渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

小説『ビリヤード・ハナブサへ ようこそ』

2021年11月26日 | open


撞球師は殆ど字を読まない人たち
ばかりなのだが、たまにはこうい
う玉屋を舞台にした推理小説もい
いのではなかろうか。
 「バンキング」
 「スクラッチ」
 「テケテケ」
 「マスワリ」
の4話構成のオムニバス。

バンキングとは、試合の先攻後攻を
決めるワンショットの事で、対戦者
同士が並んで玉を撞き、向こうの短
クッションにはね返って戻った玉が
手前のクッションに近いほうが勝ち。
上級者はほぼクッションに密着する
程までの加減で行って返って来させ
る。

スクラッチとは、ポケットビリヤード
=アメリカンプールやブリティッシュ
スヌーカーなどの玉を落とす競技で、
手玉を落としてしまうファールの事。

テケテケとは、取り方の一つで、手玉
あるいは的球を先玉とクッションに
交互にジグザグに連続して当てて狙い
玉をポケットさせたり、穴無し台の
キャロムビリヤードでは手玉を的球に
当てて得点する技法。

マスワリとは、ポケットビリヤード
で1キューのノーミスでラックを撞
き切って全部の玉を落としてしまう
事。
例えばナインボールならば、ラック
=枡を壊すブレイクに始まり、連続
ノーミスポケットインで最後の9番
あるいは10番まですべて落とす完全
試合の事をいう。
バンキングで負けてからラストセッ
トまで全てマスワリされて一度もプ
レーできずに負ける事もプロ級の試
合では時々ある。
そのため、近年では交代ブレイク制
が導入されているケースもある。

ちなみに私はトーナメント試合では
3連続マスワリまでしか出した事が
ない。
4発目の7番を穴前カタカタでとばし
た。
ポケットビリヤードのプレーの究極
は枡割り(マスワリ)であり、英語で
はブレイクアンドランナウトという。
野球ならばノーヒットノーラン無四
球のパーフェクトゲームにあたる。
ビリヤードでは、バンキング以外で
一度も敵にキューを握らせない戦い
が最高至高の究極で、全員がそれを
目指す。
11ゲーム先取りならば11ゲーム全て
敵に一度もキューを持たせない。
しかし、前述のように、最近では
交代ブレイク制で交互にプレーでき
るようになっている。
バレーボールや卓球の交代サーブ制
のようなものだろう。
だが、私は個人的にはこれは興業的
な観戦向けのルールのように思える。
強い者は徹底的に強いのがスポーツ
の核心なのではなかろうか。
例えばビリヤードならば、全ゲーム
マスワリされたら、バンキングで負
けた自分が対戦相手に及ばなかった
だけだ。
スポーツとは、そうした厳しいもの
だと私は思う。
ゆえに、私はハンデ制のあるスポーツ
は好きではない。
ビリヤードの個別試合では、プロと
の対戦でもハンデを求めた事はない。
大相撲で、横綱相手だからと大関が
ンデをくれなどという話はない。
土俵に上がる者は皆条件はイーブン
だ。
そこでの決着で、実力や運の差が出
るのが勝負というものだと思う。
戦争ではない、勝負事とはそれだと
思う。
飛車角金銀落ちで藤井名人に将棋で
勝っても、それは勝ったことにはな
らないでしょうに、という事。
撞球では、私はプロには3名にしか
勝てていない。
所詮私はアマチュアのちょい撞け
ますねの範囲を超えていない。

広島県には歴史上一番強いアマチュ
がいる。
彼と対戦して負けたプロが雑誌に
語るに「あんなのが出て来ると困
る」と。
プロかプロでないかは資格試験の
合格の可否ではない。全く分かっ
てないと記事を読んで感じた。
その日本一強いアマの彼は、父君
含めて個人的にもよく知っているが、
プロ試験などやれば満点で即合格だ。
そして、いうアマは国内に掃い
て捨てる大勢いる。
ただ、実力があるかないか、勝負
勝てるかどうかが、勝負において
対決の核心ではある。
しかし、プロの試合はそれだけでは
ない。
そのキモを見失っては、プロのプロ
たる意味がない。
プロは観客を沸かせる。
観戦していて客席がどよめき、人を
してワクワクせしめる大胆かつ繊細
な職人技を見せるのがプロだ。
そして、勝負には勝つ。
ただ勝つだけならばアマでもできる
事もある。
プロは、どんな相手が登場しようが、
観客を魅了するプレーで、そして
勝つ。それがプロだ。
プロの審査試験に合格する事など
は、玉撞きのみが上手ければ誰でも
合格する。
だが、それのみではプロになって
からの意味が無いのだ。
うっわ!というような背筋が凍る
ようなプレーをやってこそプロ。
野球の大リーガーなどは全員がプロ
中のプロといえる。



この記事についてブログを書く
« 中国の手法 | トップ |