11月2日、ポータルサイト「ネイバー」で「ブウン」という単語の検索順位が上昇した。多くのユーザーが「ブウン」、あるいは「ブウンとは」といった言葉を検索に掛けたのだ。
こうした検索順位の変動はその前日、「国民の力」の李俊錫(イ・ジュンソク)代表が、大統領選挙への出馬を表明した「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)代表に「武運を祈る」と言ったのを、あるテレビ局の記者がニュースに出演し「無運(武運と発音が同じ)を祈る」と誤認したことに対し、批判が相次いだことで起こった。同記者は「武運(戦争の勝敗を分ける運)」を「無運」と理解しているようだった。これと同時に、「武運」の意味を知らなかった市民が、ひそかにスマートフォンで同単語を検索したというわけだ。
ネイバーの検索統計を出す「キーワード・サウンド」によると、2日の「武運」の検索件数は1万2660件、「武運の意味」は2320件と、計1万5000件に上った。会社側は「昨年同時期にこれらの単語の検索回数が80件であったことを考慮すると、検索回数は200倍近くに増えた」と説明した。
先月、京畿道の国政監査では、国民の力のソン・ソクュン議員が「羊の仮面をかぶった子犬の人形」を机の上に乗せ、大庄洞開発企業優待疑惑が「羊頭狗肉」の意味と似ていると批判した。すると同日、「羊頭狗肉」(羊の頭と見せ掛けて犬の肉を売るという意味で、表と裏が違うこと)という単語のネイバーでの検索回数は、普段の30倍に上る8000件へと上昇した。先月、「共に民主党」の李洛淵(イ・ナクヨン)前代表が予備選挙の結果を「承服する」と発言した際も、承服という単語の検索数が普段の10倍以上となった。今年7月、東京五輪で女子アーチェリー代表が「9連覇」を達成したという記事のレスには、「優勝したのに連勝ではなく、なぜ連敗(ハングル表記が連覇と同じ)と書くのか」という質問が相次いだ。
こうした現象は、漢字を知らない若者たちが増えたことに起因する。国立国語院の調査によると、「新聞やテレビで使用される言葉の意味が分からず、困ったことがある」と回答した市民は、2015年の5.6%から昨年(2020年)には36.3%と、6倍以上に増えた。回答者の約半数(46.3%)は「難易度の高い漢字だから」と答えた。
特に、2000年から適用されている「第7次教育課程」で、漢字は必須科目から外され、その後に学生時代を過ごした現在の20代は漢字をあまり知らない。大学生のパクさん(26)は「先週末、友人と夕食を食べて会計する際に、ある友人が『醵出(きょしゅつ)しよう』と言ったところ、一瞬シーンとなった」とし「他の友人が『Nパン(頭数で分ける)しよう』と言ってくれたことで、それがどういう意味だったのかようやく理解できた」という。京畿道富川市に住むサラリーマンのホンさん(28)は「会社の互助会の掲示板にある人が『訃告』の『告』を『古』(ハングル表記が告と同じ)と間違えて記入したが誰も気付かず、その後はしばらく前例にならって『訃古』と誤表記された。淑明女子大学教育学科のソン・ギチャン教授は「最近、博士課程の学生も漢字を読むことができず、古典を理解するのに苦労している」とし「学生たちには時間を割いてでも漢字を勉強するよう促している」と話した。
標準国語大辞典に登録された名詞の約80%は漢字語だ。しかし、新造語や略語、英語表現を好む風潮のため、漢字語が居場所を失っている、と専門家たちは口をそろえる。広州教育大学教育学科のパク・ナムギ教授は「食べるという漢字一つを覚えるだけで、食堂から食事、食器など、意味を覚えなくても理解できる単語は多い」とした上で「正規の教育課程で1800字程度の基礎的な漢字さえ教えれば、語彙(ごい)と識字力を大幅に高めることができる」と漢字教育の必要性を訴えた。
カン・ウリャン記者