絶滅危惧種ゼニタナゴ20年ぶり繁殖確認 伊豆沼・内沼
ラムサール条約に登録された貴重な湿地である伊豆沼・内沼(宮城県登米市・栗原市)で、約20年ぶりに絶滅危惧種のゼニタナゴの繁殖が確認された。流れが穏やかな沼などに生息する日本の固有種で、県伊豆沼・内沼環境保全財団によると、国内の大型湖沼で希少魚の繁殖が確認されたのは初めてという。
財団によると、伊豆沼・内沼はゼニタナゴの数少ない生息地の一つ。1990年代までは生息が確認されていたが、外来魚のオオクチバス(通称ブラックバス)が増えた96年以降に急減し、2000年以降はゼニタナゴの個体を確認できなくなった。
財団は03年、ブラックバスの駆除を主眼とする「ゼニタナゴ復元プロジェクト」を始めた。翌04年にはボランティアによる「バス・バスターズ」が立ち上がり、国や県の支援も加わって駆除活動を本格化。卵や稚魚を駆除して繁殖を抑えたことで、ブラックバスの捕獲数は年々減り、今では05年のピーク時の10分の1以下になったという。水質改善にも取り組み、15年にようやくゼニタナゴの個体が再び見つかった。
ゼニタナゴは貝に産卵する習性がある。19年12月に貝の中に孵化(ふか)したばかりの稚魚を確認。昨年5月には1センチ程度の稚魚が湖岸で泳いでいるのが確認された。
実際に繁殖活動を確認したのは昨年の9月中旬。貝の近くで、オスとメスの計4個体が見つかった。オスは婚姻色のピンク色で、メスは産卵管が伸びた状態だったことから、産卵のために集まったと分析した。
財団の藤本泰文主任研究員は「ブラックバスの駆除を進めてゼニタナゴの復活を促進しながら、他の種の復元も進める。希少種が普通に見られる、人々が集う沼にできたらと考えています」と話している。(角津栄一)