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9月3日、元中学校教師の男らが男性に睡眠薬入りの酒を飲ませ、抵抗できない状態にしたうえで性的暴行をしたとして、準強制性交や準強制わいせつの疑いで逮捕されたとの報道があった。容疑者はSNSで教材用の男性のスーツモデルを募集し、犯行に及んでいたようだ。朝日新聞デジタルの報道では被害者について<男性8人>と書かれていたが、<加害者宅から100人以上が被害に遭ったとみられる写真が押収された>との報道もある。
このニュースに対してネット上では、「ホモだw」などと同性愛者を嘲笑うコメントを始め、特定のゲイビデオ作品と結び付けて事件を揶揄する多数の書き込みや、「モデル募集なんて怪しいのに行く方が悪い」と被害者を責める声が見られた。
女性だけでなく男性への性暴力も当然許されるものではないが、ネット上では男性の性被害を矮小化する書き込みが頻繁に見られる。最近では神奈川県藤沢市にて、駅のホームで52歳の男が中学2年生の男子にキスをし、強制わいせつの疑いで逮捕された事件でも、被害を茶化すコメントが少なくない数あった。
被害者を責めたり、被害を揶揄することは二次被害(セカンドレイプ)であり、「男性が被害を訴えにくい理由はこうやってネタにされるから」「自分が被害に遭うかもしれないとは考えないのか」と批判や怒りの声もあがっている。
性暴力事件自体、被害を訴えにくいものであるが、男性は女性よりもさらに訴えにくいと言われている。それは「男性が性被害に遭うはずがない」と被害自体を信じてもらえなかったり、「男性なら抵抗したり逃げたりできたはず」と責められたり、今回のようにネタとして嘲笑する風潮などさまざまな要因があるからだろう。
平成29年度に行われた内閣府の「男女間における暴力に関する調査」によると、無理やり性交等された被害経験の有無(相手の性別は問わず、暴行・脅迫を用いられたものに限らず、肛門性交や口腔性交も含む)について、男性の回答者1,569人中、1.5%の23人が「被害経験がある」と回答している。また、2017年の刑法改正にて強姦罪が強制性交等罪に名称が変更され、肛門性交や口腔性交も対象となり、男性も被害者として含まれるようになったため、少しずつ男性が被害を訴えやすくなっているとは言えるかもしれない。
しかし、今回の事件への反応を見るに、「性暴力もセカンドレイプも性別関係なく許されるものでなく、被害者は悪くない」という認識の社会への浸透は、まだ十分でない。今まで、なんとなくその場の空気で男性の性暴力被害の嘲笑に乗ってしまったことがある人も、ネタ化することはさらに被害者を傷つけることになると覚えていてほしい。
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