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2021年11月22日 (月)

2050年カーボンニュートラルを実現するには(N0.456)

筆者は2002年日本経済復活の会を立ち上げた。日経新聞と契約し、NEEDS日本経済モデルを使って日本経済のシミュレーションをして、財政を拡大すればデフレ脱却も経済成長も可能だと確信した。その方法は減税か財政拡大かであった。その中でも再生可能エネルギーの活用は最重要課題の一つだと認識していた。最も有望と思えたのが、風力発電であり、当時九州大学名誉教授の太田俊明氏の話に注目した。彼を日本経済復活の会の定例会に招き、講演をして頂いた。太田氏によると洋上風力発電で日本の全電力をカバーすることが可能であり、発電コストは原発の2分の1ということだった。

しかし状況はそれ程単純ではなかった。日本には遠浅の海は少なく、洋上風力発電に向く所は少なかった。平地が狭い事もあって、太陽光発電と風力で死にものぐるいで増やしても、全電力に対する割合は
太陽光  25%
風力   20%
水力   10%
程度にしかならない。しかも日本での発電は大変割高である。例えば太陽光発電でも、規模が小さく、土地造成費用が高く、所有者不明の土地が多いのが原因である。例えば中国やインドに比べ2~3倍のコストになり、将来的には差は更に拡大する。

外国のもっと発電環境のよい所で発電し、電気分解で水素をつくっても、日本まで運ぶのにコストが掛かる。液体にすると体積は小さくなるが、そのためにはマイナス252.6℃以下に冷やさなければならず、爆発の危険もあり、扱いにくくコストがかかる。東北大学の小濱泰昭教授は太陽熱でマグネシウムを精錬し、それを日本に運び、マグネシウム電池としてEV車のバッテリーなどに使うという提案をした。筆者はソフトバンクの孫社長に手紙を書き、このアイディアを検討して下さるようお願いした。ソフトバンクからは説明に来て欲しいという返事があり、小濱氏と筆者はソフトバンクに行って説明した。ソフトバンク側からの答えは、この案の採算性をきちんと計算して欲しいという答えだった。

筆者が様々な場所での講演で提言していたことは、電力を海底ケーブルを使って輸入することだ。交流で遠距離送電をするとロスが大きい。しかし50km以上だと直流送電の方が安くなり、1000kmの送電でロスは僅か3%程度だ。ジャパンスーパーグリッド構想では北海道から九州まで直流海底ケーブルで結ぶ。総距離は2000kmで投資額は僅か2兆円だ。東日本大震災の際には電気を融通しあう必要がでてきたが、東日本と西日本とで周波数が違うので電気の融通は小規模に終わった。また九州では再生可能エネルギーでの発電ができても送電能力が貧弱なために、発電を制限しなくてはならなくなっている。僅か2兆円で強力な送電網ができるのであれば国が全額出資して整備すべきだろう。

ソフトバンクの孫社長はアジアスーパーグリッド構想を打ち出していた。これは
東京、ソウル、ウラジオストック、ゴビ砂漠、北京、上海、台北、マニラ、香港、成都、ブータン、ダッカ、バンコク、デリー、ムンバイ、クアラルンプール、シンガポールなどをケーブルで結ぶというもの。総距離は36,000kmで総工費は僅か10~20兆円程度ではないか。これを関係国で負担し合えば、どの国にとっても大変大きなメリットになる。電気の輸出入が政治的に利用される恐れはあるが、日本経済は輸出入に大きく依存しなければ成り立たないのであり、政治に利用されたとしても、いずれにせよ輸出入なしではやっていけないのだから、この案は最重要課題として扱うべきだ。

 

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