軍事独裁国家・中共の民主化は日本の国益になるか?:マキャベリストの視点から | Fugenのブログ

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香港で、民主派の街頭デモが起こっています。大陸と違って香港では、北京の独裁政権の基盤が弱いので、ここでの民主化運動は、本当の一般市民のデモなのでしょう。


軍事独裁で利権を貪る中共政府にとっては、民主化デモは頭の痛い問題でしょうが、日本国にとってはどうなのでしょうか?必ずしも、中共政府が民主化に舵を切ることが日本の国益によい影響を与えるとは、私には思えません

以下、マキャベリスト的な冷徹な視点から、中国の情勢を眺めてみます


少し前の記事ですが、産経新聞に面白い記事がのっていました。

中国が民主化すれば「1300万人死亡」「国家は30に分裂」 機関紙が一党支配正当化

産経新聞 2014.9.25 より


という記事です。李満長駐セルビア中国大使の論文の紹介をしています。



 中国共産党機関紙、人民日報のウェブサイト「人民網」は24日、中国が西側の多党制の政治制度を導入すれば2年以内に武装衝突が発生し1300万人以上が死亡、1億3千万人を超える難民が出かねないとする李満長駐セルビア大使の論文を紹介した。一党支配を正当化し、民主化の「危険性」をPRする内容。現役大使による根拠に乏しい論文には批判も出そうだ。

 論文は「西側の国は自由や人権の名の下に他国の内政に干渉している」と民主主義国を敵視。多党制を導入したアフリカや旧ユーゴスラビアは混乱に陥り、経済も低迷したままだと強調した。1990年代の旧ユーゴスラビアの民族紛争を引き合いに、中国で同様の事態が起きれば死者や難民が出る以外にも経済は20年後退し5千年の文明を持つ中国が、30を超える小国に引き裂かれる」と警鐘を鳴らした。

 多党制を許せば、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世らを支持する「過激組織が人心を惑わし、真相を知らない人たちをだます」と主張した。(共同)


中国が民主化すれば「1300万人死亡」「国家は30に分裂」 機関紙が一党支配正当化

産経新聞 2014.9.25 より



まず私は、中華人民共和国が民主化し言論弾圧を止め、自由と民主主義に方針転換すれば、中国大陸には清朝末期同様に地方軍閥が割拠し、さらにチベット・ウィグル・モンゴルなどが独立を図るなどで、混乱を極めると思います。


李満長駐セルビア中国大使の


「多党制を導入したアフリカや旧ユーゴスラビアは混乱に陥り、経済も低迷--(中略)--中国で同様の事態が起きれば死者や難民が出る以外にも経済は20年後退し--(中略)--小国に引き裂かれる


との主張は、全くその通りだと、私は思います。


なぜなら、米国が軍事力で無理矢理、民主化したアフガニスタンなりイラクなり、国家を破壊された中東は、アラブの春など一時の夢想に過ぎず、「イスラム国」の台頭に代表される混乱に陥っているからです。西欧的な民主主義の土壌がなければ、無理に民主化しても混乱するだけの話で、それは中共でも同じでしょう。


そして、中国大陸の民主化が招く、甚大な混乱は日本の国益に反すると、私は思います。


第一に、何より困るのは、軍の統制が緩んで、中共の『人民解放軍』の所有する核兵器が拡散してしまうことで、日本や大陸周辺諸国は勿論世界を甚大な危機にさらすことになる

第二に、大陸難民が日本に押し寄せてこられては非常に迷惑なわけで、これはイタリアなど西欧諸国と同様の深刻な移民問題が惹起する危険性が極めて高い

第三に経済的な問題で、大陸の混乱が日本経済に悪影響を起こす危険性も非常に高い


などの理由からです。


逆にいえば、核兵器がキチンと管理され拡散を未然に防止し、大陸難民が日本に来ず、経済的にも影響が無いようにすれば、中国大陸がどんなにメチャクチャになっても、日本の国益には反しません。

中共独裁政権の海洋進出などの反日政策が消滅すれば、かえって日本には都合が良いわけです。


しかし、そんなに日本の都合の良いようにコトが運ぶかというと、現実的にはとても無理です。


それでは、日本国として一番良さそうな状態は何かというと、中共の一党独裁の体裁をある程度保ったままで、適当に内部抗争を繰り返して、海洋進出など日本や周辺諸国にとって迷惑千万な行為をしなくなることのようです。

つまり、中共政府の支配層が利権を貪り権力闘争に夢中になり、中国国内で労農工などの内乱が適当に起こってくれて、チベット独立だのウィグル独立だのの騒ぎが今より大きくなってもらうのが、日本国にとっては都合がよい。


結局、日本国としては中共政府の一党独裁政権の無道を批難しつつも、実質的には体制維持に協力する。その一方で、建前上は「自由と民主主義」とか「人権重視」とかの、いかにも立派な大義をかげて国際世論に訴え日本内外の民間組織を利用して中共の民主化運動やチベット・ウィグルなどの独立蜂起などは裏でシッカリ支援して中国大陸がテキトーに混乱するように仕向けることが得策のようです。


そして何より大切なのは、日本に危害が及ぶ事案以外、中国大陸でどんな悲惨な犠牲が出ようが、日本国としては直接干渉しないことです。あくまで、中華人民共和国という「立派な国」の国内問題には日本国としては、原則無関心でいることが重要です。もちろん、チベットやウイグルなども中華人民共和国に含まれます。

勿論、繰り返しますが、口を出すことも一方では確かに大事で、「敵の敵は味方」ですから、「チベットの伝統文化を守り、民族浄化を絶対許すな」とか「ウイグル人の信仰の自由と人権を守れ」とか、真っ向から反対できない大義名分を並べ立てて、中共政府を責め立て、外交カードに使うことも忘れてはなりません。


中共政府の非道は断じて許せないと思う人は、日本国ではなくて個人で、どうぞどうぞ、自分の全人生をかけるなり、自分の命を捨てるなりご自由にすればよい。例えばチベット人のために自分の命を捧げたいと思うのならば、それはそれで立派なことだと思いますよ、どうぞご自由に。


勿論、個人個人が、人を思う心というのは、何よりも大切だと私は思います。

ただし、国家というのは個人とは全く違う原理・原則で動いているのも冷厳な事実です。

国家が大儀だの正義だの、人道・人権だのとキャンキャン吠え立てるのは、単なるプロパガンダに過ぎません。

例えば、米国は、ベトナム戦争でも自国の正義を掲げて戦いましたが、敗北し一時反省。しかし、自省というのは、『米国=お子ちゃま国家』には似合うわけもなく、米国は、正義を掲げて戦争するのが大好きなのです。それでどうなったか?米国は、中東でも『自由と民主主義』を掲げて、他国を侵略し破壊しました。アフガニスタン戦争ではタリバンが何かもわからずに殺しまくり、米国は結局ゲリラ戦に敗北。イラクではフセイン体制を倒したものの、統治機構を破壊したので、イスラム国の台頭を招くなど、混乱を招いたに過ぎません


歴史的な事実を正確に認識した上での教訓とは、何か、統治機構として独裁制が似合う国家もあれば、民主制がマッチする国もあるという事実。自国の正義を掲げて、無理に押しつければ、混乱しか招かないという冷厳な現実


そして話を中共に戻せば、中国大陸の歴史など、異民族が異民族を征服・支配する断続した個別王朝の歴史にしかすぎません。現在の中共政府の独裁体制は、古来からの征服・被支配の中国大陸の伝統に忠実なだけであり、民主化の土壌は皆無だと、私は思います。要するに、『中国人』の民度など、個別バラバラで古代そのままで、独裁以外に国民としてまとめるのは不可能なのです。

こんな国にとって、『自由と民主主義』など、「豚に真珠」どころか、国際社会の疫病神に他なりません。征服・被支配=軍事独裁こそが、漢民族の民度にお似合いの体制なのだと、私は思います。


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