@chablis777
シャブリ

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(金太)おいしゅうなれ。 おいしゅうなれ。
おいしゅうなれ。よろしければ 召し上がってください。
(千吉)頂きます。
(美都里)おはぎやこ久しぶりじゃね。(タミ)ええ。
頂きます。頂きます。
うまい。
懐かしい たちばなの味じゃ。
ありがとうございます。(安子)ありがとうございます。
あら るいちゃんも食べてんかな。
ほれ ちょっとな。
あ~ん おいしいよ。
(笑い声)
♪~
♪「君と私は仲良くなれるかな」
♪「この世界が終わるその前に」
♪「きっといつか儚く枯れる花」
♪「今、 私の出来うる全てを」
♪「笑って笑って」
♪「愛しい人」
♪「不穏な未来に 手を叩いて」
♪「君と君の大切な人が幸せである」
♪「そのために」
♪「祈りながら sing a song」
♪~
(金太)そうですか…雉真さんの本社工場も…。
じゃけど 水島の工場は無事で足袋の生産を続けとります。
うちは 戦時中軍の仕事を請け負うとりましたからよう思わん人もおるでしょうが…。
足袋ゅう作り続けたことを評価してくれる人もぎょうさん おってくれます。いずれ 稔が帰ってきたら足袋 学生服に加えて何か 新しい事業を始みょう思ようります。
早う戻られるとええですな。
算太さんも。
<10月焼け落ちた百貨店が再開しました。あの空襲から僅か100日でのことでした。これに刺激を受けた人々が少しずつ焦土から立ち上がりがれきに埋まった商店街の復興に取りかかりました>
安子。
たちばなを建て直すで。
戦時中菓子は ぜいたく品じゃ言われて作るな言われた。
じゃけど ホンマは菓子は苦しい時ほど必要なもんじゃとわしゃあ思う。
たちばなの菓子で救われる人がきっと おるはずじゃ。
うん。
私も手伝います。
<金太は 雨風のしのげる小屋を建てるとそちらで暮らし始めました。安子は雉真家の食糧の買い出しに加えて金太の菓子作りの材料の入手に奔走しました。亡き小しずの里へも行き収穫を手伝う代わりに小豆を分けてもらいました>
(金太)何ゅうしてほしいか小豆が教えてくれる。
食べる人の 幸せそうな顔を思い浮かべえ。
おいしゅうなれ。
おいしゅうなれ。
おいしゅうなれ。
その気持ちが 小豆に乗り移る。
うんと おいしゅうなってくれる。
甘えあんこが出来上がる。
あっ!
フフ…。
小せえ頃 私もお菓子の職人になりてえ思よったんよ。
しゃあけど おなごの子はなれん工場に入ったらおえん言われた。
うれしいな。 こねんしてお父さんに教えてもらえるなんて。
こんなもん?うん。 ええ形じゃ。
お芋を使うた おはぎみてえなもんです。
甘えですよ。 4つで10円です。
いらっしゃいませ。4つくれ。
ありがとうございます。ありがとうございます。
どうぞ。
ハハ…。フフフ…。
わしにも1つくれ。
<砂糖の代わりに 人工甘味料のサッカリンを使っていましたが人々は 甘味を求めていました>
ありがとうございます。
待て!
うめえ!
金ょう払え。金やこねえ。
払え!ねえもんは ねえ!
安子。はい。
菓子 箱ごと持ってけえ。
えっ?早うせえ。
はい。
こりょお売ってけえ。うちじゃあ1個2円50銭で売りょおる。
じゃけど 値段はおめえがつけりゃあええ。
おめえの才覚で売ってけえ。
売り上げの1割がおめえの稼ぎじゃ。
10円で売れりゃあ 1円。100円で売れりゃあ10円が おめえのもんじゃ。そこから さっきの2円50銭 払え。
あほうじゃのう。戻ってくるわけがねえが。
そうじゃ。売り上ぎょお 持っていかれるかその前に 皆食われてしもうてしめえじゃ。
日が落ちたら冷えるのう。
寝泊まりだけでも うちに来たら?体壊すよ。
帰ってこなんだのう。
えっ?あの悪ガキじゃ。
何で あねえなことをしたん?
何か 似とったじゃろう。
算太に。
しゃあから 賭きょおしたんじゃ。
賭け?
あのガキが帰ってきたら算太も帰ってくる。
帰ってこなんだら 算太も帰ってこん。
♪~
(戸をたたく音)
・(男の子)おっちゃん。おはぎのおっちゃん。
(戸をたたく音)
帰ってきたんか。
算太…!
(算太)橘 算太 無事 帰還いたしました。
ちょ… 寒い寒い…。
ああ 火ぃあたらしてもらうで。
おめえ… 無事じゃったんか。
どこで どねんしょったんなら。そうじゃ ほれ。
ほれ。 これこれ。
どねんしたんなら それ。
まさか おめえまた あちこちで借金して…!
あ~ 何ゅう言よんなら。
言われたとおり わしの才覚でおはぎゅう売ってきたんじゃ。
金持ちが ぎょうさん おりそうな町に行ったんじゃ。
まあ おるわ おるわ身なりのええ紳士淑女が。
中で わしは とりわけ気ぃの優しそうなご婦人に近づいて こねん言うた。
「母ちゃん!母ちゃんじゃねえか 生きとったんか!おお そうか そうか…。わしゃあ 毎日 こねんして 足を棒にして菓子ゅう売り歩きょうるんじゃ」。
…と もっぺん ご婦人の顔を見る。
そこで はっと悲しげに「すんません。 すんません。空襲で死に別れた母ちゃんに生き写しじゃったもんじゃから…。すんません」。
ほしたら おばはんこねん気取ったバッグから札束取り出して「全部 頂戴。 釣りは要らんで」じゃて。
じゃから 全部もろうてきたんじゃ。
しゃあけど持っとるやつは持っとるのう。
算太!
よう帰ってきてくれたのう 算太。
何じゃ… 気色悪い。
すまん。
皆 死なせてしもうた。
母ちゃんも じいちゃんも ばあちゃんも。
戦争じゃったんじゃ。 しょうがねえが。
父ちゃん。 もう そねん… 気を張るな。
こんなんじゃけど まだ わしが生きとる。安子も生きとる。
そうじゃろ?
おめえがのういつ帰ってくるか分からんからのうわし 待ちょったんじゃ。
ここを動かんと待ちょったんじゃ。
分かっとる。
(ラジオ・アチャコ)「タッチならずセーフ セーフ」。
(ラジオ・エンタツ)「これ やっぱり政府の仕事ですか?」。
(アチャコ)「何をしゃべってんねんな。バッテリー間のサイン 極めて慎重第4球…」。(エンタツ)「第4球…」。「投げました」。
(エンタツ)「投げました」。(アチャコ)「打ちました」。「打ちました」。
(アチャコ)「大きな当たり」。(エンタツ)「大きな当たり」。
(アチャコ)「ヒット ヒット」。(エンタツ)「人殺しや」。
(アチャコ)「球は ぐんぐん のびてます」。(エンタツ)「のびてます のびてます」。
(アチャコ)「のびてます のびてます」。(エンタツ)「来年まで のびてます」。
(アチャコ)「何でやねんな。センター バック バック」。
(エンタツ)「オールバック」。(アチャコ)「散髪屋みたいに言うな ホンマ。ランナー 二塁から三塁」。(エンタツ)「二塁から三塁」。
(アチャコ)「三塁を越えてホーム」。(エンタツ)「ホームを越えてレフト」。
(笑い声)
♪~
<金太が亡くなっているという知らせが入ったのはその翌朝のことでした>


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