スウェーデンのスタートアップ企業Mycorenaは菌類由来の代替油脂を発表した。
植物肉を本物の動物肉に近づけるために、細胞培養による代替油脂の開発に参入する企業が世界的に増える中、Mycorenaは世界初となる菌類由来の油脂を開発した。
同社はマイコプロテインPromycを使った代替肉をスウェーデンの一部レストラン、小売で市販化している。このほど、植物肉をさらに本物に近づける代替油脂をポートフォリオに追加した。
菌類由来の代替油脂を開発
出典:Mycorena
植物性原料から作られる代替肉は、キャノーラ油、ひまわり油、ココナッツオイル、パーム油などを使用しているが、植物油脂は風味の点で動物性脂肪に劣るだけでなく、植物油脂によっては、森林伐採や労働問題の側面から持続可能性が問題視される。
これらの植物油脂の問題は「調理時にすぐに解け、動物由来の肉製品と比較して風味の放出がフラット」なことだと同社は指摘する。
出典:Mycorena
Mycorenaによると同社の代替油脂は、調理中や食べた時に動物油脂のような風味をもたらすという。
現在、同社のマイコプロテインを使ったパテ、チキン、ホールカット肉などの製品に菌類由来の油脂を組み込んでテストを実施している。製品のデモを行った後、植物肉企業にB2Bアプローチにより原料を提供し、植物肉製品の味と食感を改善したいと考えている。
「可能な限り早く、クライアントに私たちのβテストプログラムに参加してもらい、今後数か月以内に当社のソリューションをテストしてもらいたいと考えています」
欧州イノベーション会議が出資するバイオテック企業Mycorena
出典:Mycorena
Mycorenaは2017年に設立されてから、急速な成長を遂げている。
2019年にはマイコプロテインPromycを使った代替魚粉開発プロジェクトに対し、欧州イノベーション会議(EIC)から5万ユーロの助成金を受けた。
今年5月にはスウェーデン、ヨーテボリにある工場に加え、同国ファルケンベリに年間数千トンのPromycを生産できる生産施設を建設する計画を発表した。この施設は2022年半ばにオープンする予定。
6月にはプレシリーズAで7700万スウェーデンクローナ(約9億8000万円)を調達した。
出典:Mycorena
10月、同社はスウェーデンの食品企業BerteQvarn、FalkenbergMunicipalityと共に、欧州委員会から170万ユーロの助成金を授与された。これは食品廃棄物を活用してマイコプロテインを生産するMycorenaのアップサイクル技術に対するものとなる。
増える代替油脂スタートアップ
出典:Mycorena
植物肉の普及に伴い、植物肉をアップデートさせる代替油脂の開発に取り組む企業が増えている。
スウェーデンを拠点とするMelt&Marbleは、精密発酵により酵母細胞を遺伝子操作することで動物油脂を開発している。同じく精密発酵により代替油脂を開発するオーストラリアのNourish Ingredientsは3月に初のラウンドで約12億円を調達、同国の培養肉企業Vowとの提携を発表した。
イギリスのHoxton Farms、アメリカのMission Barnsは動物から脂肪細胞を採取し、培養して動物性脂肪を開発している。Mission Barnsは食肉加工業者、中国の植物肉企業との提携を今年発表した。
ベルギーのPeace of Meat(培養肉企業MeaTechが買収済み)は10月、1回の生産で700グラム以上の鶏油を生産したことを発表している。
細胞農業により代替油脂開発に参入する企業が多い中、菌類をベースに油脂を開発したMycorenaの取り組みは新しい。同社は菌類由来の油脂で植物肉を「次のレベル」に引き上げようとしている。
参考記事
Mycorena cracking the code of the world´s first fungi-based fat ingredient
Mycorena Unveils Fungi Fat Ingredient That Makes Vegan Steaks Juicy
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アイキャッチ画像の出典:Mycorena
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