裏ビデオ詐欺に懲役2年8月 地裁判決=埼玉
- カテゴリ:
- 詐欺罪
男性の下心につけ込み、アダルトビデオと偽って、実際には何も映っていない偽テープを送りつける“カラビデオ商法”にメスが入った。埼玉県警生活経済課と蕨署は17日、都内のビデオ通信販売業「ニッセン」など十数カ所を詐欺の疑いで家宅捜索した。被害者は約3万人、被害総額は10億円に上るとみられ、アダルトビデオの内容をめぐって詐欺容疑の適用は全国で初めてという。
この日詐欺の疑いで家宅捜索を受けたのは、ビデオ通信販売業「ニッセン」(東京都台東区)や関連会社でビデオ制作会社「三和貿易」(東京都中央区)など十数カ所。「ニッセン」は京都に本社を置く同一社名の大手カタログ販売会社とはまったく関係ない。
調べによると、ニッセンは「無修正裏ビデオ」などと書かれたチラシに記載された、同社の携帯電話を通じて申し込みをした埼玉県の無職男性(49)と、二人の専門学校生(18)にカラのビデオを送り付け、代金計約10万円をだまし取った疑い。カラのビデオのほか、風景だけのテープなどもあり、いずれもエッチな映像はなかったという。
同社はマンションなどにチラシを配布して宣伝。この男性らのケースではテープを送付した際、「今回は身元確認をしただけ。返品すれば希望商品を送る」との通知を同封して再び注文を受け付け、またカラのテープを送って代金を詐取する手口を数回繰り返していた。客が問い合わせると「国内では販売を禁じられている」と返答。代金も返済されなかったという。
ビデオは一本1000~1500円程度で5~10本単位で販売。テープの原価は約100円という。被害者は40都道府県以上の約3万人、被害総額は10億円に上るとみられ、同課などでは組織的な悪質商法とみて、実態の解明を進める。
国民生活センターによると、カラビデオを含めてビデオ通販をめぐるトラブルは最近急増。1996年(平8)は1218件、97年は2259件の苦情が寄せられている。こうした商法の被害者の会社員(30)は「“女子高生の裏ビデオ”などと書かれたチラシにひかれて電話で申し込んだ。テープはセーラー服の中年女性がたたずんでいる約1分の映像だけ。説明書には“当局の目を逃れるため今回はダミーを送らせていただきました。もう一回申し込んでいただければ下着をプレゼントします”などとあった。そこでもう一回申し込んだら、再び同様のテープが届いた」と話した。
◆所得隠し10億6千万
詐欺事件に絡んで、埼玉県警の家宅捜索を受けた三和貿易(野上⬛️雄社長)と同社のファミリー企業が東京国税局の調査を受け、1997年(平9)までの2年間に、2社合わせ約10億6000万円の所得隠しを指摘されていたことが17日、分かった。追徴税額は重加算税を含め計約5億円とみられ、両社は修正申告した。
三和貿易は国内外のビデオ製作会社からテープを買い入れ、通販会社や出版会社に販売しているほか、ビデオ用映像も製作。ファミリー企業は熱帯魚や紙を輸入、販売している。関係者によると両社は、架空の仕入れ代金を経費として計上したり、売り上げを少なく申告したりしていた。
日刊スポーツ新聞社
1998.06.18 日刊スポーツ 25頁 写有 (全1,283字)