「井ノ口氏は田中氏から理事長付相談役の肩書を貰うと、日大事業部を舞台にやりたい放題でした。学内の自動販売機ビジネスに手を付け、各飲料メーカーに取引の条件として実姉の広告会社が扱う広告への協賛金として1口300万円を拠出するよう要求するなど、あちこちで強引な手法が問題になっていた」(同前)
ドン田中と同様、誰も逆らえない存在
さらに井ノ口氏は、当時、資金繰りに苦慮していた兵庫県の学校法人への融資を田中氏に働き掛けている。
「3億円を融資すれば、関西初の日大の系列校になるとの思惑もあり、田中氏は幹部職員らに調査を命じました。だが精査したところ、赤字の累積額も多く、とても融資は難しいとの判断になり、田中氏も渋々受け入れた。ところが、井ノ口氏らは優子夫人に、『こんないい話を断わるのはおかしい』とご注進。板挟みになった田中氏は、融資困難と判断した幹部職員を、一番の側近だったにもかかわらず東京郊外の稲城のグラウンド管理人に飛ばしたのです」(前出・日大関係者)
見せしめ人事の効果は絶大で、日大内部で井ノ口氏は、ドン田中と同様、誰も逆らえない存在になった。
「井ノ口氏は芦屋に3階建ての自宅、堂島に7階建ての自社ビルを持ち、2つのタワマンに部屋を所有。常宿のウェスティンホテル大阪の駐車場には、ベンツやポルシェなどの高級車を何台も停めていた」(同前)
「俺が逮捕されるようなことがあれば…」田中氏が口にする不穏な言葉
その井ノ口氏と盟友関係にあるのが錦秀会の籔本氏なのだ。大阪の7病院のほか介護老人保健施設や医療コンサルを抱え、グループ全体では約5800床を誇る関西屈指の医療法人を率いる。夜の北新地では有名な存在で、フェラーリ愛好家としても知られている。安倍晋三前首相のゴルフ仲間として首相動静にも何度も登場してきた。
「ただ近年、病院経営の台所事情は火の車だった。今回の件は資金繰りに窮した籔本氏ありきのスキームだったのではないかとみられている」(前出・地検関係者)
錦秀会側は「取材はお受けできません」と回答。一方の田中氏は、9月12日に検察側に診断書を提出し、入院。最近こんな不穏な言葉を口にしているという。
「俺が逮捕されるようなことがあれば、今まで政治家に渡した裏金のことも全部ぶちまけてやる」
長年にわたり特捜部が追ってきた日大“田中帝国”の暗部。その攻防は最終戦争の様相を呈している。