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<雉真家の家屋は辛うじて焼け残りました>
(千吉)安子さん。お父さんの具合は どねえなかな?
(安子)ようやく眠りました。そうか…。
こねんして屋根のある おうちでお布団で寝かせていただいて何と お礼を言うてええか…。
礼なんぞ いらん。それよりも 安子さんも ちいたあ休め。
あんただってお母さんとおばあさんを亡くしたんじゃ。
ありがとうございます。
しゃあけど 動いとった方が気が紛れますから。
(小しず)ほんなら またね。(ひさ)またね。
うん またね。
♪~
♪「君と私は仲良くなれるかな」
♪「この世界が終わるその前に」
♪「きっといつか儚く枯れる花」
♪「今、 私の出来うる全てを」
♪「笑って笑って」
♪「愛しい人」
♪「不穏な未来に 手を叩いて」
♪「君と君の大切な人が幸せである」
♪「そのために」
♪「祈りながら sing a song」
♪~
(ラジオの時報)
(ラジオ)「ただいまより重大なる放送があります。全国聴取者の皆様 ご起立を願います」。
(ラジオ)「天皇陛下におかせられましては全国民に対し畏くも御自ら 大詔をのたまわらせたもうことになりました。これより謹みて 玉音をお送り申します」。
♪~(ラジオ「君が代」)
(玉音放送)「朕は帝国政府をして米英支蘇四国に対し其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり」。
(美都里)どういうことですか?
戦争が終わった。
えっ?
終わったんですか? 戦争が?
そうじゃ。
日本は負けたんじゃ。
(美都里)そんなら帰ってくるんですね?稔も 勇も。
(泣き声)
稔さんが ご無事でありますように。
ご無事で… 帰ってきてくれますように。
どうか… どうか…。
(セミの声)
♪~(ラジオ)
お父さん。
♪~(ラジオ)
<金太の心と体は 回復しませんでした>
う~ん。
安子さんはお父様のお世話があるじゃろう。
それに 買い物やこもしてもらわにゃあ いけんから…。
ほら おいで るいちゃん。(るい)あ~。
うん?はい…。にょほ~ん。
ありがとうございます。
(足音)
ああ おはよう。おはようございます。
(ラジオ)「岡山県の天気予報を申し上げます。今日は…」。
どねんされたんですか?天気予報じゃ。
久しぶりじゃのう。こねんしてちょっとずつ 元の生活に戻りゃあええが。
♪~
生みたて卵。
こっちが 今朝 取れたて。
♪~
小豆が手に入ったんよ。
お父さん。あんこの作り方 教えてくれんかなあ?
本物のお砂糖がねえと たちばなの味にはならんかもしれんけどそれでも 私お父さんのあんこが食べてえ。
お父さん。一緒に おはぎゅう作ってお母さんらに お供えしょうえ?
回想 (金太)時計に頼るな。 目を離すな。何ゅうしてほしいか小豆が教えてくれる。食べる人の幸せそうな顔を思い浮かべえ。おいしゅうなれ。 おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。 おいしゅうなれ。
回想 (金太)おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。
(金太)その気持ちが 小豆に乗り移る。うんと おいしゅうなってくれる。
甘えあんこが出来上がる。あっ!はっ!
最後の仕上げん時かなあ。 ちょっと焦がしてしもうたみてえなんじゃ。
火加減が難しゅうて…。
あっ 小豆は 割かし上手に炊けた思う。
毎朝 私の部屋まで漂ってきたんとおんなじ香りじゃったもん。 はい。
♪~
稔さん。 どうか力を貸してちょうでえ。
稔さん…。
(ラジオ)「台風16号は奄美大島の西方海上を猛烈に発達した状態で北上しています。中心気圧は…」。
お父さん。
これ…おはぎゅう作ってみたんじゃ。
一口でええから味見てもらえんかな?
お父さん!
ごめんなさい…。無理強いしてしもうて…。
今 片づけます。
(ラジオ)「これまでの大雨で地盤が緩み河川が増水しているため今後台風本体の発達した雨雲がかかると土砂災害や洪水の危険性が一段と高まります。川や崖のそばでは早めの避難をしましょう。岡山県内に台風16号が最も接近するのは今夜から明日の未明になる見通しです」。
(雨の音)
お父さん…?
(雷鳴)
お父さん? お父さん!?
お父さん! お父さ~ん!
お父さ~ん!
お父さん!
お父さん!?
お父さん!
何ゅうしょおるん! 心配するじゃろ!お父さん!
お父さん 余計 体 悪うする!早う 帰ろうえぇ お父さん!
お父さん!
♪~
砂糖じゃ。
配給を ちょっとずつ よけといたんじゃ。
♪~
あねん まじい おはぎゅう供えられたんじゃあ小しずらも安心して成仏できんわ。
♪~