさん、EDさん おはようございます。
私は、1年ぶりの、EDさん宅訪問になりますが、音の繊細さが増し、定位も良くなって、解像度が上がり、実体感が増していました。
持参した、森恵のアルバムも素晴らしい再生でした。
プリの抵抗変更や、DACのクロック変更などが効いているのでしょうね。・・・
ノイズカット用のトランスは、持参したものとは別のものがデジタル系に使われていたので、追加接続すると、音の窮屈さが感じられました。
既存の1台で充分だったのでしょう。
byスイートサウンド at2021-12-01 07:10
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ベルウッドさん、EDさん
モーターのリベットを外してまでしてモーターのオーバーホールを聞いて
以前に日立の掃除機が動かなくなった時に代わりの掃除機を用意したけど・・・吸いが悪くて不評
仕方なくNETで専用のブラシを探して交換 (さすが日立さん 探せば有る)
その時にモーターをバラス時にリベットを外してネジ止めにしたような?
そこまでして使う事はあまり有りませんよね。
byhelicats at2021-12-01 08:38
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ニッキーさん
機器には電圧変換トランスが内蔵されているので、アイソレーショントランスには直列連結(カスケード)感がはどうしてもありますね。
ましてや、内部トランスよりも小さい容量というのはかなり疑問があると思います。私のパワーアンプ(現在休眠中)のトランスは800VAでした。内部トランスはけっこう大容量のものが多いです。この辺りは考えものですね。要注意です。
トランスは、ケースバイケースのところもかなりありそうです。トランスの話題はまだまだ続きます(笑)。
byベルウッド at2021-12-01 09:52
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横浜のvafanさん
楽しい会ですね。今回は、また、橋をわたって海の向こうの2Hさん宅にも訪問しました。
ぜひ、またご一緒したいですね。
byベルウッド at2021-12-01 09:54
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EDさん
先日はありがとうございました。
いつもながら素晴らしいサウンドに感服しましたが、加えて同じくいつもながらの日々の手入れや工夫とその成果にも感嘆させられてしまいます。モーターの分解掃除(オーバーホール)なんてとてもマネができません。工房を開いて商売できるのではないですか?(笑)
オーディオテクニカのカートリッジの情報ありがとうございます。聞き忘れました。メーカーHPで検索しましたが不明でした。HPの写真と実物ではボディカラーが違っていたのですね。それにしてもいい音でした。
PCはぜひ試してみたいです。別途、ご連絡いたします。
byベルウッド at2021-12-01 10:02
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とりさん
先日はお疲れさまでした。楽しい会でしたね。
>前回に比べて随分と音の鮮度が上がっていた
その通りですね。まったく同じ印象でした。
プリの天板については、私も日記でレポートさせていただいたことがあります。ぜひ、トライしてみてください。
↓
https://community.phileweb.com/mypage/entry/2408/20210329/67370/
byベルウッド at2021-12-01 10:11
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スイートサウンドさん
先日はお世話になりました。
>追加接続すると、音の窮屈さが感じられた
>既存の1台で充分だった
まったく同じ感想です。直列で何台もつなげることには過剰感が避けられず、デメリットが表面化してしまいますね。
今回は、皆さんの女性ボーカル愛にやられてしまいました。拙宅システムにはこの愛が少々不足しています。どこが原因なのか、ただいま検討中です。この辺りは続編で…。
byベルウッド at2021-12-01 10:16
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helicatsさん
先日はお疲れさまでした。楽しかったですね。
EDさんのオーバーホール話しには仰天しました(笑)。リベットまで外してしまうなんて…。リベット止めというのは、つまりは接着とか溶接みたいなものですから、開けるな、開けたらオシマイということ同然。いやはや参りました。しかも、その成果がスゴイ!
今回は、helicatsさんの電源論議が面白くて勉強になりました。その辺りも続編で…。
byベルウッド at2021-12-01 10:21
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