「憧れの恐竜に関わる仕事ができて幸せ」と笑顔を見せる矢原武さん=福井県勝山市の福井県立恐竜博物館

 福井県勝山市の福井県立恐竜博物館。新型コロナウイルス対策で入場制限しているとはいえ、土日の館内は親子連れらでにぎわいを見せる。そのバックヤードでルーペを使い化石をのぞき込む矢原武さん(43)=同市。「大好きな恐竜の仕事ができて幸せ」と目を細める。

 大阪府吹田市出身で幼い頃から大の恐竜ファン。進んだ大学に古生物の授業はなかったが、生物学系を専攻し卒論では更新世のスッポンの化石を研究した。だが時は就職氷河期。希望する学芸員の募集はなかった。

 恐竜の研究員になるため海外で学ぼうという勇気はなく、せめて生物に近い仕事をと選んだのが、ダイビングショップのダイバー。その後は俳優、建設会社社員など職を転々とした。一方で恐竜への憧れはいつも心にあったという。

 3年前、募集があった恐竜博物館の嘱託職員に採用され、妻と一緒に勝山市へ移住した。「館内を歩いてふと自分が恐竜博物館で働いていると思うと、改めて感動する」。随分遠回りをしたが、ついに“聖地”にたどり着いた。

 「どうせ働くなら、好きなことを仕事にしたい」。40歳にして一念発起した矢原武さんは2018年、県立恐竜博物館の嘱託職員になった。前の職場は高槻市立埋蔵文化財調査センター(大阪府)。測量と図面作成、小さな現場の監督も任されていた。発掘作業は楽しかったが「もっと下(古い地層)を掘りたい。恐竜化石の発掘に携わりたい」との思いも強くなった。

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