コムデギャルソン川久保玲が語る パリコレ40年ともの作りの未来

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編集委員・高橋牧子
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 コムデギャルソンは今年、パリ・コレクション参加40年を迎えた。デザイナーで社長の川久保玲(79)は、トップ級の前衛性で、いまも世界に注視される存在であり続けている。10月に発表した2022年春夏の新作も、アフターコロナへの希望の道を指し示すような強い新しさを感じさせた。

 今季から、コムデギャルソンの名をブランドから全て取り去り、ジュンヤ・ワタナベなど個人のデザイナー名のみを掲げるブランド名に切り替えた。インタビュー嫌いで知られる川久保が、これまでとこれからのもの作りへの思いを語った。

 ――今回の新作については「不要と感じることを全て取り払って、最後に残ったもの」を前提に作った、と聞いています。

 テーマというよりも、最近の心境として、いま不要と感じるものは要らないのでは?と感じたからです。例えば、凝った生地作りや複雑な色の表現、体をきれいに見せるためのパターン(服の型紙)、服を主張するディテール、コンセプト……。そんなものは全部取り去って、残ったものに強さや新しさがあるのでは、と思ったからです。

 ――なぜいま、そのように感じたのでしょうか。

 服を作る段階ではいつも脈絡のない発想で考えています。その繰り返しを整理していくことでコレクションがまとまった形になる。その意味ではこれまでのシーズンと変わらないけれど、今回特にそうした感覚になったのです。パリ・コレを40年も続けてきて、年齢的なこともあるのかもしれない。たとえば、黒という色にしても、7色と黒1色だけを比較したら、黒1色の方が何か強いものを残しませんか?

 ――黒といえば、これこそがコムデギャルソンという強い独自性のイメージがありました。今回も黒の服がありましたが、そこに新たな意味と強さが加わったような感じがしました。またそうして出来た服には、いつもよりエレガントでかれんな印象もありました。

 それも、取り去って残ったものの一つでしょうか。服の柄も葉やリボンなどごくシンプルで簡単なラインにしました。説明的だったり手を加えたりした形ではなく、子供が一筆描きしたようなシンプルな見え方を探りました。

 ――行きついた先、ということですか。コロナ禍で生活者の多くも、不要な物や関係はもういらないという感覚になっています。これからのもの作りの大切なイメージや方向性を提示したように感じます。

 そうかもしれませんね。社会的なことは自分のもの作りの中では左右されませんし、いつも目の前のことだけに集中していて、先のことを提示するような余裕はありません。ただ、もの作りには捨てるという作業も必要なのではないかと思います。

 ――ショーの舞台裏で、もう若くはないから、と話していましたが、その意味とは?

 若ければやりたいこともたく…

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