この事件は、当時中学生が犯人と判明し、日本に衝撃を与えた大きな事件となりました・・・10 | KEIのブログ

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今日は、「神戸連続児童殺傷事件」について、書いています。「神戸連続児童殺傷事件」は、1997年 - : 神戸市須磨区で小学6年男児の切断された頭部が「酒鬼薔薇聖斗」による犯行声明文とともに見つかる。

人を殺害して遺体を損壊することによって、猫の殺害と遺体損壊よりも大きな性的な興奮や快楽を得たいとの欲求へとエスカレートし、それが自分の運命と思い込むようになり、この事件を行ったのであり、殺人の動機の類型としては快楽殺人である。また、Aの行動や言動を危惧した両親は、中学入学後の1995年11月に精神科の病院に通院させ、診断テストや脳の検査を受けさせた。その結果、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の診断を受けている。



続いては、「注意欠陥・多動性障害」について、書きたいと思います。参考までです。



注意欠陥・多動性障害について―。


パート9の続きです。


診断

よく使われている診断基準(統計調査用)は、アメリカ精神医学協会が定めたDSM-IV (1994) とその改訂版のDSM-IV-TR (2000) のAD/HDであり、不注意優勢型と多動衝動性優勢型と、その混合型という3つのタイプに分けられる。2013年にはDSM-5が出版されている。

1994年に改訂されたWHOの診断基準のICD-10は、「多動性障害」の診断名であり、注意の障害と多動が基本的特徴で、この両者を診断の必要条件としている。ICD-10の「多動性障害」は、細部では若干の違いがあるものの、DSM-IVのADHDの「混合型」に匹敵する。


DSM-IV-TRの診断基準

1.不注意(活動に集中できない、気が散りやすい、物をなくしやすい、順序だてて活動に取り組めないなど)と多動-衝動性(ジッとしていられない、静かに遊べない、待つことが苦手で、他人の邪魔をしてしまう等)が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に、強く認められること
2.症状のいくつかが7歳以前より認められること
3.2つ以上の状況において(家庭、学校など)障害となっていること
4.発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が著しく障害されていること
5.広汎性発達障害や統合失調症など他の発達障害・精神障害による不注意・多動-衝動性ではないこと

上記すべてが満たされたときに診断される。DSM-IVではMRIや血液検査等の生物学的データを診断項目にしていない。


DSM-5(2013)の診断基準も、ほぼ踏襲しているが、一部に変更があった。

・破壊的行動障害や反抗挑戦性障害と並列された分類から神経発達障害(先天的な脳の神経発達異常)のカテゴリーに移行。先行して日本で「発達障害者支援法」(2005)が採用する分類と同等になる。
・子供だけの障害という印象を薄め、年齢を問わず発症する障害との視点。
・7歳以前から12歳以前へと兆候が見られた年齢を引き上げた。
・自閉症スペクトラム障害との合併、併存を認めた。
・不注意優勢型と多動衝動性優勢型、混合型のタイプ分けを廃止。
・過去半年の症状から、混合状態、不注意優勢状態、多動性衝動性優勢状態を評価し、部分寛解もありうるとした。
・重症度を軽度・中度・重度の3段階に評価するようになった。

一方、フランスの児童精神科医は生物学的医学に支配された考えではなく、DSMに対抗する診断分類であるCFTMEA(Classification Françaisedes Troubles Mentaux de L'Enfant et de L'Adolescent)を用い、症状の背景に心理社会的な原因を見る[35]。

成人ADHD

「#経過」も参照
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E9%99%A5%E3%83%BB%E5%A4%9A%E5%8B%95%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3#経過

詳細は「大人のADHD」を参照
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E3%81%AEADHD

ADHDが報告された頃は、ADHDは子供特有の病気と考えられており、成長に従って多動が目立たなくなることから、ADHDの特徴も消失するものと考えられていた。しかしADHDの児童の追跡調査から、成人期に達しても多くの患者では不注意などの症状が残る事が明らかになった[36]。 このことは医学界でも論争を呼んだが、現在では発達障害の特性はおおむね生涯に渡って持続するものであるという事が受け入れられている。ただし、うつ病などでADHDに似た症状が起ることがあるので、発達障害との鑑別には注意が必要である。

評価尺度

診断を補完するための評価尺度には、ADHD Rating Scale-IVやその日本語版ADHD-RSなどがある[18]。

成人ADHDでは22%に症状の誇張があり、誤診を避けるために、90%以上の感度のある尺度の使用が必要である[9]。


ほかの障害との併存と鑑別

明らかな機能障害や苦痛を引き起こしていなければ、症状が正常な範囲である可能性がある[4]。4歳では正常な未熟である[4]。DSM-5では、発症年齢を12歳と遅くしたが、典型的には症状は生まれつきであるため、同様の症状を起こす他の原因と誤解が生じる可能性があり、成人では特に慎重であるべきで、遅発性では薬物が原因の症状だということも疑える[4]。あるいは他の精神障害が原因となっていることもある[4]。特に成人では、薬の娯楽目的、転売目的の場合で受診している場合がある[4]。マイケル・ムーアは、映画シッコにおいて、重篤な疾患を抱えた大勢の国民が治療を受けられずに放置されているなか、あなたは不安症ではないか、注意欠陥障害ではないか、とメディアが国民の不安を煽る現状にも触れている。

適応障害では、混乱した学校環境、家庭のストレスなどへの反応であるなど、特定の状況に生じている[4]。両親や教師など周囲の大人が完ぺき主義、あるいは子供に過剰な期待をしており、そうした環境が破壊的な場合にADHDが過剰診断されやすいが、大人の期待の再構築、環境調整が必要となる[4]。

ADHDをもつ児童は、他の精神障害が並存する確率が66%増加する[37]。関連障害として特異的発達障害(学習障害)や、軽症アスペルガー障害との合併を示すことがある。またその特性上周囲からのネガティブな打撃を受けやすく、二次的に情緒障害を引き起こす傾向があり、行為障害、反抗挑戦性障害、不登校やひきこもりを招きやすい[38]。

不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害は、ADHDに似た症状を起こすことがあり、疼痛も睡眠の問題を起こすことがある[39]。

他の発達障害

・学習障害(LD)はADHDを持つ子供の約20-30%に見られる。学習障害は発音・言語の発達と学習スキルの障害が含まれる[40]。

他の情緒障害
 ・トゥレット障害は、ADHDを持つ人においてさらに一般的である[41]。
 ・反抗挑戦性障害 (ODD) と 素行障害 (CD)は、ADHD患者においてはそれぞれ約50%、20%ほどリスクが高い[42]。素行障害では規則違反を起こし、反抗挑戦性障害では権力に逆らう[4]。
 ・夜尿症 - 一般の15歳以上で夜尿を起こす割合は1%程度とされているが、ADHDで夜尿症を発症する割合は約3割にものぼるとされる。

気分障害
 ・うつ病は主に周りのネガティブな反応に対して二次障害として併発する。抑うつによる注意力散漫と鑑別する必要がある。
 ・双極性障害はうつ状態における注意力散漫、躁状態における易怒性や衝動性、気分の波など表面上の症状は類似している。またADHD患者の11%は双極性障害を併発している。
 ・重篤気分調節症は主に子供に対する双極性障害の過剰診断(英語版)を減らす目的でDSM-5に掲載された気分障害である。ADHD、双極性障害、反抗挑戦性障害に症状が類似している。

パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害

短時間に気分が急速に変化する、対人関係の障害、強い衝動性や自己破壊行動といった点で類似している。鑑別方法としてはADHDの場合は幼少期から特徴がみられる、見捨てられ不安が目立たないなどの違いがある[43]。境界性パーソナリティ障害の患者の16.1%に成人ADHDが見られたとの報告もある[44]。境界性パーソナリティ障害の患者の多くは虐待を経験しており、ADHDであることを知らずに親の抑圧的な教育を受けていることが原因の一つともいえる。一方では併存していると思われた例にADHDに対する薬物治療を開始したところ、敵意や猜疑心が消失したとの報告もあり[45]、実際には誤診断されているケースもままあるとみられる。

反社会性パーソナリティ障害
行為障害を併発したADHD患者のうち一部は寛解せずに反社会性パーソナリティ障害に移行する[46]。

その他の疾患

・てんかん - ADHDを持つ児童のうち約3割が脳波異常、特にてんかんやナルコレプシー(以前は睡眠てんかんとも称した)に似た脳波を記録することが確認されている[47]。
・甲状腺機能亢進症、薬物乱用、アルコール乱用などによる注意力低下や衝動性を除外する[17]。
・また保護者におけるうつ病を確認し、存在すれば適切な処置を行う[17]。


過剰診断の問題

「病気喧伝」も参照
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%97%85%E6%B0%97%E5%96%A7%E4%BC%9D

2010年の米国では、ADHDと診断された児童450万のうち100万人が不適切な診断、誤診である可能性が指摘されている[48]。製薬会社のマーケティングの影響で診断数は膨れ上がってきている[4]。DSM-5(2013年)より、さらに成人への診断が緩和され診断が流行となり、薬の過剰処方がもたらされる可能性がある[4]。

仕事に飽きがきているとか、完ぺき主義とか、集中力や遂行能力に不満があるだけの正常な人にレッテルが貼られ、他の原因によって症状が出ている人、そうした原因を排除しない限り不当な精神刺激薬による治療によって問題が悪化しかねない[49]。

DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は、製薬会社に利用されるような診断名の追加は退けたと思っていたが、マーケティングは容易くこれを突破してしまい[49]、DSM-IV発表以降、米国で注意欠陥障害が3倍に増加したことについて、「注意欠陥障害は過小評価されていると小児科医、小児精神科医、保護者、教師たちに思い込ませた製薬会社の力と、それまでは正常と考えられていた多くの子供が注意欠陥障害と診断されたことによるものです」と指摘している[50][51]。カナダの研究によれば、注意欠陥障害の最も正確な予測因子の一つは入学月である[50][51]。9月入学のカナダでは8月生まれの子供がクラスで最年少になるが[注 1]、最年少ゆえの未成熟な行動が異常と判断されてしまう場合がある[50][51]。こうした傾向はアメリカ、台湾、アイスランドの研究でも同様で、単なる未熟性が病気のように扱われてしまっている[3]。フランセスは、「米国では、一般的な個性であって病気と見なすべきではない子供たちが、やたらに過剰診断され、過剰な薬物治療を受けているのです」と述べている[50][51]。これは日本も同様である[50]。注意障害雑誌を創刊し、またMTA研究を主導したキース・コナーズも、過剰診断と精神刺激薬の過剰処方に注意を促し、こうしたことは他の精神衛生上の問題を見えなくしてしまっていると感じていた[52]。

児童の権利に関する条約は、注意欠陥多動性障害(ADHD)が、薬物治療によって治療されるべき疾患であるとみなされていることを懸念し、診断数の推移の監視や調査研究が製薬会社と独立して行われるようにと提言している[53]。アメリカでは製薬会社による販売促進によって、5%の推定有病率を超える、子供の15%がADHDの診断を受けており、投薬から明らかに恩恵を受ける子供の割合は1%を超えないと考えられる[54]。例えばアデロールの製薬会社は、ヒーローが薬について言及している漫画を5万部配った[54]。アメリカ疾病管理予防センター (CDC) は、行動療法が優先されるが、75%が投薬を受けていることに注意を促している[55]。


管理

世界保健機関のガイドラインでは、児童青年のADHDへの第一選択肢は心理療法(心理教育、ペアレント・トレーニング、認知行動療法など)であり[17]、薬物療法は児童青年精神科医の管理下でのみ行うことができ、かつ6歳未満に対しては投与してはならない[56]。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、4-5歳のADHDに対しては、薬物療法の前にまず心理療法を実施するよう勧告している[57]。一方でCDCは、6-17歳のADHDに対しては、薬物療法と心理療法の両者を実施するよう勧告している[58]。

一方で英国国立医療技術評価機構(NICE)は、未就学児においては薬物療法を推奨しておらず[59]、就学児童および青年においては第一選択ではなく重症の場合の選択としている[60]。

日本での2016年のADHDの治療ガイドライン4版は、薬物療法が中心となっていた以前の2008年3版と比較して、心理社会的治療が大幅に充足された[61]。子供へのソーシャルスキルトレーニング (SST)、親へのペアレント・トレーニングなど心理社会的治療や、学校との連携など環境調整が優先され、薬物療法ありきの姿勢は推奨されない[18]。

アメリカ国立精神衛生研究所 (NIMH) が出資した、7歳から9歳の600人近い子供を追跡した大規模な研究であるMTA研究が実施された。それまでの研究に一般的な4か月以内の研究より長期であり、行動療法、薬物療法、またその併用を比較するための試験であった[62]。14か月時点では薬物療法と併用では、他の方法よりも症状を改善しており、またこの時点で薬物療法の4%に精神刺激薬の重篤な副作用による中止があり、食欲喪失、睡眠の問題、泣き叫ぶ、反復運動といったもので、さらに薬物療法では身長と体重の成長に遅れがあった[62]。3年後では、ほとんどの人々に改善が維持されていたものの、行動療法などとの治療利益には差がみられなくなっていた[19]。並存疾患の発生率も3年後では差がない[63]。

8年後でも投薬した群に恩恵あったというわけではなかった[64]。8年では医薬品を用いなかった人も同様の機能水準があったため2年以上の薬物療法には疑問が持たれた[19]。医薬品を用いた人の医薬品の種類は91%が精神刺激薬(メチルフェニデートなど)を含む治療である[64]。14か月時点で投薬を受けていた人の61.5%は、8年の間に投薬を中止していた[19]。16年目では長期的な投薬は症状の重症度の低下に結びついておらず、1-2センチの身長の成長の抑制と関連していることが分かった[65]。投薬や教育サービスはむしろ不利な傾向を示しており、問題が悪化した子供ではより多くの治療が施されたのではという議論も生じている[64]。時間と共に全被験者に改善の傾向が見られた[64]。(#経過も参照)

フランスでは、心理療法や家族カウンセリングを実施し、実際に問題を解決すると真にADHDに診断される児童は少ない(0.5%)ということである[35]。フランスでの心理社会的な手法は包括的に取り組まれ、食事では合成着色料、保存料、食物アレルギーが症状を悪化させていないかといったことにも着目し、子育ての方針においても子供を管理するために薬を使うのではなく、はっきりとしたルールの中で耐えることを学ばせることが定着している[35]。

心理療法

家族には心理教育、ペアレント・トレーニングを行う[17]。本人の症状をコントロールすることよりも本人の特性にあった環境を整えることが重要である。ペアレント・トレーニングは、症状を持つ児童への接し方を親が学ぶということである。

児童青年のADHDには、WHOおよびNICEのガイドラインでは認知行動療法(CBT)およびソーシャルスキルトレーニング (SST) を提案している[17][66]。また成人においては、NICEは患者が薬物療法を希望しない、または薬物療法の効果が乏しい際にCBTを検討するとしている[67]。

認知行動療法に関してはセルフヘルプのできるワークブックも利用できる。SSTは困っていることを、上手にこなせるように実際に練習してみるということである。

さらに、ADHDを持つ子供へは、Summer Treatment Program (STP) などの治療プログラムの実施が有効であり、参加したすべての子供に行動改善が認められ、ADHDの症状が有意に改善するとされている[68][69]。また、ADHDを持つ成人へも、薬物療法と並行して、心理教育・動機付け面接技法・認知行動療法(活動スケジュール表の利用・問題解決法・認知再構成法などを含む)・ソーシャルスキルトレーニング (SST) などから構成される、ヤング・ブランハム・プログラムなどの治療プログラムを実施することが、認知・行動の改善と症状の治療に有効であるとされている[70]。

なお、二次的な症状として、不安障害やうつ病、不眠症などの症状が生じる場合も多く、その場合はADHDの治療と並行してそれらの症状への治療を行い本人をサポートする(「不安障害#治療」、「うつ病#治療」、「不眠症#治療」などを参照。これらの治療も、ADHDの特質を踏まえつつ行うことが重要である)[71]。

認知行動療法

ADHDの認知行動療法では、下記の技法などが用いられる[72][70]。治療や支援を行う際には、本人の症状・年齢・環境・併存障害の有無等に応じて、下記の技法などを統合して包括的かつ効果的な介入プログラムを立てることが重要である[72]。

・認知行動的介入:随伴性マネジメント、ソーシャルスキルトレーニング (SST)、ペアレント・トレーニング、トークンエコノミー、活動スケジュール表の利用、問題解決法、仲間教示法、行動契約、教室行動マネジメント、先行条件の変更、学業スキル訓練(順序立てスキル、勉強スキル、ノート取り、行動と誤りのセルフモニタリング)
・行動的介入(後発事象のコントロール):正の強化、負の強化、罰、タイムアウト、消去法
・認知的介入:認知再構成法、セルフトーク、葛藤解決、怒りのマネジメント法(アンガーマネジメント)

社会的方法

環境変容法

注意をそらす物を周りに置かない。

家庭での配慮

家庭では、勉強をしているとき外的刺激を減らしたり、子供の注意がそれてしまった時に適切な導きを与えてやったり、頃合いを見計らって課題を与える、褒めることを中心にして親子関係を強化するなどが挙げられる。一例として、「勉強しなさい」と言うよりも机の上にその子供の注意を引きそうな本をさりげなく置いておく、新聞や科学雑誌を購読する等である。

文化的配慮

医学博士ジーン=コムズは、文化学博士・医療福祉士(医療ソーシャルワーカー)のデイヴィッド=ナイランドによる療法を高く評価し、重要なのは「何も疑問に思わずに従順に育つこと」ではなく、「勇気と文化に対する反抗心を持って育つこと」であると述べている[73]。

「対抗文化(カウンターカルチャー)」も参照
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC

薬物療法

WHOは、正しく診断されたADHDに対してはメチルフェニデート製剤の薬物療法を用いるとするが、薬物療法は対症療法であり根治を目指すものではなく、専門医の指示の下で行うべきであり、相談なくプライマリケアでは処方してはならないとしている[56]。薬物療法は継続的な心理行動への包括的介入の一部でなければならない[56]、とくに子供の場合は6歳以上で心理行動療法に効果がなかった場合に慎重に使う、としている[1]。

成人のADHDについては、NICEは薬物療法を第一選択肢とするべきだと勧告している(患者が心理療法を好んだ場合を除く)[注 2]。薬物乱用ポテンシャルのある患者についてはアトモキセチンを提案している[67]。

MTA研究以外の長期的な研究も長期的な医薬品の利益を報告しておらず[11]、3-5歳の子供を6年追跡したPATS研究では、投薬の恩恵は見いだせなかった[74]。

コクラン共同計画による小児ADHDにおけるメチルフェニデートの効果に関するシステマティックレビューでは、治療期間は平均75日と非常に短く、証拠の品質が低いので医薬品の影響の大きさを特定できなかった(有益なのか明らかとならなかった)[75]。死亡や致死的な副作用は増加していないが、睡眠障害が1.6倍、食欲低下が3.6倍であり、副作用の評価のためにはより堅牢な試験が必要とされることが結論されている。成人ADHDでのメチルフェニデートのシステマティックレビューは批判のため2016年に撤回されており、不明確のリスク評価に対して信頼性が高いとしたり、11研究の内2つだけが抑うつなど並存疾患のある被験者をはっきりと残していたため一般的な効果であるかの妥当性が損なわれており、試験期間は1-7週間であり小児研究で観察されているように効果は時間と共に減少してもよく証拠の格下げにつながってもよかったといった理由があり、評価のために偏りのない長期研究が必要とされる[76]。

子供のためのADHD治療薬の承認のための試験では、精神病や躁病は1.48%に出現し、虫、昆虫、ヘビの幻覚が一般的であった[65]。異なる条件である、うつ病、双極性障害、統合失調症の両親を持つ子供では、精神刺激薬の使用群(メチルフェニデートが83%)では62.5%が精神病症状を呈し、服用していない群では27.4%であった[77]。

ADHDの治療薬の使用と骨密度の低下が報告されており[78]、この懸念から実施された動物研究ではメチルフェニデートが悪影響を与えることが観察された[79]。成長抑制以外に長期的な害がよく知られていないため、2017年に動物試験におけるシステマティックレビューを実施したところ、α2受容体作動薬のクロニジンと、メチルフェニデートで生殖機能を損なっている形跡が見られた[80]。

精神医療における大麻の有効性が広く認知されるようになった最近では、医療大麻のADHDに対する有効性について現在多数の研究が行われている[81]。規制の緩和された米国やカナダ、英国等で精神科医が医療大麻や大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)系製剤を患者に処方する場合が増えており、中枢神経興奮薬に比べ副作用や依存の少ない有力な代替薬として使用されている[82][83][84]。

北米で小児の薬物有害反応の報告が最も多かったのは、ADHDの治療薬と、にきび治療薬のイソトレチノインであり、北米でのADHD治療薬の使用量に関係している可能性がある[85]。

ADHDについて光トポグラフィーで薬物治療の効果を確認できることが示された[86][87]。(途上の技術である、光トポグラフィーを参照。)

医薬品

医薬品では、覚醒水準を引き上げる薬が用いられる。

日本でADHDに適応がある薬は、2007年よりメチルフェニデート徐放剤(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)、リスデキサンフェタミン(ビバンセ)の4種類。

日本でADHDに適応のある製薬[88]

表詳細
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E9%99%A5%E3%83%BB%E5%A4%9A%E5%8B%95%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3

メチルフェニデート

かつて日本でメチルフェニデート(商品名リタリン)が使用されていたが、ADHDへの使用は認可されていなかったため、二次障害のうつ病に対して処方するという形をとっていた。しかし、2007年10月乱用のため、リタリンの適応症からうつ病が削除された[89]。代わってメチルフェニデートの徐放剤(商品名コンサータ)が小児期におけるADHDの適応薬として認可され[90]、2013年に成人へと適応が拡大された[91]。

メチルフェニデートは長期摂取による依存性や何らかの副作用が懸念されるが、適正に使用されている限り薬物耐性はつきにくい。特に思春期以前の児童に関しての投薬も依存の危険はないとされるが、米国ではあまりに安易に幼年児にも処方するため、2-3歳児への処方では実際にはADHDではないケースがかなり含まれているのではとの懸念がなされている[24]。メチルフェニデートは前頭前野皮質のノルアドレナリン・トランスポーター (NAT) に作用し細胞外ドーパミンの濃度が上昇、治療効果をもたらすという仮説がある[92]。リタリンは、脳内のドーパミン・トランスポーターとノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事で、ドーパミンやノルアドレナリン量を増やす。セロトニン・トランスポーターにはほとんど作用しない[24]。コンサータ錠は12時間程度効果が持続する、すぐに効き目が現れるので数日で効果がみられるといった特徴があるが、コンサータ錠適正流通管理委員会に登録がある医師しか処方が認められていない[93]。

短時間作用型のメチルフェニデート(リタリン)は、日本でかつて処方されていたが過去に乱用の問題があり現在はADHDへの適応はない。


アトモキセチン

アトモキセチン(商品名ストラテラ)は、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用を有する。2009年4月に認可された。本剤も小児に限定されていたが、2012年に成人へと適応が拡大された。ノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事により、間接的にドーパミンにも作用するとされる非中枢刺激剤である[94]。メチルフェニデートと異なり乱用の可能性がない。

グアンファシン

グアンファシン徐放剤(商品名インチュニブ)が、2017年3月に子供に対して認可された。非中枢神経刺激薬で、α-2アドレナリン作動薬に分類され、機序はまだ未解明だが、患者の低下している前頭前皮質の後シナプス性アドレナリンα2受容体に作用し、多動性・衝動性を改善するとしている。延髄ではアドレナリン2A受容体の刺激によって、交感神経を抑制し血圧が下がることが知られており、この作用を持つグアンファシンやクロニジンは高血圧治療薬であったが、以前よりADHD治療にも使われることがあった。[95][96]。2019年6月より成人に対して認可された[97]。

アメリカではアンフェタミン(アデロール、日本法における覚醒剤)、デキストロアンフェタミン(アンフェタミンのD体)、リスデキサンフェタミン(体内でデキストロアンフェタミンになる)も用いられる。ダソトラリン(英語版)の臨床試験が進行しており、これはセルトラリンの活性代謝物である。

ADHD適応外の製薬

DNRIのADHD治療薬を大日本住友製薬の米子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インクが米国で治験中である[98]。DNRIは同じくノルアドレナリンとドパミンに作用する中枢神経興奮薬よりも緩やかに作用し、依存性も少ないという特徴がある。

漢方薬

ADHDなど、発達障害には抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、甘麦大棗湯、黄連解毒湯、香蘇散、柴胡加竜骨牡蛎湯、当帰芍薬散などをその人の証にあわせて使い分ける[99]。また、西洋薬の補助として併用することもある[100]。抑肝散、抑肝散加陳皮半夏に関しては、ADHDに効果があることが日本東洋医学会でも示されている[101][102][103]。Shanghai Journal of Acupunctureにおける研究によれば、子供592名を、鍼灸グループと漢方薬グループ、比較グループに分け、鍼灸で84.45%の効果率、漢方薬で78.77%の効果率となりどちらも、症状と脳波に改善が見られ、また患者の年齢が低いほど良好な結果が得られた[104]。」とのことである。


鍼治療

ADHDには、鍼治療が有効という意見があり[105]、日本でもADHDに鍼治療を行う鍼灸治療院が存在する。また、日本小児はり学会でも発達障害をテーマとされたこともあり、「ADHDと疳の虫は同疾患である」という意見も存在する。ニューイングランド鍼灸大学院大学助教授、桑原浩榮によれば、軽度の疳虫症は肺虚肝実証、重度のADHDは七十五難型肝実証、薬剤過剰投与で脾虚肝実証となることが多いという。また、治療回数は一般的な疳虫症で4日から5日連続、軽症で2日から4日連続、重症だがADHD薬を服用していなければ7日から10日の連続、毎日の服用が10mg以下のADHDは週一回で1年から3年、毎日の服用が20mg以上のADHDになると週2日から3日で2年から4年ほどである[106][107]。米国において、ADHDへの鍼治療は認知度が高まりつつある[108][109]。一方、中国四川大学の調査ではADHDへの効果は不明とされている[110][111]。

研究事例

・経頭蓋磁気刺激法 (TMS) - 経頭蓋磁気刺激法をADHDに使用した結果、数値は小さいが注意力に改善が見られた[112]。
・中医学による、中薬と鍼治療。河南中医学院では、ADHDを弁証論治別に分別し、中薬で出すべき生薬や鍼治療における経穴を示している[113]。

ワーキングメモリの訓練

21世紀となりワーキングメモリにおける障害は、ADHDの主要な障害または中間表現型であることが明らかにされた。神経生理学的にはADHDは脳の前頭葉とドーパミン・システムの機能変化と関係がありえる。(Castellanos and Tannock, 2002[114]; Martinussen et al., 2005[115])

スウェーデン、カロリンスカ医科大学のクリングバーグらは、コンピュータによる訓練方法を開発し、2つの研究 (Klingberg et al. 2002[116], Klingberg et al., 2005[117]) においてワーキングメモリーが訓練により改善可能であり、ADHDの症状を、精神刺激薬に匹敵する効果量にて軽減することを明らかにした。当時の同大学学長であり、世界的なエイズ研究者であるハンス・ウィグゼルは、医学を専門とする同大学ベンチャー・ファンドとしては初めて新薬以外の分野として事業化を支援し、2009年現在スウェーデンでは約1000校の小学校(約15%)において、米国では約100クリニックにて、それぞれ年間3000人以上の児童・成人のADHD改善トレーニングが行われている[118]。

日本では、2007年夏より約半年間のえじそんくらぶ[119]によるワーキングメモリートレーニング評価プロジェクトとして開始された。2008年日本発達障害ネットワーク年次大会にブース出展があり、関係方面への紹介がされた。日本では2009年、コグメド・ジャパンがワーキングメモリトレーニングを提供している[120]。

英ヨーク大学のギャザコール、英ノーザンブリア大学のホームズらは、コグメドのワーキングメモリ訓練を使い、訓練プログラムと、精神刺激薬による薬物療法の2種の介入にて、ADHDをもつ児童のワーキングメモリ機能への影響を評価した。薬物療法が視空間のワーキングメモリだけ改善した一方で、訓練はすべてのワーキングメモリ要素(言語も加えたワーキングメモリと短期記憶)で大幅な改善をもたらし効果は6ヶ月後も持続した。IQ成績はいずれの介入でも変化しなかった。議論のなかで、「断然に最もドラマティックなワーキングメモリの改善はワーキングメモリトレーニングで観察された。測定されたワーキングメモリのすべての構成要素で有意で大幅な改善が見られ、それぞれにおいて、グループの児童を同年代の平均以下のレベルから平均以内のレベルにもっていった」と報告し、トレーニングによる視空間・言語すべての要素のワーキングメモリへの全体的な改善が、教室の言語中心の環境における多くの学習活動でワーキングメモリへの重い負荷にしばしば耐えられない児童にとって重要で実用的な利益となろう、としている (Joni Holmes, Susan E. Gathercole 2009[121])。

食事療法

詳細は「ADHDに関する論争」を参照
https://ja.wikipedia.org/wiki/ADHD%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AB%96%E4%BA%89

ランダム化比較試験で、ビタミンミネラルは、感情調節、攻撃性、不注意を改善したが、過活動と衝動性には変化がなかった[122]。

フィンランドの調査で、腸内フローラがADHDを予防する効果がある可能性が示唆されている[123][124][要非一次資料]。

少数意見

町沢静夫はADHDの特徴は攻撃性であると述べている[125]。それによると注意欠陥・多動性障害の症状は攻撃性と非行であり、いろいろな小さな悪事を重ね、慢性化すると行為障害となり、18歳以上になると反社会性パーソナリティ障害になることが多いという[126]。しかし、町沢がADHDと診断した患者のうち、メチルフェニデートの効果があったのは5%[127]である。これは他の研究によって一般に60〜80%とされる結果とかけ離れており、町沢の診断したADHDは、典型的なADHDではない可能性がある。これについて、町沢は米国人と日本人の特性の違いから薬物の効き方に差があると説明している。



パート11に続きます。