文京区春日の高台、閑静な住宅街に威風堂々と佇む、知る人ぞ知るヴィンテージマンション「川口アパートメント」。建築家夫妻が古き良きを残しながら使っている一室です。
直木賞受賞作家の川口松太郎が、かつて自宅の建て替えを兼ねて建てた、昭和39年築の渋みと貫禄のあるこのマンション。玄関ロビーに入ってすぐに、川口松太郎直筆の「家の美は心の美をつくる」と書かれた額が飾られており、毎日背筋を正して暮らせそうです。
今回ご紹介するのは、分譲当初からのものと推測する建具や造作棚などのオリジナルを残し、建築家によって床を無垢材にて張り替え、その他最低限のリフォームのみされた部屋です。
昨今の不動産売買市場は、不動産再販業者が新建材でツルッとした内装に改装した物件がほとんどという印象。キレイであることはわかりますが、内装に愛着を持てるかと言われれば、そうではないと思います。
この川口アパートメントも決して例外ではありませんが、この部屋は、渋い外観や共用部の期待から何一つ裏切ることなく、「分譲当初のままでは?」と思うほど既存によく馴染んだ内装になっていたため、心から嬉しい気持ちになりました。
ただし、注意点はいくつか。
まず、やはり築年数の古いマンションということで、専有部と共用部両方に経年劣化による漏水箇所が見られます。
この部屋の室内で確認できる点では、寝室部分に上階の共用配管から水漏れした跡が確認できます。また、上階のサッシ際から吹き込んだ雨水による雨漏り跡もありますが、そちらは上階バルコニーのコーキングで補修完了済み。また、排水管のつまりが原因で下階へ漏水したこともあるんだとか。
共用配管の水漏れなどは管理会社側の負担で修繕できる可能性もありますが、その他漏水修繕や、室内のちょっとした改装を行うだけでも、使用開始するまでに結構な費用負担はかかりそう。基本的には改装用素材としてお考えいただくくらいの方が良さそうです。
そんな状況を改善すべく、管理組合では、来年早々に大規模修繕を予定しています。内容としてもかなり手を入れるようで、引渡し後、修繕期間中には専有部分への業者の方の出入りが何度も発生することが予想されます。
また、諸条件をご覧の通りですが、管理費や修繕積立金も普通のマンションと比べて高めの設定につき、ご留意ください。
しかし今回の大規模修繕を行うことで、良い建物だけれど老朽化が、、とこれまでネックだった部分が解消されるかもしれません。
それからもう一点、室内に洗濯機がありません。各階共用部にあるコインランドリーを利用する形になります。ガッツリ住居としてご利用の場合は、改装して室内に洗濯機置き場を用意しても良いと思います。 (洗濯機置き場を設置する場合、「洗濯機追加水道料」が月額600円追加発生します)
あとは、室内より電車の音が聞こえること。丸の内線の線路が近くを通っており、音に敏感な方は難しいかもしれません。
十分な広さもあるため、もちろん住居としてもおすすめですが、洗濯機がない面なども考慮するとセカンドハウスや書斎などに良さそう。
あるいは、賃貸に出す投資目的でも。実は少し前に、同マンションのワンルームをtoolboxで改装させていただき、賃貸で募集した経緯がありましたが、募集開始後すぐに問い合わせが殺到し、1週間程で成約に至っています。
差別化という意味では、都内のマンションの中でここまでカッコいいものは、控えに言ってもモノがほぼ限られてくること。そして内装の良さも相まって、特徴の強い賃貸物件になることは確かだと思います。
最後に、今回は募集期間ついても制約があります。売主の意向により年内までの契約に至らなかった場合は、一旦募集を終了する予定につき、少し時間がありません。
誰にでもフィットする物件情報ではありませんが、このマンションをもとから知っていた方や、ヴィンテージ好きな方にはたまらない作品。
内装も、ここまで良い部屋が市場に出回ることは少ないかと。この期に一度真剣に検討してみませんか?
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