
アイデアを出すことは、どんな仕事でも求められるもの。
コピーライターである『100案思考 「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』(橋口幸生 著、マガジンハウス)の著者はこう主張しています。自身の仕事についても、広告の文章を書く仕事というより、「アイデアを文章として表現する仕事」だと考えているのだとか。
たとえば、「商品Aは、価格よりスペックを前面に出したほうが売れる。そのためには、○○というキャッチフレーズが必要だ」というように。
つまり、どんな仕事をしていたとしても、そこには必ずアイデアがあるわけです。
とはいえ、ポンポンと名案が思い浮かぶようになるような魔法など存在しませんし、アイデア出しは苦しいことでもあります。では、どうすれば妙案を考えることができるのでしょうか?
答えは簡単。「数多く出すこと」です。
(中略)最高の1案は、山ほどのつまらない案の中に、ひっそりと埋もれているものなのです。(「はじめに」より)
これは広告業界に限った話ではなく、新商品開発や新規事業立ち上げなど、世に出た成功事例も同じ。
それらは一見すると華やかに見えますが、実際のところヒット事例は、大量の没案のなかから生き残った1案だということです。
そこで本書において著者は、アイデアを数多く出すためのノウハウを明かしているわけです。
きょうは3「『思考の壁』を突破する『19のスキル』のなかから、3つをピックアップしてみたいと思います。
質より量
アイデア出しの鉄則は、クオリティ度外視で、とにかく100案出すこと。
なんとなく考えた1案が優れていることなどあるはずもなく、つまり量と質はセットになっています。別の表現を用いるなら、いいアイデアの陰には、必ず大量のダメなアイデアが隠れているということです。
たとえば、新しいスマートフォンのアイデアを出すことになったとします。
充電不要で、永久に使えるスマートフォン。 ロレックスとコラボした、ダイヤモンドつきスマートフォン。 象が踏んでも壊れないスマートフォン。 皮膚に埋め込める極小サイズのスマートフォン。
すべてアリです。
これなら楽しく、100案考えられそうな気がしませんか?
つまらなくてもいい。実現できるかどうかはあとから考えればいい。とにかく気楽にやればいいのです。(103〜104ページより)
よほど意識しないと、人は無意識のうちに「この仕事は、こんなものだろう」と決めてかかってしまう、つまり自分で自分にリミッターをかけてしまうもの。
しかしそれでは、いくら考えても凡庸なアイデアしか出てきません。
だからこそ、アイデア出しの時点では、くどいくらい「クオリティ度外視」「実現性度外視」「数こそすべて」を意識すべきだということです。(102ページより)
時間を決めろ
著者は本書のなかで、「あらゆる予定をスケジュールする」ことの重要性を説いていますが、同じことはアイデア出しにもいえるようです。
「空いた時間でやろう」などと思っていると、絶対にうまくいくはずがないということ。
時間は空くものではなく、空けるものなのです。アイデア出しの時間も、他の用事と同じく、スケジュール帳に記入するようにしてください。
アウトルックやグーグル・カレンダーを職場で共有している人は、そこに入力するようにしましょう。(123ページより)
ところで、アイデア出しがはかどりやすいのは、午前中だといわれています。
昼食後は眠くなりがちですし、夕方以降は疲れてきて、精神的に考える余裕がなくなるもの。深夜にひとりで考えたとしても前向きなアイデアが出る可能性は低いでしょう。
著者の場合も、家の用事が片づく午前8時半から1時間半ほどを、アイデア出しの時間と決めているそう。この時間には他の予定をいっさい入れず、ひたすらアイデアを出すというのです。
とはいえ、1時間半集中し続けているわけではないよう。
人間が本当に集中できるのは10〜20分程度だろうと考え、20分考えたら気分転換も兼ねてメールチェックなどの雑用をして、そののちまた集中。それを1時間半繰り返すわけです。
そして、はかどってもはかどらなくても、時間が来たら作業をストップ。タイムリミットを設けることで緊張感が生まれ、アイデアが出やすくなるというわけです。(122ページより)
組み合わせろ
「アイデアとは既存の要素の組み合わせである」という定義がありますが、さまざまな要素を片っ端から組み合わせてみるのもひとつの方法。
最初は、まったく関係なさそうな単語同士を組み合わせてみるといいそうです。
「ロケット」と「刺身」、「サッカー」と「F1レース」、「ティッシュ」と「鉛筆削り」などなど。(中略)。
しばらく良し悪しの判断はしないで、たくさん組み合わせ続けてください。
すると、ごくまれに「まったく異なる要素同士なのに、マッチしている」組み合わせに出会うことがあります。これこそが「いいアイデア」です。
慣れてくると、どのような距離感のものを組み合わせればおもしろくなるのか、カンでわかるようになるといいます。(155ページより)
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「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」ということわざは、アイデア出しの本質をとらえていると著者は主張しています。とにかくバットを振りまくり、まぐれ当たりでもホームランを打てばいいだけ。
慣れてくれば必然的にクオリティが高くなって「打率」が上がるわけですから、本書を参考にしながら、ぜひともそのレベルを目指したいところです。
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Source: マガジンハウス