(社説)朝鮮戦争「終結」 効果を見極めた論議を
朝鮮戦争は今も終わっていない。1953年に休戦協定が交わされたまま70年近く、終結の手続きがとられていない。
南北朝鮮が国連に同時加盟して30年になる。これまで幾度も浮かんだ公式な戦争終結の道筋を探るのは自然なことだ。
ただ問題は、今の北朝鮮情勢とどう関連づけ、いかに朝鮮半島の安定を導くかである。確かな見通しと長期的な道程を組み立てた上で進めるべきだ。
韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は近い時期に終戦宣言を出すべきだと提案している。対話再開の誘い水になる、というのが同盟関係にある米国や日本への説明だ。
これに対し、日米は否定的な姿勢を崩していない。確かに宣言が本当に北朝鮮の態度を変えるのか保証はない。
戦争を公式に終えるには、休戦協定から平和条約に移る流れが一般的であり、その前段の終戦宣言は非公式な政治メッセージの色合いが強い。
北朝鮮に実利を与えずに関心を引くカードになりうるのは確かだが、それをいつ、どう使うのか、日米韓は綿密に検討し、認識を共有する必要がある。
宣言は3年前の初の米朝首脳会談前、米政府内で検討されたが、見送られた。北朝鮮側は韓国が見立てたほどには宣言を望んでいなかったとされる。
金正恩(キムジョンウン)氏は9月の演説で宣言に言及したが、敵視政策の撤回などを前提としており、大きな変化は見られない。
文政権には、来春の大統領選前に緊張を高めたくない思いや政権のレガシー(遺産)を残したいとの意識があるのだろう。
だが拙速は禁物だ。残り少ない任期にとらわれず、長い視野で日米と調整するべきだ。
日本政府が反対する理由は、ミサイル発射に加え、北朝鮮が在韓米軍の撤退など要求をつり上げかねないとみるからだ。
だが、日本政府に対案があるわけではない。宣言が必ずしも北朝鮮を利するとは限らず、要は硬軟両様の外交戦略だ。強硬一辺倒で失敗した安倍政権の教訓を忘れてはならない。
米政府は韓国側に一定の配慮をしつつも、早期の宣言には慎重な構えのようだ。
そんな日米韓の調整の場の一つが、ワシントンで先日あった外務次官級協議だった。ところが共同の記者会見は中止になった。直前に韓国警察庁長官が竹島を訪れたことに日本側が反発し、会見を拒んだためだ。
日韓関係を考慮しない韓国の無分別な行動は責められるべきだが、それを理由に日米韓の結束を発信する機会を逸した日本の判断も賢明とはいえない。日米韓の協調枠組みの揺らぎは、北朝鮮を利するだけだ。