『アクタージュ』原作者逮捕、「性被害当事者で作品のファン」の私が考えたこと

連載打ち切りをどう見るか
卜沢 彩子 プロフィール

二次被害への懸念

逮捕についてはメディアでも大きく取り上げられていて、ネット上の反応は主にこのようなものでした。

・打ち切りは妥当
・作品継続や再開を望む声
・宇佐崎先生が一番の被害者
・編集部が被害者に言及していないことへの批判

私が事件を知って一番に思ったのは、被害者への二次被害が起きないかということでした。舞台化も決まり、オーディション企画も控えていた人気漫画の原作です。期待が大きかったからこそ、関係者としては損失も大きいですし、ファンとしては未完の漫画の今後が気になるのも身を持ってわかります。

しかし、このような事件では被害者の立場を考えなくてはいけません。性暴力の被害に遭ったとき、被害の経験自体も大きな出来事ですが、その後の経緯でより深く傷つき、社会的に追い込まれることが多いのです。

〔PHOTO〕iStock
 

まず、被害を重く見て「打ち切りは妥当」「避けられない」と考える声が多かったことや、被害者を責める声があまり見られなかったのは、意外でしたが安心しました。

性暴力の告発があったり、性犯罪のニュースが流れたとき、反射的に「冤罪なんじゃないか」などと、被害は嘘だと決めつけて言及されがちです。また性暴力を「性的なこと=下ネタ」と解釈し、茶化してネタにしたり、無意識に「大したことがない」と矮小化する傾向も見られます。

私自身も痴漢や、無理やり性行為を強要されるなど複数の被害の経験がありますが、とくに今回のような痴漢行為は軽く見られて茶化されがちです。そして、問題は性暴力の加害者側にあるにもかかわらず、「服装や振る舞い」や「被害者が気にしていること」にすり替えられて、被害者が責められ、追い込まれる理不尽な状態になっているのです。このような二次被害をセカンドレイプと言います。

今回の場合、他の性犯罪の報道に比べても、被害者を責める声は少なかったように感じました。性暴力に対する意識が少し変わってきたのだろうかとも思います。

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